メモ

「数学が苦手」は生まれつきではなく努力によって克服可能

By woodleywonderworks

数学に対して苦手意識、拒否感を持ち「方程式と聞くだけでじんましんがでる」などと言うのは万国共通のようで、アメリカでは「I'm bad at math(数学はダメな人です)」や「I'm just not a math person(数学向きの人じゃないので)」という言い回しがあります。 「文系脳・理系脳」と、生まれつきの性質として人間の能力を決定づけるような傾向が見られるなか、能力は遺伝的要因にもとづくものではなく、努力によって克服できるものだという意見を、Miles KimballさんとNoah Smithさんがまとめています。

The Myth of 'I'm Bad at Math' - Miles Kimball & Noah Smith - The Atlantic
http://www.theatlantic.com/education/archive/2013/10/the-myth-of-im-bad-at-math/280914/


Miles Kimballさんはミシガン大学で経済学を教える教授、Noah Smithさんはニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の准教授。2人は長い間学生に数学を教える中で、数学(算数)の向き不向きは以下のようなパターンの中で作られていることを発見しました。

1:子どもたちは小学校に入ると算数の授業を受けることになります。しかしこの時点で、親から予め算数を教えられた子どもと、全く触れたことのない子がいて、予備知識のレベルにはかなりの幅があります。


2:ごく初期のうちに数回テストを行うと、予備知識のある子たちは満点を取りますが、算数の予備知識を持たない子たちは、行き当たりばったりでも解けるような問題しかクリアできないため、80点~85点ぐらいしか取れません。便宜上、前者をグループA、後者をグループBとします。

3:グループBの子たちは、満点だった子たちは予備知識を持っていたのだということを知らないまま、「算数(数学)には遺伝的なものが関わっているのだ」と思うようになります。そのため、「自分には算数(数学)は向いていない」と決めつけてしまい、それ以降はやる気を持つことができず、差が開く一方になります。

4:グループAの子たちは「自分は算数(数学)に向いている」と考えるようになり、それ以降も勉強に励むので、優位性が確立されていきます。

By woodleywonderworks

アメリカ・パデュー大学の心理学者であるPatricia Louise Linehan氏の研究により、前述のグループAに属するような変化・上昇傾向のある学生は、能力や知識が努力によって変化するものであると認識し、グループBのような固定化した傾向のある学生は、努力による能力変化・向上はないと認識している、ということが判明しています。

心理学者のLisa Blackwell氏らによる研究でも、知性・知識に対する考え方には「自分の知識はいくらでも変えていける」「知識は決まった容量しかなく、自分ではそれを変えられない」という2つの方向性があることが明らかになっていて、「知識は変えていける」と考えている学生が高い成績を収めていることもわかっています。

社会心理学者Richard Nisbett氏は、著書「Intelligence and How to Get It」の中で、貧しいマイノリティグループの中学生に「知性は努力によって向上させることができる、学習することで脳が形作られている」ということを教え込んだエピソードを紹介しています。Nisbett氏によると、この教えを受けた中学生たちは努力の重要性を認識したことで成績が向上しましたが、それだけではなく、自分は生まれつき頭が悪いので一生貧しい中で人生を歩むしかないと思い込んでいた子どもが、「自分の努力によって知性は鍛えることができる、自分で決めることができる」ということを知って涙したそうです。実際に、知能テストでIQが80と判定された少年が3年間の取り組みの結果、IQが100になったという話があります。

Kimball教授とSmith准教授は、数学について、生まれつきの素質がその後身につくかどうかに影響する「生まれつき論」が特に強くはびこっていると指摘。アメリカの4年生から8年生(日本の小学4年生から中学2年生に相当)の子どもたちは、ドイツ・イギリス・スウェーデンといった国の子たちを上回る成績を上げていますが、高校生ぐらいになると成績が低下してきます。両氏は、これを「基礎能力は高いのに、その後の努力が不足しているので学力が低下しているのです」と嘆いており、「難しい『代数』は必須ではない」と主張して数学の授業数を減らそうとする動きに対して「『アメリカ人はx(エックス)を使った計算に向いていない』と決めつけるに等しい考え方だ」とコメントしています。

By Shurik_13

多くの人が方程式や「x、y、z」といった数学の記号に恐怖を感じてしまうのは、「自分は数学に関して遺伝的に劣っている」ということと結びつけたくない気持ちが表れているためだと、Kimball教授とSmith准教授は語ります。しかし、そうやって「自分は数学に向いていない」と思って距離を取って生活することは、高賃金の仕事のチャンスを失うことにも繋がっています。

現代社会において「忍耐」と「努力による自己研鑽」のために数学が最もよい道具になる、というのがKimball教授とSmith准教授の主張。日本では「若者の理科離れ」が指摘されていますが、「そもそも関心を持っていない」という場合はどうすればいいのでしょうか……。

By Patrick Giblin

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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