インタビュー

山田風太郎の忍法帖シリーズを大胆に脚色した「くノ一忍法帖」シリーズが13年ぶりに復活、「影ノ月」制作者インタビュー


アニメや映画にもなった人気漫画「バジリスク ~甲賀忍法帖~」の原作「甲賀忍法帖」などの忍法帖シリーズで知られる昭和の一大エンターテイメント作家山田風太郎が亡くなって10年が経ちました。死後なおファンを増やしつづける忍法帖シリーズですが、山田風太郎作品を原作としてシリーズの展開を続けてきた映画「くノ一忍法帖」シリーズが、13年の沈黙を破り、復活を果たしました。

忍法帖シリーズの荒唐無稽とも思える奇抜な忍術を存分に生かし、原作では男性であったキャラクターも美しいくノ一に置き換えて、自由に忍法帖を脚色した「くノ一忍法帖」シリーズですが、今回はVFX要素も取り入れ、より派手で、ばかばかしくも大まじめな内容に仕上がっているとのことで、「くノ一忍法帖」シリーズの企画・制作を長く担当し、今回の「くノ一忍法帖 影ノ月」でもプロデューサーを務める林哲次さんと、主演女優の阿部真里さん、助演の森下悠里さんに、撮影秘話を聞いてきました。

プロデューサーと女優2名へのインタビューは以下から。映画「くノ一忍法帖 影ノ月」公式サイト

今回インタビューに答える林哲次プロデューサー。


砂子剣役を演じる阿部真里さん。


真壁右京役を演じる森下悠里さん。


GIGAZINE(以下、G):
今回の「くノ一忍法帖 影ノ月」は6月4日公開ということで、公開直前という状況ですが、収録を完了しての感想を聞かせてください。

林哲次プロデューサー(以下、林):
収録が終わったのはもう大分前で、12月のことなんだけど、日光の山奥で雪の降る中撮影したので、まずは女優さんにもケガが無く、無事に撮り終えられてほっとしたという感じですね。


G:
阿部さんはいかがでしたか?

阿部真里さん(以下、阿部):
私はクランクインからずっと泊まりがけでの撮影だったので、終わってしまってなんだかさみしい感じがします。

G:
ずっと宿泊しての撮影だったんですか?

林:
移動しながらね。初めは日光のほうで、日光は観光地だから旅館もたくさんあって楽だったんだけど、メインで撮影した茨城県の石岡市のあたりでは、旅館も少なくて、俳優さんたちは昔でいう町人旅館みたいなところに泊まってもらって、スタッフは近くのスポーツ施設みたいなところに泊まりました。そこに10泊か11泊したね。

阿部:
クランクインした時は「ああ、長いなー」ってやっぱり思ったんですけど、クランクアップすると、すごくあっと言う間だったから「明日からみんながいないんだ」って思うと、ちょっとさみしい気持ちになりますね。


G:
撮影が終わったのはいつ頃でしたか?

阿部:
12月の20日か21日ぐらいですね。

G:
かなり寒い時期だったんですね。

林:
初日は日光の山奥だったんだけど、行ったら雪が降ってました(笑)

阿部:
そうですね。しかもそこの滝で滝行のシーンがあって、イジメなんじゃないかって思いました(笑)

森下悠里さん(以下、森下):
いやあ、すごかったですよ。見てるこっちもブルブルしちゃうくらい、雪がホントにまだあって、山が白かったですからね(笑)


滝行のシーン


G:
森下さん、撮影後の感想はいかがですか?

森下:
撮影期間中、ちょうど12月半ばのすごく冷える時期だったんですね。山奥で、しかも私たちの衣装がすごく肌の露出が多くて。くノ一なので、やっぱりみんなセクシーなんですよ。

衣装も本当に本格的なものにしていただいて、私のはちょうど、太もものところが開いているんですけど、そこから赤く見える線は、ちゃんと本物のフンドシを着けてるんです。私、フンドシは初めてだったんですけど、結構ほんとに着物の帯を締めるみたいにギュッギュッと力を入れて着けてもらって、帯を締められてるみたいな気分でした(笑)


森下さん演じる真壁右京のフンドシ姿


G:
衣装の下が取れてフンドシだけになるシーンがありましたが、それ以外のシーンでも常にフンドシだったんですか?

