サイエンス

天文学に大きな進歩をもたらす3台の超巨大望遠鏡を巡る競争とは?


天文学界で大きな期待が寄せられているのが、巨大な反射鏡を搭載しはるか彼方離れた宇宙にある惑星をも判別可能という超巨大望遠鏡です。記事執筆現在では、開発途中の超巨大望遠鏡は3台あり、お互いが技術的に素晴らしい側面を持ち合わせていますが、それとは別の要素で壮大な競争が繰り広げられています。

The Billion-Dollar Telescope Race - Issue 11: Light - Nautilus
http://nautil.us/issue/11/light/the-billion_dollar-telescope-race

開発中の次世代超巨大望遠鏡として世界から注目を集めているのは巨大マゼラン望遠鏡ヨーロッパ超大型望遠鏡30メートル望遠鏡の3つ。巨大マゼラン望遠鏡はチリのラスカンパナス天文台に建設される望遠鏡で、口径8.4mの鏡を7枚組み合わせた合成鏡が主鏡となり焦点距離は18mで、宇宙空間に打ち上げられた天体望遠鏡の1つであるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡と連携して使用される予定です。

ヨーロッパ超大型望遠鏡は798枚の六角形鏡を組み合わせて口径39mを実現可能な次世代大型光赤外望遠鏡。巨大マゼラン望遠鏡と同じくチリ国内にあるアタカマ砂漠に設置される予定。30メートル望遠鏡は、その名の通り口径が30mで主鏡が492枚の六角形鏡を組み合わせた複合鏡からなり、宇宙望遠鏡との連携観測を行う望遠鏡です。3つの超巨大望遠鏡は、どれも遠方銀河ブラックホール暗黒物質、初期の宇宙など、難易度の高かった分野の観測を可能すると見られています。

By NASA's Marshall Space Flight Center

3つの望遠鏡がしのぎを削っているのは、技術仕様や口径の大きさだけではありません。超巨大望遠鏡は、開発によってがもたらされる名声や利益を求める国や国際的企業の椅子取りゲームになっているのです。30メートル望遠鏡開発プロジェクト委員の1人であるMichael Bolte氏は「超巨大望遠鏡を完成させるには巨額の資金が必要なので、世界中を飛び回って出資者を探すわけですが、それは他の超巨大望遠鏡開発チームにとっても同じこと。例えば、北京に出資交渉をしに行くと、ヨーロッパ超大型望遠鏡の開発チームが話を終えて帰ったばかりだったこともあります」と話しました。

30メートル望遠鏡開発プロジェクトは中国から巨額の出資を得ることに成功し、プロジェクト委員会には北京に本部を置く中国科学院国家天文台のShude Mao氏が在籍しています。中国の他には日本やアメリカ、カナダ、インドが巨額の建設費を担う予定です。

By marcmo

一方、ヨーロッパ超大型望遠鏡プロジェクトチームは30メートル望遠鏡とは違った形の出資方式を採用。ヨーロッパ超大型望遠鏡開発に参加するには、まずヨーロッパ14カ国およびブラジルが共同運営するヨーロッパ南天天文台(ESO)の理事会に入る必要があり、参加した上で国内総生産(GDP)の数パーセントをESOの予算へ回すという形態になっています。

2013年にGDPが9兆ドル(約944兆4853億円)あった中国にとって、GDPの数パーセントを支払うヨーロッパ超大型望遠鏡の出資形式は不利なので、30メートル望遠鏡開発プロジェクトに参加した、と見られています。巨大マゼラン望遠鏡はワシントン・カーネギー協会・ハーバード大学・マサチューセッツ工科大学といったアメリカの機関の他に、オーストラリアや韓国の機関から予算を確保。3つの望遠鏡を巡って国や国際機関の出資競争が行われているわけです。

By Welsh Government / Llywodraeth Cymru

3つの超巨大望遠鏡プロジェクトの理事長たちは「最初に望遠鏡を完成させるのは我々です」と口をそろえていますが、完成は2022年頃までかかる、というのが多くの科学者の意見。望遠鏡レースを制するのが誰なのかは気になるところですが、全てのプロジェクトが完成を迎えることがなによりも重要とのこと。完成の順位に関係なく、完成を迎えるだけでも天文学界にとって多大な進歩をもたらすことは明白です。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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