サイエンス

「仮想の鼻」を置くと3D酔いしなくなることが判明

By Daniel Horacio Agostini

ファーストパーソン・シューティングゲーム(FPS)をプレイしたり自動車教習所にあるドライブシミュレーターを使用したりすると起きる、乗り物酔いによく似た現象が「3D酔い」です。F1ドライバーでさえドライブシミュレーターの3D酔いに苦しむことが元F1ワールドチャンピオンのミハエル・シューマッハの言葉から明らかになっていますが、この3D酔いを減らすのに効果的な方法として「仮想の鼻」を置く、という方法が挙げられています。

Purdue News - 'Virtual nose' may reduce simulator sickness in video games
https://www.purdue.edu/newsroom/releases/2015/Q1/virtual-nose-may-reduce-simulator-sickness-in-video-games.html


「VRヘッドセット」の代表格といえばOculus Riftですが、その他にもソニーのMorpheusや、MicrosoftのMicrosoft HoloLens、OculusとSamsungが共同開発したSamsung Gear VR Innovator Editionなど、さまざまなものが存在します。

そんなVRヘッドセットにつきまとうのが、めまいや吐き気などを引き起こす「3D酔い」なるもの。これはVRヘッドセットに限らず、FPSをプレイしたり大画面で激しく動く3D映像を見たりする際に生じる症状です。

この3D酔いは全身の触覚を司る体性感覚システムや、平衡感覚と深く関わる前庭系、眼球の動きをコントロールする眼球運動系など、人間の持つさまざまな生体システムにより引き起こされる症状で、これはちょっとした工夫でその症状を緩和できることがパデュー大学のデービット・ウィッティングヒル氏による調査で明らかになっています。

By Sergey Galyonkin

「3D酔いはとてもありふれた症状です。人間の知覚システムは『体の動きと視覚の動きが伴わない』という現象に弱く、視覚が激しく動いているのに体が全く動いていなかったりする場合、前庭系が3D酔いを引き起こしてしまいます」と、デービット氏は語ります。

デービット氏率いる研究チームによる調査の結果、3D酔いは画面に何かしらの表示が固定されている場合、その症状が弱まることが明らかになりました。例えばゲームならば、レーシングカーの計器盤や飛行機のコックピットなどが常に画面上に固定表示されていると、3D酔いの症状が緩和されるというわけです。

しかし、全てのゲームでコックピットを表示させることはできません。そこで研究チームの一人が思いついたのが「仮想の鼻」をディスプレイの真ん中に表示させる、というもの。この案についてデービット氏は「まさに天才的発想でした」とコメントしています。

By Paul Vallejo

「仮想の鼻」がどれくらい3D酔いを抑えられるのかについては、2015年3月に開催されたゲームデベロッパーズ カンファレンスの会場内で調査が行われています。調査内容は41人の被験者にVRヘッドセットを装着してもらい、激しい動きのある映像(ジェットコースター)とそうではない映像(Tuscany)の2種類を視聴してもらうというもの。もちろんただ映像を見てもらうわけではなく、被験者の半分には画面の中央に「仮想の鼻」がついたバージョンのものを、もう半分には「仮想の鼻」なしの通常版のものを視聴してもらっています。

「仮想の鼻」がついたバージョンのジェットコースターの映像は以下の通り。画面中央下部にある肌色の物体が「仮想の鼻」です。


調査ではVRヘッドセットで2種類の映像を視聴してもらい、気分が悪くなる(3D酔いする)までの時間を計測しており、「仮想の鼻」を表示するとTuscanyを視聴してから気分が悪くなるまでの時間が平均で94.2秒も長くなり、ジェットコースターの映像を視聴した被験者たちも「仮想の鼻」なしで視聴した被験者よりも平均で気分が悪くなるまでの時間が2.2秒も長くなることが判明しています。

ジェットコースターの映像は平均で2.2秒しか長く視聴できておらず、その効果がどれほどのものなのかイマイチ掴みづらいところではありますが、デービット氏は「ジェットコースターの映像は時間こそ短いものの、ぐるぐる回ったり上下に激しく動いたり逆さまになったりと非常に激しい映像です。ですから、被験者は長時間見ていられないものになっています」とコメントしています。

また、驚くべきことに「仮想の鼻」が表示された状態で映像を視聴した被験者たちは、「仮想の鼻」の存在に気づいていなかったことが明らかになっており、その存在を知らされた後も「本当にそんなものが表示されていたのか?」と懐疑的な反応を示したそうです。

By Global Panorama

「仮想の鼻」が3D酔いの症状を緩和するメカニズムについては現在のところ明らかになっていませんが、その効果は明らかで、特にあまり動きの激しくない映像の場合は強い効果を発揮しているので、3D酔いに苦しんでいる人は画面上にペタペタ自作の「仮想の鼻」を設置してみるのもありかもしれません。

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in サイエンス,   ゲーム, Posted by logu_ii