インタビュー

ロリポおじさんで有名なロリポップのpaperboy&co.に行ってきました


ロリポップ!レンタルサーバーJUGEMGrouptubeカラメルなど、一回聞いたら耳に残る名前のサービスを数多く手がけている「paperboy&co.」に行ってきました。

どこからあんな面白いサービスの名前が出てくるのか、ペパ研など一風変わったサービスの狙いはなんなのか、どういった人々があれを作っているのかなど、いろいろと聞いてきました。
paperboy&co.の入っている渋谷セルリアンタワー。


ミーティングスペースには付箋紙がいっぱい貼られている。


・paperboy&co.はこんな会社

GIGAZINE(以下、G):
paperboyさんはとても多くサービスを手がけていますが、どこから始まったのでしょうか。

佐藤(以下、S):
2001年に「ロリポップ」から始めまして、2003年にpaperboy&co.という会社を立ち上げました。そのあとはレンタルカートやドメイン取得サービス、ブログやソーシャルと進んでいきました。

G:
サービスごとにブランド名を統一せず違ったものにしているのは何か狙いがあるのでしょうか?

S:
paperboyではビジュアルやデザインで見せることを重視してやっていて、例えばホスティングとブックマークが同じデザインでやっても面白くないと思ったんです。なので、ありものでやるのではなく、一から作ることを楽しんでブランドを作りあげていっています。

G:
新しいサービス開始のリリースが来たときに、paperboyのものは「あれ、この名前はひょっとしてpaperboyか?」というようなものになっているのですが、サービスの名称はどのように決めているんですか?

S:
毎回違う人間が決めていますね。サービスを立ち上げる時に社内でネーミング会議を行っているので、会議で出た20~30ほどのネーミング案から絞って決めています。

水と新聞。


・ロリポップについて

G:
ロリポップは現在どのような収益構造になっていますか?

S:
paperboyの中でもロリポップは重要な位置を占めていて、収益の70%を占めています。サービス開始以来約50万人の利用者がおり、個人向けホスティングでは国内有数となっています。

G:
すごい数ですね。

S:
有名人のサイトなどでも、エラーページを見るとロリポップだったりすることがあって、「ああ、うちのサービス使っているんだ」と気付くことがあります(笑)

G:
ロリポおじさんは初期からいますよね。

S:
女性に受ける「キモかわいい」というコンセプトで作りました。

G:
利用者の男女比はどうなんでしょうか、やはり女性が多いのですか?

S:
現在の新規申し込みについては男女それぞれ五割ずつほどです。最初は同人活動で利用する人が多く、女性ユーザーがほとんどでした。その後ロリポップがメジャーになるにつれて、男性ユーザーが増えたという形です。

G:
同業他社と比べてもかなり安いと思うのですが、これはどうしてなのでしょうか?

S:
電話でのサポートや請求書の郵送などを廃止することで、コストの削減を実現しています。あとは福岡でサービスを始めたので、周りの動向や価格設定が分からなかったというのもありますね(笑) 安ければみんな使ってくれるだろうという狙いでやっています。

G:
ムームードメイン」もかなり安いですよね。

S:
ムームードメインとロリポップを一緒に使ってもらって、そこで収益を上げればいいという考えがあったので、安めの価格設定にしています。

G:
なるほど、それである意味挑戦的な価格設定にしているんですね。

オフィスの様子。


・サービスの立ち上げ

G:
新しいサービスはどのような流れを経て実現するのでしょうか?

S:
2003年ごろから「ロリポヒルズ」や「ホムペロリ」といったエンタテイメント系の楽しめるサービスを開始していたのですが、その後自分たちはアプリケーション開発が得意であるということに気付いて「JUGEM」の開発に取りかかりました。そして、ブログのブームが来ることが分かっていたので早くからロリポップ!ではMovable Typeの詳細な導入マニュアルを設置するなどしました。

G:
そして「キヌガサ」でソーシャルネットワークサービスに参入ということですね。

S:
2004年からGREEやmixiのサービスが始まって、SNSが来ているなということで社長の家入がブログに「うちもソーシャル始めます」とウソを書いたんですよ。そうしたら結構反響があったので作ることになりました。実質一ヶ月ぐらいで作りましたね。

G:
すごいですね…。そして次はRSSのニュースリーダーに「PAIPO READER」でぽんと入ってきますよね。

S:
これも家入が個人で2003年ごろに作ってしばらく放っておいたのですが、余裕ができたので会社のサービスとして立ち上げたのがこの時期だったんです。

G:
結構トップ主導型なんですね。

S:
トップが自分で作ってしまいますので(笑)

G:
自分で作ったものを本格サービスに持っていくところがすごいですね。2004年ごろなら最先端を突っ走っている感じですよ。

S:
最近みんながやってきていることが、うちにとっては過去のことみたいなんです。当時はそういうサービスがなかったので目立っていたというのがありますね。

G:
2005年に「ペパ研」が始まっていますが、突然こういうのを始めたのはなぜなんでしょうか?

