謎の国オマーンを旅してアラビアのお城「ニズワフォート」に魅せられた
オマーン国。その国名から話題には上がるけれど、何だかよく分からない謎の国。サッカー日本代表とよく試合をしているイメージですが、皆さん何かご存知でしょうか?世界一高いビルを建てたアラブ首長国のドバイ、FIFAワールドカップの誘致に成功したカタール、湾岸戦争の舞台となったクウェートと周辺国と比べてみても、あまりニュースには出てきません。
こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。ドバイからバスが出ていたので、謎の国・オマーンも旅してきました。近代化されたドバイから来ると、オマーンの街は素朴でイスラム色を強く感じます。日本ともヨーロッパとも全く違うお城「ニズワフォート」も素敵でした。
◆バスで移動
旅行者を受け入れないサウジアラビアがあるため飛行機を使うことが多かった湾岸諸国の旅で、唯一陸路で国境を越えたのがアラブ首長国連邦のドバイからオマーンの首都マスカットまでのバスでした。
乗車券は片道55ディルハム(約1500円)、宿泊は高いのに移動は安いのです。
バス停ではなく「Oman national transport co」チケットオフィスに朝6時半集合で、7時出発。そこから7時間バスに揺られました。
こちらがマスカット行きのバス。
◆マトラ地区
日本の約85%に相当する国土を持っていながら、横浜市より少ない約330万人しか住んでいないオマーンという国。その首都マスカットは官庁街の「オールドマスカット(Old Muscat)」、商業地区の「ルイ(Ruwi)」、港町の「マトラ(Muttrah)」と、3つの市街地に分かれています。ドバイからのバスはお昼過ぎにルイ地区へに到着。安宿があるということで、そのままマトラ地区に移動しました。
海と白い建物とモスクが織り成す異国情緒。
弧を描いた湾に沿った一帯が賑わっています。
平坦だったドバイと比べると、起伏と岩山が景色に変化を与えてくれました。
街を見渡す高台に造られた砦。
猫も遊んでいる港町では、何も急ぐ必要もなく、和やかな空気が流れています。涼しくなる夕暮れ時に、外で男たちが和気あいあいとお茶を飲む光景は、とても穏やかでした。
猛威を振るった太陽が沈んだら……
街が賑やかに変わります。日中は暑すぎるので、人々はあまり活動していません。
ただ日が暮れるとこの通り、スーク(市場)も大勢の人で賑わいます。
休日にあたる金曜の夜もあってか、渋滞が発生するほどでした。
事前にインターネットで「AL FANAL HOTEL」「CORNICHE HOTEL」というマトラ地区の安宿を調べていたのですが、潰れてしまったのか営業していません。そういうことで今回は「NASEEM HOTEL」というホテルの、16.350リアル(約4450円)の部屋に3泊しました。湾岸諸国は安宿が見つかりません。
冷房に冷蔵庫、トイレ・シャワー付き。ロビーでWi-Fiが利用可能。
◆ニズワフォート
オマーンにおける旅の目的はアラビア様式のお城「ニズワフォート」を見学することでした。男子たるもの、お城には興味津々。お城のあるニズワまでの約200kmは、往路は路線バス、帰路はシェアタクシーでした。
オマーンは路線バスの代わりに、ミニバンみたいな車が走っていて、これが庶民の足として機能しています。それに乗って0.100リアル(約30円)で港のマトラ地区から、ルイ地区に移動。ドバイからのバスが到着したバスステーションに寄ると、少し待てば1.900リアル(約520円)のニズワ行のバスがあるようなので、それに乗り込みました。
ニズワに到着するとすぐに、このような景色が飛び込んできます。
ドーンとかっこい円形型のお城に、いやが上にも高まる期待。
こちらが入口。受付で0.500リアル(約135円)の入場料を払います。
受付に我が物顔で居座る猫。
こちらがお城の全体図。
階段を上ってみると……
建物外の屋上へ。いろんな箇所が繋がっているので、ダンジョンを攻略するように探索できました。
西洋の城に比べると目立ちませんが、逆に落ち着いた「無」にも近い雰囲気も、侘び寂びを感じていいですよね。
すっきりとした中庭。
井戸。
効率よく水を使うシステム。
屋内にはベッドもありました。屋外は暑くてクラクラしそうですが、室内は乾燥していることもあってか過ごしやすいです。
テレビゲームの中に出てくるようなアイテムが展示されていて感激。
鮮やかな民族衣装。
最後は、円形の建物に上ってみます。
子どもたちが走り回って遊べるくらいに広い屋上です。
大砲。
階段を上るとニズワの街が一望できます。
玉ねぎのようなモスク。
幹線道路。
椰子の木が茂る光景は、ここがオアシスだと実感させてくれました。
屋上に設けられた不思議な穴の数々……。
かなり下の方まで、繋がっています。
これは敵襲の際に沸騰したデーツシロップをかけたり、石をぶつけたりする、防御の要となっていました。
ニズワの他にも周囲一帯にはルスタク、イズキ、そして世界遺産にも登録されているバハラと4つの城塞が存在しています。
◆ファラジ・ダリス
お城のひと通りの見学を終えた後は、近くにある「ファラジ・ダリス(Faraj Daris)」と呼ばれる灌漑システムの用水路を訪れました。周囲一帯が乾燥している中で、命の水を確保するために作り上げた、ここに生きた人たちの苦労は計り知れません。
こちらは世界遺産になっていました。
一帯は公園として整備されていました。お昼過ぎのハイパー日射タイムなので遊んでいる人の姿はありません。
公園の端を流れていた用水路。
階段もあるので、下に降りることもできます。照りつける日差しの中、足をつけるとヒンヤリして生き返りました。
澄み切っているので、お魚さんが気持ちよさそうに泳いでいます。
公園を離れると、用水路はコンクリートで固められた姿に。
ところどころに開いた穴をのぞくと、ちゃんと水が流れていました。
一帯は、このように乾燥している厳しい土地。
帰路は地元民とタクシーを3人でシェアして、3ディナール(約820円)を払ってマスカットへ。ミニバンを乗り継いで、マトラ地区の宿に無事帰宅。勝手の分からない土地に不安でしたが、自分でも観光することができました。
“謎の国”オマーンの実態が少しでも伝わって頂けたでしょうか?湾岸諸国で一番暑かった国ですが、その分だけ街も人も穏やかで、落ち着いた雰囲気が忘れられない国でした。
(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak)
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