「小悪魔ageha」編集長にインタビュー、世の中には「かわいい」か「かわいくない」の2つしか無い
黒肌系ギャル雑誌「nuts」の増刊ムックとして登場し、今ではギャル系ファッション誌として確固たる地位まで上り詰めた「小悪魔ageha」。「今よりもっとかわいくなりたい美人GALのための魔性&欲望BOOK」というキャッチコピーを掲げ、「もっときれいになりたい!」「もっとお金持ちになりたい!」「もっと幸せになりたい!」という女性の気持ちを見事につかみ取り、出版不況と呼ばれる中でも急激に売り上げを伸ばし、ある意味で今の時代を象徴する雑誌の一つとなっています。また、小悪魔agehaに登場するモデルのことを「ageモ」または「age嬢」と呼び、ageモやage嬢のようなファッションをしている女性は「ageha系」と呼ばれ、これもまた10代~20代の女性たちに広く浸透し、あこがれている女性たちも数多くいるようです。
しかしながら小悪魔agehaはその非常に華やかできらびやかな見かけとは裏腹に、心の中の「病み(闇)」といった暗くて重いテーマも扱ったり、見開きで「飯島愛追悼ページ」を掲載したりするなど、ほかのファッション誌ではまず考えられないような側面も同時に兼ね備えているため、読者ターゲットになっていない人にとっては理解不能な内容となっています。
そこで、そういった様々な表情を見せる小悪魔agehaとは一体どのような意図で作られているのか、その本当の姿を理解するため、編集長の中條寿子さんにインタビューすることに成功しました。というわけで、知られざる小悪魔agehaの舞台裏は以下から。
これが「小悪魔ageha」の編集部があるインフォレスト本社。
いかにも出版社という感じがします。
インフォレストが出版している各種雑誌が飾ってあるのが確認できます。当然のように「小悪魔ageha」も発見。
予定の時間になったため、「さあ入るぞ」ということで気合いを入れ、中に入ろうとしましたが……
入り口は鉄の扉になっており、ぴったりと閉じられています。どうやって入るのかがわからず、呆然と立ち尽くすしかない。
恐る恐る近づいてみると自動ドアになっていました。
無事に入館。
エントランスはこんな感じ。
ロビー付近で編集長が来るのを待つことに。
ロビーで待っていると、「小悪魔ageha」の中條寿子編集長が登場。2階にあるきれいな会議室へ一緒に移動し、いよいよインタビュー開始。
■「小悪魔ageha」とはそもそもどのような雑誌なのか?
GIGAZINE(以下、Gと省略):
2009年5月4日付け「文化通信」に掲載された「08年下期の雑誌販売部数」(日本ABC協会レポートから作成)によると、以下のようになっています。
・CanCam(キャンキャン):34万6466部(前年度比マイナス24.25%)
・MORE(集英社):35万2097部(マイナス10.56%)
・JJ(光文社):10万9853部(前年度比マイナス24.12%)
・non・no(集英社):25万8648部(マイナス15.12%)
・with(講談社):33万2410部(マイナス11.06%)
「CanCam」など、軒並み前年度比マイナスになってしまっているのですが、小悪魔agehaは公称何万部なのでしょうか?
中條寿子編集長(以下、agehaと表記):
30万部です。
G:
すごい数ですね。「non・no」よりも多い。
ageha:
そうなんですか!「non・no」ってもっと多いんじゃないですか?
G:
「non・no」は25万部程度なんですよ。そうすると、本当にトップレベルの雑誌になったんですね。
ageha:
ありがとうございます。
G:
小悪魔agehaは実際にはどういった読者層が購入しているのでしょうか?
ageha:
20代前半の女の子が一番多いですね。職業としては創刊当初から夜のお仕事をしている女性向けに作っているので実際にそういった職業の子が多かったのですが、今ではバラバラで、夜のお仕事をしている人半分、昼のお仕事をしている人半分という感じですね。
G:
最初の頃に比べて幅が広がっていったのですか?
ageha:
そうですね、今では部数も変わってきていますので。ただ、夜の仕事をしている人は確実に読んでいると思っています。
G:
定期購読の数はどれぐらいでしょうか?
ageha:
定期購読の詳細な数まではわからないですね。キャバクラさんやセットサロンさんは定期購読が必要になってくると思うので、そういう業務的に必要なところは定期購読があってもいいのかなと思っています。私たちも「キャバクラのバックステージには無くてはならないもの」として作っているので、やっぱり置いて欲しいですね。でも、黒服の方が毎月発売日に買いにくるのは大変じゃないですか。ですから、定期購読して発売日にお店に届くようになればいいのかなと思っています。
G:
コンビニでも売っているのをよく見かけますが、実際に書店とコンビニではどちらの方が良く売れているのでしょうか?
ageha:
コンビニの方が多いと聞いています。特に繁華街のコンビニが多いようです。
G:
現在70名のモデルがいるということなのですが、その中で専属モデルは何名いるのでしょうか?
ageha:
専属モデルは8人います。
G:
現時点で編集部員やスタッフは何名いるのでしょうか?
ageha:
常勤で働いている編集スタッフは私を含めて10名ですね。
G:
制作スケジュールはどのようになっているのでしょうか?