森下:
そうですね。見えてるのは衣装の開いたところからだけなんですけど、ずっと最初から最後まで忠実にフンドシでしたね。

林:
動きの中でも、見えるんでね。

G:
なるほど、そこはきっちり、と。確かに衣装がすごいですね。

林:
寒そうでしたね(笑)

森下:
はい(笑)

G:
くノ一忍法帖シリーズは「くノ一忍法帖 柳生外伝」以来13年ぶりの復活ということですが、復活のきっかけはどんなものだったのでしょうか?

林:
くノ一ってどうなっているんだってところを、この1~2年ちょっとあっちこっちから言われてまして。

G:
ファンの方からですか?

林:
うん、ファンの方とか、業界の人からも「林、どうなってるんだくノ一って」という。「そろそろやるの?」とか「やらないの?」っていう意見が他にもいくつかあって、もうそれこそ、そういう時期というか。

G:
そろそろ出していいかな、と。

林:
うん、そろそろ出していいかなと思って。

あと技術がね。昔はVFX(視覚効果)とかも大変だったんですけど、今はそうところも含めた時期もあって。中身もバカバカしいものなんだけど、バカバカしいものを真剣にやるっていうのがちょっと受け入れられる風が吹いてるのかなと。

G:
時期的にも良い感じだと。

林:
そうですね、理屈ではないんですけど、なんとなくそういう雰囲気もあって「じゃあやろうか」ということになりました。自分一人でムキになってもなかなかできないですから、周りの誰かが押してくれたりしないと。「そう思ってくれてる人がいるんだな」という感じですね。


G:
VFXのお話もありましたが、13年ぶりということで、新たに挑戦したことなどありますか?

林:
予算もあることなので、本格的なCGを使ってどかんと派手にはできないんですが、だからこそどう21世紀版の一作品目を作り上げられるかという工夫がありました。その中で一番はVFXですね。昔は現場のローテクでやってたものを、今はそれが簡単にできる。いろんなものが便利になったので、そこを使わせてもらいました。それでも、基本的には肉体なんですよ。人間同士だとか、薄着の女優さんたちが頑張ってくれないと、VFXだけ頑張っても仕方がないんです。

G:
なるほど。

林:
ええ、やってみてしみじみ思いました。

G:
素材に乗せた、ということですね。

林:
うんうん、そう。とはいえ、昔よりは奇想天外な忍法が考えやすくなりましたね。今回一番最初に出た「暴れ乳」っていう忍法なんかだと、母乳がビュッと出てきて、それがピッと針になって相手に刺さるというのは、イメージはできるんだけど、昔なら毒の母乳を飛ばすだけで終わってたんですよ。それが今回の「影ノ月」では、母乳が空中で針になって、それをさらに忍法「魔愚根手(マグネット)」で吸い付けて防ぐ、という一連のギャグみたいな流れでやってます。でもマグネットのほうは、よく見ると親指で挟んで押さえつけているという(笑)

今までだったらおっぱいからいろんなものを出して、乳時雨だ、火炎乳だ、乳波動だっていう感じで、なにかを出すだけだったのが、今は暴れ乳からマグネットみたいな感じで2段階でできるようになってます。

忍法「魔愚根手」


G:
なるほど、何か出すだけではなくて、出したものをいろいろ形を変えたりできると。

林:
はい、そうですね。いろんな形で加工ができるということがちょっと面白いかなと思いました。まあ、結局はアイデアと素材なんですよね。「暴れ乳」も、肌を金色に塗ったお姉ちゃんが出てこなきゃダメなんですよ。


G:
今回の映画にもいろんな忍術が出てきますが、中にはこんな忍術を考えていたけどボツにしたというのはありますか?

林:
それこそいろんな忍術を考えてたから、これはボツになったっていうのはあんまり覚えてないんですけど、タイトルだけで何とかしようと思って失敗した忍法「早熟女」というのがありました。阿部さんの髪が最後のほうで一部白髪になるんですが、あれを「忍法ナントカ熟女」っていうタイトルにしようかなと。今熟女が流行だからっていうだけなんですけどね(笑)

阿部:
ええ!そんなことなんですか!?(笑)


林:
熟女っていう言葉を入れたかった。だから「早熟女」。早い熟女って書いて、ソウジュクメ。「おお、それは忍法、早熟女だ!」って。「一年で四年分歳をとるから、お前は五年後にはババアだぜ」というセリフを一応作ったんですよ。今は忍法の力が衰えるということにしてるんですが(笑)

阿部:
恐ろしい忍法ですねえ、かかりたくないですね(笑)

森下:
一番怖いです(笑)

