試食

もはや「午後の紅茶」とは別種の飲み物、「パンジェンシーDJ1 Special Box」試飲レビュー


1万セット限定生産で購入手段はキリン公式サイトのネット通販(事前予約)のみ、紅茶の葉でも高額な部類に入るダージリンのファーストフラッシュの、その年の一番最初に芽吹いた新芽と若葉だけで作ったロットNO.1(通称DJ1)を厳選して使用した特別仕様の「午後の紅茶」である「午後の紅茶 Pungency(パンジェンシー) DJ1Special Box」が手元に届いたので、さっそく普通の「午後の紅茶」と飲み比べてみました。

午後の紅茶パンジェンシープロジェクト

これが届いた状態の箱。クロネコヤマトのクール便で届きました。段ボール箱には商品名が書かれていて形も変わっているため、この商品専用の外箱のようです。


段ボール箱の中にはさらに化粧箱が入っていて、それと同じテイストにデザインされたパンフレットも同封されていました。ちなみに価格は商品が2100円(税込)、そこに送料525円と手数料315円が加わって総計2940円でした。中身は紅茶の1リットルパック×2なので、実質一本あたり1470円。「午後の紅茶」というブランドから想定する値段よりはかなり割高です。


その値段に見合うような形で、パンフレットは一般的な厚紙ではなく、結婚式の招待状などに使われるアート紙が使われていて、紅茶の葉の形が金の箔押しで印刷されています。


パンフレットの内容は、商品名にも含まれている「パンジェンシー」という単語の説明や、「午後の紅茶」ブランドでその「パンジェンシー」を追求するプロジェクトを行う理由、そしてプロジェクトメンバーとなっているグルメ評論家や専門家たちの紹介とコメント。

「パンジェンシー」というのは「爽やかで繊細な渋み」を意味しているとのこと。紅茶の渋みをおいしさとして評価する上で、最高の渋みのことをそう呼ぶのだそうです。


段ボール箱の段階では「2ヶ月前に注文した午後の紅茶がやっと届いたか」程度の感慨しかなかったのですが、この化粧箱を目にして思わず息をのみました。もしや紅茶ではなくワインでも入っているのではないだろうかと思わされるようなしっかりとした木製の箱です。1万セットと決して少ないロットではないものの、どこからどう見ても特注品です。


箱の中央にも、紅茶の葉の形に金色で箔押しがされています。


しかもスライド式ではなく、上部がぱかっと開くようになっていて、いよいよもってワインの箱疑惑は強まります。そして商品の上にうやうやしくトレーシングペーパーがかぶせられ、その紙にも印刷が施されています。印刷物を一度でも発注したことのある人であれば「これ一体いくらかけたんだよ」とつぶやいてしまいそうな、贅沢な仕様です。しかも赤色も普通の色ではなく、キリンのロゴマークに合わせた特色と思われる色合いで、印刷物にかけられる費用を惜しみなくつぎ込んだ感をひしひしと感じます。


化粧箱の豪華さにおののきっぱなしで遅くなりましたが、ようやく紅茶本体にたどり着くことができました。


箱から取り出してみると、真っ黒なカラーリングがシックな印象ではありますが、使われている素材などは豆乳飲料などによく使われるタイプの普通の紙パックとまったく同じ。化粧箱がやたらに豪華だっただけにちょっと肩すかしをくらった感が否めないので、できれば紅茶本体のパッケージももう少し頑張ってほしかったところです。


まずはストレートティーから見ていきます。


使用している茶葉は、「ダージリン・ファーストフラッシュ」の、その年の収穫期に一番最初に芽吹いた新芽と若葉だけで作ったロットNO.1(通称DJ1)を100%使用しています。

そもそも「ダージリン」はインド北東部のダージリン地方で収穫された紅茶の総称で、香りがよいためにその名が半ば銘柄のように使われているもの。その中でも「ファーストフラッシュ」は春に摘み取られた、若々しい香りが特徴の紅茶葉。

広く流通して一般に知られている「ダージリン」はほぼすべての場合、夏に摘み取られる「セカンドフラッシュ」か、それより一段下がって中級品とされている秋摘みの「オータムナル」。「ファーストフラッシュ」はダージリンの中でも「セカンドフラッシュ」と並んで楽しまれているものではありますが、青っぽい独特の香りや強い渋みがあり、よほどの紅茶党であっても愛飲するかどうかは好みが分かれるところ。この品にその「ファーストフラッシュ」を使った理由は特に書かれていなかったので、なぜ選んだのかちょっと気になりました。


原材料名は「砂糖、紅茶、ビタミンC」と非常にシンプル。


そして驚くべきことに、賞味期限は約10日間となっていて、一般的な「午後の紅茶」の飲料ラインナップよりぐっと短いものとなっています。添加物などを極力省いた結果なのかもしれませんが、来客用に買いだめしておくのが難しいレベルで賞味期限が短くなっています。


