常識破りの激安・自作レーザー加工機「Smart Laser」がどのように山梨の南アルプスで誕生したのか開発者に聞いてきました
山梨県に本拠を構えるsmartDIYsは、5万円台という手の届く価格の自作タイプのレーザー加工機や、業務用レベルの高出力なのに10分の1の激安価格を実現した自作タイプのCO2レーザー加工機を生み出し、工作好きのメイカーズ(Makers)にその名をとどろかせています。社員数わずか2人のスタートアップが、どのようにして業務用クラスのレーザー加工機を激安価格で実現できたのか、今後、目指す方向はどこなのかなどについて、じっくり話をきいてきました。
レーザー加工機(カッター)のsmartDIYs
http://www.smartdiys.com/
smartDIYsの自作CO2レーザー加工機がどんなハードウェアなのかは、以下の記事を見れば一発で理解できます。
自宅用レーザーカッターを業務用レベル出力&10分の1の価格で実現した「Smart Laser CO2」を組み立てて使ってみた - GIGAZINE
業務レベルの出力を激安価格で実現したCO2レーザー加工機「Smart Laser CO2」でいろいろ加工してみました - GIGAZINE
◆山梨県南アルプス市のsmartDIYsへ
smartDIYsに到着……したはずが、そこは閑静な住宅街にある庭付きの立派なお屋敷。
表札もあり。
門をくぐると確かにsmartDIYsで間違いないとのこと。
手入れの行き届いた庭木。
なんとブドウの自家菜園まであり。
これがsmartDIYsの社屋です。
さっそく中へ潜入。
建物に入った廊下の先には……
開発現場。
手頃な価格とサイズを実現した家庭用の組立型レーザー加工機「Smart Laser Mini」はここで生まれたとのこと。
作業台も手作り。
入り口付近には、レーザー加工機の製造に使う3Dプリンターが置かれてありました。
どうやらレーザーの保護カバーを製作している模様。
これは実機でいうと矢印の部品です。
奥の部屋が製品の品質をチェックするスペース。
理系人御用達のキムワイプもあり。
机の上には検品待ちのチップがずらり。
いろいろな専用の治具を使って検品します。
◆レーザー加工機開発の経緯について聞いてみた
山梨県南アルプス市で、どのようにしてレーザー加工機が開発されたのかについて、smartDIYsのCEOの有井佳也氏、COO兼CMOの有井誠氏、CTOの塩島宏孝氏の3人に話をきいてみました。
左から、有井誠氏、塩島宏孝氏、有井佳也氏。
GIGAZINE(以下、「G」と表記):
本日はレーザー加工機開発についていろいろと聞かせていただきます。よろしくお願いします。
有井佳也(以下、「有井(佳):」と表記):
よろしくお願いします。
G:
smartDIYsは有井さんが塩島さんと二人で2012年3月に設立されたスタートアップですね。
有井(佳):
はい。私と塩島は山梨県内の電子部品メーカーに勤めていました。前職では主に法人向けのLED検査業務を行っていました。
G:
LEDの検査とはどのような仕事ですか?
有井(佳):
電灯などで使用されているLEDの製品を検査する仕事です。LEDの「白色の光」といっても実は微妙な色の違いが生じます。それを測定して分類する装置を製造していました。LED電灯のチップを調べることでバラツキが分かります。
G:
その後、独立されたということですね。
塩島宏孝氏(以下、「塩島」と表記):
仕事が今ほどは面白くなくて、くすぶっていて。後先考えずにとりあえず独立してしまったような感じです(笑)
有井(佳):
前職の経験を活かして中国メーカーにLED検査装置を販売する事業を始めたのですが、うまくいきませんでした。
G:
原因は?
有井(佳):
大企業が2人のベンチャーから検査機器を買わないですよね。よく考えれば。
G:
うまくいかない状態はどれくらいの期間続いたのですか?
有井(佳):
「Smart Laser Mini」(以下、「Mini」と表記)を、2015年の3月に発売したのですが、それまでくすぶっていました(笑)
G:
まるまる3年ということですか?