ageha:
毎月第2週あたりからレイアウトを回し始め、第3週あたりから入稿が開始され、第4週あたりで校了という流れです。撮影は月末から翌月の頭にかけて行われます。最初は2人しかいなかった編集部員が今は10人いるのでスケジュール通りに進行してくれますね。当初は人が少なすぎてスケジュール通りに行かなかったので、今はすごく助かっています。
G:
10名の編集部員の役割というのはどのようになっているのですか?
ageha:
1人で2企画ずつ受け持つという感じです。男性編集部員も2名いるのですが、男性はメイクやヘアのページってなかなかできないんですよ。方程式として覚えていても、やっぱり感覚が完全に違うので、結局、大阪で撮影してもらったり、リュック一つで札幌の「すすきの」に行ってもらったりしています。ページとかも作ってもらっているのですが、女性と男性では役割が違ってきますね。
G:
モデルについてお伺いしたいのですが、専属モデルであるagehaモデル、通称「ageモ」が有名ですが、創刊時はどのようにモデルを選定したのでしょうか?
ageha:
本当に初めの号は「nuts」という黒肌お姉系ギャルの雑誌の別冊だったので、nutsからモデルをお借りしながら独自に集めていたんですよ。そうしているうちに人気があるモデルが決まってきたという感じですね。その後は「この子は絶対に人気が出る」という子を全て私が選びました。
G:
では「読者モデル」から「専属モデル」になる基準というものは何なのでしょうか?
ageha:
読者アンケートなどでどのモデルが人気があるのか調査して、その中で人気がある子が専属モデルになるという感じですね。編集部員はもちろん、モデルの子も全部のアンケートはがきを見て誰が人気があるのか把握しています。そういった意味では人気がある子にそれなりのステータスを与えるというキャバクラのシステムと同じかもしれません。
G:
毎号読者モデル募集のはがきが付いていますが、読者モデルに応募してくるのは毎月何名ぐらいいるのでしょうか?
ageha:
厳密に数えたことが無いので詳しくは分かりませんが、1日に30~40枚くらいだと思います。
G:
1日に30~40枚というのは、他の雑誌に比べて多い方なんですか?
ageha:
他雑誌も同じくらいだと思いますよ。女の子って1度はモデルになりたいって思うものじゃないですか。
G:
読者モデルに応募してくるのは、どのような人が多いのでしょうか?
ageha:
他の雑誌と似たようなものになると思うのですが、PR欄に「見返したい」とか「努力して可愛くなりたい」とか「agehaに入ることによって何かを変えたい」と書いてくる子が多いですね。やっぱりそういうのが女心じゃないですかね。
G:
そうやって応募してきた人たちの中からモデルを選定する基準はどういうものなのでしょうか?
ageha:
「可愛いかどうか」、ただそれだけです。
G:
要するに、編集長の「直感」と「感性」で決めるということでしょうか?
ageha:
はい、その判断基準はぶれない自信があります。
■小悪魔ageha創刊までの経緯と基本スタンスについて
G:
小悪魔agehaという雑誌はどういうコンセプトで始めたものなのでしょうか?
ageha:
小悪魔agehaが出る以前に「男性が見て夜のお店を選ぶ」というような雑誌はあったのですが、そうではなくて、「夜のお仕事をしている女の子が同じ境遇で働いている全国の女の子たちのメイク・ヘア・ドレスなどを見て参考にできるような雑誌を作ろう!」と思ったんです。夜の仕事をしている女の子たちはさまざまな理由で働いていて、太陽の光を見ないでお酒を飲んだりしているので、本当に疲れてしまって、段々と病んでくるものなんです。そんな夜の女の子たちは、ちょっとでも派手な髪型にしたり、きれいなドレスを着たりするくらいしか楽しみが無いんですよ。だからせめて出勤前に髪型やドレスを決めるのに参考になるものを作りたいなと思っていたんです。
G:
具体的な流れで進めていった雑誌なんですね。そのコンセプトはいつごろから思いついたものなのですか?
ageha:
大学生のときに夜の仕事をしていたんですけど、何でキャバクラ用の雑誌が無いんだろうってずっと思っていたんですよ。以前「Hair&Make&nuts」というムックを作って、増刷するくらい評判がよかったおかげで、会社から何か好きなものを作ってもいいよと言われたのですが、大学時代にキャバのバイトをしていたときのことを思い出して「じゃあ、キャバの雑誌を作りたい」って言ったんです。初めは「は?」って感じで見られたのですが、局長が「失敗したら失敗したでいいよ」という感じでチャンスを与えてくれたんです。実際に思っていてもなかなかチャンスを与えられなかったのでうれしかったのですが、男の人には分からない世界観だったようですね。
G:
今まで小悪魔agehaしか見てなかったので、どういう経緯でこんな雑誌が生まれたのか全く分からなかったのですが、やっと理解できました。
ageha:
大手の出版社ならプレゼンテーションとかしなきゃいけないと思うのですが、うちは小さな会社なので局長に「こうしたいんです」と言うだけでよかったんですよ。
G:
すごいですね。大手では考えられないですよ。
ageha:
わたしの場合、それまでいくつか作っていて「失敗してもいいよ」という感じで始まったので、具体的なコンセプトなどは会社にも話していなかったんです。「わたしだけ分かっていればいいや。ほかに誰も分かってもらえないだろう」と思って自分の中だけで消化してましたね。
G:
最初にムックでスタートしたときは何名で制作していたのですか?
