超音波が人工臓器をハッキングから守る
士郎正宗の漫画「攻殻機動隊」など様々なサイバーパンク作品で、機械に置き換えられた体の一部をハッキングによって乗っ取られるという描写が多く見られますが、現実の世界でもこのような「ハッキングで人を殺せる」危険性について議論されるようになってきました。
実際、一部の埋め込み型医療機器は電波でコントロールされており、ハッキングによる誤作動の可能性を否定できる状況ではないのですが、これに対して超音波が有効な防御機構として提唱されているようです。
詳細は以下。
Technology Review: Keeping Pacemakers Safe from Hackers
スイス連邦工科大学とフランスのコンピューター科学制御研究所は合同で、無線による医療用機器への攻撃に対する研究を行っています。
現在提唱されているのは、患者が安定しているときは10m以内の外部機器から認証・チェックを経て埋め込み機器にアクセスを可能にし、容体が急変したときは3cm以内のすべての機器から認証なしでアクセスを可能にするという方法。緊急時にはアクセス認証の時間すら惜しいためこのようになっているわけですが、その際に問題になるのがセキュリティの問題。電波のみを利用した場合、遠くから強力な電波を飛ばして、無害な医療機器を装ったアクセスが可能となってしまいます。
このような攻撃に対しては、外部から邪魔されない形で機器どうしの正確な距離を測定する必要があるわけですが、その際に有効なのが超音波。外部からアクセスしようとする機器は電波に加え超音波を発するようにし、埋め込み機器のマイクでこれを測定すれば問題は回避できるのではないか、というアイディアが出されています。この方法ならば必要以上に機器を大型化・複雑化する必要もなく、確実にハッカーによるアクセスをフィルタリングしつつ扱いの簡単さとの両立も可能とのこと。
牛肉を人体に見立てた実験風景。
開発者は、この仕組みについて十分に成熟しており実用に耐えるものとしていますが、1つ事故が起これば大惨事につながるものだけに慎重な開発が必要という声もあります。研究者の1人タダヨシ・コウノは「コンピューター技術者だけでなく医療関係者を交えた研究がこれからも必要だ」と語っています。
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