林:
そしたら監督が「それだと少しシワを作らなきゃいけないな」と。

森下:
イヤだー、主演が美しくなくなっちゃう(笑)

林:
それは問題だなと。だから忍法の力を衰えさせるだけにしました(笑)


G:
字面などで忍法は考えられてるんですね。

林:
昔、忍法「筒涸らし」っていうお姉ちゃんとまぐわっちゃうと男はミイラみたいに全部エキスを吸われるっていうのをやろうと思ったことがありました。視覚効果で、男がミイラになっていくように見せるんですね。でもそれよりも今なら加工で、体が透明になって向こうが透けるっていうのができるんじゃないかと思って。心臓だけがバクバクしていて、それをギュッと握って心臓を止めて死んじゃうっていうのも考えたけど、今回はやりませんでした。

G:
それはカッコイイ忍法ですね。

林:
面白いんですけど手間が掛かるので、今回それはちょっと置いておいて。いろいろ考えるんですよ。くだらなさもちょっと残さなきゃいけないので。

G:
どのぐらいの数の忍法を考えられたんですか?

林:
一回、忍法表ってのを作って、そこそこ数はあったんですけど適材適所なんで、そんなに数を考えてもそんなにしょうがないかなと。

G:
ストーリーの中にちゃんとはまるようにしなくてはいけないということですね。

林:
はい、はまるようにしなければいけない。例えば字面がこっちの方が面白いからこうしようとかっていうのもあります。今回出てきた忍法「乱れ蜘蛛」は単に帯を投げるだけなんですが、「帯地獄」よりも「乱れ蜘蛛」の方が面白いだとか、そういう現象に対する字面というのはちょっと考えました。逆に、マグネットはそのまま投げた方が面白いという(笑)

G:
字面も考えているから、忍法を使った時にボンッと横に書き文字で忍法の名前が出るわけですね。

林:
昔は忍法「母如礼縫亡(ボジョレ・ヌーボー)」とかも出してましたから。南蛮妖術とか言って。


G:
ちなみに阿部さんと森下さんは、過去の作品は見ましたか?

阿部:
TSUTAYAとかに行って、あるものを借りてきて見ましたね。

G:
そのシリーズに出ると決まった時にどう思われましたか?

阿部:
光栄でしたね(笑)

林:
ありがとう(笑)

阿部:
何で知ってたのかは分からないんですけど、「くノ一忍法帖」って名前は知ってたんですよ。だから名前のある作品に出られて、うれしかったですね。


G:
「くノ一忍法帖」は長く続いているシリーズだけに、かなりコアなファン層があるとは思うんですが、メインのお客さんというのはどういう層なのでしょうか。やはり、Vシネマを中心に見られている方々なんでしょうか?

林:
昔はまあ、そうだったけど、再開したら分からないです。13年空いてますから(笑)

G:
ではどんな人に見てもらいたいとか、こういう人だったら面白く見られるんじゃないかというのは?

林:
うーん。昔は社員旅行なんかで女子社員とおじさんたちと一緒になって「くっだらねぇー(笑)」って笑って見てたっていうのはありましたけど、今はどうでしょうね。基本的には、女性が見ても面白おかしく見てもらえる作品になったと思います。

G:
エンターテイメントとして面白く見てもらいたいと。

林:
そうですね、考えたってしょうがないんですよ。問題提起とか、難しいことは何も考えていない作品なので、ちょっと時間をつぶしてもいいかなって見てもらって「くだらねぇー(笑)」って言われたいですね(笑)


阿部:
昨日ちょうど新宿二丁目に、「影ノ月」のポスターを持って、いろんなお店に張ってもらいに行ったんですけど、オネエ系の人たちに「アゲじゃなーい!」って言われました。「あんたこれアゲよ! 張っておきましょう」って(笑)


G:
それで今、二丁目に張ってあるんですか。

阿部:
ええ、張ってあります。サイン付きで。オネエ系にもウケてます。

林:
それはあなたがウケてるんじゃないんですか?(笑)

阿部:
いや、「これなんなのよー! なんで足広げてるのよー!」って言われて「いや、これは忍法『胎内帰り(さとがえり)』で」って説明して。「すごいわねえ」なんて言ったりしてました(笑)

忍法「胎内帰り」


森下:
オネエ系にも注目されてるんですね(笑)

阿部:
注目されてますね。

林:
忍法「胎内帰り(さとがえり)」とかってフリガナを振るするわけじゃないですか。そういうところにどう字を当てようかって考えたのがほとんど僕で、一番苦労するところでした。


