OnlyFansでお金を稼ぐために女性を脅迫したり暴力をふるったりしてポルノコンテンツの制作を強要する事例が相次ぐ
OnlyFansはユーザーが写真や動画などのコンテンツを販売できる会員制のSNSサービスであり、新型コロナウイルスのパンデミック期には、収入を断たれたポルノ女優やストリッパーから「直接ポルノを販売できるプラットフォーム」として人気を集めました。そんなOnlyFansでは一般の人々でもポルノを作って販売できますが、中には収益を得るために女性を脅迫したり、暴力をふるったりしてポルノの作成を強要するケースもあると海外メディアのロイターが報じています。
Enslaved on OnlyFans: Women describe lives of isolation and torture
https://www.reuters.com/investigates/special-report/onlyfans-sex-trafficking/
2022年8月の朝、ある女性がウィスコンシン州郊外の家から逃げ出し、待機していたパトカーへ駆け込みました。記事作成時点で23歳のこの女性は、元ボーイフレンドのオースティン・ケケリッツという男によって2年近く監禁され、OnlyFansなどのプラットフォームで販売する性行為動画などの撮影をほぼ毎晩強要されていたとのこと。
ケケリッツと女性が出会ったのは、2020年8月のことでした。ケケリッツはブログで自らを「ビジネスオーナー、アーティスト、心理学の学生」と紹介しており、女性を博物館などのデートに誘い、いつか2人で世界旅行をしようと約束したとのこと。女性はケケリッツが自分を愛していると信じ込み、2人でウィスコンシン州の家に引っ越しましたが、すぐにケケリッツは女性を家族や友人から孤立させようとしたそうです。
女性は祖母の葬式に出席することすら禁じられたほか、ケケリッツからドロップキックを浴びせられたり、息ができないようにのしかかられたりするなど、たびたび意識を失うほどの暴力を受けました。また、ケケリッツは女性の抵抗を無視して繰り返しレイプしたとされています。
そして2021年1月、ケケリッツは「俺たちは500万ドル(約7億7000万円)を稼いで、それで生活できる」と言いだし、OnlyFansやChaturbate、MyFreeCamsといったポルノプラットフォームで販売する性的コンテンツの制作を始めました。女性はケケリッツに監禁され、週に60時間も働かされていたそうで、病気で休むことすらできなかったそうです。
検察官が裁判所に提出した財務記録によると、女性のコンテンツはOnlyFansやその他のプラットフォームで42万2000ドル(約6500万円)以上の収益を上げたとのこと。しかし、ケケリッツはその大半を自分の銀行口座に入れ、女性にはたった2000ドル(約30万9000円)しか渡しませんでした。
ケケリッツは、女性の家族が連れ出しに来たら銃で撃つと脅し、すべての部屋に銃を置いていたそうで、時にはショットガンを持って女性を追い回すこともありました。女性は、「その時のことがいまだに夢に出てくることがあります」と捜査官に語っています。
特に最後の数カ月は、さまざまなウェブサイトでのライブストリーミングや写真撮影、ケケリッツによる虐待などに苦しめられ、自殺を考えるほどだったとのこと。女性は、「私の体は死んでしまいそうでした。肉体的な疲労と絶え間ないセックスで死ぬのか、それとも自分で命を絶つのかはわかりませんでしたが」と述べました。
最終的に女性は逃げ出すことを決意し、どうにか警察と連絡を取って保護してもらうことに成功しました。警察の家宅捜索では、銃弾が装塡(そうてん)されたライフルを含む14丁もの銃、最大2万発もの弾薬、ミリタリー用のベスト、大人のおもちゃなどが押収されました。
警察に逮捕されたケケリッツは性的人身売買の罪を認め、2023年11月に20年の禁錮刑が言い渡されました。女性は、「あの家での2年間は数十年にも感じられ、苦痛と孤独の中で死を覚悟しました。この痛みが完全に治るとは思えません」と語っています。
