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Amazonの1兆円超えのWhole Foods買収に見るAmazon帝国構築に向けた取り組みとは?


Amazonは137億ドル(約1兆5000億円)という巨額で高級スーパー「Whole Foods」を傘下に収めました。高級スーパーの取り込みは、予想通りの相乗効果を上げているとのこと。しかし、Amazonの狙いは市場関係者が予想した直接的なものだけではなく、より壮大な目標達成のための手段という側面があるとAtlanticが指摘しています。

The Amazon-ification of Whole Foods - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/business/archive/2018/02/whole-foods-two-hour-delivery-amazon/552821/

2017年にAmazonは過去最大の137億ドル(約1兆5000億円)で高級スーパーのWhole Foodsを買収しましたが、巨額の買収にもかかわらず、市場関係者はAmazonとWhole Foodsの相性は非常によく、金額に見合う投資になるという予想が主流でした。その理由は大きく3点あったとAtlanticのデレック・トンプソン氏は述べています。

第1に、Amazonが持つ圧倒的な販売力という規模の利益を活かして、高品質・高価格のWhole Foodsの食品の価格を引き下げられるというメリットが挙げられました。第2に、Whole Foodsがアメリカやカナダに持つ400の実店舗を、Amazon.comで販売する商品を保管しておく「流通ノード」として利用できること、そして、第3のメリットとして、高品質で高い評価を得るWhole Foodsを宅配という新業態によってビジネスチャンスを広げられることが挙がっていました。


これまでのAmazon+Whole Foodsの取り組みをみると、アナリストの予想は概ね正しかったとトンプソン氏は述べています。Amazonは、次々とWhole Foodsの人気商品の価格を引き下げており、Whole Foodsの店舗を利用してオンデマンドの食品配達サービス網を構築しているとのこと。調査会社のEuromonitorの調査によると、食品配達サービスという業態はレストランなどの外食産業にくらべて、今後10年間の成長速度は15倍という有望市場だと推測されており、食品宅配サービスの成長は始まったばかりということから、Amazonの取り組みは時宜を得ていると考えられます。

そして、Amazonは2018年2月8日にWhole Foodsの商品を、一部の地域でPrime Nowの対象にすることを発表しました。オースティン、シンシナティ、ダラス、バージニアビーチの4都市で、Amazon Primeメンバーは、Whole Foodsの食品を35ドル(約3900円)以上購入すると2時間以内に送料無料で配達してもらえるようになりました。また、7.99ドル(約900円)の配達料を追加で支払えば、1時間以内の特急宅配も可能になっています。


このWhole FoodsのPrime Now入りについて、トンプソン氏は単なるニュースとして捉えるのは早計だと指摘しています。トンプソン氏によると、Amazonが目指す「小売帝国」が着々と築き上げられているはっきりとしたサインだとトンプソン氏は考えているとのこと。

Amazonは書籍のオンライン販売に始まり、家庭用品や薬品、食品などあらゆるものを販売・配達しており、Primeビデオではムービーコンテンツを、Amazon Musicでは音楽コンテンツを、そして限定的とはいえヘルスケアをフォローするまでビジネスの手を広げています。さらに、AIアシスタントAlexaをつかったスマートスピーカー「Echo」によって、それらの多くの商品をユーザーが購入できるように改良が続けられており、ソフトウェア・ハードウェアの垂直統合が着々と実行されています。あらゆるサービスを提供する至れり尽くせりのサービスであるAmazon Primeの有料会員が、生涯にわたってAmazonを利用しお金を落とし続ける「価値」をAmazonは確かに見据えており、Primeメンバーの特権を手厚くすることはAmazonにとって最も重要なことだとトンプソン氏は述べています。

Amazonにとって、Whole Foodsの買収は、単にWhole Foodsの持つ価値を高めて収益を上げるというアナリストが予想したメリットが目的というわけではなく、むしろAmazon Primeの価値を高める一手段という見方も可能です。Amazonが目指す、全小売を一手に担う究極の世界での人々の購買行動とは、Googleで検索して商品を探すのではなく、欲しい商品を真っ先にAmazonで検索してそのまま購入する、というもの。Primeメンバーが、「Alexa、玄米と豚肉が必要なんだ」と話しかけると、2時間以内にWhole Foodsブランドの米と豚肉がAmazonの箱に入って届けられるという状況はすでに実現しています。

By gwaar

Amazon Primeの価値を高め続けることこそが小売帝国を築くための方法であり、そのためであれば高級スーパーを取り込むことで支払う1兆円以上の大金も、ゆくゆくはペイするというわけです。トンプソン氏によると、Whole Foodsの顧客は、高い品質の食品のために多くの支払いをいとわない「カルト的」な献身性を持つとのこと。そして、「地球上で最もお客様を大切にする企業」を目指すAmazonのPrimeメンバーも同じくカルト的な献身性を示すといえます。Amazonはカルト的な献身性を持つPrimeメンバーを満足させ続けるために、Amazon Primeの「特権」を、膨張させ続けるのかもしれません。

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in メモ,   ネットサービス,   , Posted by darkhorse_log

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