同じ音楽を繰り返し聞きたくなるメカニズムとは?
By David Blackwell.
ラジオで何度も流れていた曲をいつのまにか覚えて気がつくと口ずさんでいる、というように、人は聞いたことのある音楽を好む傾向があります。また、iTunesのような音楽プレーヤーのプレイリストには過去の再生回数を表示する機能がありますが、お気に入りがどれなのかは一目瞭然。そんな同じ音楽を聞いてしまうメカニズムについて、アーカンソー大学のMusic Cognition Lab(音楽認識研究所)の研究者が説明しています。
Why we love repetition in music – Elizabeth Hellmuth Margulis – Aeon
http://aeon.co/magazine/culture/why-we-love-repetition-in-music/
心理学者のロバート・ザイアンス氏は1960年代初頭に、図形・漢字・衣服・味・においやメロディなどに何度も接することで好感度が高まる「単純接触効果」を実証しています。アーカンソー大学音楽認識研究所のエリザベス・ヘルムート・マーグリス氏によると、音楽を反復した場合においては「単純接触効果」以上の効力があると述べています。
イリノイ大学の民族音楽学者ブルーノ・ネットゥル氏は、音楽の反復性について「世界のミュージカル集団のいくつかは音楽を特徴付けるために取り入れている」と話しています。アメリカのラジオでも、しばしばヒットソングは反復して流れるようになっており、オハイオ州立大学の音楽学者デービッド・ヒューロン氏によると、人々が聞いている音楽の90%以上は、入手する前に一度聞いた経験がある曲とのこと。
反復性は音楽に対して強力な効果をもたらしているわけですが、カリフォルニア大学サンディエゴ校の心理学者ダイアナ・ドイチュ氏はさらに強力な一例を発見しました。それは音楽の反復性をスピーチに応用したもので、以下が実際にその効果を体験できるスピーチです。「The sounds as they appear to you are not only different from those that are really present, but they sometimes behave so strangely as to seem quite impossible.(音が聞こえる時、本当の音だけが聞こえているわけではありません。時によって音は信じられないほど奇妙に聞こえます)」と話した後に、「sometimes behave so strangely」と反復します。
続いて以下を聞くと、同じ文章ですが一部分だけ際だって聞こえます。
一般的に「歌唱」と「スピーチ」は異なるものとして捉えられますが、同じシーケンスで1フレーズを繰り返すことで、音楽の反復性の効果をスピーチにも取り入れることができるとのこと。音楽を聴いている時に次のフレーズがぼんやりと浮かんでくるように「sometimes behave」が聞こえると必然的に「so strangely」が連想されるようになるわけです。
このブログの筆者のマーグリス氏自身も音楽の反復性を研究する1人で、同じ旋律を繰り返すロンド形式の楽曲を使った実験を行っています。2つのグループを、特に反復が多い古典的ロンド形式の楽曲と、反復が少なく音調の変化に富んだロンド形式の楽曲を繰り返し聞いてもらうグループに分けて観察したところ、古典的ロンド形式のグループの方がコツコツと指でリズムをとったり、歌詞を口ずさむ回数が多い傾向が見られたとのこと。
By elizabeth pfaff
また、ヘルシンキ大学の心理学者カルロス・ペレイラの研究チームが行った実験によると、好き嫌いを問わずよく知られている音楽を聞いている時、人々の脳は感情を司るエリアの活動が活発化することが報告されており、聞き慣れた音楽は無意識下にも作用するということです。世界中の音楽が同じフレーズを繰り返しているのは偶然ではなく、実際に科学的な効果があることが判明しています。
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