取材

ゴジラの名シーンを4K化して見えないモノまで見える「史上最高画質!ゴジラ4Kプロジェクト」試写会&取材会レポート


2014年は1954年に公開された映画「ゴジラ」の生誕60周記念の年であり、ハリウッド版の最新作「GODZILLA」も7月25日から公開されるなど、まさにゴジラの年と言えます。日本映画衛星放送株式会社が運営する日本映画専門チャンネルでは、ゴジラ生誕60周年とGODZILLAの公開を記念して2014年3月からゴジラシリーズ28作品と海外版ゴジラ2作品を1年にわたって放送中で、7月19日には「55時間まるごと総力特集ゴジラ」が放送されます。その中でゴジラシリーズから名シーンを厳選し、オリジナルネガからスキャニングして4K化した特別番組「史上最高画質!ゴジラ4Kプロジェクト」が放送されるとのことで、日本映画衛星放送株式会社で行われた試写会および取材会に行ってきました。

史上最高画質!ゴジラ4Kプロジェクト
http://www.nihon-eiga.com/osusume/godzilla/special03.html


試写会および取材会では、株式会社東京現像所の川俣聡氏と清水俊文氏、そして日本映画衛星放送株式会社取締役の佐藤信彦氏と編成制作部の澤尚志氏が登壇し、「史上最高画質!ゴジラ4Kプロジェクト」について語ってくれました。


日本映画衛星放送株式会社 取締役 佐藤信彦氏(以下、佐藤):
本日はお越し頂きありがとうございます。私どもの「ゴジラ4Kプロジェクト」の意味づけは、放送事業者として新しい技術に密着し次の世代の放送を考え、早い段階で4K、そして8Kの対応を行っていくことに意味があると感じました。4K・8Kということに関しましては、2013年に放送サービス高度化検討委員会が4K・8K放送に関するロードマップを提示しまして、2014年の3月に衛星の4K放送に関する技術的条件が提示され、いわゆる次世代放送推進フォーラムのChannel 4Kを実現する前提条件が作られました。実際に6月からチャンネル4Kの放送は始まっています。放送サービス高度化検討委員会が提示したロードマップの中では、「2014年は4K放送の試験的な段階で、2016年にはもう少し進歩し、そして、2020年の東京オリンピックについては4K・8Kの受信機を世帯の半分くらいまで普及させることが目標である」と示されました。

そんな中で、新規制作について4K・8Kを検討していくのは当然なんですが、時代劇専門チャンネル・日本映画専門チャンネルの2チャンネルは、「新しい技術を使ってアーカイブを契約者のみなさまに楽しんでいただけるか?」ということを大きなテーマとしています。そこで日本で60年間も愛され続けている作品「ゴジラ」を4K化して一番きれいな状態で契約者のみなさまに楽しんで頂くのはどうか、と考え、今回東京現像所と東宝の全面的な協力を得て、「ゴジラ4Kプロジェクト」が実現した次第です。


日本映画衛星放送株式会社 編成制作部 澤尚志(以下、澤):
本日はどうもありがとうございます。ゴジラを2014年に放送するにあたりまして、どのような見せ方をすればよいのか、そういった話し合いが始まったのは約1年前のことになります。ゴジラ4Kプロジェクトのきっかけは2つあり、1つはゴジラ生誕60周年であるということと、ハリウッド版GODZILLAが7月25日に公開されるということ。2つ目は2014年が4K元年であることです。当然ながら1年前の段階では放送がどのような状況になるか、放送に関する仕組みやフォーマットがはっきりしていなかったので、手探りの状況の中プロジェクトは進められました。

4K化に関しては、東京現像所に全面協力してもらい、放送するという意味ではフジテレビジョンに協力していただきました。ポストプロダクションでは株式会社レイに協力していただきました。過去の作品の4K化というのは日本では初めてであり、世界でも初めての試みではないかと思います。簡単な流れで言いますと、総力特集ゴジラは2014年3月に編成がスタートしています。そして、「55時間まるごと総力特集ゴジラ」を7月19日に放送し、その中の目玉として特別番組「史上最高画質!ゴジラ4Kプロジェクト」を放送いたします。


当然ながら、日本映画専門チャンネルは2Kでの放送になるので、放送は4Kリマスターの2Kダウンコンバートとなります。ただ、ネクストTVフォーラムと相談させていただき、4Kの放送も実現したいということで7月25日にはChannel 4Kで放送します。ひかりTVにも協力していただき、各NTTの施設になりますが、4Kでの配信・放送を予定しています。また、今後は今回の番組の反響をみながら、最終的には4K放送を視聴者のみなさまに身近に感じて頂きたいと思い、「過去のゴジラシリーズを4K化」ということも考えております。映画と言う意味では、他にも名作が多くありますので、各社と相談しながら過去の映画の4K化にトライしていきたい意志でございます。

