Instagramを利用して銃を売ることは合法なのか?
by Andrew Kitzmiller
画像を加工・共有できるアプリInstagramではただ単に写真を閲覧するだけでなく、自分で商品の写真を投稿して購入者を募集するショッピングツールとしても使われており、Instagram内の商品を簡単に検索できるHashbagというフリーマーケットサービスも登場していますが、その中で問題となっているのが銃販売の問題です。
People Are Using Instagram to Sell Their Guns...and It’s Mostly Legal - The Daily Beast
http://www.thedailybeast.com/articles/2013/10/22/people-are-using-instagram-to-sell-their-guns-and-it-s-mostly-legal.html
Instagramは銃火器の販売を禁止する旨を明記しておらず、個人や広告・交渉・販売を行うプロのディーラーによって火器が一般的に販売されています。銃火器は「#rifle」「#ar15」「#forsale」といったタグを検索することで誰でも簡単に見つけられ、「状態良好」といったメッセージと共にアンティークのコルト・ファイヤーアームズ製ピストルやカスタムされたSPR Mk12、ヘッケラー&コッホ社のHK416などを購入することができます。その種類は短銃、散弾銃、攻撃用ライフルまでさまざまです。
Instagramでの銃販売の典型的な形はこうです。まず、売り手が写真と共に「LWRC社の銃を販売中! AAC サプレッサー・エルゴグリップ、Magpul社のPMAG、バンジースリング、砲弾付き、興味がある人はメッセージを送って下さい!!!」という文章を載せます。するとコメントで取引が展開、「すばらしいセットアップだ」とユーザーが言い、「全部で3000ドル(約30万円)でどうだ」と売り手が返信します。そこからは表だった交渉ではなく、メールや電話など、個人的なやりとりになり、年齢確認は売り手の気分に左右されてしまいます。
アメリカの連邦法はオンラインでの銃火器販売について規制しておらず、個人間の売買で禁止されているのは買い手が連邦火器免許状所持者から銃火器を購入している場合です。また、既存の商品販売サイトと異なりInstagramは火器の販売について明言しておらず、またユーザー同士のやりとりを監視してもいません。他者を傷つける意図を持った発言ではないため、写真の投稿はポリシーに反するものではなく、さらに非常に複雑なオンライン上の銃販売についての法律に照らし合わせてもユーザー間の火器販売は完全に合法です。アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局は個人間の銃の売買について適応されず、囚人や亡命者・薬物中毒の人に銃を販売しない限り何の問題もありません。つまり、どんなに議論になろうとも、銃規制擁護派が心配しようとも、個人間の銃火器の売買は法律で禁止や管理がされていないのが現状なのです。
これには懸念の声があがっており、州によっては銃の販売を許可制にしたり、売買に素性調査や記録を必要としたりするところも出てきました。一方どんなに州法で取り締まっても連邦法のもとでは合法であり、Fix Gun Checks Act of 2013では連邦レベルで個人間の銃火器の売買に関する抜け穴を是正しようという動きがありましたが、議会はこれを否決し、オバマ大統領は「ワシントンにとって恥ずべき日だ」とコメントしました。
司法省のスポークスマンであるAllison Priceさんは「インターネット上における銃火器の販売を禁止する法律は連邦法には存在せず、またソーシャル・アプリケーションを使った銃火器の販売は無許可の売人がチェックなし・匿名で銃を販売する新しい手法です。この抜け穴にはより普遍的な売り手の素性調査が必要です」と語りました。
by Alexandre Gloria
2011年に行われたニューヨーク市の調査によれば、インターネットで銃を個人販売している人の62%が「素性調査なしで問題ない」と言うバイヤーたちに合意しているとのこと。また、銃の販売を規制する多くの商品販売サイトのポリシーにも関わらず、82%の購入者は違法にやりとりをしていたそうです。同レポートは「銃の売買を許可している販売サイトは売り手と買い手の透明性を要求し、他のユーザーに対して疑わしいやりとりの報告を促進し、禁止されているものは削除すべき」と勧めています。
Instagramの話に戻ると、Instagramは「自由」を強い信念としており、ユーザーはファーストネームの公開を求められるだけで法律の遵守と自身の監視はコミュニティーが行うものだというスタイルです。実際にInstagramで銃を販売しているMikeさんは「私は物を販売するごとに法律を調べます。Googleで検索するだけですから。たった10ドル(約1000円)のために人生を10年も20年もフイにしたくないし、選挙権も失いたくない。それに最も重要なことには、お金の話ではなく、私は規則を厳密に守るということです」と語っています。また、同様にAR-15 ピストルを販売しているDannyさんは「私は銃火器を扱う責任あるオーナーで、そうでない人に巻き込まれないためにも、個人的な販売でも違法な銃を扱いません」としています。
しかし、法律に従うことを望んでいる売り手がいる一方で、そうでない人が存在するのも確か。2013年の8月にはInstagramやYouTubeで銃を販売していたラッパーが、ニューヨーク市史上最大の銃告発で逮捕されました。特別麻薬検察官のBridget Brennanは「あれはあきれるほど滑稽でした」と語ります。「彼らには自分が行っていることの暴力性や混乱を起こしていることに対する考えがなく、ただお金のためなのです。連邦レベル、あるいは州レベルの銃規制の法律が弱いために、市民の安全な生活に対する影響は大きくなってきています」
インターネットの浸透によってこれまでになかった新たな問題やその犯罪の手法はどんどん増えていますが、Instagramにおける銃の販売もその1つ。スターバックスのCEOが自らのブログで「銃や火器類をスターバックスに持ち込まないようにして欲しい」という意見を表明したように、州法・連邦法レベルだけでなくサービスを提供する側でも手を打つべきという見方もありますが、「写真」を扱うInstagramではライン引きが複雑になり、銃の扱いの規制を行うのは難しそうです。
by John Fischer
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