乗り物

飛行機と新幹線が合体?1930年のドイツで作られた時速230kmのプロペラ式鉄道車両「シーネンツェッペリン」


プロペラ機と新幹線が融合したかのような特異なルックスのこの物体は、いまから80年以上前にドイツで製作された「シーネンツェッペリン」という実験的な次世代鉄道車両。

ドイツの航空機工学者Franz Kruckenbergにより1929年に設計され1930年に1台のみが製作された「シーネンツェッペリン」は、安全上の懸念から旅客車としてデビューすることはなく1939年に解体されたのですが、アルミ製の軽量ボディに600馬力のV型12気筒エンジンで1931年にはなんと時速143マイル(230.2 km/h)という鉄道世界最速記録を樹立しています。この記録はガソリン推進式としては今なお破られていないそうです。

詳細は以下から。Is it a plane? Is it a train? No, it's a prop-driven V12 locomotive!

「シーネンツェッペリン(Shienenzeppelin)」とは「レールを走るツェッペリン」という意味で、ツェッペリン飛行船に似た姿から名付けられました。

全長25.85m・ホイールベース19.6 m・高さ2.8m、車体総重量約20トンで、40人乗りとのことです。



側面。日本の普通自動車の区分が車体総重量5トン未満、中型自動車が11トン未満、シーネンツェッペリンに搭載されたBMW VIエンジンの乾燥重量だけでも510kgと聞くと、20トンというのはありとあらゆる手段で軽量化をはかって達成した軽さだと想像できるのではないでしょうか。



プロペラは木製で、トネリコの木を使用しているそうです。車両を下向きに押し付けるダウンフォースを得るため、回転軸は水平より7度上向きに傾けられていました。


設計者のFranz Kruckenberg(左から2人目)


流体力学的に設計されたアルミ製の超軽量ボディに、当初はBMWの航空機用液冷式6気筒エンジンBMW IV(250馬力:180kW)2機と4枚羽根のプロペラを搭載していたのですが、後にV型12気筒エンジンBMW VI(600馬力:450kW)を搭載し、プロペラは2枚羽根に改良され、1931年には時速143マイル(230.2 km/h)を達成し、世界の鉄道の高速記録を更新しました。このBMI VIエンジンは、後に日本の川崎重工業の九二式戦闘機に搭載されたエンジン「ベ式五〇〇馬力発動機」(ベ式のベはBMWの頭文字Bを意味する)のベースとなったモデルです。

ベルリンとハンブルクを結ぶ経路上にあるカールシュテット-デルゲンティン間で世界の鉄道最速記録を更新した1931年6月21日の朝、出発前のベルリン駅で。


シーネンツェッペリンの記録は1954年2月19日にフランス国鉄CC7100形電気機関車CC7121号機が243km/hを記録するまで実に24年間破られることがなく、ガソリンエンジンの鉄道車両としては今なお破られていません。

「夢の次世代高速鉄道」とも思われたシーネンツェッペリンですが、混雑した駅で開放された状態のプロペラを用いることの危険性や、そもそも後ろにプロペラがあるため客車や貨車を引っ張ることができないというコンセプト上の欠点とも言うべき制約のため、試作車1両のみしか製造されず、実際に商業的に運行することはありませんでした。ヴァイマル共和国時代の遺産とも言えるシーネンツェッペリンにナチスはあまり興味を示さなかったのか、1939年には当時の所有者であったドイツ帝国鉄道により解体され、その車体のアルミニウムはメッサーシュミットなどの戦闘機の材料にあてられたそうです。

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in 乗り物, Posted by darkhorse_log

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