有井(佳):
ええ。LEDの検査装置を中国に持ち込みながら出張を重ねたのですがうまくいかなくて。次に中国のLED照明を日本に持ち込もうと中国・深センに行きました。けれどそれもうまくいかず。
G:
さんざんなスタートだったと。
有井(佳):
やることがなくて2人で会社にこもってネットをしていました(笑)
G:
会社とはこの建物ですよね。
有井(佳):
はい。元々は祖父母が住んでいたのですが隣に引っ越したので、社屋として使えることになったのです。
塩島:
私は近所に住んでいるのですが、会社に通ってはひたすらこもってインターネットをしていました(笑)
有井(佳):
会社にこもっていると中国に行くよりも意外なことに外の世界を見ることができました。私にはここがシリコンバレーのようなノリでしたね。ちょうどそのころKickstarterのようなクラウドファンディングの世界で「こんな面白いプロダクトがあるんだ!」とものすごく刺激を受けました。Kickstarter界隈に、HAXLR8R(ハクセラレーター)というハードウェアスタートアップを支援する専門チームがあるのです。「Kickstarterでの成功率100%」をうたう、スタートアップをサポートする企業です。
有井誠氏(以下、「有井(誠)」と表記):
製造やマーケティングなどそれぞれ得意な分野が違うアクセラレーターが海外にはいます。日本ではまだあまりなじみがないビジネスなのですが。深センにオフィスを持っていて、そこにアメリカ人を連れて行くのです。
有井(佳):
アメリカ人が3カ月だけ深センに泊まり込んで、そこで製品を作ってしまいます。私たちが行っていた深センでそんなことが起こっているのが衝撃的で。同時に「私たちにもできるぞ!」と思って自分たちのプロダクト(製品)を作りたいとなったのです。
G:
最初に作ろうと思ったのがレーザー加工機ですか?
有井(佳):
いえ。当初は3Dプリンターのパーツの輸入販売をしていたこともあって、3Dプリンターを作ろうと考えました。そして完成したのが作業場にあったものです。
有井(誠):
結局は3Dプリンターは商品として販売しなくて、Miniのヘッドカバーの製造に使うことになりました。精度・スピードもなかなかのものなのですが……。
G:
なるほど、3Dプリンターは中止と。それがどうしてレーザー加工機開発にシフトしたのですか?
有井(佳):
3Dプリンターを作るときに、アクリルのパーツを使うことが多いので、アクリルのパーツを切るためにレーザーカッターが必要になりました。ところがお金がなかったので、自分たちで作ろうとなりました。
有井(誠):
お金がなかったのと場所が山梨というのも原因ですね。東京だとFabカフェなども含めてアクリルを加工できる場所がありますが、山梨だとないので。
有井(佳):
アクリルのカットは外注してもコストが高いのです。とはいえ、レーザー加工機は100万円からと、とてもではないけれど買えなかった。
G:
ならば、自分たちで作ろう、と。いきなりレーザー加工機を自作できるものなのですか?
塩島:
できるものでしたね(笑)。会社にこもっていた頃に、欧米のDIY好きな人たちのコミュニティをかなり深くまで調べていたので、かなりコアな部分まで情報がそろっていたのです。
有井(佳):
ひきこもっている間にお互いにかなり勉強していました。最初のHPも自分たちで作ったり。
G:
すべて手作りなのですね。
有井(誠):
お金がなかったのと山梨だからですね(笑)。東京だとエンジニア、ウェブデザイナーなどみんないるじゃないですか。
有井(佳):
開発するツールもそろってきたというのも大きかったです。CADもフリーツールがありますし、HPを作るフレームワークも出ていますし。自分たちで何でもやりやすいという環境は整っていたと思います。
G:
レーザー加工機が必要になってから、完成するまでの期間はどれくらいでしたか?
塩島:
2014年の8月頃に開発を始めました。GIGAZINEでもレビューしていただいた40Wの「Smart Laser CO2」よりもさらに大きな60WのCO2レーザー加工機を社内機として作りました。その初号機は庭の物置にあって今も使っています。
有井(佳):
大きなアクリルの板をカットできるように大きな加工機が必要で、そもそも売り物ではないので手作り感あふれるものですが(笑)
塩島:
8月に開発を始めて、年末にはいったん完成にこぎつけました。
G:
最初から動きましたか?
