地方で大成功を収めるアニメイベント「マチ★アソビ」の今までとこれからを総合プロデューサーが語る
日本最大級のアニメイベントであるAnimeJapanの他に、京都で開催されている京都国際マンガ・アニメフェア(京まふ)のように地方で開催されているイベントも数多く存在します。その中でも特に存在感を放っているのが徳島で開催されているマチ★アソビです。なぜ東京でも大阪でも名古屋でもない「徳島」でイベントが行われるのか、そしてなぜ多くの人を惹きつけているのかを、イベントの総合プロデューサー・近藤光さんがAnimeJapan 2015で語りました。
セミナーステージ「地域とアニメとイベント 今までの『マチアソビ』とこれからの『マチアソビ』」に登壇したのは近藤さんのほか、徳島アニメ大使の中村繪里子さんと、マチ★アソビカフェの江原裕理さん。
「マチ★アソビ」が始まったきっかけは2009年、ユーフォーテーブルが徳島スタジオを開設した時に遡ります。アニメーション制作会社が東京西部、中央線沿いに集中していることはファンの間ではよく知られている事実で、ユーフォーテーブルも高円寺駅の近くに位置しています。しかし、よくアニメの中に中央線沿線の光景が出てくるように、作り手はどうしても自分の経験したものを下敷きにしがち。「なら、環境を大きく変えれば作っているものが変わるのではないか」と考えて、近藤さんは当初、沖縄にオーシャンビューのスタジオを開設することを考えました。この案は流れたものの、近藤さんの出身地である徳島で川沿いに立地するスタジオを開設することで、「環境を変える」という目標を達成。
このスライドに映っている建物がユーフォーテーブル徳島スタジオです。
「スタジオを置く」ということは、そこで働くスタッフが近くに住むことになって、地元の方々と生活の中で交わっていくことになります。しかし、スタジオを開設しようと久々に徳島に帰った近藤さんを待っていたのは、かつての賑わいをなくしてシャッター街と化したアーケードでした。「地元のためになにかしなければ」。徳島市観光協会に近藤さんが提案したアイデアが、「阿波おどりのコラボポスター」でした。
なぜコラボポスターが作られるようになったのかという詳細ないきさつについては、徳島市観光協会の担当者がマチ★アソビ vol.8で語っているので、以下の記事を参考にして下さい。
阿波おどりポスターに「空の境界」が採用されたワケを観光協会が語る - GIGAZINE
ポスターに続いて行われたのが、「眉山山頂秋フェスタ」というイベントとのコラボでした。当時、地方では見られるアニメの数がかなり限られており、また、イベントとい
えば東京、特に秋葉原などに集中していたため、「地方でやることに意味があるのでは?」と考えた近藤さんは「ちょうどいい」とこのコラボを受けて、マチ★アソビ vol.1が開催されることに。
しかし、当時未知数のイベントだったマチ★アソビでは、たとえば「ロープウェイのガイドアナウンス」といわれても初モノだけにそれがどういうものかが伝わりづらかったり、「どうやらロープウェイで移動した先に会場があるらしい」というところまではわかっても、そこからの事情が分からないのでロープウェイを降りて即ダッシュしてみたら、会場まではまだアップダウンが待っていたりして戸惑ったり……。
実際、ロープウェーを使わなかった場合はこんな登山道を上っていくような山頂に会場があるので、知らない人が事前に会場をイメージするのは困難。
山なのにイベントのメイン会場になっている眉山、なぜ山でイベントをするのか考えつつ登山してみた
このマチ★アソビ vol.1には1万2000人が訪れ、以後、ぐんぐんと来場者数が増えていて、マチ★アソビ vol.12では7万人に到達。ちなみに、この数字はできるだけ実数に近いものを出そうと、カチカチとカウンターで計測した数字から、おそらく重複で数えられている人やマチ★アソビ参加者ではなくただ通りがかった人も含まれているだろうということで、ちょっと割り引いて算出されています。一般的にこういった数字は盛ってしまうものなので、他のカウントの仕方だと10万人規模のイベントと表現されているかも。
