取材

デジタルライフスタイルの達人・坂井直樹がニコンの3Dデジタルフォトフレームを語る


10月26日、ニコンが2D写真を3Dに変換してデジタルフォトフレームで楽しめる新サービス「my Picturetown3D」を発表し、そこで利用するAndroid OS搭載の3Dデジタルフォトフレーム「NF-300i」を出しました。

発表会では、デジタルライフスタイルの達人である坂井直樹さんがこのデジタルフォトフレームについての未来像などを語りました。

また、ニコンの製品開発陣による質疑応答の様子もお伝えします。
ゲストの坂井直樹さんは、大ヒット製品となった日産・Be-1を始めとしてカメラ、携帯電話、家具や化粧品など様々な製品を世に送り出したコンセプターで、現在は慶應大学の坂井直樹研究室でコミュニケーションとデザインを研究しています。自宅では5台のPCを使っているほかに様々なデジタル製品を使いこなしている、デジタルライフスタイルの達人でもあるそうです。


坂井:
よろしくお願いします。

司会:
さっそく、「my Picturetown 3D」について、実際の3Dデジタルフォトフレームを見ながらいろいろ伺っていきたいと思います。このたび、ニコンで2Dの写真を3Dに変換してくれるサービスが始まるわけですが、ご感想は?

坂井:
まず眼鏡なしで見られる自由度がとてもいいですね。今までの3Dは前に出てくる感じがしますけれど、これは奥行きの広さを感じるのが、窓っぽくていいかな、と。切れ目がないというか、想像力の範囲でしょうが、どこまでも深いんですね。その広さが面白いな、と思ったんですね。


司会:
やはり3D画像だから伝わるものというのもありますか?

坂井:
もちろん。これは僕の昔の会社の写真ですが、前にフィガロがあって、後ろに木があって、奥に会社があって。とても懐かしい。3Dで見ると2Dで見るよりも、より懐かしい感じがする。


司会:
印象や感覚にも、やはり違いが出てきますよね。今まで2Dだったものが3Dになって変わることというのは、どんなことだと思いますか?

坂井:
今、僕の大学でも実験しているんですが、空中のUIというのか、言い方が難しいですが。この画像でも自動車が浮いて見えますが、浮いている画像に指で触れるところを、カメラとかセンサーで見ていると、それがスイッチになれるんじゃないか。そうするとタッチパネルが指紋とかでまったく汚れない状態で、いろんな動作をインタラクションしてくれるととても面白い。極端なことを言うと、チェスができる。要するに平面に置いたチェス盤の上に駒の画像が浮いてくるわけでしょ。それを持って、次のところに動かす。というのは大槻さん、どうですか(笑)


司会:
3Dの画像を実際に動かしているような感覚を持ちながら、実際にはなにも触っていないわけだから汚れもしない。タッチパネルの汚れを気にされる方には、とても広がりをもって考えることができますね。

坂井:
画像の中にインターフェースのスイッチがある、というのは非常に面白いと思います。このデジタルフォトフレームも外側にスイッチがありますが、そういうのもすべて画像の中に入ってしまう。実空間と虚空間の間の連絡ができるって言うんですか。

司会:
なるほど、そういった展開も期待できそうですね。

坂井:
あとEコマースにもいいと思いますね。ショッピングなんかはかなりリアルに感じないと買うっていうモチベーションが起きないわけですが、そういう意味では平面とはまったく違った利益がありますね。

司会:
デジタルサイネージあたりで発展するかも、と。

坂井:
そうですね、デジタルサイネージなんかいいですね。

司会:
この新サービス、ネットワークを経由して3Dに変換されるということで、(撮影時に)専用のカメラが必要ないということなんですが、専用の機器に縛られないネットワークサービスというものの魅力についてはどうお考えですか?

坂井:
僕もデジタルフォトフレーム、普通のやつを使ってるんですが、一番めんどくさいのはコンテンツの交換なんですよ。SDカードなんかを突っ込むんですが、意外と面倒くさいんです。やはりそれをWiFiでつないで、たとえば先にカメラで撮っておいた画像を、PC上で今日はこれとこれを3Dに加工してもらって、デジタルフォトフレームに入ってくると。


司会:
遠隔操作みたいに使うことも可能ということですね。家のPCで変換したい画像を送る。それをたとえば、プレゼントした相手先のデジタルフォトフレームで見てもらう、ということもできる、ということですね。

坂井:
朝オーダーしておくと夜になれば3Dで見られる、というような感じになれば最高じゃないですかね。

司会:
そうですね。やはり手軽さというのも大事になってくるのかな、と思います。ネットワークによる広がり、いろいろあると思うんですが、専用のカメラが必要ないということで、これまで取りためた写真も使えますよね。

坂井:
そうですね。これももちろん元は普通の写真ですから。昔の写真を3Dにするととても懐かしいというのはそういうことですよね。

司会:
これから撮ることができない写真、今まで撮った写真の中で、再現のできないもの。そういったものを3Dにできるというのはうれしいですよね。より思い出も鮮明になるという。

坂井:
カメラも、3D用、2D用で持っていると面倒なので、それが無くて3D化できるというのはとてもいいですよね。

司会:
これまで、3D用のカメラが無いと自分では3Dの画像が作れないということがあったと思うんですが、これからはいろんな方に参加していただきやすくなりますね。

坂井:
ハードウェアができるだけ少ない方が、使う方にはうれしいですよね。


司会:
使う側にうれしいサービス、ということですね。こちらが会員の方に貸与する実際のデジタルフォトフレームですが、Android OS搭載という点ではどうでしょう?

