海外なんて自転車で走るだけで十分に満足できると再確認したスリランカの旅
観光地に行く必要もない気がしました。だって、その日に到着する町だって海外には変わりありません。そこにも暮らしている人がいる限り、何かは見つかるはず。ともかく自転車で走るのが一番の目的でした。それだけでも、十分にスリランカを楽しめたと思っています。
こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。駆け足のモルディブから、スリランカに入国して、ひさしぶりに、チャリダーをやっていました。道路を走って、安宿に泊まって、次の町へ。そうして、線を刻んでいきます。
島の中央にある峠を攻略。
偶然にも見かけた漁火。
……と、自転車がないと出会えない景色もありました。コロンボに入国して反時計周りで南部を一周と、中央のキャンディから北部のジャフナまで、合計で1181.69kmを走っています。これといって観光はしてないのですが、それでもスリランカは思い出深い国の一つとなりました。
◆安宿を探し求めて
ともかく走り出さないと実感がつかめないのが、自転車の旅です。幸いにもスリランカだと、ある程度の町には安宿があったので、宿伝いで旅を進めることができました。ただし、安宿は町の中心部ではなく2kmほど離れた場所に多かったのが難点。夕食や買物は宿から自転車で出かけていました。1泊1000ルピー(約900円)が目安。ただ一部の宿では朝から夕・夕から朝と2交代の料金システムから朝8時のチェックアウト。夜更かしもほどほどに、早起きして健全なチャリダー生活を送っていました。
1泊1000ルピー(約900円)の部屋。トイレとシャワーは部屋にあることが多かったです。
こちらも、1000ルピーで泊まった安宿。
北部のジャフナには、YMCAに800ルピー(約730円)の部屋があって、連泊しました。
安宿には物干し台が完備。洗濯した衣服を、乾かすのに使います。
◆カレー&ライス
100~200ルピー(約90~180円)程度で、何かしら食べることができました。一食の量は多くて、お腹いっぱい。毎日、ご飯を食べていたのは嬉しいところ。ただ、後半はカレーか炒飯の2択に飽きてしまいましたが……。
スリランカのカレーは、どちらかというとぶっかけ飯でインドとはまた別物。でも、ご飯とは合っているので、どんどんと食は進みます。辛い味付けなので、食べ終わった後は鼻水がズルズル。いつも鼻をかんでいました。
大きな中華鍋を振って作ってくれる炒飯。こちらもやはりピリ辛。
軽食はサモサと呼ばれる揚げパン。1つ10~35ルピー(約10~30円)程度。外はカリッと中はフワッと、具材は野菜中心のカレー味。卵入りのサモサはボリュームもあって絶品でした。
デザートはどこにでも置いてあるヨーグルトがおすすめ。しっかりと固められたヨーグルトはレアチーズケーキにも似た濃厚な味わい。
こちらもよく見かけたEGBというジンジャーソーダ。ショウガの辛さがきつくてイマイチと思いきや、慣れると癖になるジュースでした。
日本でもお馴染みのミロは、スリランカでも人気のよう。
砂糖がタップリと入った甘い甘いミルクティーは、ほっとした気持ちにしてくれます。
◆4つの宗教が混在
スリランカの総人口のうち約7割を占めるシンハラ人の多くは、仏教を信仰しています。そういうことから、一番目立っていたのが仏教でした。丸みを帯びた土台を持ったパゴダ(仏塔)は、ミャンマーと同じ形。ただ、スリランカのパゴダはどれも白色でした。暑い場所だからこそ、熱を吸収しない白の建物は、周囲を爽やかに変えてくれます。
お寺とパゴダ。
白亜の大仏。
こちらの大仏の色は鮮やか。タイもミャンマーもそうですが、日本の厳かな空気とは違って、明るい感じの仏教でした。
屋根だけではなく、ガラスで覆われている仏像も多数。ここまで仏像を大切に扱っている国を、他には知りません。
こうした交差点にも仏像が置かれ、交通の安全を見守っています。
日本でいう神棚のポジションには、仏様が座ってらっしゃいました。宗教は違えど、やっている事は同じなんですね。
仏教国のイメージが強いスリランカですが、キリスト教もイスラム教もヒンドゥー教も同様に信仰されていました。北部のタミル人の多くはヒンドゥー教を信仰。スリランカでは宗教が身近に在りました。
こちらも、ケースの中で保護されるキリスト教のマリア像。
玉ねぎの形をしたドームが特徴的なイスラム教のモスク。
お祭りのように賑やかな彫刻が目を引くヒンドゥー教の寺院。
◆象がいる国でした
面積6万5,607平方キロメートル(北海道の約0.8倍)に、約2000万人が住むスリランカですが、平坦な土地も多いので思いのほか広く感じました。走行中に象やら猿やら、動物の姿も発見できたのは意外。アフリカ以来の象さんには大興奮でした。
