男は絶滅する運命?消えゆくY染色体は何を意味するのか
「男性は絶滅の道をたどっている」という、ヒト性染色体の研究者であるオーストラリア国立大学のジェニファー・グレイヴス教授の発言が波紋を呼んでいます。
進化の歴史の中でY染色体上の遺伝子数は特筆すべきペースで減少しており、将来的には消滅する可能性があるとのこと。未来の人類はX染色体しか持たない、メスしかいない種となってしまうのでしょうか?
詳細は以下から。Men on road to extinction - Telegraph
オーストラリア国立大学のジェニファー・グレイヴス教授は「Y染色体は消えつつあり、500万年以内に消滅してしまう可能性がある」とアイルランド王立外科医学院で行われた公開講義で医学生たちに語りました。しかしこれは決して人類の滅亡を意味するわけではなく、将来的には「新人類」が誕生する可能性すらあるとのこと。Y染色体上の重要な遺伝子を持っていないにもかかわらず生殖できる齧歯類(げっしるい)と同じ道をたどるのではないか、と示唆されています。
「オスであるためにはY染色体を持たなければいけません。3億年前にはY染色体上には約1400個の遺伝子があったのですが、現在ではたったの45個(注:Wikipediaなどでは78個とされているが、Y染色体の遺伝子数は資料によって異なることが多く、グレイヴス教授は45個としている)。この勢いだと500万年ほどでY染色体上の遺伝子は無くなってしまうでしょう」とグレイヴス教授。「Y染色体は消えつつあります。問題は、消えたあとに何が起きるのかということです」
男性の性別はY染色体上のSRY(Sex-determining Region Y)という遺伝子によって決定され、この遺伝子の働きにより睾丸(こうがん)が発達し男性ホルモンが分泌されます。
『Y染色体の衰亡と男性の未来』と題された今回の講義では、Y染色体の消滅とそれが人類にとって何を意味するかが論じられました。
「ヒトはトカゲのように無性生殖するようになる、というわけにはいきません。ヒトに不可欠ないくつかの遺伝子はオスから受け継がれるのです」とグレイヴス教授。「しかし、希望もあります。東ヨーロッパのハタネズミ亜科モグラレミング属や日本のクマネズミ属などのいくつかの種はSRYもY染色体も持たないのです。しかしこれらのネズミの健康なオスはそこらじゅうを走り回っています。何らかのほかの遺伝子がSRYのかわりに働いているのでしょう。その遺伝子を特定することがわたしたちの今の課題です」
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