G:
今回、山田風太郎の「忍者月影抄」を題材にするということで、シリーズとしては二回目になりますが、この作品を題材にしたのはどんな理由からなんでしょうか。

林:
やりやすいんですよね。他のは仕掛けも大変だし、歴史的背景がどうのとか結構説明しなきゃいけないですから。「忍者月影抄」は、単純に吉宗の昔の女を巡る宗春との対決ということで、一番構図が分かりやすいんです。

復活の一発目として、VFXも含めて、あの時できなかったことを、こういう風にできるんじゃないかというイメージがあったんですね。それで題材についてはいくつか候補が挙がったんですけど、吉宗と言えばいわゆる「暴れん坊将軍」で、名君と言われた将軍で、その昔の女性遍歴を暴こうという図式が分かりやすかったんですね。原作の「くノ一忍法帖」は、大阪夏の陣とか背景がすごいことになっちゃいますから、そうやって背景事情の分かりやすいもので絞っていくと「忍法忠臣蔵」か「忍法月影抄」だったんです。


みんなが知っている題材だけど、実はその影でこうだったというのが、山田風太郎さんのテイストですが、その要素を生かすということで。この世の中を斜めから見ている感じが面白いんですよね。その風太郎イズムみたいなものが分かりやすい作品で、再開するのに分かりやすい作品だなと。あまり歴史的背景を細かく説明しなくても分かってもらえるかな、ということで。

G:
たしかに今回の「影ノ月」は全員の忍者に見せ場が作ってあって、盛りだくさんな感じがします。あんまり背景に時間をかけずに、アクション部分にしっかり時間を使われてますね。

林:
分かりやすいですからね。吉宗自体が名君ですから。享保の改革は実はこんなだったのか、という。

G:
ストーリーの中でも、宗春の方は単純に悪者というわけでもなく、人の命を大切にする人という描写もあって、ストーリーの奥深さも見せていますが、構図自体は吉宗vs宗春ということで単純明快ですね。

林:
映画の中でも「吉宗vs宗春」っていう図を画面に入れているんですが、対決の図式を分かりやすくしたかったんです。途中で構図がまだ良く分からないって言われたんで、あの図を編集で入れたんですけど、これを見せておけばこっちのチームとあっちのチームが戦ってるんだなというのが分かるじゃないですか。

G:
そうすることで山田風太郎的な「忍者のチーム対決」みたいな図もはっきり見えるというわけですね。


G:
阿部さんと森下さん、お二人は時代劇は初めてだと思うんですけれど、やってみてどうでしたか?

阿部:
時代劇は初めてだったので、セリフの言葉遣いがまず違うということで苦労しましたね。あと、私の演じた砂子剣という役は刀を使う役で、刀の振りが全然できないって林さんから現場で指摘されました。違うんだよ、そうじゃないんだよこうなんだっていうようなことを指導していただいて。

最終的にクランクアップする時に太刀筋が良くなったねって褒めていただいたのがすっごくうれしかったです。これを機に、これから本当に時代劇を続けて行けたらいいなって思いました。

G:
アクション映画でありながら、設定もちゃんとした時代を想定したものなので、時代劇として見ても面白いかもしれませんね。

林:
まあ、うそか本当か知らないですけど、ああいう将軍はいましたし、宗春という人もいたわけで、それは事実ですから。享保の改革もあって、良さばかりが今言われているけど、倹約とかって、ホントはなんだろなと。

G:
そういう側面もちゃんと出しているわけですね。


G:
森下さんはどうでしたか?

森下:
私はこの4人の中で一番自由なくノ一だったんですね。主 演の阿部さんを始め、みんな忠実に従うくノ一なんですけど、私だけそれを抜けたいと思っていて、自分の幸せだとか、どちらかというと現代の女性に近いタイプだったので、しゃべり方も他のみなさんは時代に合わせたしゃべり方なんですけど、私だけちょっとくだけた感じでやらせてもらいました。

所作とかも自由で、私だけカラーが違ったんです。武器とか使うこともなく、私は色気を使う忍法を主にしてるんですけど、時代を感じるものと言ったらやっぱり衣装ですね。かなり凝ったものを作ってもらったので、着るのにも脱ぐのにも時間が掛かりました。そういう部分も含めて、初めての時代劇だったので、すごく楽しかったです。


G:
一番印象に残ったシーンはどんなところですか?