ウィスコンシン州の女性のケースは、OnlyFansを通じた性的人身売買のほんの一例にすぎません。ロイターの調査では、OnlyFansで販売するコンテンツのために性行為を強要されたと当局に訴えたり、訴訟を起こしたりした女性が11人特定されました。
OnlyFansではコンテンツを閲覧するためにサブスクリプション料金を支払わなければならず、プラットフォーム上でまん延する性的人身売買の調査が難しいことから、実際に被害に遭っている人はもっと大勢いるとみられています。
恐怖やトラウマを抱えた被害者は法廷で証言することをためらい、起訴をためらうケースもあるとのこと。フロリダ州に住むある女性は、婚約者から数カ月にわたりOnlyFansで販売するポルノ制作を強要されており、婚約者が別件で逮捕されたことをきっかけに性的人身売買で起訴しました。しかし、女性は事件のことを話すと当時の出来事を思い返して気分が悪くなり、幼い息子の親権に影響を及ぼすのではとの懸念から申し立てを撤回したそうです。
OnlyFansはウェブサイト上で、売春や人身売買を含む「現代の奴隷制」を禁止していると述べており、モデレーターはウェブサイト上のすべてのコンテンツを確認し、人身売買の疑いを特定・報告するよう訓練されているとのこと。OnlyFansのケリー・ブレアCEOは、「OnlyFansはアダルトコンテンツ空間の人々の安全に焦点を当ててきました」と述べています。
性的人身売買を阻止する取り組みの一環として、2022年11月以降はOnlyFansに投稿されるコンテンツについて、出演者が同意していることを示す証明書の提出が必要になっています。しかし、ロイターが特定した少なくとも1つのケースは、2023年以降に女性がセックスビデオの撮影を強要され、従わなければ殴ると脅されていました。このケースで女性が同意書に署名したのかどうかは確認できていません。
女性に対して性的コンテンツの制作・販売を強要する犯人は、必ずしも被害者と恋人関係にあったとは限りません。ある夫妻が逮捕されたケースでは、2人はアメリカ北東部の6つの州を点々としながら、複数人の女性に対してOnlyFansで販売する性的コンテンツの制作を強要していたとのこと。2人は女性が命令に拒否すると殴打し、睡眠薬を飲ませたり、十分に働かなかった時は食事を抜いたり、逃走を防ぐために身分証明書を没収したりしたと、裁判所の記録には記されています。なお、2人はこの性的人身売買による売上で、2人の幼い子どもを育てていたとのこと。
また、反フェミニズムとマッチョイズムで知られるインフルエンサーであるアンドルー・テイトは、弟と共に7人の女性を誘ってOnlyFansで性行為を強要し、売上を自分のものにしたとして、2023年6月に人身売買と女性を性的に搾取する組織犯罪グループ結成、そして強姦(ごうかん)の罪で起訴されました。この件はルーマニアで模倣犯も生み出しており、犯人はテイト兄弟をメンター兼友人だと述べていました。
2024年8月に起こされた訴訟では、ポルノスターでリアリティ番組のパーソナリティを務めたこともあるブリターニャ・ラザヴィが、経済的に困窮したショーガールや移民の女性を誘導し、OnlyFansで販売するポルノを作るように強要したと主張されています。ラザヴィは女性たちが住む場所を用意し、自分の管理下でOnlyFansの性的コンテンツを作成すれば、すぐに現金が手に入ってぜいたくな暮らしができると言いくるめたとのこと。
ラザヴィは女性のIDと社会保障番号を使って、自分だけがアクセスできるOnlyFansのアカウントを作成しました。そして、女性らに酒を飲ませた上でカメラの前で性行為をさせ、制作したコンテンツから130万ドル(約2億円)以上の収益を生み出しました。売上はラザヴィが管理する銀行口座に振り込まれ、事前に約束した50%の取り分のうち、たった10%しか女性に渡さなかったそうです。
ロイターの取材に対し、ラザヴィの弁護士は断固として疑惑を否定し、それ以上のコメントを拒否しました。また、OnlyFansもロイターからの問い合わせに答えませんでした。
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