人の赤ん坊くらいの大きさから、たじろいでしまったオオトカゲ。近寄ると、手足をがさごそと動かし、巨体に似合わぬ素早さで、草むらへと逃げていきます。
見通しのいい草原には野生らしき象の姿。
木の上には変わった種類のお猿さんが腰を下ろしていました。
峠の攻略中に現れたのは、日本にもいるようなお猿さんの群れ。
毛づくろいしたり、じゃれあったりと、忙しく動いているので見ていて飽きません。
象といえば、道路を占有する信じられない光景を目撃。大型バスとも肩を並べる巨体が、道路の中央を陣取っているので通れません。いや、通らして下さい。しばらく様子を窺っていると、乗用車もバイクも、横をすり抜けます。だったら、大丈夫と意を決して突破。これほど大きな生き物の近くを、走り抜けるなんて二度とないでしょう。その重量から半端ない威圧感を放っていましたが、人に慣れているのかお利口さん。これも、自転車じゃないと遭遇できない景色でした。
象の横を、路線バスが通っていきます。
「これが本当の通さんぞう」と迷惑な象さん。
人々がバナナやサトウキビといった餌を与えるので、通り過ぎる車に近づいていくのです。
そういうことから、道路上には食べ散らかした後が……。
十分な食料に満足しているのか、笑っているようにも見えました。
ムービーも撮影してみました。
チャリダーマンの進路をふさいだ象 - YouTube
◆スリランカの人たち
スリランカの人たちには、お金を渡すときに、片方の手を添えるという作法が存在。その謙虚な動作には、優しい気持ちにさせられます。一部の国では、お金を投げて渡す人もいるのですから。ガツガツと前に出てくるのではなく、一歩下がった場所からの距離感は、旅もやりやすくて助かりました。あと、子どもたちが多いので幸せになれます。元気よく手を振る子どもたちには、癒されっぱなしでした。
バスターミナルにいた若者。
自転車だからこそ、現地のサイクリストと交流も深まります。キャノンデールのロードバイクだったり、シマノのデュラエースのコンボだったりと、こっちの人もいい自転車に乗っていますよ。
学校を通り過ぎたら注目の的。
子どもたちは、きちっとした制服に身を固めています。
元気のいい子どもたち。
峠のてっぺんにいた少年たちを捕まえて。
こちらの子どもたちは、社会科見学なのか、先生と一緒に街中を歩いていました。
トゥクトゥクの子ども詰め合わせ。小さいから、たくさん乗せられているのが可愛らしかったです。
◆アジアを感じたスリランカ
見当がつかない南アジアでしたが、スリランカではアジアと同じ雰囲気を感じていました。人々が行き交う町の雑踏。道脇に開かれた露店に屋台。3輪タクシーのトゥクトゥク。その前までいたエジプトのようなアラブではないアジアの日常。日が落ちて涼しくなると、日本の夏のように、湿気を含んだ空気がほのかに香ります。草むらでは、賑やかに鳴く虫の声。朝になると、どこからともなく、庭を掃く箒の音が聞こえていました。
HOTELと書かれてますが、部屋はありません。食堂です。
商店の軒先も、アジアの雰囲気が滲み出ていました。
乾いた喉を潤してくれたジュースの空き瓶。
よく利用していたスーパーマーケット。
携帯会社の広告にあったドット絵の象さん。
北部のジャフナで見かけたシンハラ語、タミル語、英語による交通標識。シンハラ人とタミル人によるスリランカ内戦も2009年に終結。政府軍と対峙していたタミル人の多い北部まで、自転車で走っています。
田舎の町にいた甲羅干しする亀さんたち。
街中には野良犬が多いので、噛まれないように注意しましょう。
野球ではなく、クリケットが盛んなお国柄でした。
スリランカでは「古都キャンディ」と「象の孤児院」といった観光地も訪問しています。ただ、キャンディではホテルのオーナーと嘘をついたトゥクトゥクの運転手に振り回されたり、地元民で賑わうレストランでわざわざ二階に案内されて、観光客プライスのメニューを提示されたりと、不快な経験もありました。
だからこそ、自転車で観光地でない場所へ行きたくなります。ガイドブックにも載っていない町。だけど、そこにも暮らしている人がいるわけで。誰もが行く場所ではなく、誰も行かない場所も、意外と楽しかったりするのです。そうやって、ずっと旅を続けてきました。こうした自由なやり方が、私には合っていると再確認したスリランカの旅でした。
(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak)
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