有井(佳):
いえ。全然だめでしたね。最初はまったく動かなかったですね。実は「レーザー加工機を作るぞ!」と決めたときに、私たちはまだレーザー加工機を実際に見たことがなかったのです。そこで、二人で渋谷のFabカフェに実物を見に行ったくらいです(笑)
有井(誠):
当初の目的は3Dプリンターの製造・販売だったのですが、3Dプリンターの試作機ができるころには市場にものすごく安い製品が出てきていて完全なレッドオーシャンになっていたので3Dプリンターは売れないとなりました。そこで、「このレーザー加工機の方を売ろう」となったのです。
塩島:
実のところ、3Dプリンターは話題性はあるのですが、実際に使える場面はそんなにないのではないかとその頃、思うようになっていました。
有井(佳):
私たちが目指していた低価格なものは精度の問題もありますし、そこまで良い物ができないということもありました。むしろ、3Dプリンターを作るために作ったレーザー加工機の方が、アクリルもカットできるし用途が広いと感じるようになっていました。
有井(誠):
3Dプリンターで何を作ったらよいのか分からないということも多いですよね。3Dデータを作るのも難しいですし。2Dのレーザー加工機の方がはるかに扱いやすいです。
有井(佳):
レーザー加工機はまずCO2から開発を始めましたが、さすがにこの加工機は売れないだろうと思い、小さなMiniの開発に取り組みました。
G:
本当に売りたいのはCO2の方だったのですか?
有井(佳):
そうです。とりあえずはMiniで市場の反応を試してみようとなったのです。
G:
商品の名前が「Smart Laser」ではなく「Smart Laser Mini」というのがおもしろいですね。普通は「Smart Laser」という商品があって、その別バージョンとして「Smart Laser Mini」という順ですよね。けれど、「Mini」から出したと。
有井(佳):
そうですね。ただ、本当はCO2のレーザーを出したかったので、順番は「Mini」からですが、Smart Laser CO2を出すことは決めていましたね。
G:
最初の製品であるMiniは、どのように売り出したのですか?
有井(佳):
TwitterやFacebookの広告など、ささやかな広告を出しました。途中から検索でのHP流入が増えたのですが、これはユーザーガイドとしてHP上に作成マニュアルを掲載していたのが良かったのか、「レーザー加工機」などの検索ワードで上位に来るようになり、次第に販売につながりました。
G:
Miniは2015年3月に発売した直後から売れましたか?
有井(佳):
3月に発売したのですが、実は2月の時点ですべて予約販売という形で売れていました。販売先は個人の方や大学の研究室などです。その後も注文が増えたので、徐々に製造プロセスを見直して、製造工程を中国に移管しつつ、Smart Laser CO2の開発をしていましたね。
G:
Miniで手応えがあったとので、次は大きなSmart Laser CO2を、ということですね。
有井(佳):
そうです。ただ、Smart Laser CO2をリリースしようとしていた頃は、Miniの販売もあったり、展示会への出展などがあり、販売にこぎつけるまでは苦労しました。
G:
モノ自体は完成していたのに、ということですね。
塩島:
ほぼ完成していました。まだ二人でMiniの製造もやりつつ、Smart Laser CO2の開発もしつつで。
有井(佳):
最初は二人で基板を作ったり、ケーブルを作ったりしてたくらいで。
G:
Miniの注文も増え始めていたんですよね?
有井(誠):
はい。Miniも今でこそカバーだけ自社生産ですけれど、はんだ付けして、基板を付けて、ハーネスを作ってと。モノ自体は同じなのですが、販売量が増えてくると製造は中国に移していくことになりました。
有井(佳):
チェックだけは今も山梨でやっている形です。
G:
Miniの発売後も社員は2人体制だったのですか?
有井(佳):
2015年の8月に英語に堪能な人に加わってもらって3人になりました。それまでも弟にはアドバイスをもらうなど手伝ってもらっていましたが……。
有井(誠):
もともと私はコンサルタントとしてウェブのマーケティングにも携わっていたのですが、兄たちがウェブで販売しているということは聞いていたのでアドバイスをしていました。電話や東京から私が実家に帰ってきたときに「こうしたらいいんじゃないの」という感じで。
有井(佳):
かなり助けてもらっていたのですが、兄弟ということもあり、正式に加入という感じではなく、どこかあいまいな形でしたね。
G:
売上げはどうでしたか?
