複数のモバイル機器をワイヤレスで同時に充電できる技術が開発、携帯電話も対応可能
従来の携帯電話やスマートフォン、携帯ゲーム機、デジタルカメラなど、あらゆるモバイル機器が普及する中、いつまで経っても変わらないのが機器の充電。充電端子にACアダプタやUSBケーブルを接続したり、ドックに置いたりする必要がありますが、コネクタが破損した場合などには充電できなくなるのが困りもの。
しかしそんな問題を解決する、携帯電話のような小型のモバイル機器をワイヤレスで同時充電できる、高性能な充電機器を実現する技術が開発されました。機器の置き方を気にする必要も無く、ただ置くだけでだけで充電できるようになるというのは、モバイルユーザーだけでなく、一般ユーザーにとっても恩恵が大きそうです。
詳細は以下から。
高性能・小型化を可能とするワイヤレス給電の解析・設計技術を開発 : 富士通
富士通が発表したプレスリリースによると、電源ケーブルを接続せずにワイヤレスで給電することができる「磁界共鳴方式」を採用した、さまざまな大きさの複数のモバイル機器に適用できる送受電装置の解析・設計技術を富士通研究所が開発したそうです。
離れた位置で複数給電の例はこんな感じ。コイルが取り付けられた送電デバイスから離れたところにある豆電球が点灯しているほか、モーターも駆動しています。
ワイヤレス給電方式の説明。コイル間の結束によって生じる起電力を利用した「電磁誘導方式」はコードレス電話などで実用化されていますが、送電側と受電側の位置合わせが必要になるなどしていたのに対して、コイルを共振器として用い、磁界の共鳴によって電力を伝送する「磁界共鳴方式」は数センチから数メートルまで電力の伝送が可能です。
また、「磁界共鳴方式」を採用した送受電デバイスは、設計時に機器の大きさからコイルの大きさを決定し、それに最適となるようにコンデンサの容量を決定する必要がありましたが、機器の筐体やバッテリーから発生した電磁気が給電に複雑な影響を与えるいう課題があったとのこと。
この影響を解析するためには、設計用に使われる一般的なハイスペックのパソコンを用いても、基本的な解析だけで約24時間もの時間が必要となり、さらに携帯電話に搭載できるほどの小型送受電デバイスは周りの影響を受けやすく、さまざまな機器を同時に給電しようとすると機器同士で影響を受ける結果となり、よりいっそう解析に時間がかかる事態に陥ることがワイヤレス給電の実用化について、大きなボトルネックとなっていました。
しかし新たに磁界共鳴型ワイヤレス給電の送受電デバイスの設計にかかる時間を従来の150分の1にまで大幅に削減しつつ、周辺の金属体や磁性体から影響を受けやすい小型の送受電デバイスであっても、ねらった共鳴条件に正確に合致する設計が可能となる技術が開発されたそうです。
最適な設計を行っている場合(1)と、そうでない場合(2)の充電効率を表したグラフ。最適化を施さない場合、ほとんど充電できないのが分かります。
また、実際に小型で薄型の受電デバイスを設計し、ワイヤレス給電機能を内蔵した携帯電話を試作して充電したところ、送電範囲内の自由な位置で給電できるにも関わらず、85%の高い給電効率を達成したとされています。
これが試作された携帯電話。2台同時に充電できています。
なお、富士通は今後、今回開発された解析・設計技術を用いて携帯電話などのモバイル機器におけるワイヤレス給電システムの研究・開発を行い、2012年の実用化を目指すとしています。
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