コラム

社会におけるマイノリティとなった際に、偏見を減らすために考えたいこと


日本人のあなたが外国人として逮捕される日」という記事が話題となっていたので、自分なりに考えてみました。「人を見た目で判断してはいけない」と言われますが、多くの国では「東洋人=中国人」です。「カンフーできるか?」「えぇちょっと(できないけど)」と何度この会話を繰り返してきたことか。でも、悪意がなければ気になりません。彼らは外国人が嬉しいだけですから。

こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。3度の渡航で合計約7年115カ国を旅した身としては、日本でも議論を呼ぶ積極的な移民の受入には賛成できません。外国に住むということはマイノリティとしての不便を一生抱えることだというのを、どれだけの方が自覚しているのでしょう。ただの旅行者ですら、相手に合わすことが必要でした。

◆人は見た目で判断される
ふとしたきっかけで、「日本人のあなたが外国人として逮捕される日」という記事を読んで、一連のコメントに目を通しました。「日本人に見えない日本人が大勢暮らしている」という筆者の主張には、誰も反発することないでしょう。

ただ彼の論法が正しければ、一時帰国した際、2度に渡って簡単な持ち物検査を受けた自分は「人は見た目じゃありません」と徹底して抗議することが必要です。しかし、2年も3年も海外を放浪していた自分はどう見ても怪しく、実際の旅行中には、タイの日本人宿で「大麻禁止」と張り紙があるにも関わらずビルの屋上で魂の抜けた状態で突っ立ていたり、オーストラリアでは「ちょっと試しに吸ってみます」と大学生が興味本位で手を出していたり、そういう日本人を見てきた身としては、疑われる理由に反論の余地はなく、黙って従うしかありませんでした。自分は薬物に手を出しませんが、9月末の一時帰国の際に2年ぶり3回連続の検査となっても、それが彼らの仕事ですから進んで協力するつもりです。……ついでに、マリファナを吸われる方は、嫌いな人もいるので見えない所でお願いします。

日本人宿に「大麻禁止」と張り紙があるのにも関わらず……。


3年ぶりに一時帰国した関西国際空港で手荷物検査。


ナイジェリアで「ちょっと友達来るから待ってて」と言われ、出てきたのが警官で「よしっ、今から一緒に警察署で取り調べ」とされたら拒否の選択肢なんてありません。ベトナムではネットカフェの「外国人拒否」にブチギレしたら、その筋の人かと見間違う警官たちを呼ばれて、生命の危機を感じた苦い思い出も。連行されましたが、話して打ち解けるといいおじさんたちでした。中国では「ちょっと確認したけど、外国人はうちの宿には止まれない」と宿のオーナーが呼んだ公安に外国人専用のホテルまで連れて行かれました。「中国人は外国で自由を満喫しているじゃない」と愚痴っても「宿泊制限は法律だからね」と打つ手なし。カナダ入国の際にも「所持金は幾らですか?」「どういう旅行をするのですか?」と別室で尋問されました。ただ、いずれにしても時間は取られましたが、彼らの仕事の範疇ですし、不当な扱いを受けた訳でもなく、仕方のない事として納得しています。ゆえに、今回の記事には納得できませんでした。確かに逮捕まで至った日本警察の行動は勇み足だったかもしれませんが、疑われる方だって身の振り方があったでしょう。

外国人に厳しくも優しくもあったベトナム。


インドネシアの検問で呼び止められて。


擁護するのであれば、多民族国家アメリカでは日本人であることを意識されることはありません。でも、自分の旅では外国人として好奇の目を集めることが多いです。特にアフリカでは、何をするにも囲まれて大変でした。食堂の窓からチラッ、チラッと様子を伺う可愛い顔。煩わしいですが「チンチョンチャン」というからかいがなければ黙って受け止めるしかないでしょう。笹を食べるパンダのように、人だかりの輪の中心で黙ってパイナップルにかぶり付いたこともあります。中南米でもローカルの町に行けば、ジロジロと刺さるような視線が気になりますが、悪意はないので気にしません。そうでなければ「自転車で旅行しているから、ここにいるんですよ」と照れながら自慢するくらいでしょうか。苛立つこともあって、現地の人を困らせたりもしてましたが、マイノリティはマイノリティなりの心得が必要というのがこの旅の答えです。仮に自分が外国に一生住むとなれば、決して平等には扱われないことを覚悟します。