阿部:
一番印象に残ってるのは、そうですね。お芝居の中で初めてキスをしたんですよ。

森下:
あ、そうなんだ!

阿部:
後半のところで、初めてキスをしたので(笑)

森下:
うわ、大変! 真里ちゃんいっぱいドラマとか、映画とか出てらっしゃるので、もうキスシーンもあったと思ってました(笑)

阿部:
お芝居の上では初ですね。

森下:
それはもう必見じゃないですか(笑)

阿部:
実際の現場でも緊張しました。この話だと、ストーリーの中でキスをすることで相手の忍術を受け継ぐんですよ。で、その相手は墨を操る役柄だったので、墨を口に入れられるんですよ。だから初めてのキスは墨の味でした(笑)


林:
確かにあれはキスと言えるのか分からないよね。墨の口づけみたいなものだから。

森下:
ほろ苦い(笑)

阿部:
その苦いっていうのに加えて、私の役の砂子剣は、多分初めてのキスなんですよ。男性とそういうことをまったくしたことが無いような子なので、そういうリアクションもとらなきゃいけなくて。

G:
そうですね、ちょっと男の子っぽいキャラクターですからね。そういうものを表現しつつキスシーン初めてというのは大変でしたね。

阿部:
大変でした。

G:
今回の役作りというと女性を捨てた感じの役というか……。

阿部:
そうですね、くノ一というのは女を武器にして相手を誘惑して倒していくって言うのが王道なんでしょうけど、でも女の武器を使わなくても十分、鍛えれば男と同じように戦えるんだってことを証明したくて砂子剣はずっと刀を差したりしてたんですね。

G:
意識して男の子っぽい演じようとしていたということでしょうか?

阿部:
そうですね、私男っぽいところがあるのでその辺は結構楽でした(笑)

G:
そのおかげで二丁目でも人気ということで(笑)

林:
そうそう(笑)


G:
森下さんの印象に残ったシーンはどんなところでしょうか。

森下:
私の右京という役と真里ちゃん演じる剣の会話のシーンですね。ちょっと胸に想いを秘めている役をしていたので、自分のつらい気持ちを剣に打ち明けるシーンがあって、そのシーンは心がこもりましたね。話に共感してくださる方も多いと思います。

私と剣は信頼関係がある間柄で、私は他の二人よりもすごく剣を信頼していて、心を許しているというか、心を打ち明けるというか、そこを見てもらいたいですね。あと私の忍法が面白いので、そこはくノ一ファンの方にも納得していただけるんじゃないかなと(笑)

G:
すごいインパクトですよね(笑)

森下:
もう、本当に色気を全面に出すタイプなんですよね。

林:
股の間に俳優の顔がある状態でずっとしゃべるんだよね。

森下:
あれ、すごく恥ずかしかったです! 試写会で見た時に、自分の股の間で、男の人がしゃべってるんです。しかも長いんですよ、結構ずっとしゃべったままで。あのシーンはいろんな人からつっこまれましたね、どういう気分ですかって。自分の股で男の人がしゃべってるってのはどうですかって。

阿部:
生まれたてみたいな(笑)

森下:
そうそう(笑)

忍法「女人花」


阿部:
私もその後のシーンで、悠里ちゃんの股をがっと開かなきゃいけないんですが、ちょっと失礼しますって感じで(笑)

森下:
夜中に寒かったですよね(笑)

G:
12月の中頃に行われてたわけですからね。

森下:
あれをやった後、私は全シーン撮影完了だったので、頑張りましたよ。もう最後決めなきゃみたいな(笑)


G:
全編通して一番の見どころはどんなところでしょうか?

林:
くだらないことを一生懸命やってたっていうことだと思います。あとは楽しんでもらえれば。くだらねえと思いながら結構面白いじゃんと思ってもらえれば一番ですね。女優さんたちも頑張ってるので、最近の時代劇とは違う感じで、肩の凝らない作品になっていて、いちいちつっこみどころ満載なんで、つっこみながら見てほしいです。

ブリュッセルのファンタスティック映画祭にも昔持って行ったことがあるんですけど、海外の人たちは映画祭を本当に楽しみにしてるから、画面にドーンと月が出たりすると「オオゥ」とか言うんですね。それでくだらない忍法をやると、なんて言ってるか分からないけどガーっと何か言われる。それに対してまた会場の中からガーっと返す人がいてっていう楽しい雰囲気でした。そんな感じでみんなで集まって見るとすごく面白いと思います。

G:
家でみんなで見ても楽しい、と。

林:
そう、つっこみどころ満載ですから。「マグネットなのになんで親指で挟んでんだ!」とかっていう、そういうところのつっこみどころを楽しんで欲しいですね。あとは女優さんたちが頑張ってるってところを評価していただきたい。


G:
ありがとうございます。では阿部さんは?

