自動的に衝突を防ぐ自動車の「自動ブレーキ」は安全なのか?
障害物を感知して自動的に停止したり、ブレーキをアシストする「衝突被害軽減ブレーキ」は、海外では「AEB(自動緊急ブレーキ)」と呼ばれています。世界的に普及が進んでいる衝突被害軽減ブレーキシステムですが、安全性を証明するデータは集まりきっていないのが現状です。ところが自動車の安全性評価テスト「Euro NCAP」が発表した最新の調査結果によって、衝突被害軽減ブレーキが事故率を実際に低下させていることが判明しました。
Effectiveness of low speed autonomous emergency braking in real-world rear-end crashes
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0001457515001116
Meta analysis finds self-braking cars reduce collisions by 38 percent | Ars Technica UK
http://arstechnica.co.uk/cars/2015/05/meta-analysis-finds-self-braking-cars-reduce-collisions-by-38-percent/
障害物を自動的に感知して自動停止を行う自動車の衝突被害軽減ブレーキシステムは世界的に搭載を義務化する流れになっており、日本では一部の商用車、EU諸国では全ての商用車の新車、アメリカでは全ての新車に対して衝突被害軽減ブレーキ装置の搭載が義務づけられています。2013年に日本の自動車アセスメント(JNCAP)やヨーロッパのEuro NCAPといった世界の自動車安全評価にも衝突被害軽減ブレーキの項目が加えられていますが、従来の停止を基準に採点していたため、衝突被害軽減ブレーキは安全性で低い評価を受けることもありました。
一部では自動で車両が停止するシステムに懐疑的な人も存在しますが、Euro NCAPが発表した最新の自動車安全性調査の結果によると、衝突被害軽減ブレーキによって後部衝突事故が38%も減少していることがわかりました。Euro NCAPの調査結果はヨーロッパ5か国とオーストラリアのANCAPのデータをメタ分析にかけたもので、低速走行時の衝突被害軽減ブレーキの安全性を証明する貴重なデータとなっています。
By Omar Landeros
なお、Euro NCAPの研究者は、衝突被害軽減ブレーキによる減速やブレーキ時に後続の非搭載車ドライバーが追突するという事故の存在を認めつつも、衝突被害軽減ブレーキの技術は安全なものであり、この技術が広範囲に普及することで最大限の効果を発揮できると述べています。Euro NCAPによる自動車の安全性評価は最高で「星5つ」ですが、2014年からは衝突被害軽減ブレーキを搭載していない自動車が星5つの最高評価を取得するのは難しくなっているとのこと。
Ars Technica UKは今後、衝突被害軽減ブレーキが普及することで、自動車保険料が低価格化することや、自動運転車が公道走行の認可を得る足がかりになるだろう、と予想しています。
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