左が「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のストレートティー、右が普通にコンビニで売っている「午後の紅茶」のストレートティー。


「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」の色は黄色くて、紅茶と言われなければ緑茶やジャスミン茶と間違えてしまいそう。普通の「午後の紅茶」と比べるとその差は歴然です。


編集部で飲み比べてみた結果を以下に挙げていきます。人によってやはり常飲しているお茶が違うこともあって感じ方はさまざまですが、明らかに普通の「午後の紅茶」ストレートティーと違った味がするというのは共通認識としてありました。

◆編集部員1
普段飲むお茶は緑茶。洋菓子とでも緑茶を合わせる。紅茶は種類にこだわりがないので、わりと何でも飲む。

・「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のストレートティー
にがい……。「高いストレートティーなんだろうなぁ」という感じはするんだけれど、だからといって自分で買って飲むかというと、値段も高いし遠慮するレベル。これが紅茶通がいただく紅茶の味わい、ということなのだろうか……?

・「午後の紅茶」のストレートティー
この下品とも取れる、あとからぶち込まれたと感じる甘みがいかにも「午後の紅茶」。その変わらない姿勢は嫌いじゃない。

◆編集部員2
普段はコーヒーをよく飲む。ブラック党。

・「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のストレートティー
味わいはすっきりしていて、自分で葉っぱからいれなくても飲める紅茶としてはかなり美味しく飲めた。苦みが強いと言われていたが、まったく苦みを感じず、むしろかなり紅茶独特の苦みの中にしっかりとした甘みがあって丁度良い感じだった。

・「午後の紅茶」のストレートティー
基本的に「午後の紅茶」ならではの甘ったるさが苦手なので……。

◆編集部員3
コーヒーよりはお茶が好きで、普段から紅茶をよく飲む。

・「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のストレートティー
香りがはっきりと出ており、普通の午後の紅茶では難しい「香りを楽しむ」ことができる紅茶になっています。紅茶というよりも「凍頂烏龍茶」などの高原烏龍茶に近い雰囲気で、さわやかな香りと味わい。強力な花の香りのするものではないので、インパクトは強くないものの、純粋においしいお茶です。甘さが午後の紅茶に近く、イメージが似通ってしまうのが残念。ノンシュガーでもよかったのでは?

・「午後の紅茶」のストレートティー
いつも通りの「午後の紅茶」。かなり甘みが強いです。

◆編集部員4
紅茶にはまったくこだわりがなく、好きなお茶はよく冷えた麦茶。

・「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のストレートティー
ちょっと本格的な中国料理屋で飲むウーロン茶に似た香りがして好感触。味はというと、非常にすっきりとした飲み口で爽やかなのですが、甘みが強く感じられたのがもったいないところ。もう少しだけ甘さが抑えられていたら好きな味かもしれません。が、値段を考慮すると買う気は起こらないのも事実です

・「午後の紅茶」のストレートティー
いつも通りというとそのままですが、先に「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」を飲んだせいか余計に甘みを強く感じました。

◆編集部員5
紅茶は大好きですがにこだわりはありません。午後の紅茶はよく買います。

・「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のストレートティー
あまり美味しくないです。ファーストフラッシュはあまり飲んだことがないのですが、こんなものでしょうか?色はジャスミンティーに近い感じ。お茶の苦みと砂糖のほのかな甘みがマッチしていないような気がします。

・「午後の紅茶」のストレートティー
いつも飲んでいる「午後の紅茶」の味。甘さはこちらの方がやはり強いです。

◆編集部員6
紅茶は自分でいれて飲む習慣があり、自宅に数種類常備。現状一番よく飲んでいるのはダージリンで、リーフルで購入している。

・「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のストレートティー
ボトルで売られている紅茶飲料ではまずありえない香りの再現度で、客先で「ファーストフラッシュのアイスティーをいれたんです」と言われて出されたら信じてしまいそう……甘みさえついていなければ。通常の「午後の紅茶」と同系統の甘みが採用されているため、茶葉の香りや甘みが楽しみきれないのが残念。

あと、やはりファーストフラッシュを使っただけあって渋みが強く、甘みで軽減はされるものの、飲み続けているとかなり舌に残ります。セカンドフラッシュを使ったほうが誰にでも飲みやすいものに仕上がったのでは……。

・「午後の紅茶」のストレートティー
いつも思っていたことですが紅茶の味がまったくせず、甘みだけしか感じません。これはこれで清涼飲料水としてはアリかもしれませんが、世間一般でこれこそがストレートティーだと思われているのであればちょっと悲しいです。


続いて、「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のミルクティー。


ストレートと同じ「ダージリン・ファーストフラッシュのDJ1」が64%、そしてミルクティーによく使われるスリランカ・ウバ州で収穫される「ウバ・クオリティシーズン」が35%使われています。しかし、使用割合を合計すると99%になるのですが、残りの1%は一体……。


