赤いユニフォームのゴールキーパーはPKのセーブ率が2倍

イギリスの心理学者らによる研究で、ゴールキーパーのシャツの色がペナルティーキックの成功率を大きく左右し、赤いシャツのゴールキーパーに対してPKを決めるのは、キーパーのシャツが青や緑の場合と比べ2倍近く難しいことが判明しました。

2010 FIFAワールドカップ開幕まで2ヶ月を切りましたが、イギリスではこの研究結果がワールドカップでのPK成功率の低さに定評があるサッカーイングランド代表のPK戦連敗打破の鍵となるかもしれないと、期待が高まっているようです。

詳細は以下から。Is this England's World Cup hope? Goalkeepers who wear red save twice as many penalties | Mail Online

University of Chichesterでスポーツ心理学を専攻するIain Greenlees博士とMichael Eynon研究員は、ゴールキーパーのユニフォームの色がキッカーのパフォーマンスに与える影響を調べるため、40人の大学サッカー選手に、青・緑・黄色・赤を身につけた同じゴールキーパーに対し、PKの試行を行ってもらうという実験を実施し、その結果は4月16日にストラトフォード・アポン・エイヴォンで開催されたイギリス心理学会年次会議で発表されました。

40人の被験者はそれぞれの色のゴールキーパーに対し10回ずつPKを行い、試行前には「10本中何本決められると思うか」という成功率予想もしてもらいました。その結果、「何本決められるか」というキッカー自身の予想はキーパーのシャツの色に左右されなかったものの、実際のPK成功率は、緑のシャツのキーパーに対し75％、青で72％、黄色で69％、赤で54％と、ゴールキーパーが赤を身につけている際にはほかの色に比べ明らかに低かったとのことです。

これは「赤」という色がキッカーの無意識に働き、不安を強くしているためなのではないかと心理学者らは考えています。「わたしたちは赤色を危険・支配・怒りなどと結びつけるように進化してきました。これは生物学的に説明できる現象です。また、文化的にも赤は危険を表すシグナルとして、信号機などさまざまな場所で危険を警告するために使われています」とGreenlees博士。「ストレス下では人間は周辺環境に潜む危険により注意を払うため、キッカーにとって赤色はより注意をそらすものとなり、パフォーマンスに影響するのです」

これまでにもやはりイギリスで行われた研究により、キッカーが緊張している時ほどキーパーに視線が吸い寄せられ、キーパーを見ている時間が長いほどPKを外しやすくなることが判明していますが、フィールドに溶け込む青や緑を身につけたキーパーは、赤いユニフォームのキーパーより「無視しやすい」ということなのかもしれません。

また、Greenlees博士によると、赤いユニフォームはゴールキーパーをより「支配的な気分」にし、攻撃的な男性ホルモンであるテストステロンのレベルにまで影響することにより、キーパーのパフォーマンスを向上させている可能性もあるとのことです。

「この研究結果は、赤い服がスポーツ選手やチームにとって、小さいながらも意味のある優位性を与えるという考えを裏付けるものです。赤いユニフォームを身につける場合に限らず、ボクシングやオリンピックの格闘種目など、ランダムに『赤コーナー』や『青コーナー』を割り当てられる場合にも影響するでしょう」とGreenlees博士。

2003年FAカップ優勝時のアーセナルのゴールキーパーデビッド・シーマン。アーセナルのようにホームカラーが赤であるチームは心理学的にほかの色のチームより有利なのかもしれません。

Greenless博士は、この研究結果がささやかながらもワールドカップでイングランド代表の手助けになればと願っているとのことで、グローブや靴などで赤を取り入れることでも効果があるかもしれないとアドバイスしています。

イングランド代表はこの夏、赤いユニフォームで西ドイツを下した1966年の自国開催ワールドカップ優勝以来の栄光を目指すとのことで、ファビオ・カペッロ監督によるとチームはすでにPKの練習に取り組んでいるほか、南アフリカには赤いアウェイ用ユニフォームも持って行くので準備は万全とのことです。