ageha:
わたしとバイトの子の2人で制作していました。今はモデルをしている子なんですけど。元々、nutsなどで読者モデルをしていた子で「編集もやりたい」と言っていたんですよ。でも、社員を雇えるほどお金がなかったのでアルバイトとして手伝ってもらっていたんです。その子は上京して一人暮らしをしていたんですけど、ここのアルバイト代だけでは生活ができないので、夜は歌舞伎町で働いてもらっていたんです。そうした中で「これよくない?」などといいながら2人で作っていましたね。
G:
すごいですね。今では10名まで編集部員が増えたと言うことなのですが、ある時点でいきなり増えたのでしょうか?それとも徐々に増えていったのでしょうか?
ageha:
徐々に増えていった感じですね。月刊になる時点でほとんど人がいなかったので、本当に死んでしまうと思いました。そのことに会社が気付いてくれて人を入れてくれるようになったので、今ではかなり増えましたね。実は会社の中で一番人数が多い編集部なんですよ。なので「すごく恵まれすぎてどうしよう、怖い……」って思うことがあります。今のように10人いれば1人ぐらいは入院しても大丈夫ですが、最初の頃みたいに本当に2人しかいない状態だと、どちらかが倒れたら終わりなのでいつも綱渡り状態でした。本当に今は幸せで仕方がないですね。
G:
小悪魔agehaは2005年10月に「nuts」の増刊である「小悪魔&nuts」として創刊され、2006年6月から「小悪魔ageha」に誌名変更、そして2006年10月から月刊化されてますが、どういった経緯で月刊化にこぎ着けたのでしょうか?
ageha:
最初は2005年10月に「小悪魔&nuts」の1号目を出したのですが、発売して3日で増刷になったんです。その時にある程度売れたので「これはいけるだろう」ということになって、その年の4月に「小悪魔&nuts Vol.2」を出たんです。でも、「nuts」とつくと黒肌のイメージがが強くなってしまうので、今の小悪魔agehaのように肌の色にこだわらないものを作るためには、とにかく名前を変えないといけないと思ったわけです。「小悪魔ageha」という名前は「小悪魔&nuts Vol.2」を出す前から既に考えていたんですよ。でも、月刊化したときに急に雑誌名が変わるのもおかしいと思ったので、次の号ですぐ「小悪魔ageha」に変更しました。その後、売り上げ部数が一気に上がったので月刊化にこぎつけたという感じですね。
G:
本当に評判がよくて月刊化につながったわけですね。
ageha:
そうなんです。会社が無理やり月刊化する雑誌もあるのですが、小悪魔agehaは確実に実績を積んで月刊化につながった雑誌なんです。それに、「6月1日発売」「7月1日発売」みたいな感じで「毎月1日発売」のギャル誌を出すのがすごい夢だったんですよ。いつかPopteenとeggの間に入るのが夢で、小悪魔agehaだったら並べる日が来るかもしれないと思っていました。でも、ムックだと1日発売にするのが難しかったので、1日発売にするには月刊化するしかないと思って当時は必死に働いてましたね。ギャル誌にとっては1日売りはあこがれの席になるので、最初は「おじゃまします」みたいな感じでようやく入れたという気持ちでした。
G:
「小悪魔ageha」という非常に印象的な名前なのですが、その雑誌名の由来はどのようなものなのでしょうか?
ageha:
わたしは肌の色などとは関係のないものを作りたいと思っていたのですが、「小悪魔&nuts」のnutsというフレーズを使ってしまうと黒肌のイメージが強くなってしまうので、どうしても別の名前にしたかったんです。小悪魔&nutsから使っていた「小悪魔」というのは、女の子にとって魔性的な意味も含む最高の褒め言葉だと思うんですよ。夜の仕事では「小悪魔だね」といわれる事は自分を評価してくれているという事なので、褒め言葉としていいなと思っていました。「ageha」というのは、夜っぽくて可愛い名前にしたいなと悩んでいるときに夢の中でアゲハチョウが出てきたんです。そのときに「それがあった、夜の蝶だった」って思って決まったんです。本当はagehaだけにしたかったのですが、商標が取れなかったため、頭に「小悪魔」をつけて「小悪魔ageha」という謎の名前になりました。最初はおかしいなと思ったのですが、今では世の中に浸透したのでよかったですよ。
G:
小悪魔agehaといえば非常に表紙が特徴的で、「nuts」から「ageha」に変わった時点で表紙のイメージがずいぶんと変わっていますが、これは何か方針転換があったからなのでしょうか?
ageha:
元々、小悪魔&nutsの頃からキラキラで可愛いというコンセプトは同じなんです。ただ、ロゴが小悪魔&nutsの頃はnutsのものを使わないといけないなどの制約はありましたけど、表紙も中身も基本構成は変わってないんですよ。
G:
実は全巻そろえている人がいて、その表紙を全巻並べてみると、号を重ねるごとにキラキラ度合いがエスカレートしていて、最初の頃と今とでは全然違うんですよ。
ageha:
もしかしたら今の表紙とは全然違うかもしれないですね。やっぱり最初は冒険するのが怖かったんですよ。特に小悪魔&nutsの時は売れないと月刊にならないので、できるだけいろんな人が見てもらえるように無難に攻めていたところがあるのですが、今では別に何をやっても構わないので、ロゴを崩壊させてみたり、今しかできないことをできるだけやろうとしています。でも毎月同じ事をしていても飽きるので、キラキラさせていない号もあるんですよ。
G:
表紙と言えばほかに気になることがあったのですが、「病」や「闇」など割と暗いテーマをタブー視せず、あえて表紙などで全面的に押し出すケースがありますが、これはなにか考えがあってのことなのでしょうか?
