便利なオープン工作スペースをもう1段階上のレベルにするアイデアとは?
「完成品を買うのなら自分で作ってしまおう」という人たち向けに開かれているオープン工作スペースは、個人所有が難しい工作機械を置いてあることが海外で人気を博し、日本でも徐々に認知されはじめています。海外では「maker space」と呼ばれているこのサービスを、さらに発展させて使いやすくしようというアイデアが「seeing space」で、さまざまな分野のクリエイターが集まってアイデアを共有するEG Conferenceにおいて、考案者がプレゼンテーションを行ない、その詳細を明かしています。
Seeing Spaces on Vimeo
こちらは「seeing space」のプレゼンテーションを行なう、考案者のBret Victorさん。
スライドショーに表示されたのは、デベロッパーがアニメーションを製作中の画面。
デベロッパーが作業しているスペースは、目で見て触れることができる物質世界ではないとのこと。
デベロッパーたちは、小さなPCの中のスペースを使って作業をします。
一方、目で見て触れられるモノを開発するには、ある程度の大きさの空間が必要。
さまざまな調理器具のそろった調理場という空間があるからこそ、おいしい料理が作られるわけです。
ただし、個人が開発や製作、調理などに必要な道具を所有するには限界があります。そういった人たちのために存在するのが「maker space」です。
maker spaceは、「自分で何か作ろう」という人が集まる場所。
個人所有の難しい高価な機械をそろえてあるので、DIY好きから好評を得ています。
椅子や自転車といったモノなら、maker spaceで作成可能です。
ただし、人間と話せるロボットといった複雑な機械を作成するのは難易度が高め。
どうしてかというと、ロボットやドローンなどは、開発者が機械の中で何が起こっているか、正確に理解する必要があるからです。
例えば、明るい光に反応して、その場所に移動するロボットを開発したとします。
しかしながら、実際に開発したロボットが正常に動作しなかった場合、開発者は「なぜ、ロボットが光に反応しなかったのか」「その時ロボットの中では何が起こっていたのか」を徹底的に観察して調べなければいけません。
世の中には、機械の中で実際に起こっていることを観察する職業があります。
NASAは、宇宙空間を飛んでいるスペースシャトルの内部で何が起こっているのか、常に異常がないか観察しコントロール。
「こういった、機械の内部を観察する行動とmaker spaceを組み合わせた空間があれば、技術者やクリエイターにとって大きなメリットになります」と語るVictorさん。
それこそが、Victorさんの提唱する「seeing space」という新しい形のサービスです。
seeing spaceのイメージはこんな感じ。
seeing spaceは「seeing inside(内部を観察)」「seeing across time(時間軸から観察)」「seeing across possibilities(あらゆる可能性を観察)」という3つのコンセプトで構成されています。
seeing insideは、開発中のロボットの内部で発生している事をデータ化して転送するというもの。
転送されたデータを大きなスクリーンや作業台に映しだすことで、ハードとソフト面での作業を効率化できます。
seeing across timeは、開発中のロボットの動作を全て記録して、データを閲覧したり、比較したりすることが可能。最新のデータで異常部分が見つかれば、過去のデータと照らし合わせて、原因をしらべることができるというわけです。
さまざまな設定でテストしたデータを並べて、どの設定がベストパフォーマンスを引き出す可能性が高いのか、一発で判断できるのがseeing across possibilities。光に反応するロボットで例えるなら、あらゆる光の強さでテストした結果を全て表示させて、ロボットが最も適切に動作する光の強さを調べる、といった使い方ができます。
Victorさんが提唱するseeing spaceは、3つのコンセプトをリアルタイムで行えるのが特徴とのこと。テストと並行してデータをディスプレイや作業台に映しだせば、作業時間は短縮し、部屋を移動したり、PCでデータを閲覧するといった手間が省けます。
Victorさんは「seeing spaceを開発するには多額の費用がかかるでしょう。しかしながら、高額な開発費用に関してはmaker spaceの『高価な機材をみんなで共有する』という考え方が解決してくれます。技術的に実現するのは不可能だ、という人がいるかもしれませんが、スペースシャトルや3Dプリンタなど、不可能と思われていたモノが実現されており、seeing spaceも実現可能ではないでしょうか」と、自らの展望を語っていました。
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