株式会社東京現像所 営業統括部 清水俊文(以下、清水):
東京現像所の清水と申します。本日はよろしくお願いします。今回「史上最高画質!ゴジラ4Kプロジェクト」をいただきまして、弊社は常日頃からゴジラのリマスターを制作していることもあり、これは気合を入れて取り組まさせていただきたいと強く思いました。まず、一番最初にこだわったのは、オリジナルのゴジラからどれだけの情報を引き出せるかということです。ゴジラ28作品のオリジナルネガを東宝から提供していただき、その中から名場面をチョイスして4Kスキャニングの作業をしました。


4Kのスキャニング作業を通して感じたのは、フィルムの歴史に触れている、ということです。ゴジラは白黒から始まり、カラー化して、画面サイズが変更されたり、デジタルが入ってきたり、作業を通してフィルムの歴史を感じることができました。


特に、カラーフィルムになってからの作品を4Kで見ると、画質があからさまに向上していることがわかります。最初はゴジラシリーズを4Kにすると、どのくらいの画質になるのか、大変興味があったのですけど、作ってみて初めて驚いたことがたくさんありました。


例えば、1作目「ゴジラ」に登場する山根博士のネクタイの柄まで分かったり、周りの山とか建物の質感やキングギドラのうろこが1枚1枚よく見えたり、特撮に使用されているピアノ線まで見えたり、本当にさまざまのものがよく見えるんですね。すごい本数のピアノ線が使用されているはずなのに、4K化してもこれだけしか見えないというのは、ピアノ線を見えないように工夫する当時のスタッフの努力やアイデアのすさまじさを感じさせてくれます。今回のプロジェクトを通して、4Kの持つ力を感じましたので、これからも4K化作業を続けていきたいと思います。


◆いよいよ4K試写会開始
登壇者のあいさつが終了すると、いよいよ試写会が始まりました。試写会の様子を掲載することができませんが、ゴジラが海から登場するときの水しぶき、ゴジラを含め登場する怪獣の皮膚の質感など、本当に細かいディテールまでよく見えます。東京現像所の清水氏がおっしゃっていた通り、特撮用のピアノ線が見えるのですが、本当にうっすら見える程度で、当時の技術の高さがうかがえます。

レストア前(フィルムの傷、汚れ、退色痕が目立つ状態)


レストア後(傷、汚れ、退色痕がなくなり、非常に細かいゴミもすべて除去)


グレーディング前(全体的に緑がかっている)


グレーディング後(緑被りが抑えられた状態に)


グレーディング前(コントラストが乏しい)


グレーディング後(黒が沈んだ感じに)


「史上最高画質!ゴジラ4Kプロジェクト」の放映時間は28分と長いものではありませんが、過去のゴジラ28作品の名シーンが、これでもかというくらい詰め込まれていて、視聴後はおなかいっぱいといった感じ。往年のゴジラファンの人は懐かしいゴジラや他の怪獣が4Kで復活することに感動すること間違いなし。また、ゴジラを見たことのない人も、「史上最高画質!ゴジラ4Kプロジェクト」を通してゴジラの歴史、そして、移りゆくフィルムの歴史を学べる内容になっています。


◆質疑応答
「史上最高画質!ゴジラ4Kプロジェクト」の試写会が終わり、質疑応答が始まりました。

東京新聞 :
白黒のフィルムは4K化に向いているかどうかというあたりはいかがでしょうか?

清水;
白黒のフィルムを4K化して感じたのは、フィルムの潜在能力の高さに気づかされました。映画館やテレビで放映しても、フィルムの能力を全て出し切れていないと感じたんですね。作業をしていると、白黒フィルムは4K以上の能力を持っていると。白と黒の情報だけなんですが、ディテールの細かさといった部分が、4K化すると非常にきれいに出てくるということがわかりました。4Kというのは、過去のフィルムのアーカイブという意味でも重要になってくるのではと思います。


東京新聞:
4K化にあたってコストはどれくらいかかりましたか?相当なコストがかかっていそうに見えました。

澤:
具体的には言えないのですが、相当かかっています。SDをハイビジョン化する際にも素材を作るのにかなりかかりましたが、4K化はハイビジョン化の倍以上かかっています。というか、比べものにならないくらいかかっています。

東京新聞
番組内でも述べられていましたが、4K化に当たってこれから技術的に超えていかなければならない壁とは何でしょうか?

株式会社東京現像所 映像部 川俣聡(以下、川俣):
データ化という部分に関しましては、現在の技術で十分可能なんですけれども、そこから最後のブラッシュアップまでのインフラ部分は弊社の機材ではかなり時間がかかりました。この先時間をかけずに作業するには機材関係もそうですし、最終的な出口が明確になっていないので、そういった部分を今後どうするか、考えていかなければなりません。


読売新聞:
4Kになることで画像が鮮明になるのはわかるのですが、頂いた資料には「滑らかさもあがる」とあります。これはどういう理由からでしょうか?