ageha:
やっちまいたかったからですね。なんか最近キラキラさせる雑誌が多いじゃないですか、週刊アサヒさんでもキラキラさせているくらいですし。わたしもすごく雑誌が好きでよく読むのですが、コンビニなどで雑誌を見ていると、あまりにもキラキラしすぎていてつまらないんですよ。どこを見てもピンクでキラキラしているのを見て、「女の子の雑誌がみんな同じになっちゃう」って思ったんです。それで、読者がどれを手にしても同じだと思わせてしまってはいけないと思ってあえて違うことをしてやろうと常に考えてます。また、女の子は真っ黒な側面も持っているので、そういった部分も前面に押し出していきたいとも思っていますね。
G:
確かに本屋で平積みになっている小悪魔agehaは特に目立っていますからね。
ageha:
でも、本当に最近の雑誌はキラキラさせているのが多いんですよ。特に下の年齢層の雑誌は上の年齢層の雑誌の真似をする傾向があるので同じようなものが増えてくるんです。そうなってくると飽きちゃうじゃないですか。だからコンビニで見かけて「何だこの表紙は!気持ちワル!」みたいなのでいいのでビックリさせてあげたいですね。
G:
タイトルからしてほかの雑誌とは一風変わった特集が目立つのですが、今まで組んだ特集などの中で特に読者からの反響が大きかった特集はどのようなものだったのでしょうか?
ageha:
基本的にメイク系の特集や巻き髪系の特集は常に人気があるんですよ。基本的に絶対に人気が出ると判断したものしかしないし、人気が出ると判断したら土壇場でもひっくり返すタイプなので、これまで失敗したなと感じた特集はありませんね。ただ、やってみて意外だったというのは、先程もお話しに出た「人間だから病んでいる」という「病み(闇)」特集ですね。実際病みは「どっちかなぁ……」と思ったんですよ。でも絶対にうちの読者は共感してくれるだろうと思って掲載してみるとすごく反響が大きかったんですよ。
G:
「病み」というのはずいぶんと思い切った特集ですよね。そういった傾向はアンケートはがきなどで汲み取れていたのですか?
ageha:
アンケートはがきはすごく参考にしていますが、「病み」に関しては創刊当初からやりたいと思っていたことなんです。女の子が好きなものや共感できる事を載せるというのが基本なんですが、「病み」に関しても女の子として生きていれば誰もが通ってくる道ですし、人間だから病むのは当然。だから、病んでいるのはあなただけじゃないんだよって言う事をみんなで分かり合いたかったんです。そうしたらみんな共感してくれて、すごく人気が出たんですよ。
G:
最初からやりたかったということなのですが、創刊した直後に病み特集をやらなかったのは何か理由があったのですか?
ageha:
病み特集も含めてやりたいことはたくさんあったのですが、創刊当時は確実なことしか怖くてできなかったんです。今みたいに30万ベースになって初めて冒険できるようになったのですが、当初はまだ怖くて「病み」を扱う勇気がありませんでしたね。「これをいきなりやるのもなぁ……」って。
G:
今話していただいた病み特集も含めて、特集の決め方というのは編集部全員で考えているのですか?それとも、編集長が思い切って突き進んでいく方が多いのでしょうか?
ageha:
わたしが勝手に決めることが多いですね。それでもちゃんと編集会議はしています。編集会議で眉毛の形はどうなのか、トップはどれくらい盛った方がいいのかなど、女の子たちは何が好きなのかを私自身も肌で感じつつ、各編集部員たちにも実際に感じてもらうため、常にチェックしておいてほしいと思っています。
G:
今までのお話を聞くと、小悪魔agehaって読者目線で作っているんですね。
ageha:
そうなんですよ、絶対に読者の子たちから離れないようにしようと思っています。ゴルフとか絶対にしたくない。ゴルフなんかしたらageha作らないって言っているようなものですね。貧しい生活をするのがわたしの役割だと思っています。
G:
編集企画などでさまざまな企画が出てくると思うのですが、これは無いと思った企画はありますか?
ageha:
企画会議の時にそれぞれ企画を持ち寄るんですけど、実は企画会議ってあっても無くてもどっちでもいいと思っているんです。企画会議で出るプランって、自分が考えたプランというよりも通るためのプランじゃないですか。わたしのチェックやみんなに納得してもらうためのプランを考えてくるので、通りやすいものがでてくるんですよね。だから特に飛び抜けていい案も、ハチャメチャな案も出てこないんです。本当は心の中で思っていることをわたしがもっと引き出してあげないといけないのかもしれないのですけど……
G:
ちなみに、今まで小悪魔agehaを作ってきて修羅場というか大事件と呼べるようなことは無かったのでしょうか?