原材料は牛乳、砂糖、紅茶、ビタミンCとこちらもシンプル。


賞味期限はストレートティーと同様、約10日間です。


こちらも一般的に市販されている「午後の紅茶」ミルクティーと飲み比べてみます。


左が「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のミルクティーなのですが、かなり色がうすく、牛乳に近い白っぽい色。一方市販されている「午後の紅茶」のミルクティーはかなり茶色に近く、色が濃いです。


◆編集部員1
・「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のミルクティー
砂糖っぽさを感じさせないふわんとしたお上品な甘み。お客様に出せるレベルだと思う。

・「午後の紅茶」のミルクティー
砂糖と牛乳ぶち込んでまぜまぜしたこのダダ甘さ、これぞ「午後の紅茶」。好んでミルクティーを買うことはないが、「ミルクティーを飲みたい」という時に買ってうなずけるのはこの味。

◆編集部員2
・「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のミルクティー
こちらもすっきりした味わい。飲んだ後に舌の上がざらつく感じが全くせずかなり飲みやすく、美味しい物だった。

・「午後の紅茶」のミルクティー
甘みはかなり強い。飲んだ時に舌にざらつきが残るのが気になる。

◆編集部員3
・「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のミルクティー
このミルクティーは普通の「午後の紅茶」のそれとはかなり路線が異なり、非常においしく感じました。甘さが自然なレベルまで落とされており、口当たりも滑らかになっています。アイスミルクティーに「甘すぎる」「匂いがキツイ」などの悪印象を持っている人は、イメージが変わるかもしれません

・「午後の紅茶」のミルクティー
個人的に午後の紅茶のミルクティーはちょっと苦手なのですが、「ミルクティーと言えばこういう味」といった味付けになっているので、多くの人に飲まれるものとしてはマーケティング的に正しいのかもしれません。

◆編集部員4
・「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のミルクティー
ストレートティー同様こちらもすっきりとした飲み口。やはり甘みをもうちょっと抑えて欲しいところですが、それでも十分においしくいただけました。どちらも紙パックなので即座に飲めるというメリットは大きいものの、値段分の価値は無いような気がします。

・「午後の紅茶」のミルクティー
安いミルクティー特有の口内に残る違和感を感じました。

◆編集部員5
・「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のミルクティー
美味しいです。好きな味。ちょうどいい甘みかなと思います。

・「午後の紅茶」のストレートティー
甘すぎて少しずつしか飲めないので、やはり上記のミルクティーの方が好みです。

◆編集部員6
・「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」のミルクティー
最初にウバ特有のキリッとした苦みが一瞬感じられるものの、その後ファーストフラッシュの青っぽい香りがふわっと香ってきて、舌の上には渋みが最終的に残らないのですっきりした飲み口。しかしながらミルクティーとしてはかなり変化球の香りづけとなっていて、たまに飲む分にはいいのですが、個人的にはウバ単体やアッサムでいれた直球のミルクティーの方が好み。ミルクティーには必ず何らかの甘み付けをする方なので、ちょうどいい甘さが香りを引き立てていると思いました。

・「午後の紅茶」のミルクティー
ガツンと甘く、乳脂肪分と紅茶の作られた味がする、いわゆる市販のペットボトルミルクティーの代表格といった味わい。上記のミルクティーが変化球だったのでかえって定番の味に安心してしまったのが本音です。とはいえ、普段あまり好んでは飲まないのですが、これが多くの人に好まれる味だというのはよく分かります。


公式サイトでも「(「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」を)なぜ無糖で作らなかったのか」という点については開発チームの面々が議論を繰り広げていて、特に美食家の来栖けい氏はしきりに無糖での開発をうながしているのですが、キリン担当者は「『午後の紅茶』はもともと甘い紅茶として出発したブランドなので甘みを加えるのは譲れなかった」と取れる発言をしていて、結果として加糖紅茶として発売されました。しかし、キリン担当者の主張とは裏腹に、ごく最近同ブランドでは「午後の紅茶 おいしい無糖」を発売しているためそれはちょっと道理が通らないはず。紅茶党の中でも好みの分かれるクセのある茶葉「ダージリン・ファーストフラッシュ」を使ったにもかかわらず、市販品と同様の甘みをつけてしまったこと。そして、その甘みではファーストフラッシュの渋みをいまいちカバーしきれていなかったため、一体誰を狙った味つけなのか、その的がぼやけてしまっているように感じました。

とはいえ、「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」は香りや茶葉本来の甘みなどの再現度が、既存の「午後の紅茶」ブランドとはかけ離れた、非常に高いレベルで実現されていたのは事実。「もはや『午後の紅茶』とは別物だ」と感じたという声が編集部でも多く上がりました。

「午後の紅茶 Pungency DJ1Special Box」はすでに予約販売が終了していて、追加注文は受け付けていないとのこと。「午後の紅茶」とはまったく異なるブランドで展開したら、完成形も購入者層もまた変わってくるのではないかと思われるため、今後の展開が期待されるところです。

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in 試食, Posted by darkhorse_log

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