点滅する光を浴びせるだけでアルツハイマー病が治癒する可能性


認知症の60~70%を占めると言われる「アルツハイマー病」は、いまだに根本的な治療法が発見されておらず、高齢化社会でますます大きな問題になると危惧されている病気です。そんな中で、アルツハイマー病のマウスに一定周期で点滅する光を照射することで脳内の原因物質を激減させて病気を治すという手法をアメリカの研究チームが開発しました。

Unique visual stimulation may be new treatment for Alzheimer’s | MIT News
http://news.mit.edu/2016/visual-stimulation-treatment-alzheimer-1207

光を浴びせるだけでアルツハイマー病の原因となる物質を脳から除去する手法は、以下のムービーで解説されています。

Light-based therapy for Alzheimer's disease - YouTube


人間の平均寿命の高まりとともに、「老化」による死因が増えており、アルツハイマー病はその一つです。


アメリカでは3人に1人がアルツハイマー病などの認知障害を患っているという調査結果もあります。


アメリカだけでも500万人の患者がいるアルツハイマー病は、全世界では4680万人の患者を抱えており、今や世界的な病気となっています。


アルツハイマー病の医療コストは2030年には2兆ドル(約230兆円)にも達する見込み。


アルツハイマー病の医療コストはがんや心臓病を上回り、アメリカの医療コストを問題を深刻化させることが確実で、抜本的な治療法が望まれています。


アルツハイマー病患者の脳の信号に関する最近の研究によって、脳が受け取る刺激の中で、アルツハイマー病に関連性があるのは31~120Hzのガンマ波であることがわかっています。


外界から受け取る刺激によって視覚野など脳の部位が信号を受け取ったり同調したりすることは、例えば愛する人の名前を覚えていたり、先週の出来事を思い出したり、どこに鍵を置くべきか注意を払ったりという行動にとって重要になります。


アルツハイマー病の患者の脳ではガンマ波への同調性であるガンマリズムが乱されていることが知られています。


そして、このガンマリズムを乱す原因は、アミロイドベータと呼ばれるタンパク質です。


アルツハイマー病患者の脳では、アミロイドベータが蓄積することで脳のニューロンの電気信号が流れにくくなり、記憶障害などの弊害を引き起こしていると考えられています。


MITの研究者たちは、まず初めにガンマリズムを乱す因子を持つ「5XFAD」型のマウスを作り出しました。


この5XFADマウスは脳の海馬にアミロイドベータが蓄積してニューロンが死に、アルツハイマー病の特徴である記憶障害を発症しました。


次にアルツハイマー病の5XFADマウスの海馬に、直接ガンマ波を当てる実験を繰り返すと、40Hzの周波数のガンマ波の場合だけ、アミロイドベータの蓄積量がほぼ半減してニューロンに変化が見られたとのこと。


40Hzの周波数のガンマ波を当てると、免疫システムを担うミクログリアと呼ばれる脳細胞が活性化してアミロイドベータを分解することがわかりました。


こうして40Hzのガンマ波を海馬に照射された5XFADマウスは、アミロイドベータが減り記憶力を取り戻すことに成功しました。


さらに、MITの研究者は脳に直接刺激を与えるのと同等の効果を持つ非浸襲的な方法を探したところ、40Hzで点滅を繰り返す光の照射によっても脳が刺激されてガンマリズムが回復することがわかりました。


アルツハイマー病の5XFADマウスに1時間連続で40Hzで点滅する光を浴びせたところ、脳内で発生する浮遊性のアミロイドベータが50%以上も減少。


さらに、40Hzで点滅する光をアルツハイマー病の5XFADマウスに毎日1時間浴びせ続けると、次第に脳内に蓄積されていたアミロイドベータも減少し、マウスは記憶障害が解消したとのこと。


マウスを使った実験で効果が確認された、40Hzで点滅する光を照射して脳内のアミロイドベータ量を減らしてアルツハイマー病を治療する方法は、すみやかに人間での臨床実験が行われる予定です。


光を40Hzで照射するという手法は患者の体を侵襲しない点だけでなく治療コストが低廉であることから、アルツハイマー病患者への効果が認められれば画期的な治療法になり得ます。研究を主導したMITのツァイ・リーフエ博士は、「マウスで認められた効果が人間では認められないという例がたくさんあるのはもちろん承知です。しかし、今回発見された手法は人間の体に非侵襲的であり、簡単に利用できる方法でもあるので、大きな可能性を秘めていると思います」と、今後の臨床実験に期待を示しています。

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