ageha:
大事件といえるものは無いですね。でも、言えないことが多いですね、キャバクラさんが絡んでくるので。夜の仕事の女の子たちがモデルで出ていますし、夜のお店の人たちとおつきあいしなければいけないので、そのあたりは普通の編集部とは違うんですよ。
G:
修羅場をくぐってきたという感じですかね。
ageha:
最初の頃は新入りって言うか、飛び入り参加って感じだったので大変でしたね。今は普通におつきあいしてもらえますけど。
小悪魔agehaの編集部を見せてもらうことに。1階のエントランスと違って、いかにも「編集部」という感じ。
中條編集長がいっていたように、ちゃんと男性編集部員もいました。
中條編集長の机。正面に鏡が置いてあるため、ファッション雑誌の編集長という雰囲気がよく出ています。
仕事をしている様子。隣に積んであるアンケートはがきはすべて読んでいるそうです。
これは雑誌で利用した物でしょうか。
ファンにとってはものすごい貴重かもしれないちょうちん。
G:
次に、インターネットと関係したことをお伺いしたいのですが、公式通販サイト「小悪魔agehaショップ(http://ageha-shop.com/)」はいつ頃からできたのでしょうか?
ageha:
実はかなり前からあるんですよ、創刊1周年記念を終えたあたりからじゃないですかね。でも、私はあまり通販に興味が無いんですよ。私たちは雑誌を作っている人間ですから、物を売ることに関してあまり興味が無いんです。
G:
あれは編集部で「やろう!」と言ってできたものではないのですか?
ageha:
会社に言われたときは本当に嫌でしたよ。でも会社の方針として儲けるためにやらなきゃいけないじゃないですか……
G:
通販サイトは編集部の意思ではなく会社の方針で出来たサイトなんですね。
ageha:
そうなんです、最初に話を聞いたときは本当に嫌でした。読者の子がいろんな情報を得るために雑誌を買ってくれるのに、そこで物を売りつけるというのはすごく嫌なんですよ。やらなきゃいけないと言われた時はすごく抵抗しました。でも今は仕方が無く服の監修やどの服をどのモデルに着せるかといった見せ方などはわたし自身が徹底的に見ています。物を売りたいわけではないのですが、小悪魔agehaの事を分かってない人たちに小悪魔agehaを汚されたくないからなんです。私たちは通販ページを作ることができないので、ホームページ作成などに長けた人が来て作ることになるわけですが、そういう人たちってどの服が可愛くて、どの服が売れるのかちんぷんかんぷんじゃないですか。そういう人たちにagehaを汚されないために内容に関してはすべて監修しているんです。また、私たち編集者は物を作る人間なので、物を売るとか商人的な考えが良くわからないんですよね。売り上げがどうのこうの言われても「はっ!?」みたいな感じじゃないですか。それでも汚されたくはないので、仕方がなくやっています。でも、やっぱり今でも売りたくはないですね……こんな事言ったら会社に怒られてしまいますが……
G:
ちょっと雑誌自体の指向が違うので一概には比較できないのですが、集英社の「LEE」は雑誌と連動した通販サイトLEEmarche(リーマルシェ)を持っており、「年間売上げが7億円を超えた」ということなのですが、小悪魔agehaショップではどれぐらいの売上になっているのでしょうか?
ageha:
「売り上げのことは絶対に私の耳に入れるな」と言っているのでまったく知らないんです。どんなに儲かってもうちの編集部員のお給料が上がるわけではないですから。
G:
もしもの話なのですが、雑誌という紙媒体ではなくインターネットという媒体で「小悪魔ageha」を作るとすれば、どのような作り方をすると思いますか?
ageha:
作らないですね。ほかの人が作ろうとするかもしれませんが、わたしはやろうと思わないので分からないですね。作り方も分からないですし、機械系が苦手なんです。
G:
今までのお話を伺った限り「雑誌大好き」という感じなのですが、ネット上ではあまり「ファッション」についての情報が言うほど多くなく、まだまだファッションに関しては雑誌が主導権を握っていると思うのですが、今後「ageha」はインターネット、あるいはモバイルとの関わりなどは予定されてないのでしょうか?
ageha:
私は小さな頃から雑誌が好きで、ずっと紙で情報を得る喜びを感じながら育ってきているため、インターネットで「小悪魔ageha」を載せるというのは全く考えられないんです。携帯小説などを読んだりするのも全く問題ないと思いますが、雑誌という楽しみもあるということを忘れられてしまっては困りますよね。雑誌で育ってきた私たちが編集者という立場になったので、今度は下の子たちに面白い雑誌を作って読ませてあげないといけないと思うんです。そうしないと、どんどん雑誌を読んでくれなくなっちゃうじゃないですか。そうするとインターネットの方に流されていってしまうと思うんです。やっぱりインターネットのように手軽にお金出さなくても簡単に見れてしまうって、確かにそんな手軽で面白いものなんて無いじゃないですか。でもそうじゃなくて、コンビニや本屋で表紙を見てビックリして、中身を見て度肝を抜かれて買って、そうやって買った雑誌をを隅々まで見るという一連の流れが、こんなに楽しくて面白いんだと感じさせるように私たちが頑張らなければならないんだって思うんです。
■本に対する思いと編集者になるきっかけについて
G:
編集者になったきっかけは何だったのでしょうか?
