Googleの謎の秘密研究機関「Google X」の真実、その裏側に迫る
Google XはGoogle Glassや無人自動車などの革新的プロジェクトを扱うGoogleの研究機関。これまでジャーナリストが入り込むことは許可されていなかったGoogle Xですが、Fast Companyが初めて密着取材を許可され、謎の秘密研究機関「Google X」が取り扱うプロジェクトの内容や、オフィスの様子が公開されています。
The Truth About Google X: An Exclusive Look Behind The Secretive Lab's Closed Doors | Fast Company | Business + Innovation
http://www.fastcompany.com/3028156/united-states-of-innovation/the-google-x-factor
Googleには「Google Research」というコンピュータ・サイエンスとインターネット技術を研究する部門がありますが、2009年に自動運転車を開発するために、Googleのセルゲイ・ブリン氏とラリー・ペイジ氏の支援によって立ち上げられたもう1つの研究機関であるGoogle Xは、現在、「Google Glass」、「自動運転車」、「Wi-Fiバルーン」、「血糖値をモニターできるコンタクトレンズ」の主に4つの研究に取り組んでおり、Googleが買収した飛行型風力発電の「Makani」のプロジェクトも扱っています。
Google Xに所属する科学者のアステロ・テラー氏は、Google Xの中でも特に成功する確率の低い革新的な研究を行う「Moonshots」チームのトップ。Google Xは、その方向性ゆえに失敗も多い研究機関ですが、テラー氏は「Google Xにとって失敗は最終地点ではなく、成功への手段となります」と話します。
テラー氏によると、「Google Xはその存在自体が実験的な部門であり、信じられないようなリスクを冒して技術的領域の限界に挑戦し、例えそれが母体であるGoogleのビジネスと反する研究でも躊躇しません。歴史上に前例がないため、これが偉業になるか愚行になるかは未知数です」と説明しています。しかし、小さな会社では危険なプロジェクトを行う資金がなく、大手企業は株主のことを考慮する必要があり、政府は議会を納得させる必要があるため、Moonshotsは挑戦する価値があるプロジェクトであるとのこと。
在籍する従業員も特異的で、彫刻家・哲学者・機械工という経歴を持つ者や、SFXに関するアカデミー賞の受賞者も在籍しています。テラー氏は金融業界出身で、人工知能で博士号を取得。オフィスには工具や機器類が並んでいるなど、Googleの中でもかなり変わった部門になっています。
以前に進められていたプロジェクトでは、リニアモーターカーの原理を用いて、磁石で貨物を空中浮遊させた状態で輸送する「ホバーボード」プロジェクトが進められ、実際に小さな試作品の開発に成功するも、実用化に必要なコストの面で中止となりました。他にも貨物を宇宙へ超低コストで輸送可能な「軌道エレベーター」プロジェクトにも取り組みましたが、地球と宇宙をつなぐケーブルはカーボンナノチューブでなければ耐えられないことが計算によって判明。現状では1メートル以上のカーボンナノチューブを製造する技術が存在しないために、プロジェクトは凍結となりました。しかし、凍結中のプロジェクトは新素材や、革新的な製造方法の誕生によって再始動する可能性があります。
さらに、数種類のスキャンテクノロジーを使って人や物を分子のビーム化して輸送する、まるでSFのような技術の「テレポーテーション」といった変わった研究に取り組んだ実績もあるとのこと。最終的に物理学のいくつかの理論に反する、という結論に至りましたが、このプロジェクトの議論から盗聴を防止する「暗号化コミュニケーション」のアイデアが生まれるなど、失敗が成功に結びついた例も多く存在します。
数々の革新的なプロジェクトを進行しているGoogle Xですが、自動運転車は技術以外にも法律・インフラ・保険に関する複雑な問題を抱えています。Google Glassについてもプライバシー問題が残っていますが、テラー氏は「Google Glassは私たちの生活をさらに便利に向上させ得るデバイスです」と主張します。Fast Companyの記者が「Google Glassが間違っている可能性はありますか?」と尋ねたところ、テラー氏は「もちろん、その可能性はあります」と認めた上で、「しかし、Moonshotsプロジェクトの中でどれか1つが『ホームラン』になれば、私は本当に幸せです」と答えました。
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