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よりよい仕事にありつくために重要な「ストーリーテリング」の技術とは?

By Jim Pennucci

スタートアップやクラウドファンディングによるビジネスはいくつもの企業が日の目を見ることなく消えてしまう困難な道のりですが、次世代のGoogleやFacebookになる可能性を秘めています。そんなビジネスにおいて「圧倒的な力」としてHarvard Business Reviewも取り上げているのが、聞き手に自らの物語の印象を強く伝える「ストーリーテリング」の技術です。企業のトップが身につければ組織を1つにまとめる力となり、CMに応用すれば圧倒的な拡散につながるというストーリーテリングの重要性や使い方について、The New York Timesがまとめています。

Storytelling Your Way to a Better Job or a Stronger Start-Up - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2014/12/13/your-money/storytelling-to-find-a-job-or-build-a-business.html


クレアモント大学院大学の経済学・心理学・マネジメントのポール・サーク教授は脳内で分泌されるオキシトシンについて研究しています。オキシトシンは別名「愛のホルモン」とも言われ、人に信頼や共感をもたらすと考えられている物質で、研究によって授乳中の女性が豊富に分泌していることや、オルガスム中に放出されることがわかっています。

サーク教授はオキシトシンの効果を立証するため、キャラクター本位でストーリーを展開させる物語のムービーを使った実験を行いました。被験者たちはムービーの視聴前後に採血されたのですが、分析の結果、ムービーを視聴した後には血液中のオキシトシンが増加しており、視聴した物語に関するチャリティへの寄付といった支援活動を行いやすい傾向が見られたとのこと。オキシトシンの増加が確認されることで、『人の心を打つ物語』が科学的にも効果があることが証明されましたが、サーク教授は「お気に入りの物語であっても『どの部分が好きなのか』を明確に表現するのは難しいのです」と話しており、ストーリーテラーとして自在にオキシトシンの効果を与えるのは難しいようです。

By Frits Ahlefeldt-Laurvig

では、どのような物語が相手の心を打ち、オキシトシンを分泌させられるのか?という点が気になるところですが、この点についてジョンズ・ホプキンス大学大学院で講師を務めるキース・ケセンベリー氏が研究を行っています。ケセンベリー氏はストーリーテリングに関して、共同研究者とともに物語の構造を図解した「フライタークのピラミッド」を使ってスーパーボウルのCMを研究しました。フライタークのピラミッドとはドイツ人のグスタフ・フライターク氏が小説や物語における共通事項を図解したもので、Act1~5は以下のようになっています。

Act.1=「提示部」
Act.2=「上昇展開」
Act.3=「転換点」
Act.4=「下降展開」
Act.5=「結末」


人の心を打つ物語はストーリーの長さに関係なく基本的には上記のパターンに沿って展開されるとのこと。Act.1だけで完結する例外としてはアーネスト・ヘミングウェイが6単語だけで書き上げた小説「For sale: Baby shoes, never worn.(売り出し中:一度も履かれなかった子どもの靴)」が有名ですが、ケセンベリー氏はActの数を多く盛り込んだCMの方がSNSでシェアされやすくなることを明らかにしました。ピラミッドの全ての要素を備えた最たる例がバドワイザーのCM「Puppy Love」とのこと。

Budweiser Super Bowl XLVIII Commercial -- "Puppy Love" - YouTube


CMの内容は子犬と馬の友情を描いた内容。2014年1月29日に公開されてから記事執筆時点までの再生回数は約5426万3200回にも上ります。バドワイザーの広報担当は、「子犬の物語が著しいシェアを生み出しています」と話しており、USA TodayのCM賞と、Huluで広告トップ賞を受賞しているとのこと。バドワイザーの製品であるビールがほとんど登場しないCMですが、大きな利益を生み出す大成功CMとなっています。ケセンベリー氏は「物語には『決まり文句』がありますが、決まり文句だと気付かれる物語は失敗します」と話しており、フライタークのピラミッド要素をいかに斬新に盛り込んで顧客を引きつけるか、ということがビジネスにおいても重要になります。

ビジネスにおけるストーリーテリングの技術は重要視されるようになりつつあり、American Expressなどの大手を含む企業向けに「ストーリーテリングのバランス」を指導するストーリーコーチのアンドリュー・リンダーマン氏のように、非営利団体とスタートアップ向けに1回あたり1800ドル(約21万円)~3500ドル(約41万円)でワークショップの開催を請け負っており、500ドル(約6万円)~5000ドル(約5万9000円)のマンツーマン指導を提供するなど、ストーリーテリングの技術を向上するため講座も登場しています。

優れたストーリーテリング技術を習得できれば、効果的なCMを制作したり、心に残るプレゼンを行うことができるわけで、知名度のないスタートアップにとっては強力な武器になり得るというわけです。

By Will Lion

なお、The New York Timesがまとめる「ビジネスにおけるストーリーテリングのポイント」は以下のようになっています。
◆1:聴衆のことを知ること
◆2:始まり・中間点・終わりを持つこと(聴衆はしばしば内容を忘れるため)
◆3:具体的な詳細と個人的経験を用いる
◆4:自主検閲を行わない
◆5:物語を記憶しようとしない/リハーサルを行わない

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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