1位は「イチロー」、子どもに人気の伝記は「偉人からヒーローへ」
by Isaac Feliu
毎日新聞が「第57回学校読書調査」の結果を発表しました。今回の調査では、「伝記」の読書に関する質問項目が設けられ、人気の伝記の1位が「イチロー」であることが明らかとなりました。
2010年の朝日新聞社の調査で指摘されていた通り、伝記の人気が「偉人からヒーロー・ヒロインへ」という傾向が如実に出ており、興味深い結果となっております。
特集:第57回学校読書調査(その1) 高学年ほど「感動」 - 毎日jp(毎日新聞)
asahi.com(朝日新聞社):偉人伝記 変わる顔ぶれ 人気上位 野口英世外れイチロー入る - 教育
◆不読者数の変化
調査月間に1冊も本を読まなかった「不読者」の割合は、安定した数字を示しました。小学生は6%と1980年とほぼ同じ水準で、2000年の16.4%から10%も下がっています。中学生は16%で、昨年より3ポイント上昇したものの、1980年の37.3%から見ると非常に低い数字です。高校生は51%で、これも1980年の49.0%とほぼ同水準です。
下の図は、1980年から2010年までの不読者の推移。クリックで拡大した画像を見ることができます。
◆雑誌読書量は過去最低に
雑誌に関する1ヶ月の平均読書量は、小学生で4.9冊、中学生で3.3冊、高校生で2.4冊。中高生では過去最低の数値で、小学生についても86年の最高値9.3冊から半減となっています。毎日新聞の分析によれば、インターネットの普及と、新古書店でコミックスが売り買いできるようになったことによる漫画雑誌の購読が減少したためと考えられるとのこと。
下の図は、2001年から2011年までの雑誌読書量平均値の推移。
◆「人気の伝記」小学生男子
興味深いのは、「あなたが今まで読んだ伝記の中で、一番良かったと思うのは誰の伝記ですか」という質問。なんと今年は、小学生男子での調査で、イチローが1位に輝いています。ちなみに昨年度の調査では、イチローは10位。
1位:イチロー
2位:エジソン
3位:坂本竜馬
4位:織田信長
4位:野口英世 ※4位同率
1位となったイチロー。
◆「人気の伝記」小学生女子
小学生女子では、レーナ・マリアが4位にランクインしています。レーナ・マリアはスウェーデン出身のゴスペルシンガーで、1968年生まれ。両腕が無く、左脚が右脚の半分の長さしかない状態で生まれながら、ソウルパラリンピックに水泳選手として出場し、その後音楽へ転向し、世界中でコンサートを行っています。
1位:ヘレン・ケラー
2位:マザー・テレサ
3位:ナイチンゲール
4位:レーナ・マリア
5位:アンネ・フランク
女子からの人気が1位だったヘレン・ケラー。
◆「人気の伝記」1977年~1979年の小学生(男女混合)
朝日新聞社の調査では、1977年~1979年の人気は以下の通り。1位は野口英世でした。
1位:野口英世
2位:エジソン
3位:ヘレン・ケラー
4位:ベーブ・ルース
5位:ナイチンゲール
6位:キュリー夫人
7位:リンカーン
8位:徳川家康、豊臣秀吉
9位:ベートーベン
10位:二宮金次郎
1977年~79年にかけて、伝記として最も人気の高かった野口英世。
1970年代と2011年の結果を比べてみると、2011年はイチローのほか坂本竜馬が3位にランクインしており、徳川家康や豊臣秀吉が抜けて織田信長が4位に入っています。
◆伝記を読んでどこが良いと思ったか
2011年の調査では、読んだ伝記について「どういうところが良かったと思いますか」の質問も設けられています。回答の割合は以下の通り。
このように、「正直な心」や「人々に公平」などのいわゆる「人徳」の部分は評価が低く、「新らしい考え方」や「発明・発見」といった、業績や人類への貢献に対する評価もそこまで重視されていないようです。
2010年に朝日新聞が集英社にインタビューした際、集英社の児童書を担当する伊沢昭夫氏が、子どもの嗜好の変化を「全人格的に優れた人の物語を大人に押しつけられるよりも、純粋にヒーロー、ヒロインを求めている」と表現した傾向がそのまま表れているようです。朝日新聞の記事では「男子はヒーロー、女子は偉人」とされていますが、今年の結果にはレーナ・マリアがランクインしていることも考えると、女子にもこの傾向が表れ始めていると言えるでしょう。
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