ラガーの誕生から市場トップに君臨するまでをビールの歴史と共に振り返るムービー「LAGER」
世界で最も飲まれているアルコール飲料の1つであるビールには、ラガーやピルスナー、エールなどさまざまな種類がありますが、19世紀以降はラガーがビールマーケットの主流となっています。ビールの歴史の中でも比較的に新参者であるラガーがどうやって誕生し、市場のトップに君臨したのか、ビールの歴史とともに振り返るムービー「LAGER」が公開中です。
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◆1:ラガーvsエール
ビールを大きく分けると、ラガーとエールの2種類に分類できます。
エールが暖かい温度で上面発酵させるのに対して、ラガーは冷たい温度で下面発酵で醸造される、というのが両者の大きな違い。
エールはサッカロマイセス・セルビシエという出芽酵母を用いて、15度~24度で発酵されます。
また、エールの醸造シーズンは限定されており、春と秋のみ。
軟水しか出ないドイツのバイエルン地方では、硬水でなければ酵母が活動しにくいエールビールの代わりに、軟水でも低温下で活動する酵母を使い、さらに特殊な貯蔵方法を用いてビールを醸造するようになります。
特殊な貯蔵方法とは、秋の終わりに洞窟の中で氷を共に貯蔵し、翌年の春に取り出すというもの。貯蔵はドイツ語でLAGERUNGと言い、このスタイルで醸造されるビールがラガーと呼ばれるように。
◆2:新種の誕生
冷たい温度でも貯蔵できるラガーは、下面発酵で醸造。
下面発酵で醸造れたビールの特徴には、軽いコク・辛口・ほのかな香りなどがあります。
ドイツで生まれた新しいタイプのビールは、色の濃い大麦麦芽を使用していたため、現在のラガーとは違って黒い色をしていました。
しかしながら、オーストリアのAnton Dreher氏がドイツの色の濃いラガーとは違って、色の薄い現在のラガーに近いものを醸造し始めます。
Dreher氏のビールはペールラガーと呼ばれました。
◆3:ペールラガーの起源
1842年、チェコのプルゼニでJosef Groll氏が、ペールラガーに新しい技術を用いて発展させたビールを醸造。
Groll氏が醸造したビールは、その地名にちなんで「ピルスナー」と名付けられました。
現在、世界中で醸造されているビールの大半は、淡色の下面発酵のピルスナースタイルです。
◆4:輸出の始まり
貯蔵に適しているピルスナーが誕生して、ヨーロッパではビールの輸出業が本格的に開始。その中でも、最初に世界に向けてビールの輸出を開始した人物はデンマークのEmil Christian Hansen氏です。
Hansen氏が輸出を開始したビールは、現在でもよく知られている「カールスバーグ」
カールスバーグに続いてオランダや……
ドイツのドルトムントのビール会社も次々と世界に向けての輸出を開始し、ピルスナーの名は世界中に広まっていきました。
◆5:新しいビールメーカー
ビールだけではなく、醸造の技術もヨーロッパから海を越えてアメリカに上陸。ドイツ系アメリカ移民であるDavid Gottlob氏は、アメリカで最も古いビール会社Yuenglingを1829年に創業を開始します。
1876年には、同じくドイツ系アメリカ移民のAdolphus Busch氏が、現在アメリカで最も飲まれているビール「バドワイザー」を発売、こうしてアメリカ国内にもビール醸造会社が多く誕生していくことに。
◆6:暗黒時代
ビールの輸入が開始された後、アメリカには多くのビール醸造会社が誕生しましたが、第一次世界大戦後の1920年、アメリカではアルコールの製造・販売・輸送を禁止した禁酒法が施行され、アメリカのビール醸造会社はほとんど倒産。
禁酒法によってアメリカのビール産業は大打撃を受けましたが、いくつかの企業はアルコール度数が0.5%以下のビールを販売することでなんとか耐えしのぎます。
その後も第二次世界大戦の影響などもあり、アメリカ国内の醸造会社の数は、1980年代中頃まで低下し続け、ビール産業は長きの間、暗黒の時代を過ごすことに。
◆7:巨大ビール企業の復活
しこう品であるビールにとっては冬の時代が続きましたが、第二次世界大戦が終了すると、不遇の時代を生き抜いたビールメーカーが大企業へと成長していきます。
日本でも有名なバドワイザーを販売するアンハイザー・ブッシュは、1957年にアメリカ国内で最も大きいビール醸造企業になりました。
1855年に創業を開始したミラーは、1973年に現在同社の主力商品であるミラー・ライトの販売を開始し、一気に大企業への道を駆け上ります。
◆8:多国籍のビール
ベルギーの酒類メーカー「アンハイザー・ブッシュ・インベブ」はアメリカのアンハイザー・ブッシュを2008年に買収し、2010年にはビールのシェアが25%、売上高も360億ドル(約4兆円)で世界一に君臨。
アンハイザー・ブッシュ・インベブが販売するビールにはバドワイザーや……
メキシコのコロナなどさまざな国で醸造されるビールが含まれています。
また、2002年に南アフリカ共和国のサウス・アメリカ・ブリュワリーズに吸収合併された、ミラーも海外のビールを手広く販売。
デンマークのカールスバーグ。
チェコのピルスナー・ウルケル
イギリスのカーリングなどもミラーから販売されているビールです。
◆9:補添糖質原料によるビール醸造
ラガーの原料は主に水・麦芽・ビール酵母・ホップの4つ。
ヨーロッパで栽培されている二条大麦は、糖分が多く、タンパク質が少ないため醸造に適しているとのこと。
しかしながら、アメリカの六条麦は糖分が少なく、タンパク質が多いため醸造には不向きだそうです。
そのため、アメリカでは糖分を補充するために米を補添糖質原料として使用。
補添糖質原料は、麦芽を含まない穀物であるトウモロコシや米が主流で、醸造コストも安くなります。現在、アメリカで醸造されるほとんどのビールは、補添糖質原料を使用しているとのこと。
◆10:ビールのトレンド
ビール産業が巨大になるにつれて、ビールの種類も増え、カロリーが通常のものよりも低いライトビールが登場します。
バド・ライトはアメリカで最も売れているライトビールの1つ。
1980年後半には、日本のビールメーカー「アサヒビール」が世界で初めてドライビールという分野のビールを発売開始。
通常のものよりもアルコール度数が高く、辛口であるドライビールはアメリカでも人気を博し、ドライ版のバドワイザー「バド・ドライ」など各社ドライビールの販売をスタートします。
1990年代にはアイスビールが登場。
アイスビールは、製造工程で氷の結晶を形成させるまで冷やしてつくることで、不純物が氷とともに取り除かれすっきりとして後味が特徴的なビール。
アイスビールもドライビール同様に人気が上昇し、「バド・アイス」も発売されることに。
◆11:アメリカ産ビールのルネッサンス期
アンハイザー・ブッシュ・インベブやミラーがビール市場を独占する一方、アメリカの小規模ビールメーカーは、特定地域で限定量生産する地ビールの醸造を開始。
Sierra Nevada Brewing Companyは、伝統的なエールの醸造方法を用いてアメリカン・ペール・エールを販売し、大成功を収めました。
しかしながら、大規模な設備さえあれば、短期間で大量に生産できるラガーには力及ばず、世界のビール生産量のほとんどをラガーが占めているそうです。
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