サイエンス

温かいのには理由がある、「最も経済的な体温」は36.7度と判明


人間に限らずほとんどのホ乳類の体温は、例外はあるものの基本的にはセ氏37度前後となっています。この体温を保つために常にエネルギーを燃やし続けているわけで、ハ虫類などの変温動物と比べると非常に燃費の悪い状態。にもかかわらずなぜこんなに温かいのかというと、体温が高いことのメリットとして、菌類が増殖しにくいということが挙げられます。風邪で熱が出るのは、体温を上げて病原体である菌が増殖できない温度にしようとしているわけです。

イェシーバー大学アルベルト・アインシュタイン医学校の研究により、体温を上げるための費用(エネルギー)と効果(菌の増殖抑制)を最適化した「最も経済的な体温」は36.7度で、人間の平熱とほぼ一致することが判明しています。

詳細は以下から。NewsCapsules | 98.6 °F Ideal Temperature for Keeping Fungi Away and Food at Bay

掃除をさぼって部屋にキノコを生やしてしまった経験がある人はいるかもしれませんが、長期間体や髪を洗わなかったからといって、頭にキノコが生えたり脇の下にカビが生えたというような話は聞いたことがないのではないでしょうか?

白癬(水虫やタムシ)なども言ってしまえば皮膚にカビが生えた状態なわけですが、基本的には普段イメージするようなカビやキノコは生きている人間の体には生えません。吸い込んだりして体に侵入すると病気になる(感染する)カビ(菌)の種類もごく限られたものです。人間などのホ乳類にとっては無害でもハ虫類や両生類では病気の原因となるという菌の種類は実に多く、体温がその分け目となっています。


アルベルト・アインシュタイン医学校の微生物学と免疫学の教授Arturo Casadevall博士により以前行われた研究により、動物の体温が1度上がるごとに、増殖できる(病原体となる)菌(真菌)の種類は6%減少することがわかっています。このため、ハ虫類などの変温動物が感染する菌の種類が数万種なのに対し、恒温動物が感染するのはわずか数百種となるのです。これは、恐竜が滅びた後のホ乳類による地上の席巻を大きく後押ししただろうと、Casadevall教授は考察しています。

mBio誌に掲載された最新の研究では、Casadevall教授は同じくアルベルト・アインシュタイン医学校のシステム計算生物学のAviv Bergman教授とともに計算モデルを作成し、体温を上げることの費用(エネルギー)対効果(菌に対する防御)を分析することにより、セ氏36.7度が「最も経済的な体温」と導きました。


この計算モデルは以前の研究により導き出された「体温が1度上がると感染する菌の種類が6%減る」という法則に基づくものですが、この6%というパラメーターを4%~8%の範囲で置き換えても、最適化温度は37.7度~35.9度と、ホ乳類の体温に近い範囲だったそうです。また、この温度は動物の体の大きさには左右されないとのこと。

「なぜほかの動物と比べてこんなにも体温が高いのかというのは、人間を含む進化したホ乳類にまつわる大きな謎の一つでした。今回の研究結果は、ホ乳類の体温がみな37度付近である理由の説明に役立つでしょう」とCasadevall教授は語っています。

ちなみに人間の精子は体温より低い34~35度の温度でないとうまく作れないため、精巣を体の外にぶら下げることでちょうど良い温度に冷やしているそうですが、これにより攻撃を受けると非常にダメージの大きい急所となってしまっています。しかし、急所を作るリスクも、「体温を2度下げることにより感染する菌の種類が12%増える」というリスクに比べると微々たるものだったのかもしれません。また、卵を温めると固まるように、脳や内臓など人間の体の組織のタンパク質も熱により変性し、体温が42度を超えたあたりから生命の危険があると言われています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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