ハードウェア

没入型3Dヘッドアップディスプレイ「Oculus Rift」はステレオブラインドも克服する可能性


3DテレビはもちろんiOS7で採用された視差効果などの視差を利用した立体視技術が普及の兆しを見せていますが、斜視などが原因で立体視が困難なため3D映像を楽しめない人(ステレオブラインド)がいることが知られています。しかし、没入型3Dヘッドアップディスプレイ「Oculus Rift」はステレオブラインドネスをも克服し得る可能性を持つことが明らかになっています。

Oculus Rift - Virtual Reality Headset for 3D Gaming | Oculus VR
http://www.oculusvr.com/

I Am Stereoblind, But The Oculus Rift Is My Corrective Lens - Rifting To A New Reality - Voice of Geeks Network
http://www.vognetwork.com/rifting-to-a-new-reality/118/I-Am-Stereoblind-But-The-Oculus-Rift-Is-My-Corrective-Lens/

「Oculus Rift(オキュラスリフト)」は、頭部に装着し視野に情報を映し出すディスプレイ装置という点ではヘッドマウントディスプレイ(HMD)と同様ですが、頭部の方向や傾きに連動してバーチャルリアリティ(仮想現実)世界の光景が変動するものとしてヘッドアップディスプレイ(HUD)に分類されるデバイスです。

オキュラスリフトは、ピッチ、ヨー、ロールという3軸をセンサーで感知、頭の動きに合わせて映像が変化します。


通常のHMDが45度程度の視野角を持つのに対して、オキュラスリフトは片眼90度、両眼で110度と極めて広い視野角を持つため、まるで映像の生み出す仮想空間にいるかのような錯覚を覚えるほど高性能で「没入型」HUDと称されるほど。

オキュラスリフトがどれほどすごいのかが"間接的に"理解できるムービーがこちら。

Jacob tries the Oculus Rift (roller coaster) - YouTube


オキュラスリフトを装着している男性。見ているのはジェットコースターの仮想現実世界の映像。


コースターが降下を始めると、その映像のリアルさに立っていられなくなります。


このように、リアルな仮想現実世界を実現するオキュラスリフトですが、これまで立体視が困難であった人たちにも3Dの恩恵を与えうることが明らかにされています。

The Bobby Blackwolf Showを運営するボビー・ブラックウルフさんは小さい頃から弱視で、18歳のときに斜視を矯正したため立体視能力を失いました。とはいえ、ボビーさんは距離感をつかむことができていたため日常生活では特に不自由なことはなかったそうです。しかし、彼は3D映画を視聴したときに自分が立体視能力を持たないことを知ります。昔ながらの赤と緑のフィルムメガネで見る映像は、単に赤と緑の映像に見え、また3D版「アバター」は暗い2D版にしか感じなかったとのことです。

そんな立体視能力を欠くボビーさんは、任天堂のゲーム機ニンテンドー3DSを展示会で見たときに衝撃を受けます。立体視能力がない彼にも、ゲームの映像が立体的に見えるスイートスポットがあることを発見したのです。3DSで人生で最高の立体視体験をしたと思ったボビーさんでしたが、それは始まりに過ぎなかったことをオキュラスリフトを使って感じます。

オキュラスリフトのことを最高の3D体験を実現させてくれるお気に入りのツールだと語るボビーさんは、オキュラスリフトを装着したときだけ3Dの世界を実感できるそうです。ボビーさんには通常の3D映像では立体的に見えず、オキュラスリフトを使うことでようやく立体的に見える映像(写真の壁とキャンドルの映像)は、立体視能力のある人にとってもオキュラスリフトを装着した場合に注意をひく光景であることが分かっています。


◆改良版オキュラスリフト
このように驚異的な3D世界を実現するオキュラスリフトですが、さらなる改良がなされています。

現在のところオキュラスリフトはあらかじめ用意された専用の映像を楽しむツールにすぎませんが、ディスプレイ全面にカメラを装備した改良モデルは、周りの現実世界を見ながらオキュラスリフトの仮想現実世界を楽しむことが可能となっています。


また、オキュラスリフトを装着する人の眼の動きを追跡するカメラを持つモデルも研究されています。斜視を持つ多くの人が立体視能力を持たない原因として、瞳孔間距離(PD)が一定でなく両目ともにまっすぐに一つの物を凝視できないことがありますが、眼の動きを追跡できるモデルはこれを解決できる可能性があります。眼(瞳)の動きを瞬時に計算、それに応じて映像を微調整して映し出すことで、PDが一定でない人でも物を両目でしっかりと見ることができ、立体視が可能になると考えられています。

◆治療器具としてのオキュラスリフト
ボビーさんは、立体視能力のない人にも3D映像を体感させるオキュラスリフトが、娯楽として使われるだけでなく、「治療」にも使えるのではないかと期待を寄せています。ひもに色違いのビーズをつけた視力矯正器具のブロックストリングなどに比べて、オキュラスリフトはゲーム性がありよっぽど楽しいため、視力回復ツールとして利用できれば非常に有効なゲーミフィケーションツールになり治療に効果を発揮するはずだとボビーさんは考えています。

・おまけ
Twitterで議論された人気アイドル初音ミクの握手会ができないのか?という素朴な疑問を、オキュラスリフトで実現した強者がいるようです。


OculusRiftで初音ミクと握手をしてみた - Miku Miku Akushu - YouTube

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in ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

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