なぜ宝くじは人を引きつけてやまないのか?
By RHiNO NEAL
ジャンボくじやナンバーズ、ロト6などの宝くじは数億円の当選金が当たることがあり、2013年度の売上が約9445億円にも達する人気の高いギャンブルの1つです。アメリカでは当選金を次に持ち越すキャリーオーバーが積み重なると当選金が数百億円にものぼることがあり、まさに宝くじはアメリカンドリームそのもの。当選確率はめちゃくちゃ低いにもかかわらず、ものすごい人気を誇る宝くじがどうしてこれほどまでに人を引きつけるのか、宝くじを購入する人の行動をさまざまな識者が分析し、答えに迫っています。
Why We Keep Playing the Lottery
http://nautil.us/issue/17/big-bangs/why-we-keep-playing-the-lottery-2
アメリカ・テネシー州で宝くじ販売を手がけるTennessee Lotteryを運営する企業Tennessee Education State Lottery Corporationの代表取締役レベッカ・ポウル・ハーグラブ氏は、宝くじを販売するサイドから、人が宝くじを購入し続ける理由に対する独自の見解を述べています。ハーグラブ氏によれば、宝くじの購入者が論理的な投資を行うならば、別のモノに投資するとのこと。つまり、宝くじは資本を増加させるための投資ではなく、料金を払って楽しむエンターテインメントの1つとして、購入者を満足させているということです。
By 401(K) 2012
「宝くじを購入した人は『1億円当たったら何を買おう?』などと当選番号の発表日まで考えながら楽しむことに料金を支払っているんです」と話すハーグラブ氏がこのような考えに及んだのは自身の経験から。Tennessee Education State Lottery Corporationを始める前に、テレビ関係や政治関連の仕事を営んでいたというハーグラブ氏は自分も宝くじを購入したことがあり、購入後に「なぜ宝くじを買ったのか?」自問した結果、当選金の使い道に夢をはせていた自分に気がついたのです。
ハーグラブ氏の見解に相似した意見を持つ心理学の識者もいて、テキサス大学の心理学科教授であるダニエル・レヴァイン氏は「当選した人が豪遊している場面を映す宝くじのコマーシャルは、視聴者に『もし当たったらどうしよう?』と考えさせる効果があります。視聴者自身が体験しているかのような感覚を与えることで、脳の一部を刺激し、購買意欲が増すというわけです」と語っています。
By Shenghung Lin
レスブリッジ大学の健康科学科の教授であるロバート・ウィリアムズ氏は「ポジティブなイメージは、宝くじ販売の大きなカギを握っています」と言及。ウィリアムズ氏が言う「ポジティブなイメージ」とは、宝くじのコマーシャルのことではありません。ナンバーズやロト6といった数字選択式の宝くじは、番号が数個違うだけのニアミスが頻発します。ニアミスは購入者の脳に「おしかった!後1個ずれていたら当選していた」というポジティブなイメージを植え付け、脳が「当選金をつかみかけていた」と錯覚してしまうとのこと。
識者の見解だけではなく、宝くじに関する興味深いデータも存在します。アメリカ消費者協会が1000人のアメリカ人に「富に対する個人的な見解」を調べるアンケートを実施したところ、年収2万5000ドル(約272万円)未満の人の38%が「宝くじは数千万円もの大金を得るのに最も現実的な方法」と答えました。
アンケートの回答に対してカーネギーメロン大学のモスタファ・レーベシュタイン氏は「貧困に苦しみ社会に対して不満を持っている人が貧困を脱出して億万長者になる可能性はとても低い。そういう人たちにとって、宝くじは人生を大逆転する可能性を上げる1つの方法であり、低すぎる当選確率は問題にならないのです」と意見を述べています。
By crispy
ただし、レーベシュタイン氏は「貧乏な人が宝くじを購入するのが不合理だとは思いません。経済的に苦しい中で希望をお金で買うことは、意味のある行動だと思います」とも話しています。
「もし当たったら何を買おう?」と思ったり、宝くじのコマーシャルや当選ニアミスから脳が刺激されたり、経済的理由から将来への希望を購入したり、宝くじが人を引きつけるのには1つだけではなく、多くの理由があります。ただし、宝くじはギャンブルの1つであることも忘れてはならない事実です。身を滅ぼしてしまうほどのお金をギャンブルにつぎ込むと、エンターテインメントとしての宝くじを楽しめなくなってしまいます。
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