清水:
粒子が細かくなるのが分かることによって、ザラザラの部分がより見えてくるんです。例えば、人の肌とかですね。言い方が悪く聞こえるかも知れませんが、肌のきれいな人は、肌の滑らかさが浮き上がってくるということです。反対に化粧が理由でザラザラした肌とかは、その肌感がかなりキレイに見えることになります。4Kにしてみたときに、全てを見せていいのか、あるいは隠したほうがいいのか、そういったことがこれからの課題だと思います。動きに関しては1秒24コマで統一されているので、滑らかさが変わるといったことはありません。


長谷川:
フレームレートについて確認させてくだい。先ほどおっしゃられた通り、映画は1秒間24フレームだと思いますが、4Kは60もしくは120フレームと聞いています。「史上最高画質!ゴジラ4Kプロジェクト」の映像は60フレームになっていないのでしょうか?

澤:
映像は60フレームになっています。ですので、動きも滑らかになっていると思います。

長谷川:
先ほどの話では24コマとおっしゃっていたんですけども、これは24コマに足りない部分を追加して60コマにしている、と理解してよろしいでしょうか?

澤:
そのとおりです。

長谷川:
コマとコマの間に何か作成したものを入れたということですか?

清水:
作るということはしていないです。最初の1コマ目は2コマ使う、2コマ目は3コマ使うという形で、同じコマを増やすような方法で60コマにしています。

澤:
フィルムとしては24コマなので、その部分は4K化しても変わらないですが、4K放送では24コマを60コマにしているので、放送上の滑らかさは出てきます。


長谷川:
先ほど白黒フィルムでも4Kにしたことによってフィルムの潜在能力を引き出せた、とおっしゃっていましたが、フィルムの潜在能力を100%引き出せたのでしょうか?

清水:
フィルムの時代ですとか種類によっても変わってくるのですが、白黒の場合は4K化することで情報を引き出せているのかと思いますが、まだ眠っている情報もあるのかな、とも思います。というのも、カラーフィルムの場合は6K以上の能力を持っていることが分かっていますので、白黒フィルムもまだ掘り起こせる部分があるかもしれません。

長谷川:
ゴジラシリーズ全作品を4K化する考えがあるとおっしゃっていましたが、いつぐらいを考えていらっしゃいますか?後、最初から4Kカメラでゴジラを撮影して映画を作るということは考えていらっしゃるのですか?

澤:
4Kカメラでゴジラを撮影して映画を作るといったことに関しては、4Kの新しいゴジラを見てみたいという思いはありますが、映画制作にあたっては東宝さんの管轄であり、我々としては何とも言えません。ゴジラシリーズ全作品4K化のタイミングは、一般視聴者の4Kに関する環境が整い次第というところでしょうか。私どもが独断で決められることではないのですが、基本的には来年トライしたい、という意志はあります。


毎日新聞 モチヅキ:
「史上最高画質!ゴジラ4Kプロジェクト」の中身についてなんですが、あえてハイビジョンとの対比を描くシーンを作らなかったのは理由があるのでしょうか?後、4Kスキャニングの機材は東京現像で準備されたのか、それとももともとあった機材を使用したのでしょうか?

澤:
実は、Channel 4Kで4K放送を実現できるかどうか、分からないまま番組制作が進んでいたんですね。かつ、日本映画専門チャンネルは2K放送を行っています。4K放送上でハイビジョンと4Kを対比すると非常に分かりやすいんですけども、ダウンコンバートの2K放送では少しわかりにくくなり、視聴者の方が混乱されるかもしれないので、あえて取り入れませんでした。

川俣:
4Kスキャニングの機材に関しましては私が回答させていただきます。今回スキャニングに使用した機材は、新たに設備投資したのではなく、10年前に購入したものです。

モチヅキ:
8Kスキャニングも可能でしょうか?

川俣:
残念ながら8Kは不可能になっています。6Kまでのスキャニングは可能なんですが、最後のブラッシュアップが非常に大変な作業になります。

東京新聞:
どういった作品が4K化に向いているとお考えでしょうか?例えば、ゴジラのような特撮映画なのか、それとも俳優が出演しているドラマなのか、それともアニメといったジャンルなのか。

清水:
どういうジャンルの作品が4K化に向いているかは考えたことがありません。実はフィルムというのは劣化が始まってまして、放っておいてしまうとネガが使えなくなってしまう状態の映画も多いんです。ですので、今のうちにデジタルデータにして未来に残していきたいと考えています。

澤:
映画の4K化についての視聴者の方からの問い合わせが最も多いんです。ですので、4K化が求められているソフトというのは映画ではないのかな、と感じます。


なお、特別番組「史上最高画質!ゴジラ4Kプロジェクト」は日本映画チャンネルで2014年7月20日22時50分から、Channel 4Kで7月25日18時30分から放送され、Channel 4Kでは再放送が7月28日18時30分から放映されます。また、ひかりTVでは7月下旬ごろに放送される予定です。

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in 取材,   映画, Posted by darkhorse_log

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