3Dセンサーを駆使してVRをスマホでも実現する「Project Tango」はここまで進化している
カメラや赤外線センサーなどを組み合わせて対象物との距離を正確に把握し、リアルタイムで目の前の空間を3DキャプチャするというGoogleの開発プロジェクト「Project Tango」は、2014年に発表されてから世界中の開発者を含めてさまざまな開発が進められてきました。そんなProject Tangoの「いま」をまとめたムービーが公開されています。
The weird virtual reality of Project Tango - YouTube
記者が装着している白いタブレット状の端末が、Project Tangoの開発レファレンス機。このムービーはThe Vergeが作成したものです。
開発機を装着した4名の人が、部屋の中をうようよと歩き回っています。この4名は、タブレットの画面に映し出されているコンピューターが作りだしたVR(仮想現実)空間の中を歩き回っているところなのです。
Project Tangoの端末には、通常のカメラの他に赤外線センサーを使って対象物との距離を測る「3Dデプスセンサー」、モーショントラッキングカメラが搭載されており、各種の情報を総合して3D空間をキャプチャするビジョンプロセッサが搭載されています。
このように、カメラなどで捉えた画像を立体化し、3Dの情報として仮想空間内に再構築しているというわけです。
このシステムの強みは、目の前にあるものをそのまま3Dデータとして処理できるというところにあります。このように、画面に移った映像の中に誘導する矢印を表示して、建物の中を目的地までナビゲーションすることが可能。
無事にゴールに到達。このシステムのすごいところは、通常のスマートフォンのようにGPS電波が届きにくい屋内では機能が使えないような場所でも、自らが捉えた目の前にある情報だけをもとに誘導ができるという点にあります。
さらに、リアルタイムで案内ができるというメリットを活かし、日々の生活の中にもVRを取り入れることが可能になります。
買い物にスーパーを訪れた際に端末を取り出すと、店内の様子を3Dスキャンしてどこに何があるのかを把握します。
そのデータをもとに、自分が欲しい商品がどこにあるのか、矢印でわかりやすく誘導してくれます。また、お店側にとっても「この商品を買うと5000ポイントプレゼント!」のようなプロモーション情報を画面の中に盛り込むことができるので、訴求効果を高められるというメリットが考えられるとのこと。
Project Tangoの優れている点の1つが、高いモーショントラッキング性能です。
スマートフォンのように、3Dモーションセンサーだけで自機の動きを把握するのではなく、視覚情報をメインに位置を把握するため、動き回っても実際とのズレがほとんど生じないのがメリット。ムービーでは、Project Tango端末の動きに合わせて画面上のモデルがグリグリと動く様子をみることができます。
この性能は、従来よりもレベルアップしたVR体験に活用することが可能。このように、ブロックで小さな部屋を仮想空間上に組み立てておき……
端末を手に、部屋の中に入ってみます。
すると、まるで実際に部屋の中を歩いているかのような映像が画面に映し出されました。動きにはほとんどタイムラグが感じられず、まるで本当の部屋の中を歩いているようにも見えます。
逆に、今度は部屋の中に大きな自動車を置いてみることも可能。
車内の様子を自由に確認できたり、ありとあらゆるカラーを組み合わせて試すことができるなど、従来ではあり得なかった体験を得ることが可能になりそうです。
3Dセンサーのメリットはこれ以外にも。たとえば、目の前にあるソファーをカメラで捉えると……
本体の寸法を一発で測定することが可能。スマートフォンのアプリでも同様の機能は存在していますが、3Dセンサーを用いた測定により比べものにならない精度が得られる模様です。
目の前に、何の変哲もないダンボールがありますが……
これをカメラで捉えることで、ボールを箱の中に投げ込むゲームを画面上で楽しめるようにもなります。
また、このように自転車に乗りながらヘルメットに取り付けた端末で風景を撮影することで……
街じゅうの風景を3D化することが可能。
GPSの有無に影響を受けないので、電波の届かない屋内や地下でも正確に空間を測定することができるようになります。
複数の人間が端末を装着し、目の前にVR空間を投影することで……
実際に空間を歩き回りながら相手と会話できる、体で感じられる仮想コミュニケーション空間を提供することもできるようです。
このように、非常に高い性能をもとにさまざまな新しい仮想現実体験を可能にしそうなProject Tangoですが、まだまだ開発が進められている段階とプロジェクトを率いるジョニー・リー氏(画面左)は語ります。「映画が発明された時のように、現在は最初の一端を見ている段階ですが、徐々に人々が『これはアリだ』と思うようになってきたら、一般向けの商品が世に出ることもあるでしょうね」とリー氏は今後の展望について語っています。
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