危険なニュースだけでは伝わらないメキシコの今を生きる人たち

周囲のすべての人々がスペイン語の先生で、しかも授業料は必要ありません。メキシコでの地元民とのコミュニケーションは生きたスペイン語の勉強でした。「ドンデビエネ(どこから来たの?)」「ドンデバ(どこに行くの?)」と尋ねられる毎日。「写真を撮らせて欲しい」と頼まれたら断れません。メキシコの人たちは陽気というイメージ通りにノリも良くて、気がつけばついつい話し込んでしまいました。
安宿の場所を尋ねたメキシコのお兄さん。一生懸命に道順を説明してくれる途中で「ワンピース服の女の子が通った」かと思えば説明も止まって、目で追いかけています。その後に平然な顔して、話を続けるのには思わず噴出しちゃいました。「いやいや、素敵な子が通ったから」という言い訳に苦笑い。こんな感じなのですから楽しくない訳がない。
こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。昨年の12月19日から今年の3月15日まで86日間に渡ってメキシコを旅しました。オーストラリア、中国の次に多い4771.27kmの距離を走っています。ずっとメキシコをまとめてきましたが、それもこの記事で最後。メキシコでの出会いには感謝しないといけません。
◆旅について
「サボテンだらけの世界、日本人には想像もできないアリゾナとメキシコの旅」とメキシコ北部はサボテンばかりでしたが……

メキシコ南部になると鬱蒼としたジャングルに変わりました。

メキシコ以南の国々はスペイン語が公用語という国ばかりです。笑って誤魔化すしかできなかったスペイン語も、旅が進むに連れて「値段の確認」「道の尋ね方」「食事の頼み方」「宿の泊まり方」と日常会話を覚えていきました。こればかりはメキシコを抜けた今でも勉強の毎日なのですが。
氷=HIELOは、日本語の「冷えろ」を連想させます。

アメリカのアリゾナ州からメキシコのソノイタに入るとショッキングな光景が広がっていました。汚い家屋がならんで、ゴミゴミした人通りに「何じゃぁこれは!」と逃げ出したら、次の街までの距離が100km以上。国境の変化は衝撃的でした。それでも旅を進めるに連れて、次第にメキシコの空気に慣れていきます。
メキシコ最初の大きな街がソノラ州の州都であるエルモシージョ。

マサトランは太平洋側にある港湾都市。

お酒でも有名なテキーラの街のテキーラ火山。

世界遺産の都市ケレタロには18世紀の水道橋が残っていました。

「「ハクション大魔王の壺」やフィギュアっぽい古代メキシコ文明の発掘品」でも紹介したテオティワカンの遺跡。

メキシコ最高峰であるオリサバ山(標高5636m)は、日本の富士山と同じ成層火山。美しい裾野の広がりが目を惹きます。

カリブ海湾岸のシウダー・デル・カルメンに架かる「Zacatal Bridge」は内海を挟んで細い砂州に繋がっていました。

ユカタン半島の高級リゾート地カンクンの青く透き通った海。、

「メキシコの食事情は美味しさを追求を重ねまくっていて充実しすぎ」とメキシコ料理を食べては……

「世界中で見てきたコカ・コーラのすべてはメキシコにあった」とコカ・コーラに手を伸ばす毎日。

「メキシコ風ゆるキャラから理解できないオブジェクトまでアートを愛するメキシコ人の才能が凄い」と滞在中にはメキシコ人の感性にも魅せられていました。

メキシコに入ってからは安宿に泊まることが増えました。この宿を見つけるには街の中心部にある「カテドラル(大聖堂)」を探さないといけません。そこが商業地域として賑わっていて安宿もあります。このカテドラルの隣は公園となっていて、地元の人たちがのんびりすとする平和な場所でした。夜になっても賑やかです。
メキシコ第二の都市であるグアダラハラのカテドラル。

こちらのカテドラルはナヤリット州の州都テピック。

メキシコシティのカテドラルは首都ともあって威厳を感じました。

ユカタン半島の中心都市メリダのカテドラル。

このカテドラルに隣接する公園には、緩やかな時間が流れています。ベンチに座ったカウボーイハットの男性たち。

夕暮れ時に遊ぶ子ども。

暗くなっても賑わうカテドラルの周り。

子どもたちが無邪気に遊んでいたり。

メキシコ人の平和な日常がありました。

「メキシコは「修羅の国」という噂の通り危険な国でした」の通り、アメリカに比べたら不穏な空気は怖かったのですが、暗くなっても人々が賑わう余裕はありました。更に治安が悪くなるメキシコ以南のグアテマラ、エルサルバドルなどでは考えられません。
夜はライトアップもされています。