有井(誠):
(グラフを見せて)こんな感じです。
G:
見事に右肩上がりですね。
有井(誠):
Smart Laser CO2が加わったこともあり、売上げが一気に増えました。この販売を見て私も正式にsmartDIYsに加わりました(笑)
有井(佳):
今は私たちの姉にも手伝ってもらっています。検品など。
G:
検品作業はどういうことをするのですか?
有井(佳):
専用の治具を使って基板のチェックなどを行います。治具の開発には前職での経験が大きく役に立っています。
有井(誠):
あとは、Smart Laser CO2を作っていただいたのでよくご存じでしょうが、大量のネジを袋詰めしたり。ただ、取り扱う量も増えてきているので検品作業は徐々に中国側で完了できるようにしています。
G:
Miniの販売に成功して今度はSmart Laser CO2を発売するとなった時に、CO2レーザー加工機もイケる!という手応えはありましたか?
塩島:
Miniで販売台数も増えていたので、受け入れてもらえるだろう思っていました。実際にMiniの初期ロットを購入いただいたユーザーが、Smart Laser CO2の最初の注文者でした。その方は個人の方なのですが。
G:
個人であのサイズを……。
有井(佳):
Miniを買っていただいた方から「物足りない!」という声をいただいていまして。「もっと出力の大きなモノを考えていますか?」という質問が寄せられていて、「実は……こういうのがありますよ」と。そうするとMiniユーザーに対しては2製品目のSmart Laser CO2についてアナウンスしたら「いつ発売ですか?」とお問い合わせいただいて。
G:
Smart Laser CO2も発売前から予約が入っていたのですか?
有井(佳):
そうですね。Miniをご購入いただいた大学の研究室などからは発売前からご予約をいただいていました。
G:
初回の販売台数は?
塩島:
30台です。
G:
いきなり30台ですか。
有井(佳):
Smart Laser CO2を組み立てられたのでご存じでしょうが、さすがにSmart Laser CO2はモノが大きいので部品の数も多く、Miniに比べると製造も大変でした。最初は弊社の方で梱包をしていたのですが、これが本当に力仕事で。
G:
大きな梱包物で10箱くらいありましたよね。
塩島:
買っていただいた方からあまりの梱包物の大きさ、多さに「郵便爆弾だ!」と言われたり(笑)
有井(佳):
あの中の板金やアルミフレームなどの重たい部品は、今では中国で梱包されています。
有井(誠):
Smart Laser CO2の発売以降は物量が増えてきました。Smart Laser CO2の50セットで1トンくらいありますし。コンテナ貸し切りで中国から日本へ持ってくるのですが、輸出通関・輸入通関するとなり、最初は時間がかかりました。初めてのことで時間も読み切れていないというのもあって。
G:
コンテナというのはどれくらいの大きさなのですか?
有井(誠):
20フィートサイズです。これにSmart Laser CO2が50台分入ります。
G:
思ったほど入らないのですね。
有井(誠):
「今度は40フィートにしようと!」と言っています(笑)
G:
50台、100台単位でとなると、タイミング次第では購入するのが難しそうですね。
有井(誠):
コンテナサイズも問題ですが、在庫の問題があります。今、大きなパーツに備えて倉庫を整えています。埼玉の倉庫で、重くて大きなパーツはそちらから出荷するという方法を検討中です。これによって一定量の在庫を確保して、即時出荷という態勢がようやく整うことになりそうです。
たった二人でスタートしたsmartDIYsは、今後、さらにメンバーを増やす予定だとのこと。
G:
話を聴く限り、本当に順調ですね。大きな失敗もなく。
有井(佳):
最初の3年間が失敗の塊なので(笑)。今思うと、前職の仕事を引き継ぐ形だったので、商品自体に集中できていませんでした。今はプロダクトに集中できています。
◆新モデル「FABOOL Laser Mini」
G:
産みの苦しみを乗り越えた後は順調なsmartDIYsですが、今回、クラウドファンディングに取り組まれるそうですね。
有井(佳):
2016年4月12日にREADYFORでプロジェクトを立ち上げます。このプロジェクトで国内にもっとレーザー加工機を広められればと考えています。国内でうまくいけば夏くらいには海外へも広げたいです。
G:
具体的にはどのような商品を出すのですか?