ageha:
小学生の頃からなろうと思っていました。本当に雑誌が好きだったんですよ。小さい頃って音楽が好きで将来ミュージシャンになりたいとか、サッカー選手になりたいといった夢ってあるじゃないですか。わたしの場合は小さな時から雑誌が大好きで雑誌を作る人になりたいと思っていたんです。10代の半ばあたりでその夢を忘れてしまったのですが、18歳の時に創刊されたばかりのeggを読んで「こんなにストリートに根付いていて、わたしたちの必要な雑誌を作ろうとした人がいるんだ!!」と感動し、絶対にいつかeggを超えてやろうと思って編集者になろうと決めたんです。
G:
中條編集長のプロフィールについて、ほかの雑誌などでは「これまでさまざまな雑誌に携わる」と書いてあるものの、具体的な雑誌名がよく分からないのですが、これまでどのような雑誌に携わってきたのでしょうか?
ageha:
すみません、別の会社の雑誌なので具体的な雑誌名は言えないんですよ。元々入ったのはこの会社(インフォレスト)ですが、1年で辞めてしばらくフリーで他のギャル誌を担当していました。
G:
小学校の頃はどのような雑誌を読んでいたのですか?
ageha:
ファッション雑誌としてはプチセブンやセブンティーンなどをよく読んでいましたが、ほかにもありとあらゆるジャンルの雑誌にお小遣いを使って読んでいましたね。もちろんジャニーズなども好きで、「Duet」「POTATO」「Myojo」なども読んでいました。その時好きなものや興味があるものに関する雑誌は全部見てきましたね。
G:
これはすごい!と思う雑誌や、実に惜しい!と思う雑誌があれば教えてください
ageha:
結構たくさんあるのですが……その時その時で流行とか勢いがある雑誌ってあるじゃないですか。この間まで「この雑誌すごくいいなぁ」と思っていたけど、最近見ると「なんだかなぁ……」というものもあるので、何とも言えないですね。
G:
今でもほかの雑誌には目を通しているのですか?
ageha:
大体の雑誌は読んでいますね。基本的に全く違うジャンルの雑誌も読もうと思っていますね。全然読みたくない雑誌も読むときがあるんですよ。
G:
ここまでの話を聞いていると、雑誌についての思いが非常に強く、まさに「雑誌の鬼」と言っても過言ではないほどのレベルに達していますね、すごいです。
ageha:
あと、創刊号マニアなんですよ。なんかその号でなくなるかもしれないと思って……。ただのオタクですね、創刊号を見つけたらすぐに買います。表紙がおかしいとか、ちょっと失敗しちゃっている号とかあるんですよ。そういうのもついつい買ってしまいます。この間も男の子の格好をした女の子のコスプレイヤーのムックみたいなのがあって、表紙が明らかに失敗していたんですよ。ついそれも買ってしまいました。DVD付きでなんと1600円もしたんですけどね(笑)
G:
そういうのはコンビニや本屋さんに行って、見たことがないものがあれば買うって感じですか?
ageha:
わざわざ行くと言うことはないのですが、コンビニに行くのは生活の一部じゃないですか。書店売りしかない雑誌などは本屋さんに行って、すごく面白そうに感じた雑誌は買ってしまいますね。でも、最近は「これは伝説になるぞ、今のうちに買っておかないと!」って思うようなものはないですね。以前は伝説になりそうだなって思うものが結構ありましたけど。
G:
例えばどんな雑誌が伝説級として思い出に残っていますか?
ageha:
今でも伝説と思っているのは、8年くらい前にブブカの別冊で「プチブブカ」という女の子向けのブブカが1号だけ出たときがあったんですよ。女の子向けのブブカなのでジャニーズ系のネタが多かったんです。今考えると、「だから1号で消されたのかな」と思うのですが、本当に面白かった。もともと当時のブブカがすごく好きだったので、それの女の子版ということですごく面白かったですね。伝説と思うものって、やってはいけないものだったり、完全に編集者が職人として作っているものが多いので、面白いものが多いんです。その代わりにクレームが多かったり広告が入らなかったりして、本として成り立たなくなるような場合が多いようです。だからなのか、最近ではそういった雑誌がなくなりましたね。
G:
そこらへんの事情が難しくなりましたからね。
ageha:
「何でこうなっちゃったんだろう」と思う謎の雑誌なんかも好きですよ。
■雑誌業界全体の今後の展望をどのように考えているのか
G:
出版不況や廃刊などをよく聞くようになりましたが、今後出版業界はどのようになっていくと思いますか?
