コラム

Web2.0のビジネスモデル その1「ロングテール」


本題に入る前に、Web2.0の概念を最初に提唱した文章の原題には「Design Patterns and Business Models for the Next Generation of Software」という副題が付いてます。次世代ソフトのデザインパターンとビジネスモデル、というような感じ。つまり、Web2.0というのは「技術トレンド、情報モデル、そしてそれらに伴うビジネスモデルの変化を扱う総称」だ、とも言えるわけです。

Web2.0とは結局、一体、何なのか?」と「Web2.0の条件4つ」を読んで、これはものすごく妙な解釈だな、これはおかしいんじゃないのか?と感じた人はWeb2.0を技術トレンドとして解釈しているということ。まぁ今までの説明は賛否両論っぽいかな?と感じた人は情報モデルっぽい解釈をしているということ。最後に、ああこういう考え方の方がわかりやすいかも?と感じた人は割とビジネスモデルっぽいとらえ方ができる人、ということです。

まず今回は初歩となるがゆえに誤解の多い「ロングテール」の中身を見てみましょう。ロングテールとは決してニッチ市場狙いという意味ではないのですが、大多数の人はそう理解しがちですのでそこのところに気をつけましょう。
・その1:ロングテール
この言葉の理解の前にまずは商売の大前提となる「2:8の法則」を知る必要があります。これは、「売上の80%は、全商品の20%によって構成されている」という法則。正確には「パレートの法則」の一部分であり、古くから商売の経験則として小売業ではよく知られたもの。今は前述のパレートの法則によって統計学的にも正しいとされています。

つまり、お店に10個並べることができても、そのうちの2個がメインで売れている状態が普通の小売店の実情というわけ。


この旧来の「2:8の法則」に従うならば、8割が「死に筋」の商品となり、不良在庫化する危険性があり、維持するだけでもコストがかかります。ところがロングテールの場合はこの8割の死に筋商品の維持コストが低く、従って時間の経過とともに利益を生むわけです。

具体的に言うと、Amazonがロングテールの見本です。本というジャンルに限ると、本屋には棚の数だけしか書籍を置くことができないので「2:8の法則」に従い、売れ筋商品を多く並べる必要性があります。しかしAmazonは本棚という物理的制限がないので、書籍を全部置くことができるわけです。あるジャンルには1000種類の本があるとして、そのうちの200種類程度を置くのがリアルの本屋であり、「2:8の法則」です。しかしAmazonは残り800種類も置くことができるわけです。すると通常は切り捨てるべき残り8割の死に筋商品であっても利益が上がるというわけ。

下記サイトにロングテールの見本となるグラフがあります。

ロングテール理論 - @IT情報マネジメント用語事典

残り8割の商品は売れる数が少ないが、塵も積もれば山となり、無視できない大きさの利益を上げるというわけです。この部分をグラフ化すると長いシッポのように見えるので、ロングテールと呼ぶわけです。

ではこのロングテールがなぜWeb2.0なのかというと、「Web2.0とは結局、一体、何なのか?」で触れた例として、「旧Yahoo!→Google」で考えてみましょう。

旧Yahoo!はディレクトリ検索であり、登録されているサイトの数には限りがあります。つまり、すべてのサイトが検索できるわけではありませんでした。しかしGoogleは全自動でサイトをかき集めてくるため、はるかに多くのサイトを集めてくることができます。旧Yahoo!がいわば「2:8の法則」でいうところの価値ある2割のサイトのみを集めてきたのに対し、Googleは残りの8割も捨てずに集めてきたわけです。

Googleのこのロングテール的側面がビジネスとして結実したのがサイト上に広告を出すことができる「Google Adwords」というサービスです。

広告は多くの人の目に触れれば触れるほど効果が上がります。1日に10人しか通らない道の看板より、10万人が通る道の方が同じ看板を出すのであれば効果は雲泥の差となるわけです。また、1回よりも2回、2回よりも3回というようにして多く目に触れさせることができれば、消費者が覚えてくれるので広告効果は絶大となります。これらは広告の基本となる考え方です。

そしてこの昔からの理屈はオンラインの広告に置き換えても同じで、大手サイトに広告を出すだけでなく、個人の小さなサイトにも広告を出すことができれば露出が増え、より広告効果は大きくなるわけです。これを可能にしたのが「Google Adwords」というわけ。Google AdwordsはGoogleの検索結果と、Google Adsenseに参加しているサイトの両方に広告を安価に出すことができます。このいずれもがまさにロングテールであり、死に筋のマイナーな検索フレーズや死に筋の弱小サイトであっても、内容に合わせて狙い撃ちで広告を出すことによって、広告効果を劇的に上昇させようというわけです。

また、Google Adwordsは「Web2.0の条件4つ」のうち、「自動化」と「敷居を下げる」を特に有効活用しています。広告を出す側である「Google Adwords」の中身は全自動のシステムであり、これまでの広告費よりもかなり安い価格で広告を出すことができ、広告を出したい側にとっては敷居が下がっているというわけです。加えて、広告を自分のサイトに貼り付けて収入を得ることができる「Google Adsense」も同じように中身は全自動であり、記事の内容によって中身を変えなくても自動的に広告が文脈によって変化してくれるため、広告を管理するという手間が減り、敷居が下がっているわけです。

Web2.0の「自動化」というのは人間の手を介する作業を抑えることであり、それによってコスト減を可能にします。また、「敷居を下げる」というのはまさにこのコスト減という結果を生み出すものであり、作業負担を軽減する操作性の改善というのもまた、時間単位あたりの作業効率を改善することができます。ロングテールというのはこれらの可能性を具体的に形にするための方法ということです。

そして、このようにしてロングテールを使ったビジネスというのは今までの「2:8の法則」からさらに一歩先へ進んでいる概念、「今までなかったネットに関するあれこれ」の一つと捉えることができるので、「Web2.0」であると言えるわけです。

なお、勘違いしやすいのですが、ロングテールというのはあくまでも「2:8の法則」が大前提であり、実際には「2:8の法則」を使っている場面において、さらにロングテールというのが加わる感じです。決して残り8割のみをターゲットにして売る、という意味ではありません。残り8割のみをターゲットにするのはただのニッチ市場狙いであり、従来からある方法論です。このあたりを勘違いしたまま「これはロングテールだから、これらのものは今は価値が無くても、たくさん作れば儲かるんですよ」と言う営業や企画、起業は間違い。

また、Amazonを例に出してロングテールを説明する際によく見られる「ネット上では物理的制限がないので死に筋商品を置きっぱなしでも維持コストがゼロ、だから利益が出る」というのも間違い。容量無制限でゼロ円のハードディスクは存在せず、ハードディスクの容量とサーバの維持コストなどが制限となります。ロングテールはあくまでも既存の方法と比較した場合、その維持コストが非常に低く済むので「死に筋商品でも置きっぱなしにでき、死に筋商品が生み出す利益が維持するコストをはるかに大きく上回る」というだけです。

ロングテールをより詳しく知りたい場合には以下のサイトを読むのがオススメです。

ロングテール - Wikipedia

次回はWeb2.0のビジネスモデル2つめの特徴である「ベータ版」について。

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in ネットサービス,   コラム, Posted by darkhorse_log

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