サイエンス

超音波がアルツハイマー病で失われた記憶を回復させる

By Mariano Cuajao

ヒトの耳には聞こえないほど高い振動数の「超音波」は、医療の分野では胎児の超音波検査などに使われています。そんな超音波を使って、アルツハイマー病の脳から失われた記憶や脳機能自体を回復させるという研究が進められています。

Ultrasound Restores Memory To Mice With Alzheimer’s | Popular Science
http://www.popsci.com/ultrasound-restores-memory-mice-alzheimers


アルツハイマー病の原因ははっきりとわかっていませんが、「アミロイド-β」と呼ばれるタンパク質が蓄積することで脳内に生じるプラークが原因の1つといわれています。アミロイド由来のプラークは加齢とともに発生すると考えられていましたが、ノースウェスタン大学フェインバーグ医科大学は20代の頃からアミロイドの蓄積が始まっていることを明らかにしており、脳内にアミロイド-βが蓄積すると脳細胞間の接続が阻害されるためアルツハイマー病患者の脳には記憶障害などの問題が生じると考えられています。

そこで、研究者たちは記憶力や低下した脳機能を回復するため、プラークを除去する方法を研究しています。この研究の難関は、血液と脳の物質交換を制限する血液脳関門にあります。血液脳関門は年齢とともに減少していきますが、不必要な物質を浸透させるのが非常に難しく、これまでプラークを除去する化学物質を脳神経まで浸透させることには成功していません。血液脳関門を除去すると脳にダメージを与えるため、関門を通過せずにプラークを取り除く方法を発見する必要があるわけです。

By Enrique T

化学物質に代わる治療方法が必要とされる中、オーストラリアのある研究チームは、超音波が脳の小膠細胞と呼ばれる脳の免疫系細胞を刺激することを発見しました。超音波をアルツハイマー病のハツカネズミの脳に送る実験では、75%のハツカネズミの脳から劇的にプラークを減少させることに成功しています。なお、これらのハツカネズミは記憶と空間認知能力が回復していたことも確認されています。

また、マイクロバブル注射と超音波を組み合わせることで、一時的に血液脳関門に無害な穴を開けることにも成功しており、プラークへの影響は未確認ですが、アルツハイマー病治療薬の開発に役立つかもしれないとのこと。研究チームは人間に対する臨床実験を計画していますが、次のフェーズでは、アルツハイマー病の羊を使った超音波治療を実験する予定となっています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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