音楽と連動して本当に稲妻が走り炎がほとばしるようにしたミュージックビデオ「CYMATICS」とその舞台裏
特殊効果などではなく、本当に音楽の演奏と合わせて炎が燃えさかったり稲妻が走ったり液体が跳ねたりするムービーが「CYMATICS」です。音楽と視覚的な要素を連動させたい、という思いから科学の力を借りてさまざまな装置を作り上げてしまったというすさまじいムービーになっています。
CYMATICS - Science Vs. Music - Nigel Stanford
http://nigelstanford.com/Cymatics/
音楽と科学を融合させたすさまじいムービーは以下から確認可能です。
CYMATICS: Science Vs. Music - Nigel Stanford on Vimeo
とあるスタジオに設置されたマイク。
マイクの近くで男性が突然砂のようなものを四角いプレートの上にサラサラとまき始めました。
キーボードを叩くと音の振動を受けた砂がプレート上に模様を描き始めます。
音を変えると……
模様がより複雑なものへと変化。
さらに、液体が載せられたスピーカーを発見。
これも音楽が鳴り始めると共に、水の表面で模様が描かれました。
真ん中から外へ、ゆるやかな円を広げていったり……
細かく波立ったり。
続いてはドラムセット。
ドラムセットなのになぜかそばでは水が流れています。
ドン、と足もとのバスドラムを踏むと、振動がチューブまで伝わり水が不思議な揺れを起こしました。
さらに、キーボードで鍵盤をたたくたびにパシャンと液体が飛び出します。
奇妙な盛り上がり方をしている液体。
不思議なビジュアルエフェクトを連動させながらも音楽は成立し、どんどん流れていきます。
キーボードで音楽を奏でながら触っているのはプラズマボール。
ガラスの表面に指を置くと、電磁波が目に見えるプラズマとなって現れます。
シンバルをたたくと細かい粒子が舞い、光を受けて幻想的な雰囲気に。
そして演奏メンバーがさらに何かを始めました。
かぶっていたフードを脱ぎ去り、巨大な装置を布の下から取り出した男性。
キーボードの演奏と共に炎が激しく燃えさかっていく中……
怪しげな衣装に着替えます。
機材を調整。
さきほど現れた機材から稲妻が走ります。テスラコイルと呼ばれるこの装置は高周波、高電圧を発生させることのできる共振型変圧器です。
シンバルにまで届く稲妻。
プラズマボールや……
燃えさかる炎にまで稲妻が走っています。
そして覆面集団によるシュールな演奏が佳境を迎えます。
最後は稲妻が人間を貫通して終わり。
なお、どれほどのこだわりを持って創意工夫をこらしムービーを作成したのかは、メイキング映像を確認するとよくわかります。
Cymatics Chladni Plate - Nigel Stanford on Vimeo
写真の男性が今回、音楽と科学との融合を果たしたミュージシャンのNigel Stanfordさん。
ムービーに出てくる装置はもちろんStanfordさんを含めたチームの手作り。
1つの装置を作るまでに何度も実験が繰り返されました。
ディレクターを務めたのはStanfordさんの友人でありニューヨークで音楽フィルムを制作するShahir Daudさん。
これが実験中の様子。
砂の載せられるプレートの形は何度も検討されたもの。始めは三角形のプレートも考えられていました。
丸型プレートも。
キーボードで奏でる音によって砂の描く模様は変化するのですが、音によっては細かすぎてぼんやりした模様になってしまったり……
明確な模様が描かれないこともありました。砂の量も多すぎず、少なすぎないベストな量を何度も実験を重ねて細かく調整されたようです。
続いて、スピーカーをお皿にして水を注いだ「Speaker Dish」のメイキングの様子。
Speaker Dish - Nigel Stanford Cymatics on Vimeo
スピーカーの上にセットされるお皿。
その中に注がれていく液体は、水ではなくキンキンに冷やされたウオツカ。
これも「何の液体が最も美しく波模様を描くか?」と実験された結果だそうです。
中心から外へと、何重もの円が美しく広がっていきます。
続いては磁性流体を用いた実験。
Ferro Fluid - Nigel Stanford Cymatics on Vimeo
磁性流体は砂鉄のように磁石に吸い寄せられる性質を持つ機能性流体の1つ。
磁場を発生するものを至近距離に置くと、こんな感じで角が生えます。あくまで液体なので触ってみても痛くありません。
磁性流体は一度こぼすと後片付けがすごく大変、とのことで、扱いには慎重さが必要ですが、ウッカリこぼしてしまうこともあったようです。
しかし、最後にはキーボードと磁性流体を連動させることに成功。
音を鳴らすと液体が跳ね出す、というユニークな装置が作られたわけです。
燃えさかるキーボードをセッティングする様子は以下から。
Ruben's Tube - Nigel Stanford Cymatics on Vimeo
Stanfordさんが手に持っているのは消化器。火を使った危険な装置なので、いざというときに備えています。
プロパンガスを用意。
穴が開いた長いチューブをセットします。
ガスを開栓した状態でチューブに火を近づけると、こんな感じでいくつもの炎がともっていきます。
あまりにも炎の勢いが強すぎると一体化してしまい、美しい見た目が保てないので、どのくらいが適正なのか実験と調整が繰り返されました。
そして最後はテスラコイル。
Tesla Coil - Nigel Stanford Cymatics on Vimeo
テスラコイルは特殊な機械なので、使用する際にはテスラコイル・エンジニアのJay Howsonさんが手伝ったそうです。
火の近くでテスラコイルを使うという、あまり行われないことにも挑戦。
もちろん装置のセッティングも専門家の話をしっかり聞きながら。安全性の面では万全の準備がされていたわけです。
テスラコイルから放たれる稲妻を流すため、金属でできた特殊な衣装に身を包むStanfordさん。
稲妻に貫かれるシーンは何度もジャンプしてもらい、納得のいく映像が撮れるまで撮影を行ったとのこと。
この他ムービーを作る様子は写真と文章でも細かいところまで公開されています。2013年の7月にプロジェクトがスタートしてムービーが公開されたのは2014年の11月なので、1年以上かけて「音楽と視覚的要素が連動する」というすさまじいムービーが仕上がったわけです。
CYMATICS - Behind the Scenes
http://nigelstanford.com/Cymatics/Behind_the_Scenes.aspx
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