S:
PAIPO READERも社長個人による活動から始まっていますし、そういった個人活動を会社としてもっと支援したいという考えから始めました。

G:
ここから始まった「heteml(ヘテムル)」というのは、他には類を見ないデラックスな感じで変わっていますよね。

S:
海外ではクリエイター向けのホスティングサービスがいくつかあるのですが、日本ではなかったことから「じゃあ我々がやらないとな」と思ってやることに決めました。ネーミングについては、うちの社員の一人が電車の中で女子高生が「html」を「ヘテムル」と読んでいたのを偶然聞いたらしくて、そこから決定しました。

G:
htmlでヘテムル、面白いネーミングですね。このヘテムルの利用状況はどうなんでしょう、実際にクリエイターが使っているんでしょうか。

S:
そうですね、クリエイターやクリエイターを目指す人、憧れる人などです。Flash Media Server やColdFusionがプリインストールされているので、そのあたりに興味のある人が多いですね。

G:
SNS構築サービスの「Grouptube」については、なぜこのサービスを始めようと思ったのですか?

S:
前からこのサービスはやりたいと思っていたんです。他では構築に高い費用がかかったりするのですが、キヌガサで培ったノウハウを生かして、我々がやる以上、格安のASPサービスがいいだろうと思って導入しました。ネーミングは語感が良かったからですね。

G:
2006年にオンラインショッピングポータルや大容量ホスティングなど、さまざまな方向性の違うサービスが始まりましたがどのような理由からなのでしょうか?

S:
ロリポップ!は女性向けホスティングサービスということで始めていたので、男の子向けサーバーとして「チカッパ!レンタルサーバー」を始めました。ロリポップ!とムームードメインの開発は福岡で行っているのですが、名前はせっかく福岡なんだしということで「力いっぱい」という意味の福岡弁の「ちかっぱ」から取りました。

G:
なるほど、そうやって名前が決まったんですね。

S:
カラメル」は「商品がいろいろ絡まっている」というショッピングモールとして始めました。統合IDサービス「JugemKey」は我々が提供しているサービスのさまざまなIDを統合させるためのサービスです。我々としては珍しい名前の付け方ですが(笑)

G:
確かにそうですね(笑)

G:
各サービスの主な利用者層はどうなっているのでしょうか、偏りとかはありますか?

S:
10代から30代の前半ぐらいまでですね。10代の方には、名前のイメージがかわいいので申し込んでもらえるのかなと思いますが、そういった女子中学生などにもわかりやすいようにサイト名やページの雰囲気を作っています。中には通販を初めてされる方もいるので、お金の振り込み方などが分からない方もいらっしゃるので、分かりやすいページ作りを目指しています。

・paperboy&co.について

オフィスの様子


こんなところにもオフィスグリコの魔の手が!


G:
従業員の数はどうなっていますか?

西岡(以下、N):
88名です。そのうち正社員が67名ですね。残りはアルバイトと派遣社員という形です。

G:
デザインはすべて外部に依頼しているのですか?

N:
内部でやっています。デザイナーは7名いますね。

G:
ずいぶん多いですね。デザインに力を入れている理由は社長さんのこだわりとかですか?

S:
そうですね、社長自身デザイン志向が強い人間だからというのがありますね。クリエイティブについては社長が細かい指示を出しています。

G:
一日の平均的なスケジュールはどうなっていますか?

S:
基本は10時出社の19時退社です。サポート部門などは深夜業務があったりしますが、うちは家族持ちが多いので、定時で仕事が終わるようにしていますね。ベンチャーらしくないベンチャーと言われています(笑)

オフィスの様子のムービー。


G:
昼食はどうされていますか?

S:
セルリアンタワーの中には社員食堂がないので、基本的に外食ですね。弁当を持ってくる人間もいます。

G:
佐藤さんはどこに食べに行くんですか?

S:
よくカレー専門店に行きますね。

N:
私は毎日違います。

S:
うちの社員は福岡出身の人が多いので、東京の昼食が1000円かけても満足できないことに不満を持っている人が多いですね。

G:
そういえばロリポップは福岡の方で開発をしているということですが、どうして福岡に支社があるのですか?