ageha:
こんなことになるとは思っていなかった。自分が小さいときに雑誌を読んでいたときは、こんなにも出版不況と言われるなんて想像もしていませんでした。ずっと世の中は不景気だと分かってはいましたが、こんなに雑誌がヤバイっていわれる時代が来るとは思っていなかったので、いまだにピンときてません。ヤバイも何も、元々貧乏な編集部で仕事をしているので何も変わっていないような感じなんです。
G:
なるほど。最初からヤバイ状態から入ってきているから、「今更何を言っているんだ」という感じなんですね。
ageha:
大手は経費削減とか言ってますけど、「ヤバイ」と言っている意味が分からない。どこかからお金を出して借りてくるのではなく、最初から物を拾って利用するくらいだったので経費なんかほとんど無いし、人がいなくて当たり前だったし、コピー機も壊れていて当たり前という感覚なので、大手さんほど危機感がありません。ずっとそのまま読者が求めているものを作っていくのが編集者にとって大事にしなければいけないものであって、それを全員でやっていけばいいんじゃないかなと思っています。よく雑誌はネットに取って代わられるとか言われますけど、意味が分からないんです。だって全然違うものじゃないですか。イスとケーキくらい違うものと思っているので。
G:
確かに。私自身、雑誌もネットも両方経験していますのでよくわかります。
ageha:
全然別物じゃないですか?紙をめくることとネットで見るものって本当は全く違うし、見る環境も読者層も違ってくるのに、雑誌が売れないことをネットのせいにしているだけだと思うんです。特に世の中の出版の人って。
G:
確かに「何でもかんでもネットのせいにしないで欲しいなー……」とは思いますね(苦笑)
ageha:
ネットに取って代わられたのではなくて、雑誌がダメになっただけなのに、すべてインターネットが普及したからとか携帯世代がどうのこうのって言っている意味が全く分からないんですよ。そんなことよりも雑誌ってすごく楽しい遊び道具なのですから、それを面白く作っていればみんな読んでくれる訳じゃないですか。それをほかのものと比較するというのが、意味が分からない。
G:
以前サイゾーウーマンのインタビューで「それにしても、大手出版社さんはバイク便とか使いすぎなんですよ! あんなに出してたら、そりゃ雑誌潰れますよ。」とあるのですが、小悪魔agehaの場合はほかの編集部とは違う作り方をしているということなのですか?
ageha:
本当にどうしようもないときはバイク便を使いますし、代金を印刷所持ちで利用することもあります。でも元々バイク便を使う習慣が無かったので、今でも「使ったら悪だ」みたいに思っているんですよ。ですから、極力電車に乗って持って行ったり、原付で原稿を持って行ったり、無理をしてでも自力で持って行ったりしますね。ずっとそういうのが普通だと思っていたのですが、小悪魔agehaとして大手の出版社さんの取材を受けるようになってからすごい数のバイク便が飛んでくるようになって、初めて普段からバイク便を使っている出版社が多いことを知ったんですよ。歩いていけるくらい近所の出版社さんですらバイク便を使って持ってくるので本当にビックリしました。でも、この会社ではバイク便なんかめったに使わないのが普通だし、そっちの方が正常な金銭感覚なんだと思います。
G:
私も雑誌社で働いていたことがあるのですが、つぶれている雑誌や大ピンチの雑誌を見ていると「バイク便の数を極力減らすか、なくすかするだけでかなり経費削減になるんじゃないか」と思うときがありますからね。
ageha:
そうなんですよ。
G:
そういう意味では小悪魔agehaではコスト感覚が厳しいというか、まっとうな感じなんですかね。
ageha:
そうだと思います。現在は編集部員が10人もいるので今の子は恵まれているなと感じています。わたしはこの会社がひどいときから始めているので、今の子たちはぜいたくしているのかもしれないと思うときがあるんです。わたしは必要なものをお金をかけずにそこら辺から拾ってきたり、借りてきたりするくらい貧乏な感覚で育っているのですが、それが普通なのかなと感じています。逆に最初に最大手の出版社に入ってそこでの生活に慣れてしまうと、ほかの雑誌を作れなくなってしまうと思うんです。確かに貧乏だったのはつらかったのですが、今思うと貧しいところで生きているくらいでちょうどよかったなと思っていますね。
G:
ちなみに、他の雑誌がダメになった理由はどうお考えですか?
ageha:
出版社の人たちって、みんな頭がイイからじゃないですか。わたしは育ちがよくないしあまり頭がよくないので、同じような境遇の子の気持ちがよく分かるのですが、頭のいい人が言っていることってよく分からないんですよね。たぶん世の中の読者の人たちも同じだと思うんです。すごく頭のいい人が作った賢い雑誌を見ても、何か難しいこと書いてあるし、すごく上から目線で「これが流行する」的なことを書いたって共感できないと思うんです、特に女の子たちはそうじゃないところで生きているわけですから。読者の子たちは一部の頭のいい人とか恵まれた人たちと違うんですよね。確かに高学歴で頭のいい人はすごく漢字とか知っているし、入稿の仕方を覚えるのが早いし、飲み込みが早いからいいと思うのですが、読者の子はそうじゃない子もたくさんいるんです。だから、わたしは読者と同じ立場に立って一緒になって作りたいなって思っています。
G:
小悪魔agehaが当たった事によってほかの出版社から似たような雑誌が出版され、ことごとく外してきているのが多いと思うのですが、なぜ似たような雑誌が外してしまっているのだと思いますか?
ageha:
なぜ似たような雑誌が次々と無くなっているのか理由は簡単で、男性がagehaを作ろうとして雑誌作りをしているからなんですよ。本当に読者のことを考えて作るのであれば、まったく違うものが生まれてくるはずなんです。編集部員の子たちにも「agehaだからこうだ」「agehaだからこうなる」って考えないで作って欲しいと言っています。読者が「何を知りたがっているのか」「何を求めているのか」ということだけを考えて作っていかないといけないのに、ほかの雑誌社さんはagehaを作ろうとするから失敗してしまうんですよ。
G:
最初から向いている方向が違うんですね。
ageha:
そうなんですよ。いくらロゴを一緒にしたって、表紙をキラキラさせても全然ダメなんです。世の中には「かわいい」か「かわいくない」の2つしか無くて、自分たちが「かわいい」って思うものを作らないと女の子は見向いてくれないんですよ。それを昨日まで全然違う雑誌を作っていた男の編集長が作るのは、感性が全く違うのですごく難しいと思うんですよね。色をピンクにしてみてもぜんぜん違うし。でも最初は怖かったですけどね、「あぁ……怖い、どうしよう……」って。
G:
初めてパクリが出たと知ったときはどうしました。
ageha:
すぐパクリ雑誌を出した編集部に電話しました。
G:
どんな内容だったんですか?