塩島:
製品はMiniの改良版です。性能は同じですが部品点数を減らして組立てやすくしていて、より多くの人に使ってもらえるものになっています。
G:
値段はどうですか?
有井(佳):
最終調整中ですが、似たような価格になる予定です。
G:
Miniは5万円台ですよね。5万円台というのが一つの目安ですか?
有井(佳):
Miniの開発のときもそうでしたが、自分たちの場合、「手の届く値段」というのが5万円台だったのです。自分たちが欲しい、買える範囲で、ということは大切にしています。
有井(誠):
今まで買ってくださっていた方は、基板むき出しでもOKというアーリーアダプター、メイカーズ、キークな方が多かったと思います。予想以上に年配の方も多いのです。
有井(佳):
いろいろ教えてもらって助けられています(笑)
有井(誠):
「ここはこうした方がいいよ」と教えていただいていますね。Facebookグループの参加者がつい先日500人を超えて、とても良いコミュニティができています。
G:
なるほど。コミュニティからフィードバックを受けられるのですね。
有井(誠):
はい。本当にそういうお声を活かしてできたのが新型機という面がかなりあります。Miniはもっと気軽にいろいろな使い方ができるのではないかと思っていました。値段の面でもサイズの面でも、「初めて個人の方に使ってもらえるレーザー加工機ができた」と思っていて、デザイナーの方などのニーズは大きいのではないかと考えています。そうなったときに、組み立てが大変だったり基板むき出しだったりという部分を改善しようとなりました。見た目もカッコよくなったと思います。
G:
クラウドファンディングを立ち上げた理由は、販売ターゲットを変えたいからということですか?
有井(誠):
今はWebの検索で知っていただいているという状況なのですが、「レーザー加工機」で検索してくる方というのはレアです。デザイナーやクリエイターや個人のセミプロのような方にもレーザー加工機を使っていただけると考えているので、そういう方たちにこちらからアプローチする場合に、クラウドファンディングという場所が適していると考えました。出資を求めるというよりは販売のチャンネルとして良いのではと考えました。
塩島:
どれだけ受け入れられるのかというチャレンジですね。
有井(誠):
実は、弊社のHPで"クラウドファンディングの事前登録"というのを行っていたのですが、2日間で250人くらいの申し込みがあって。3週間くらいで100から150くらい行けばいいなと個人的には思っていたので、予想以上で、これならば期待が持てるのかなと。
G:
新型Miniの名前は決まっていますか?
有井(佳):
「Fabool Laser Mini」です。「Fab」+「Cool」という造語で「Fabool」としました。従来のMini(Smart Laser Mini)はこのタイミングで終了して、Fabool Laser Miniが後継機種となります。
というわけで、次世代Miniとして登場する新モデル「Fabool Laser Mini」をチェックしてきました。Miniと同等の性能をキープしつつ、さらに組み立てやすくなった改良版です。
従来のMiniはステーやスタンドなどでアクリルパーツを多用していましたが……
Fabool Laser Miniは極力アクリルパーツを廃して部品点数を削減しています。
レーザーを移動させる4つのローラーは……
3つに変更。ローラー数を減らすことで、むしろ安定性が増しているとのこと。単に部品点数を減らしたわけではなく、性能アップも果たしています。
レーザーカバーは3Dプリントした樹脂製ケースから、金属削りだしのヒートシンクに変更。サイズを小さくしつつ、放熱性も高めています。
調整の難しかったZ軸方向の調整機構も見直されており……
ネジで簡単に高さを変更できるようになっています。
Miniではむき出しだった基板&配線は……
保護カバーですっきり。
スタンドも金属製ですっきりしたデザインに変更されています。
そして、縦置きできるという改良も。使わないときにスペースをとらない構造になっています。
さらに、Fabool Laser Miniには専用の「安全カバー」がオプションとして用意されています。
Fabool Laser Miniを収納するとこんな感じ。
扉を開けると自動的にレーザー照射がストップするのはSmart Laser CO2と同様です。
ブラックカラーの透明アクリル製のケースは高級感アリ。Fabool Laser Miniは安全カバーによってデザイン性と同時に安全性も大幅に高められています。
Fabool Laser Miniで加工した作例はこんな感じ。
建築用の模型。スチレンボードではなく木材を加工して作っています。
手作業では困難な細かなカットもお手のもの。
