大卒・高卒・中卒など最終学歴によってその後に移り住む場所に大きな違いがあることが判明

By Ralph Daily

世界には優秀な人材が好んで住む都市が多くあり、国や都市の発展のためにも優秀な人材を引きつける魅力は都市形成において欠かせない要素の1つです。多くの大都市がさまざまな場所に点在するアメリカでは、都市ごとに大学や大学院、専門学校、高等学校などの卒業者の流入数や流出数が違うということで、世界中の都市のさまざまなデータを調査しているMartin Prosperity Instituteのリサーチチームが、アメリカの主要都市の学業達成別人口流入数と流出数の差について調べたデータを公開しています。

High-School Dropouts and College Grads Are Moving to Very Different Places - CityLab
http://www.citylab.com/work/2014/06/high-school-dropouts-and-college-grads-are-moving-to-very-different-places/372065/

人口の流出と流入の関係を表わす用語に「純移動」というものがあります。純移動は、ある地域における人口の流入数と流出数の差を表わしたもの。下記の地図はアメリカにおける都市の純移動を円グラフで示したもので、円が大きいほど純移動の数値が大きいことを示し、円が紫のところは純移動がプラスで、円が灰色の場所は純移動がマイナスを意味しています。全体をザッと見てみると、アメリカの南部では純移動がプラスの都市が多く、反対に東海岸では純移動がマイナスの都市が多いようです。

下記の棒グラフはアメリカの主要都市における純移動を学業達成別に表わしたもの。グラフの水色は大学院もしくは専門職学位課程を修了した人、紫色は大学卒業者、黄緑色は専門学校もしくは短期大学卒業者、赤色が高等学校卒業者、青色が中学校卒業以下の純移動を示しています。

上記の棒グラフから特徴のあるものをいくつかピックアップしてみました。アメリカの東海岸に位置するニューヨークは、世界各国から移民が多く集まり、人口はアメリカで最大です。しかしながら、学業達成別の純移動を見てみると、全てがマイナスになっており、特に高等学校卒業者の流出がかなり多いという状況です。

電子機器・半導体・宇宙産業などの最先端工業が発展しているロサンゼルスでは短期大学・専門学校以下の卒業者の流出が目立ちますが、大学卒業者が多く移り住んできていることがわかります。

アメリカでも有数の経済および金融の拠点となっているシカゴですが、学業達成別の純移動は全てマイナスという結果。

ダラスは情報・エレクトロニクス産業が市経済をリードしている都市です。大学院の卒業者と短期大学・専門学校卒業者の純移動がプラスになっています。

名門ペンシルベニア大学や工学系に強いドレクセル大学を抱える学術都市としての一面を持つフィラデルフィアは、全ての学業達成カテゴリにおいて純移動がマイナス。名門大学の卒業生を多く輩出しても、他の都市に引っ越されてしまっているようです。

世界的に有名な観光都市のマイアミは、IC・コンピュータ・電子部品産業がさかんでシリコンコーストと呼ばれる地域です。短期大学・専門学校卒業者以上の純移動が総じてプラスになっています。

アメリカの国の機関が多く集まるワシントンは大学院および大学卒業者、高等学校卒業者の純移動がプラス。

ヒューストンは工業およびビジネスという2つの特徴がある都市で、純移動は全てプラス。

アメリカ南部の商業・経済の中心地であるアトランタ。短期大学・専門学校・高等学校卒業者の純移動がプラスです。

100を超える単科・総合大学を抱えるボストンですが、高等学校以上の卒業者の流出が激しく、優秀な学生を輩出しても他の都市に移住されてしまっています。

ハイテク産業と起業家が集まる都市サンフランシスコ。大学院および大学卒業者の流入数が流出数を大きく上回り、純移動はプラスになっています。反対に、高等学校および中学校卒業者の純移動はマイナスという結果に。

アメリカでは最終学歴によって、現在地にとどまるか、環境の変化を求めて違う都市に移り住むか、大きな差がありました。また、それぞれの都市においても、最終学歴による人口移動の特徴がはっきりしています。日本では「上京する」という言葉があるとおり、学生は卒業後地元を離れて東京に行くことがありますが、実際は一体どうなっているのか、気になるところです。