ageha:
別に苦情ではなくて純粋に聞きたいことがあって電話をしたんです、「編集者として恥ずかしくないんですか?」って。「わたしは編集者としてほかの雑誌の内容をすべてまねるということは絶対にしたくないと思っているのですが、あなたは編集者として何から何まで同じに作って恥ずかしくないのですか?」って、もう嫌がらせですよね。
G:
確かに言いたくなりますよね。
ageha:
相手も「もう切ってもいいですか」としか言わなくなるんですよ。
G:
それはひどいですね。
ageha:
でも、途中で「かわいそうだな」って思ってきたんです。その人も恐らく会社に「agehaのパクリ雑誌を作れ」と言われているわけで、無理やりパクリ雑誌を作らされていると思うんです。そう考えると何だかかわいそうになってきて電話を切りました。今はあまり気にしていません、作っている人もかわいそう……。
G:
もう完全に怒りを通り越して同情って感じですかね。
ageha:
それにツライと思うんですよ。キャバクラとも付き合わないといけないし、モデルを探そうにもうちが70人くらい抱えてしまっているから残っている子も少ないし、大変なんだろうなぁと思って。
G:
ほかの雑誌ではよく付録がついている場合がありますが、小悪魔agehaでは全然付いたことがないですよね?
ageha:
そうですね、今まで付録を付けたことはないですね。
G:
何かポリシーみたいなものがあるのですか?
ageha:
自分が欲しいと思うような付録があれば付けたいのですが、付けたいと思うものは付けられないものばかりなんですよ。例えばスプレーとかコテとかついているとうれしいじゃないですか。でも法律上はスプレー缶は爆発物扱いになるらしくて付けることができなかったり、予算上付けることができないものがほとんどなんです。いらない物を付けるくらいなら付けない方がいいと思うので、今まで付録が付いていないだけなんです。どうしてもスプレーを付けたいんですけど、絶対に無理みたいなんですよね。
■さまざまなところで物議を醸した「飯島愛追悼ページ」について
G:
最後にいろんなところを調べても「ノーコメント」と書かれてあったので質問しようかどうか非常に迷ったのですが、小悪魔ageha3月号の飯島愛追悼ページがありましたよね。あれはどういった経緯で掲載したのでしょうか?
ageha:
みんなが好きだったからです。
G:
それはモデルさんから要望があったということですか?
ageha:
要望を受けたというわけではないのですが、みんな愛さんのことが好きでちょうど撮影の時期とも重なったんですよ。愛さんが亡くなったのがクリスマスのときで、その頃ちょうど月末で撮影を行っている最中だったんです。コメントどころか「ノーコメント」とも答えたことがないのに、何で「ノーコメント」としか言ってないことになっているんですかね?
G:
もしかしたら会社の方ではねられたのかもしれないですね。
ageha:
そうかもしれないですね。基本的には本当に読者が求めている事とか、共感できる事しか載せないのですが、得てしてそれって批判を産むこともあると思うんですよ。例えば深夜放送でやっていたことをゴールデンですると受け入れてもらえないみたいな。でも、わたしたちは自分たちの為に雑誌をつくっているのであって、正直agehaが狙っていない層の人に読んでもらわなくてもいいと思っているんです。けど、今はあまりにも広がりすぎていて、いろんな人が読んでいるじゃないですか。だから、わたしたちが感じた事を共感できない人とか面白半分で見ている人、「このメイクが変」だとか「この頭は何だ」という気持ちで見ている人からすると、不謹慎に見えたのかもしれません。でも、わたしたち女の子にとっては愛さんは生き方もすべてが本当に大好きな人で、気持ちを共感できる人だったので、みんなで追悼しようということになったんです。でも、それはほかの雑誌では絶対にやらない事は分かっていました。でも愛さんが生きてきた道というのは、どっちかというとageha的な道であって、わたしたちと同じようにたくさん傷ついて頑張って生きてきた人なんです。だから、そんな愛さんをみんなで真摯にお見送りする……それがわたしたちのやり方かなと思ったんですよ。そうして、女の子たちみんなでやったって感じですね。
G:
ここまでのインタビューで「読者目線」「わたしたちの求めているもの」という話しから今の話を聞くとなるほどと思いますね。
ageha:
でも、それが分からない人にはわかってもらえなくてもいいと思っています。
G:
そうでしょうね。なかなか理解してもらえないでしょうね。
ageha:
逆にちょっとでも自分たちがやることで批判が来るくらい、あまりにもゴールデンタイムな感じの雑誌になったんだなぁと思いました。やりたいことができないのであれば、5万部にしてでもいいから、みんなで共感できるものをわたしは作りたいと思っています。
G:
本日は貴重なお時間を頂きありがとうございました。
ageha:
こちらこそ、ありがとうございました。
これで取材は終了。帰りはビビらないで鉄の扉を突破しました。
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