東京五輪のエンブレムを組織委員会が使用中止とする方針
佐野研二郎氏がデザインを担当した「東京2020エンブレム」に関して、大会の組織委員会が使用を中止する方針を固めたことが明らかになりました。
東京五輪エンブレム 使用中止の方針固める NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150901/k10010212001000.html
五輪エンブレム使用取りやめ 組織委方針 佐野氏が制作:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASH9146LWH91UTQP00W.html
エンブレムの選定は、2014年10月に受け付けた応募作品104点の中から、日本グラフィックデザイナー協会特別顧問の永井一正氏が審査委員代表を務める審査委員会が「デザインとしての美しさ、新しさ、そして強さ。そこから生まれる展開力。」を基準として実施。3作品が入選し、その中から佐野氏がデザインしたものが大会エンブレム候補に選出されました。
候補作は2015年7月にIOC(国際オリンピック委員会)・IPC(国際パラリンピック委員会)・公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の承認を得て、国際商標確認を終了し、正式なエンブレムに決まりました。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会エンブレムを発表 >>TOKYO 2020
https://tokyo2020.jp/jp/news/index.php?mode=page&id=1406
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会 エンブレム紹介 (2分20秒版) - YouTube
エンブレム発表後、ベルギーのグラフィックデザイナーであるオリビエ・ドビ氏が、自身が2013年に制作したリエージュ劇場のロゴマークに似ていることを指摘しましたが、組織委員会は「発表前にIOCと共に国内外における商標調査を経た上で決定したものであり、組織委員会としては問題ないと考えています」、デザイナーの佐野氏は「制作時に参考にしたことはありません」とコメント。
東京2020エンブレムに関する一部報道について >>TOKYO 2020
https://tokyo2020.jp/jp/news/index.php?mode=page&id=1422
その後、ドビ氏はIOCに対して使用差し止めを求める訴えを起こしていました。ちなみに、リエージュ劇場のロゴマークはこんな感じ。
デザインが偶然似てしまったのか、何かを参考にしたのかは不明ですが、インターネットユーザーを中心として「パクリではないか?」と話題になり、エンブレムそのものに留まらず、原案や使用イメージ、さらに佐野氏の他の作品まで類似点・盗用ではないかとみられる点の指摘が相次いでいました。
なお、佐野氏はエンブレムの使用例として用いた画像について、インターネット上にあった画像を無断転用していたことを組織委員会の調査に対して認めたとのこと。
佐野氏 使用例の画像 無断転用認める NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150901/k10010212111000.html
このエンブレムは組織委員会のサイトのヘッダー部分のデザインとしても用いられていますが、新たなエンブレムが決まるまではどうするのでしょうか。
Tokyo 2020 - 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
https://tokyo2020.jp/jp/
2015/09/01 23:32追記
佐野氏が大会の組織委員会の調査に対してインターネット上に掲載されていた画像を無断で転用していたことを認め、さらに大会の組織委員会が「佐野氏は模倣ではないと否定したが、一般国民の理解が得られない」として白紙撤回して新たなエンブレムを公募で選ぶ方針を示したのに続き、佐野氏の公式サイトに「エンブレムにつきまして」ということで、「模倣や盗作は断じてしていないことを、誓って申し上げます」「もうこれ以上は、人間として耐えられない限界状況だと思うに至りました」というメッセージを表示しています。
WWW.MR-DESIGN.JP
http://www.mr-design.jp/
2015/09/01 23:44追記
メッセージ全文は以下のようになります。
私は、東京オリンピック・パラリンピックの大会の成功を願う純粋な思いから
エンブレムのコンペティションに参加致しました。エンブレムがフラッグに掲げられ、
世界中の人に仰ぎ見られている光景や、金メダルに刻まれたエンブレムを
強くイメージしながら伝統的かつ新しい日本、東京を表現すべく大胆に、
そして丁寧にデザイン致しました。
このような国をあげての大切なイベントのシンボルとなるエンブレムの
デザイン選考への参加は、デザイナーにとっては大舞台であって、
疑いをかけられているような模倣や盗作は、原案に関しても、最終案に関しても、
あってはならないし、絶対に許されないことと今でも思っております。
模倣や盗作は断じてしていないことを、誓って申し上げます。
しかしながら、エンブレムのデザイン以外の私の仕事において不手際があり、
謝罪致しました。この件については、一切の責任は自分にあります。
改めて御迷惑をかけてしまったアーティストや皆様に深くお詫びいたします。
その後は、残念ながら一部のメディアで悪しきイメージが増幅され、
私の他の作品についても、あたかも全てが何かの模倣だと報じられ、
話題となりさらには作ったこともないデザインにまで、佐野研二郎の盗作作品となって
世に紹介されてしまう程の騒動に発展してしまいました。
自宅や実家、事務所にメディアの取材が昼夜、休日問わず来ています。
事実関係の確認がなされないまま断片的に、報道されることもしばしばありました。
また、私個人の会社のメールアドレスがネット上で話題にされ、
様々なオンラインアカウントに無断で登録され、毎日、誹謗中傷のメールが送られ、
記憶にないショッピングサイトやSNSから入会確認のメールが届きます。
自分のみならず、家族や無関係の親族の写真もネット上にさらされるなどの
プライバシー侵害もあり、異常な状況が今も続いています。
今の状況はコンべに参加した当時の自分の思いとは、全く別の方向に向かって
しまいました。もうこれ以上は、人間として耐えられない限界状況だと思うに至りました。
組織委員会の皆様、審査委員会、制作者である私自身とで協議をする中、
オリンピック・パラリンピックを成功させたいとひとえに祈念する気持ちに
変わりがない旨を再度皆様にお伝えいたしました。
また、このような騒動や私自身や作品への疑義に対して繰り返される
批判やバッシングから、家族やスタッフを守る為にも、もうこれ以上今の状況を
続けることは難しいと判断し、今回の取り下げに関して私自身も決断致しました。
今後につきましては、私の作品や仕事を通じて少しでも皆様の信頼を取り戻すべく
日々の仕事に専念するしかないと思っております。
図らずもご迷惑をおかけしてしまった多くの方々、そして組織委員会の皆様、
審査委員会の皆様、関係各所の皆様には深くお詫び申し上げる次第です。
上記事情のゆえ今回の判断に関しましてはどうか御理解くださいますよう
お願い申し上げます。
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