危険なイメージのあるメキシコ、意外にも穏やかな夜の賑わい - YouTube

◆人について
旅行者の寄り付かない街を歩いていると突き刺さる地元民の視線。こうなったら「自転車で旅しているツーリストだから」と自慢するしかありません。そこから始まる会話も、楽しいものでした。市場のタバコ屋さんと仲良くなったら、おじちゃんの「シガロ(煙草)、シガロ」という売込みを真似して声に出して、たくさんの人と話をしました
メキシコでは小さい子どももたくさん見かけ、微笑ましい光景を何度も飛び込んできました。背の高いマッチョのおっちゃんが、腕に抱いた2歳くらいの息子にキス。一度でなく次から次にキス、かぶりついてました。息子もおっさんにキスをし返す。そして、こっちを見つめてくるなんて!広場でヨチヨチした女の子がお父さんを見つけたのか、駆け出して座っている彼のもとへ飛び込みました。それは世界で一番幸せな瞬間だったかもしれません
誰かにカメラを向けるときは、相手との距離が怖かったりします。旅の始めのオーストラリアや東南アジアでは人の写真が少なかったりします。そんな自分が少し変わったのはアフリカを旅した影響でしょうか。黙っていたら、飲み込まれますから、明るく振舞うことも必要でした。メキシコを旅するならラテンのノリで。メキシコの旅に必要なのは、肩を組み笑顔で写真に納まることでした。
ナボホアという街で安宿の場所を聞いたらこんな事に。二人の若者は後ろのお店の人ですが、二人のおっちゃんは通りすがりという奇跡のメンバー。

同じくナボホアで「電熱湯沸し棒」を探していたら日系人のお店で日本語がペラペラというサプライズ。「シナロア州ではドンパチやっているから気をつけて」といったこれから先の情報には助かりました。

安宿を探すのを手伝ってもらったご家族。

ともかく「写真を撮らせて欲しい」と頼まれます。

道脇のサービスエリアで休憩している時に。

港町のマサトランで「カマロン、カマロン」と海老を売っていたおばちゃん。

「息子を大学に送る途中なんだよ」と言ってた親子。

メキシコ人は本当にいい顔をしてくれます。

辺りに何も無い道路で、こんな集団がいたら声をかけるしかありません。「学校が終わったんだ」と車を待っている最中でした。「若いんだし英語くらい頼むよ」と言ってもまだまだみたいで。「英語とスペイン語はそんなに違わないんだから、日本人は大変なんだぞ」と愚痴りつつも「君たちは英語を、自分もスペイン語を勉強するから」と伝えたけれど分かってくれたでしょうか。メキシコの未来を担っているんだから。

現地在住の日本人宅で日本語の勉強をしていたご家族と。

道端でサボテンを売っていた青年。「アリゾナ州から南下してきたら、サボテンばっかりだったよ」とデジカメの写真を見せると、次々と品種を口にするサボテン博士。「サボテンのことなら任せて欲しい」と目を輝かせていました。

おもちゃの鉄砲をもった元気いい悪ガキたち。鉄砲で撃たれて「うぁっ、やられた!」と倒れ込む私。

13歳とは思えない女の子の色香。右手でライムをかじっていてまた。

ネイル中のお姉さんたち。

車が止まって、少し立ち話。「腹減ってないか?飯は食ったか?」とお金をくれようとしましたが、その優しさだけで十分でした。

とある街の安宿に着たら、暑い中で入浴していた坊やが超ご機嫌。この笑顔。

市場でサボテンを売っていた女性。

ちょっと苺が口に合わなかったみたい。

色とりどりの花に囲まれているというのに、落ち着いている雰囲気がイケメンで。

「そのバイクみたいな自転車、カッコイイね」と褒めると照れていた兄弟たち。

ホテルを出て走り出したらトレーニング中のサイクリストがいて立ち話。「朝ごはんは食べたか?この近くに自分が働いている学校があるけれど一緒にどう?」と誘われたのでついていきました。校内では溶接とかをやっていたので、技術学校や職業訓練校みたいなものでしょうか。

技術学校の若者たち。

女子校生とも仲良しに。

ケレタロのホステルで働くおばちゃん達。台所にあったサボテンの写真を撮っていたら「あんた、写真は好きなのかい?だったら夜景の見える場所まで案内するわよ」と建物の屋上まで連れて行ってもらいました。

ケレタロ脱出中に止まった車のおじ様。

次に止まったのは消防車。

「メキシコで愛される日本のアニメやキャラクターたち、メキシコ人はオタクだった。」で仲良くなった遊戯王カードショップで。なかなかのカオスの状況にテンションも上がりました。

こちらの二人は「自転車でゆく!地球一周旅日記」の染谷君とも会っていて、「やっぱりあなたもアルゼンチンまで?」とチャリダーさんのことをよく分かっています。

ふと立ち寄った食堂のおばちゃん。何気ない会話が心地よかったり。

宿のお嬢ちゃんが可愛くて可愛くて。

暑い中で立ち止まった車から水の差し入れ。

どうしても宿が見つからず、道脇の食堂にテントを張らせてもらいました。そこのご家族。

こちらの若者は犬を連れたヒッチハイクの旅。「飼い主に送り届けないといけない」という彼は英語もペラペラ。

チラチラとこちらの様子を伺っていた少年。

食堂の看板娘。

市場にある食堂での一コマ。左のおじいちゃんとの会話に和みました。

ワンピース服の女の子からは「ちょっとこの写真は消して。もっと綺麗に撮りなさいよ」と駄目出しされたり。

窓から外を眺めていた子どもたち。

メキシコといえば危険なニュースばかりが目に付きますが、その中でもそこに住む人たちの日常は流れていってます。メキシコのこれまでを積み重ねてきた人たちと、これからを積み重ねる人たち。自分はそんな人たちと、これほどまでに触れ合えたのですから、メキシコが少しでもいい方向に進むことを願ってやみません。貧富の差はあれど、着実に力はつけています。その国の問題を変えるには、そこに住む人にしかできませんから。
充実したメキシコの旅を終えて、ベリーズから細かい中米の国々を南下していきます。
(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com)
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