オープンオフィスがもたらす弊害と、その原因とは？

By suanie

広いフロアに一堂に会するオフィスルームのスタイルは「オープンオフィス」と呼ばれ、大企業などで一般的ですが、このスタイルがさまざまな弊害をもたらす危険性が指摘されています。オープンオフィスの弊害とその原因とはいかなるものでしょうか。

The Open-Office Trap : The New Yorker
http://www.newyorker.com/online/blogs/currency/2014/01/the-open-office-trap.html

オープンオフィスは、チームのコミュニケーションを活発にしチームワークを高める目的で、1950年代にドイツのハンブルクで最初に取り入れられたと言われています。その後、オープンオフィススタイルは、先進的なイメージもあって世界中で大流行し、企業だけでなく学校などでも採用されました。

◆オープンオフィスの弊害
しかし、オフィスルームの配置をオープンオフィススタイルに変更したカナダの石油関連企業の従業員を調査した、カルガリー大学の心理学研究チームの研究では、意外な結果が出ました。研究チームは従業員の満足度・ストレスレベル・生産性・対人関係について、引っ越し以前、引っ越し4ヶ月後、引っ越し10ヶ月後の時点でそれぞれ調査したところ、引っ越し後は引っ越し以前に比べて全ての要素で悪化したことが確認されました。従業員は新しいオープンオフィスについて、以前よりストレスが多く、同僚との親近感が失われたと感じ、生産性も落ちていたとのことです。

さらに、2011年に心理学者のマシュー・デイビス博士がオフィス環境に関するこれまでの研究を再検討したところ、オープンオフィスは、広々とした空間が革新的な企業であるかのように従業員に感じさせることで企業への忠誠心を高めることがある一方で、労働者の注意力の範囲を狭め、創造的思考や満足感ならびに生産性を減少させることが分かりました。また、高いストレスのため集中力が低下し仕事へのモチベーションも減退することが判明し、悪いことにこの傾向はより上級の従業員ほど顕著であることが明らかになったそうです。

◆プライバシー

By emmavvalentine

この様な、オープンオフィスがもたらす弊害については、心理学的見地からは「プライバシー」との密接な関連性が指摘されています。心理学的には、適度にプライバシーが守られていると感じるときに人間の能力が高まると考えられているところ、オープンオフィス環境ではプライバシーが十分に確保されないため、ストレスが発生し生産性の低下が生じるというわけです。

また、心理学上、人間は物事を自分でコントロールできないことを認識した場合に無力感を抱き、結果としてパフォーマンスが悪くなるとされています。オープンオフィスでは照明や室温はフロア全体で一律であるため、職場環境を変更・調整できないという点でコントロールの幅が狭いため、従業員の無力感を生み出し生産性の低下が生み出される可能性があるということです。

◆騒音

By Bart

オープンオフィスが弊害を生み出す原因については、前述のような心理学的影響以外にも、物理的な影響も指摘されています。それは、オープンオフィス環境では「騒音」に関する悩みを避けることができないというもの。

ニック・パーム博士によれば、雑音と認知能力との間には相関関係があり、オフィス内の喧噪が情報処理能力や計算能力を害するとのこと。また、コーネル大学のゲーリー・エバンス博士とデイナ・ジョンソン博士による共同研究では、オープンオフィスで3時間雑音にさらされた事務職員は、いわゆる「闘争か逃走か反応」に関連するアドレナリンレベルの上昇が確認できました。つまり、オフィスでの騒音によって恐怖心にも似たストレスを感じることが明らかになったということです。

また、騒音は複数の仕事を同時並行で行うという「マルチタスク」にとって悪影響を与えます。スタンフォード大学のアンソニー・バーグナー博士によれば、重度のマルチタスカーは自分と関連性の小さい出来事への対応能力が低く、また外的影響を受けやすいことが分かっているところ、オープンオフィス環境では同僚から仕事を邪魔されることが多くマルチタスカーの作業効率が非常に悪化してしまうということです。

近年のIT化によって若年層ほどマルチタスカーの傾向にあり、皮肉なことにそのような若者ほどオープンオフィスに憧れそのような環境に身を置きたがるそうです。しかし、オープンオフィス環境はマルチタスカーにとっては生産性を低下させる危険が潜んでいるということです。