坂井:
Android OSがいいのは、非常にたくさんのメーカーが作っているってことですね。携帯メーカーでも世界で数十社。メーカーさんが許容すれば、優れたアプリケーションをコンシューマーが勝手に作ってくれる、というのがすばらしいですね。生産していく生態系が、ニコンのプロダクツの周辺に生まれてくる、というのがAndroid OSの一番面白いところですね。

司会:
なるほど、企業だけでなく一般の方も参入しやすいということですね。

坂井:
日本の企業は内製が好きで、あまり外部と組むという発想が無いんですね。どの企業も。ですから、そういうことがAndroid OSによって解放されて、いろんな参加者が生まれてくる。ニコンさんのサービスにいろんなユーザーが参加して、そこにビジネスも生まれるしサービスも生まれる。そうすると、メーカーが思っていなかったような使い方が、3Dっていう中でAndroidのアプリケーションに誕生してくるんじゃないかな、と思いますね。

司会:
このNF300iも、Android OSだからこそ、これからもいろんな広がりを持って、新しい使い方が出てくる、と。

坂井:
特にSNSで、たとえば今twitterが流行っていますけれど、twitterはやはり文字なんですね。次は写真を送り合うようなコミュニケーション、絵はがきのようなコミュニケーションというのが出てくるんじゃないかと思っていますので、その中で3Dというのはあるんじゃないかな、と思いますね。


司会:
そういったものが出てくると、競争も激しくなるかと思うのですが、競争という中でニコンのデジタルフォトフレームに期待する部分はありますか?

坂井:
いくら競争が激しくなっても、優位性をもったプロダクツやサービスは生き残っていきますので、むしろたくさんの参加者がいたほうがいいと思いますね。選ぶのはお客様ですから。


司会:
そうですね。期待が大きくなるということですね。

坂井:
ニコンさんには写真の知識のストックがありますからね。

司会:
坂井さんご自身にとって、楽しみという点では、このNF300i、どのように使いたいとお考えですか?

坂井:
やっぱり動画がなかなか面白いですね。自分の趣味の車は全部入れてみたいですね。あとはお袋と孫ですか。

司会:
人物や風景もいいですし、そういった自動車とかもいいですね。

坂井:
究極的にはさっき言ったチェスみたいな、空中に浮かんだインターフェースのような、次のプロダクトがこれから出てくるのを期待しています。

司会:
デジタルフォトフレームとしてだけでなく、コミュニケーションツールとしての広がりも期待している、と。

坂井:
今僕たちが使っているタッチパネルは、どうしても画面が汚れるわけですね。それが空中にスイッチがあれば、まったく汚れることなく、美しいままの液晶を使えるということはとてもいいですね。特に複数の人間が使うところ、パブリックなところなんかにはね。

司会:
個人としての使用だけではなく、パブリックな場面での使用が出てくる、と。

坂井:
チケットの券売機だとか。品川駅にデジタルサイネージの自動販売機がありますが、あれは今タッチパネルなんで、あれを3Dにするとかね。そういう意味でEコマースともフィットしていると思います。

司会:
そろそろお時間になってしまいますが、最後になにか?

坂井:
もうひとつ思ってるのがカーナビの可能性ですね。今は平面ですが、立体交差点なんかで、ふくらんで上がるとか、逆に下がるとか、平面では表現できないんですね。3Dであれば立体として道路を示すことができるので、もうすこしレベルが上がってくると思いますね。

司会:
高速の入り口とか、斜め右上に行くのか、左に行くのか、というようなところですね。

坂井:
そうですね。空間の表現ができるようになったら面白いと思いますね。

司会:
坂井さん、今日はとても面白いお話、どうもありがとうございました。坂井直樹さんでした。

坂井さんのお話に引き続いて、質疑応答が行われました。回答者は株式会社ニコン 映像カンパニー プロジェクトリーダーの大槻正氏、マーケティング本部 第二マーケティング部 ゼネラルマネジャーの森本哲也氏、広報・IR部 広報課マネジャー 森口拓也氏。


司会:
それでは、ご質問のある方、どうぞ挙手をお願いいたします。

日本経済新聞:
日本経済新聞のサギモリと申します。3問あるんですが、1問ずつご回答いただければと思います。まず、2Dから3Dに変換する変換技術はどうやっているのか、もう少し詳しく教えてください。