シエラレオネの優しい目をした現地の人たち。


メキシコの田舎町のスーパーでは、否応なしに目立ってしまいました。


◆マイノリティとして
旅行中のメキシコにおける携帯のリチャージは番号を読み上げる必要がありました。スペイン語に慣れない自分は、自作の紙カードを用意。そうすることで、簡単に作業が進みます。「3000(トレス・ミル)」と言ったのに「13000(トレセ・ミル)」をリチャージされた時には落ち込みましたが、やはり念を押す必要がありました。比較的英語が通じた東アフリカでも、タンザニア奥地では全く通じず、必要に迫られてスワヒリ語の習得に励みましたし。言葉が通じないからといって、泣いたり喚いたりしても変わりません。相手に受け入れられるには相応の努力も必要です。

携帯リチャージ用の便利メモ。


スペイン語を学ぶための教材。


修羅の国と揶揄される福岡の中学校では「あなたたちは木ではなく森でみられる、だからこそ個々の振る舞いが大切」という教えでした。自分たちが入学するまでは校則は坊主で、それくらい手綱を締めないと荒れてしまう可能性があったのではと振り返ります。母国を離れて外国に住む方々の苦労は計り知れませんが、結果を積み重ねて自分の居場所を変えていって欲しいものです。それは国籍のマイノリティに関わらず誰だって一緒なことで、少なくとも移住という行為は自分で選んだ結果のはず。子どもなんて、生まれてくる環境を選択できません。「人を見た目で判断しないで欲しい」と自分で言うより、「あの人は違うから見た目で判断したくない」と誰かに言わせる方が、より多くの理解を得られると思います。

このような記事を書くと、一部の人から差別的だと言われるでしょう。確かにブラジルの空港で自転車のパッキングをしている最中に現地の人に何か聞かれて、まず自分は鞄が無事かを確認しました。でも、差別ってなんなんでしょう。だったら、危険だといわれるヨハネスブルグを、日本と同じように歩けばいいじゃないですか。外国の誰もいない夜道で、パーカーを着て頭をフードに隠した若者が、後ろを歩いていても平静を保てますか。自分は道を歩いている見ず知らずの人間に暴言を浴びせる恥ずかしい真似はしませんが、全人類平等でラブ&ピースのような思想にも到底成りえません。自身とは意見が異なるだけで、「彼は差別的だ」「あなたは偏見を抱えている」と簡単に判断できる不寛容な現状こそ、多文化共生の難しさを皮肉にも証明しています。

CNN.co.jp : オバマ氏、射殺の黒人少年は「35年前の自分だったかも」 - (1/2)
http://www.cnn.co.jp/usa/35034931.html

オバマ大統領は、「私を含め、多くの黒人はデパートで買い物する時、後をつけられる経験を持つ」と述べ、「多くの黒人は通りを渡っている時、車のドアがロックされる音を聴いた体験も持つだろう」とも続け、「私も、少なくとも上院議員になる前、同じような目にあった」と付け加えた。

という話もありますが、この気持ちは十分に理解できますし、責められることだと考えられません。逆に自分は鞄を預けることなくスーパーマーケットに入れたら、ファスナーが閉まっているか確認し、不審な動作にならないよう気を使います。皆が不審者となれば、鞄は荷物預かり所かロッカーに預けないといけません。

中国の手荷物用ロッカー。


最近でもアメリカで白人警官による黒人青年への射殺事件への抗議から暴動が起きました。アメリカの黒人社会に対する環境は、問題も山積みでですが、それでも人種の垣根を越えて、自ら黒人の大統領を輩出する国ですし、世界を代表するマクドナルドも黒人であるトンプソン氏がCEOとして手腕を揮っています。それは人種なんて大した問題ではなく、単純にその人がやるかやらないかの結果ということですよね。国際結婚も増え、日本でも否応なしにグローバル化は進むでしょうし、そこから活躍していく人には異論を挟みません。日本人であるなら人種にかかわらず歓迎します。

自分は選ぶことのできないマイノリティとして人生の半分以上を過ごしてきました。普通にしていたら分からないので実生活で苦労はしませんが、それでも同じ境遇にいる人たちは少し変わった印象を受けます。ただ、これに対して偏見を持つなとか絶対に言いたくないし、だからこそ自分が何をできるかで示したいと思っています。

高卒で旅を選んだのは自分の責任。


(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
)

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in コラム, Posted by logc_nt

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