メトロポリタン美術館が歴史的な絵画を復活させる手順をYouTubeで公開中
絵画の修復というと、2012年にキリストのフレスコ画を修復しようとしたおばあちゃんが有名ですが、実際の修復の現場はいくつものプロセスを経て少しずつ行われ、1枚の絵を美術館に展示できる状態にするために1年以上かかることもあります。メトロポリタン美術館は修復の様子をYouTubeで公開しており、時間と労力をかけて徐々に絵画が元の美しさを取り戻す様子がよく分かるようになっています。
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修復していくのはシャルル・ルブランの「エーヴェルハルト・ヤーバッハとその家族」という作品。かなり大きな作品なので、「絵画が届いた時、修復にどのくらいの時間がかかるのか分からなかった」とのこと。
資料を虫眼鏡で見つつ修復を進めていきます。
絵画の前に立つ男性。
まずは古いニスを取り除いていきます。
綿のようなものをつけた棒を、液体に浸していきます。
やや黄ばんでいた絵画を少しずつぬぐっていくと……
ニスが取り除かれ、子どもの肌が明るい色合いに変化しました。
古いニスを取り除いた後は、絵を机の上に寝かせていきます。
ゴロゴロと絵画を動かし……
机の上に男性が2人、床に男性が2人立ち、計4人で絵画を支えます。絵画を立ててみるとよくわかりますが、絵の上部に段差ができており、これをまっすぐに直す必要があります。
反対側から見るとこんな感じ。
ゆっくりと絵画を倒していきます。
さらに絵の後ろから女性2人が加わり、6人のスタッフによって慎重に。
倒したら絵画を後ろから支える木枠を取り外します。
ここからは絵の内容ではなくて、本体についた傷を修復していきます。
絵画は大きくヒビが入っており、後ろからワックスで固められていました。まずはワックスを削っていきます。
水をスプレーして……
柔らかくなったら木を上から押し当てて、まっすぐな状態に伸ばします。
熱を加えて……
板のようなもので押さえます。
こうして1箇所ずつ丁寧に手作業で修復を進めていくわけです。
傷が修復できたら絵をロール状に巻いていきます。
この時、絵画がずれないように絵の端は巻き付けていくものにホチキスで留められていました。
くるくる巻くと、絵が現れます。
ロールを反対にひっくり返して……
ゆっくりと絵を広げていきます。
広げられた絵はこんな感じ。
段差は目立たなくなっていましたが、近くから見ると、やはりヒビが存在しました。
続いて、再び絵を引き延ばして枠に固定していきます。
金づちとクギを使って、絵画をしっかり引っ張りながら木に貼り付けます。
ここまできたら、最初に取り除いたニスの代わりに新しくニスを塗っていきます。
ニスを塗ったところから明暗がくっきりして色合いが鮮やかになっていくのが分かります。
続いて、絵の部分を修復していきます。
ヒビが入っていた部分や傷の上に絵の具を塗り、パッと見てヒビがあると分からないように。
最後はスプレーガンでニスを吹き付けていきます。
修復が完了したら額縁に入れた絵を……
クレーン2台を使って壁に掛けていきます。絵がかけられた瞬間はスタッフから大きな拍手が上がりました。
絵画は傷が少なく、鮮やかな状態になって美術館に展示されていくわけです。
こうして、1年間をかけて修復が行われ、「エーヴェルハルト・ヤーバッハとその家族」は今世紀で初めて大衆の目に触れるようになったわけです。
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