ビール醸造スタートアップを始めるのに注意すべきこととは?
By Horatiu Curutiu
アメリカ人のコリン・マクドネルさんはビールを愛しすぎた故、自ら長い年月をかけてビール醸造所を開いてしまった、ビール醸造スタートアップの創業者です。そんなマクドネルさんは、ビール醸造スタートアップにおける苦労や、醸造所での実際の仕事を公開しており、ビール醸造スタートアップを考えている人にはとても役立つ内容になっています。
So You Think You Want to Open a Brewery... | Serious Eats: Drinks
http://drinks.seriouseats.com/2014/03/challenges-of-opening-a-brewery-job-advice-beer-industry-collin-mcdonnell-henhouse.html
ビールを愛するマクドネルさんは、自ら醸造所を設立する前、サンフランシスコにあるThe 21st Amendmentという会社でビール醸造のアシスタントとして働いていました。「自分でビールを醸造する」という夢を叶えたマクドネルさんですが、実際に醸造所で働いてみると、その仕事はとても退屈なものだったとのこと。どうしてかというと、ビール醸造の仕事の9割は清掃、1割が文書業務だったからです。
ビール製造の過程で麦汁を発酵させるためには、大量のタンクが必要で、そのタンクを全てきれいに洗わなければいけません。また、パッケージングのプロセスにおいて、タンクや器具が汚れてしまうため、清掃業務はビール醸造において必要不可欠だったそうです。醸造所での仕事は毎日、タンク・グラス・床・排水溝など、ありとあらゆるモノや場所の掃除から始まります。こういった清掃作業は、醸造所の大きさに関係なく必要であり、こういった作業が嫌いな人はビール醸造に向いていません。
ビール醸造には、忍耐強く、細かい作業が得意で、本当にビールが好き、といった性格の人が向いています。ビール醸造のレシピやプロセスは多々あれど、作業ごとの違いはほとんどなく、同じ作業を何度も何度も繰り返し、その作業を毎回記録しなければいけません。仕事のほとんどが雑用と感じられるような中で、その仕事を楽しめる性格の人が向いているというわけです。マクドネルさんによると、醸造作業はそれまで想像していたものと全く違っていたとのこと。
マクドネルさんがビール醸造所で働いている時、醸造作業以外に「今まで勘違いしていた」と感じたことがあります。マクドネルさんは「醸造所で働けば、おいしいビールが飲み放題だ!」と考えていましたが、醸造所でビールを飲むことはあくまで「ビールの味を記録し、今までの他のビールと比較したり、従業員に飲んで感想をもらい、出来具合について会議を行うため」で、プライベートでビールを飲むのとは全く違うので「飲みたいときに自由にビールが飲める」という考えは甘かったとのことです。
また、ビール醸造所に休みはありません。ビールを醸造するのに土日や祝日など関係なく、毎日出勤するのが必須。毎日出勤しても、給料は高くなく、マクドネルさんがサンフランシスコで働いていたときは、インターンシップとして時給8ドル(約800円)しかもらえませんでした。ですので、ビールを本当に心の底から愛している人にしか、ビール醸造は向いていないのです。
ただし、ビール醸造に生物学や化学などの知識がいると思っている人がいるようですが、それは間違いであるとのこと。マクドネルさんは、初めて醸造所の面接を受けたとき、担当者に「ビール醸造の知識は必要ありません。これから教えていくから大丈夫です」と言われて、安心したことを覚えているそうです。
ビール醸造所で経験を積み、2006年にマクドネルさんは2人の友人と共同で「HenHouse Brewing」という会社を設立します。醸造に関する作業は醸造所で働いていたときと変わりませんが、起業する以上、ビール醸造に対する法規制や販売に関する勉強は必須。醸造所を運営するには、醸造作業よりもビジネスとしての面を理解する必要があります。
知っている人も多いと思いますが、ビール醸造は法律で厳しく規制されています。日本国内でビールを作ろうと考えた場合には、「所定の免許を取得する」「アルコール濃度を1.0V/V未満になるように醸造する」など厳しい規定があります。ですので、醸造所を設立するには、法規制に詳しい弁護士や、国の機関に詳細をきちんと確かめることから始めます。
企業として醸造所を設立する以上、きっちりとしたビジネスプランを立てることも大事。そうでなければ、銀行から融資を受けることは不可能です。マクドネルさんの場合、友人に協力してもらいビジネスプランを練りましたが、給料や設備の維持費など、月々に発生するコストは、当初の倍以上にふくれあがりました。支出や収益など、会社の財務を管理するのは楽しいことではありませんが、麦汁を発酵させたり、発酵ホップを選んだりする作業と同じくらい重要です。
マクドネルさんは、ビール醸造所を経営するのに必要なのは「自分で作ったビールを多くの人に飲んでもらいたいという強い熱意です」と語っています。掃除や単純作業の繰り返し、そして、経営・会計・販売といった醸造作業とは全く違う仕事をこなすには、胸に秘めるビールへの熱い思いが必要だとのこと。「私のアドバイスは否定的に聞こえるかもしれませんが、醸造所を設立したことは今までの人生の中で最も素晴らしいことです」とマクドネルさんは話していました。
・関連記事
空飛ぶドローンを使ってお店からビールを配達してくれるテストが進行中 - GIGAZINE
コーヒーとビールは一体どちらが想像力を豊かにする作用があるのか - GIGAZINE
「世界のビール博物館」で飲める、ビール大国おすすめのビールたち - GIGAZINE
いざというとき役立つ栓抜きなしで素早くビールのフタを取る6つのライフハック - GIGAZINE
これが本当のビール腹、身体の中でビールを醸造し酔い続けていた男性 - GIGAZINE
人類史上最強のビール「戦術核ペンギン」がイギリスで発売 - GIGAZINE
「ビールもれっきとしたアルコール」ロシア政府がようやく認める - GIGAZINE
苦節3年、テキサスの料理人が世界初の「揚げビール」を開発 - GIGAZINE
ラガーの誕生から市場トップに君臨するまでをビールの歴史と共に振り返るムービー「LAGER」 - GIGAZINE
・関連コンテンツ