大槻:
3Dに変換する技術ですが、一般的に3DというとZ値、奥行きのデータが必要になります。写真というのは奥行きのデータがまったくありません。ただし、物が隠れているということがありますので、奥行きのデータ、Z値を擬似的に作っています。表面に出ているものはZ値が少ない、隠れているものは奥行きがあるので、Z値が高い、というかたちにしております。そのほか湖や海などに対しては、プレーンという方法で平たいものを斜めにしたりすることで、実際の3Dに変換しております。

日本経済新聞:
2点目ですが、デジタルフォトフレームを販売という形にしなかった理由を教えてください。

大槻:
今回のものに関しては、インターネットにつないでほしい、そして3Dの写真をダウンロードしてほしいというのがメインになっております。どうしてもインターネットに接続できる環境をつくろうという意味で、販売をしていません。それとAndroid OSということで、将来の拡張性を見ていまして、お客様に買っていただくよりも、新しいアプリケーションやソフトを買っていただきたいということで、販売しておりません。

日本経済新聞:
今のお話ですと、販売でもダウンロードやアプリケーションの購入はできると思うのですが?

大槻:
はい。できますが、より確実にインターネット環境がある状況を作るために、「my Picturetown 3D」の会員であれば、インターネットの環境をお持ちなのが確実なので、会員制というビジネスモデルを採用いたしました。

日本:
3つめ、先ほど坂井さんもAndroid OSの拡張性に触れられていますが、アプリケーションのプラットフォームの解放という可能性についてはどうでしょう?

大槻:
現在検討しておりまして、SDKのようなものを公開していこう、と考えております。まだいつ公開するかは決まっていませんが、近い将来に、Androidで動くアプリケーションの開発環境は提供していきたいと考えております。

日本経済新聞:
ありがとうございます。

山田:
山田と申します。とても面白い、将来性のあるサービスだと思うのですが、3点質問があります。まず、2Dの画像をネットに上げてから処理するのにかかる時間はどれくらいでしょうか?それから、3Dじゃなくても、2Dだけをネットワーク経由で「my Picturetown」にある写真を楽しみたいという方も年間2万円かかるんでしょうか?それと関連するんですが、デジタルフォトフレームをプレゼントするというかたちでも年額で支払うかたちになってしまうんでしょうか?

大槻:
3D変換の時間については、写真によって3D化しやすい、しにくいというのがありまして、早ければ数分、長いものだと数時間かかるものもあります。一番大きな要素は、お客様からどれだけたくさん3D変換の申し込みをされているかという点があります。自動でできる場合は数分でできますが、手動になってくると、処理すべき画像が溜まっていきますので、長時間かかる可能性があります。この比率については、まだはかりかねています。

二つ目に、2Dの画像をNF300iで見るというのは可能です。その場合も年額は19,950円かかってきます。実際には、今回の製品は3Dを使うことをメインに考えておりますので、もし2Dのみでネットワークを使用されたいという場合は、既存の製品でネットワーク対応の製品がございますので、こちらをお使いいただきたいと考えております。


三番目のご質問のプレゼント需要ということについては、たとえば自分でも使いながらおじいちゃん、おばあちゃんにプレゼントするという場合、もう一台のフォトフレームにデータを転送することが可能になっています。その場合も、台数が2台であれば2台分の会員費をいただくかたちとなっており、デジタルフォトフレームと3Dに変換するのに会員費がかかる、ということで、プレゼントした場合も会員費はかかってくるというかたちになっております。

山田:
あともうひとつ、3D変換の難しいものの場合で、結果として出てきたものが「これはないだろ?」というものが出てきた場合はそれでもお金を払わなくちゃいけないんでしょうか?3Dの変換効果が満足できないものであっても、返金等には応じないんでしょうか?

大槻:
私どもでも、これであれば大丈夫、というように3D変換にチェックをかけていきますので、会員費を払ってお楽しみいただきたいと思います。

共同通信:
共同通信の井上と申します。質問が2つありまして、NF300iは貸出ということですが、まず登録をしてから、いったんサービスを停止しようと思った場合、それまで変換した3Dは見られなくなってしまうんでしょうか?

大槻:
月々1,995円で月額会員に申し込んでいただくと、月々で3Dに変換が可能ですが、退会されても「my Picturetown」上に3Dの写真は残っております。ただ、NF300iは返却いただきますので、3D画像を閲覧していただくことはできません。テレビなどが今後フォーマットに対応いただければ、その限りではなくなるかと思われます。

共同:
もうひとつ、中国からのレアアース輸入が滞っているようですが、御社への影響はいかがでしょうか?

森口:
ご存じかもしれませんが、当社の製品ではガラスにランタン、ガラスの研磨剤にセリウムを使用していますが、それらについては今のところ影響は出ていません。十分な量がまだあるので、事業には影響が出ておりませんが、この先かなり供給については厳しいかなと思っておりますので、状況を注視しつつ、新たな調達先を増やせないかとか、一度に使う量を少なくしていけないか、などの対策を検討しております。

司会:
それでは、質疑応答を以上で終了させていただきます。

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in 取材,   ハードウェア, Posted by logc_nt

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