阿部:
まず見どころは、出られてる女優さんが美しいところですね。あとはやっぱり山田風太郎さん原作なので、本当に奇想天外な忍法合戦があるので、そこが一番の見どころなんじゃないかなと思います。


G:
ちなみに今回使った忍法の中で一番のお気に入りは?

阿部:
そうですね、忍法「胎内帰り」が私は一番お気に入りです(笑)

森下:
衝撃的ですね(笑)

林:
手が火になるやつはなんだっけ。

阿部:
「赤不動」ですね。

林:
あれが一番強いですよね。誰も勝てないと思う。

G:
いかにも山田風太郎っぽい忍法が、原作に出てきたものも、オリジナルのものもいろいろ出てきますよね。森下さんはどうでしょうか。

森下:
やっぱり女優のみなさん、このポスターでもお分かりになられると思うんですけど、すごくセクシーな女優さんがたくさん出ていて、こんなに色っぽい作品ってなかなか珍しいんじゃないかなって思うぐらい、すごく色っぽいシーン満載なんですよ。男性の方はもちろん、カップルだったりとか、みなさんで楽しくみていただけたらいいなって思いますね。


G:
劇場ではなかなか見ることができない雰囲気の作品ですよね。

森下:
なかなか見ることができないですね(笑)

阿部:
劇場で見るってすごい(笑)

森下:
すごいですよ、盛りだくさんなので。ボリューム満点です。

林:
そうですね、劇場で見つつ、またパッケージになったら家でつっこみながら見て欲しいです。本当はみんなで寄ってたかって「くだらない!」って見るのが面白いんですよ。


G:
この映画は原作がありつつも、かなり脚本に手を入れているかと思いますが、山田風太郎の作品を扱うということで、気を配った点などはありますか?

林:
そうですね。原作は20人対20人くらいのとんでもない数の男たちの戦いなんですけど、それを女性にしたりとか、忍法も「忍法月影抄」以外の忍法帖シリーズに出てくる忍法もヒントにしたりして作っています。

まず、風太郎先生の作品はスケールがとんでもないんですよ。連載をやっていたせいか、忍術の戦いがすごく多いんです。そういう読み物として作られた中にも、いわゆるアナーキーな、反権力的な要素は風太郎先生の作品には必ず出てくるので、そこは外せないかなと。権力に常に疑問を投げかけたり、盾突いてる人が必ずいたりとか、そういう部分ですね。

G:
山田風太郎イズムは外さずに、ということですね。

林:
原作にはかなり手を加えてるんですが、風太郎先生は昔から何一つ言われませんでした。風太郎先生が粋なのは、自分が書いた作品にこだわってないところですね。昔書いたものだし、こんなもん書いちゃったからお前ら好きにしていいよという。

G:
そういうスタンスの方だったんですね。

林:
やっぱり粋なんですよ。原作物をやると、原作のファンを裏切らないようにして欲しいとか、いろんなことを言われたりするものなんですが、風太郎先生は何一つ言わなかったんですね。今回の映画「影ノ月」に櫓平四朗というキャラクターが出てくるんですが、あのキャラクター造形も僕がやりまして、風太郎先生のイメージを念頭に置いてました。

G:
くノ一忍法帖シリーズは13年ぶりの復活ですが、今後続編を作っていきたいという思いはありますか?

林:
今回の「影ノ月」が成功すれば、どんどん作っていきたいですね。今度どの作品を題材にするかはお楽しみということで。

G:
まだまだ忍法のネタもいっぱいあるところですしね。

林:
ネタはいくらでも出てくるので。毎回考えてます。「影ノ月」では、みんな頑張って熱演しているので、ぜひ見て楽しんでもらいたいなと思います。阿部さん演じる砂子剣という、ちょっと男っぽかったお姉ちゃんが、途中で人生に立ち止まって、少し柔らかくなったかなっていう物語です。そこが一番分かりやすい部分ですね。阿部さんが最後に少し色っぽくなったかなと。

G:
ありがとうございました。


「くノ一忍法帖 影ノ月」のポスターを挟んで阿部さんと森下さんのツーショット。6月4日から、銀座シネパトスほかでロードショーの予定です。

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