交通事故で命を落とすかどうかは、救急車の到着時間に非常に大きく左右される
スペインでは交通事故の発生から事故現場へ救急車が到着するまでに平均で25分間かかるとのことですが、その時間が10分短縮されれば、死亡事故の3分の1で命が助かっていたはずという調査結果が出ています。これは高速道路と一般道を含めた1463件の交通事故を分析した結果とのこと。
事故発生からの経過時間と死亡率の関係の一般道と高速道路での違いといった興味深いデータも出ています。
詳細は以下から。Ten minutes could prevent one-third of road deaths
Autonomous University of MadridのRocío Sánchez-Mangas博士らによる、Accident Analysis & Prevention誌に発表された研究では、スペインの交通総局のデータを基に、スペインの道路で起きた交通事故1463件を分析しました。
Sánchez-Mangas博士らは、事故発生から救急隊の現場到着までの所用時間や、事故に遭った人の特性・事故そのものの特性に準じて、犠牲者が死亡する確率を試算しました。その結果は、時間以外のファクターを補正すると、救急隊の現場到着までの所用時間が25分から15分へと10分間短縮されれば死亡率は3分の1下がると示すものだったそうです。これは、高速道路でも一般道路でも言えることとのこと。
また、事故が起きた道路の種類によって救急隊到着までの所要時間と死亡率の関係に違いが見られることも明らかになったそうです。一般道では25分から30分の間で時間の経過とほぼ比例して死亡率が上がっていくという強い相関が見られ、この相関は高速道路の場合でも見られたのですが、高速道路の場合は事故発生直後数分間の死亡率(即死率)も比較的高いため、死亡率を事故発生からの経過時間で割ったグラフはU字曲線を描くそうです。
スペインでは近年インフラ整備やメディアによるキャンペーン、免許制度へのポイント制導入を含む法改正などの効果もあって交通事故は減少傾向にあるそうですが、依然として交通死亡事故は公衆衛生上の大きな問題となっているとのことで、Sánchez-Mangas博士らは「死亡件数を減らすために決定的なファクターとなるかもしれない救急応答が軽視されています」と懸念を表明しています。
なお、日本での救急隊の現場到着時間(通報を受けてからの時間で、交通事故に限らずすべての救急出場を含む)は平成20年で平均7.7分と、スペインに比べると非常に迅速な救急活動ができているようなのですが、これでも平成10年の平均6.0分に比べると1.7分長くなっていて、症状が軽微であるにもかかわらず、「交通手段がない」「どこの病院に行けばよいか不明」といった理由で救急車を呼ぶ場合や、救急車をタクシー代わりに常用するといったケースのためにさらなる遅延傾向が続くのであれば、真に緊急を要する人への対応が遅れ、救命率に影響が出ると懸念されています。
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