S:
福岡は電車の遅延がありませんし、職場も家から近くで済むため、仕事をしやすいんです。やはり静かに仕事をしたいという人が多いですからね。東京は開発スタッフがほとんどです。東京の方が情報や人材が集まりますね。

G:
paperboyは会社が始まってからかなり経っていますが、新卒採用はいつごろから始めたんでしょうか。

S:
まだ中途採用しかやっていなくて、新卒採用の予定は今のところ無いです。経験を積んだ即戦力になる人材が必要なので、新卒採用はなかなか難しいんですが、大学を卒業したばかりの人が中途採用枠で応募してきて入社、というケースはあります。

G:
社員の数はどのあたりから増えてきましたか?

S:
業務を拡大した2003年の11月と、東京での採用を始めた2004年の3月あたりですね。

G:
このあたりでGMOインターネットグループの名前が出てくるのですが、GMOグループに入ったのはどうしてですか?

S:
GMOはインフラ系のサービスに強く、我々にはインフラ周りで強いパートナーが必要だったためです。

GMOグループの受付。


・会社自慢、PR

G:
paperboyで働く上の自慢はありますか?

S:
うちはあまり特殊なことはないですね。サービスを立ち上げていくことが面白いなと思っているので、仕事をしているのが面白いです。サービスが立ち上がる時に社員にくす玉を割らせたりしています。

くす玉に入っていたものいろいろ


G:
それは最初からやっているんですか?

N:
去年サービスをいっぱい立ち上げた時にお祝いをしたいと思って、夜8時ごろ東急ハンズにくす玉を買いに行ったのが始まりですね。

S:
仕事している時に「ちょっとちょっと」って呼んで割らせているので、恥ずかしそうにしています(笑)

G:
サービスの運営などで伝説的なエピソードや苦労したエピソードはありますか?

S:
家入の本にも書いてあるのですが、サーバーを借りていた会社のうちの一つが突然倒産したことですね。一ヶ月以内にサービスを終了するとのことで、深夜にサーバーの移転作業をするはめになりました。

G:
倒産はさすがに予想できませんよね…その時はユーザーさんへの告知はしたんですか?

S:
告知を出して、一日一サーバーずつ移転という感じで作業をやりました。最終的に何事もなくてよかったですけど、それがGMOとの資本提携のきっかけにもなりましたね。

G:
レンタルサーバーというのは個人向けと平行して法人向けにやる企業も多いと思うのですが、どうして個人にスポットを当てたのでしょうか?

S:
我々も個人でHPを管理していたりするので、同じように個人で作っている人たちの支援をしたいと思うようになって始めましたね。GMOグループの企業には、法人向けのホスティングサービスを行っている会社もありますので、より個人向けにフォーカスするようになりました。

天井に段ボールを貼り付けてエアコンの風が来ないように防衛中。


・サービス利用のコツなど

G:
paperboyのサービスを使うコツなどありますか?

S:
サーバーを使ってHPを運営するだけではなくて、宣伝の仕方やHPの作り方、ブログも記事を書くだけじゃなくてブログのテンプレートに力を入れてみたり、見せ方にこだわって楽しんで欲しいと思っています。我々のサービスを使って、デザインを極めてもらえたらいいですね。

G:
ペパ研ができたとき、バナナとかドリアンとか並んでいて「paperboyどうしたんだろう?」と思いました。これはペパ研の中で実際に作っている人たちの反応はどうだったんですか?

S:
あんまりみんな深く考えてやってもらいたくないので、果物の並びにも深い意味はないんです。個人で作ったサービスに優劣をつけることはないので、あくまで社員の支援という形です。

G:
Googleラボなどの取り組みについてはどう思われますか?

S:
Googleさんのような取り組みにはあこがれますが、もっとユーザーさんに近い部分というか、ノリを重視した我々のやり方を追及していこうと思っています。

G:
paperboyのサービスを支えているシステムについて、サーバーの台数などはどうなっていますか?

S:
具体的な数は公表していませんが、数百台ですね。私が入ってきた時はまだ数台だったのですが。これはGMOのインフラだけでなく、分散させてリスクヘッジをしています。

・今後の方針

paperboy&co.のマスタープラン。


G:
今後の方針はどのようなことを考えていますか?

S:
ユーザーさんの制作活動が生まれるところにサービスを作っていきたいですね。Grouptubeやブログでは自分でテンプレートを変更することができるので、記事を書いたりするだけではなく、ユーザーさん自身が作ったテンプレートを公開してもらってそこでユーザーさん同士のコミュニケーションが生まれるように力を入れています。今後の新規サービスとしては、そのときの旬なサービスにいつでも参入していきたいと考えています。今はマッシュアップなどで個人でサービスを作ることができるので、ペパ研でそういう取り組みを支援したりすることも考えています。

G:
なるほど、本日はありがとうございました。

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in インタビュー, Posted by logc_nt

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