そんなマチ★アソビには2012年秋(マチ★アソビ vol.9)のニュータイプアニメアワード以来、何度も参加している中村繪里子さん。初参加時と比べると2回目、それよりも3回目の方が、より地域に密着したイベントになっていると感じたそうです。
ちなみに中村さんはこのアワードに出るために徳島を訪れた際、自らが演じる天海春香のラバーストラップを持っていったのですが、徳島市内に到着したとたんに紛失。この話を2週間後ぐらいにニコ生でしたところ、実は落とし物を拾った人が「これはきっとマチ★アソビに参加した人が落としたのだろうから、届けておこう」と本部に届けて、その情報がTwitterで出回っていたため、すぐに「ひょっとしてあれは……」と情報が伝わり、放送から1週間後ぐらいには、無事手元にラバーストラップが帰ってきたそうです。
増えているのは来場者だけではなく、出展する側のメンバーも同様。vol.1のときのフライヤーに掲載されていたのは35件でしたが、今や206に。これでもなお、載っていないところがあります。
ここで、実際のマチ★アソビを知らない人のために広報VTRが流されました。これは川沿いのコスプレスペースなどの様子。
これはおそらくマチ★アソビ vol.12でつきねこ重大発表からの流れでオクラホマミキサーをしているところか何かだと思われます。
この映像は徳島県が作ったもの。
そんなマチ★アソビは非常にリピート率・宿泊率が高く、徳島新聞によれば75%の人が2回以上参加していて、4回以上参加という人も42.9%もいて、全体の6割は県外在住の参加者、46%が宿泊しているとのこと。
マチ★アソビから生まれたのが、アニソンシンガーや声優を目指す女の子たちが接客をしてくれる「マチ★アソビカフェ」。江原裕里さんはマチ★アソビカフェのキャストであり、カフェからデビューした声優でもあります。
江原さんは3人の女の子が四国一周のおへんろの旅を繰り広げる「おへんろ。〜八十八歩記〜」のちわ役を担当。「おへんろ。」では、このようなTシャツなどのコラボグッズが展開されています。
次の「マチ★アソビ vol.14」は5月3日(日)~5月5日(火)に開催。
まず決まっているイベントの1つが「市来光弘&井ノ上奈々結婚式」。市来さんはユニット「つきねこ」の一員としてマチ★アソビにvol.1から参加しています。すでに、地元の業者から協力の申し出があったそうで、衣装やバージンロードはばっちり問題ないようです。
さらに、噂されていた60名乗りのクルーザーを使ったイベントも開催決定。まずは5月3日(日)におへんろ。のディナークルージングが行われます。
さらにさらに、未知のイベント「マチ★アソビRUN」も開催が決まりました。徳島にはとくしまマラソンを開催するなどノウハウがあることから、運動系イベントが取り入れられることになったようです。なお、フルマラソンではなく、もうちょっと短い距離をみんなで楽しめるようなものになる予定。
現時点で参加する予定の企業のリストがコレ。
そして最後は今後のマチ★アソビについて。近藤さんは「町おこしってなんだろう」と考えて自問自答する7年だったそうです。実は徳島はかつては全国10位に入っていたことがあり、マチ★アソビの会場の1つとして使われている東新町のアーケードが自転車ではとても通れないほどの混雑だったそうですが、いまは22万人都市で、県下すべて合わせても70万人。しかし、過去を取り戻すのではなく、いかに未来に進んでいくか、いかに未来に橋渡ししていくかだと近藤さんは語りました。
春のマチ★アソビ vol.14では眉山山頂に登ることはありませんが川沿いにある2つの公園をフル活用して数多くのステージが行われることになるはずなので、参加経験がある人も、まだ行ったことがないという人も、ぜひ参加してみて下さい。
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