パズルを作ったり……
小物を作ったり。
アクセサリーを飾るキルトにデザイナーの名前を彫ることも可能です。
カットだけでなくさまざまなレーザー加工もOK。iPhoneだとこんな感じ。
デニム
レザー
お菓子作りにも応用できます。
◆smartDIYsの今後
有井(佳):
今後は大きなモデルとしてSmart Laser CO2、小さなモデルとしてFabool Laser Miniという体制になります。そして、さらにSmart Laser CO2の大きなバージョンも検討中です。
G:
出力100Wクラスという話もチラっと聞きましたが……。
有井(佳):
はい(笑)。それこそKickstarterのようなプラットフォームで、海外に発信できればいいなと考えています。鉄板まで切れるような高出力なものを海外向けに(笑)。基本的には自分たちが欲しいものをつくるだけなのですが。
G:
なるほど。製品の特徴に合わせてクラウドファンディング・プラットフォームも変えるのですね。現状はレーザー加工機オンリーですが、元々はレーザー専門でもないわけで、他の製品を出す予定はないのですか?すでにある3Dプリンターなど。
有井(誠):
実際にもうあるのですけれどね(苦笑)3Dプリンターはレッドオーシャンなので。
塩島:
方式を変える様な(画期的な)ものであれば、販売するかもという感じです。
有井(佳):
同じような値段で同じ価格のものは出せるのですが……。自分たちの納得のいくものが作れれば出したいですね。
有井(誠):
「デジタル工作機器」という大きなテーマは持っています。3Dプリンター、レーザー加工機、CNC加工機などいろいろありますが、そこは事業ドメインとして大切にしたいです。今はたまたまレーザー加工機ですが、私たちが作っているものは、これまでは数百万円という高価な工業製品だったものを、オープンソースで機能を絞り込み、さらにはユーザー組立型にすることで数万円にするというもので、シンプルなものだと思います。まだ工業製品にとどまっている工作機器は多いと思います。
有井(佳):
ゆくゆくは射出成形機などをやりたいと思っているのです。
有井(誠):
かっこよく言えば「ものづくりを民主化したい」というのが、私たちのやりたいことです。それこそ、フライス盤と射出成形機とレーザーカッターがあれば、アルミの金型を作って射出成形でプラスチックを作ってレーザーでカットする、ということができます。「3点セット15万円で工場になります」のような世界であれば面白い。
塩島:
世界はがらっと変わると思います。
有井(佳):
一人で全部持っている必要もないですし。デジタルファブリケーションとしてはデータでつながる世界です。少し先ではあると思いますが、自分のマシンと誰かのマシンを使って物を作るという世界は来ると思います。その時のための「パーソナルファブリケーションデバイス」をsmartDIYsは作っていきたいです。そういう環境を自分たちが欲しかったので、その世界を実現していきたいです。
G:
本日はありがとうございました。
◆「FABOOL Laser Mini」クラウドファンディング
2016年4月12日午前10時から、READYFORでsmartDIYsのクラウドファンディングプロジェクトがスタートしています。
モノづくりが、変わる。5万円台のレーザー加工機 FABOOL(smartDIYs(代表 有井 佳也)) - READYFOR (レディーフォー)
https://readyfor.jp/projects/fabool-laser-mini
FABOOL Laser Miniで何ができるのかは以下のムービーを見れば一発で理解できます。
モノづくりが、変わる。5万円台のレーザー加工機(カッター) FABOOL Laser Mini - YouTube
開始26分で目標金額の100万円を達成し、6時間経過で700万円を突破するなど、快調な滑り出しを見せている「FABOOL Laser Mini」プロジェクトでは、記事作成時点では「超早割」プランを選択可能で、4万9800円の出資でFABOOL Laser Mini組み立てセット一式をゲットできます。
・おまけ
smartDIYs社屋から庭を隔てた倉庫では……
レーザー加工作業がひっそりと行われていました。
この巨大なレーザー加工機こそ、smartDIYsの初号機。
台替わりに積み上げられたコンクリートブロック。
長さ1mはありそうなCO2レーザー管の出力は60W。
3つのミラーでレーザーを反射させる仕組みはSmart Laser CO2と同じです。
今もバリバリの現役の初号機は、100W級の新型CO2レーザー誕生の日までアクリルをカットしまくることになりそうです。
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