インタビュー

これが日本の「選挙」の知られざる実態、選挙プランナーの松田馨さんにインタビュー



参院選の公示がされ、いよいよ選挙期間に突入します。あなたのその一票が欲しくて欲しくてたまらない候補者たちが、毎度おなじみ大音量のスピーカーで名前を連呼しながら街宣車で街の隅々まで駆け抜けまくり、街頭では一方的な演説が繰り返され、「うるさいなー」と思っているとあっという間に投票日、いざ投票前になっても結局誰に投票すればいいかわからない……それが日本の選挙なわけですが、その裏舞台はそのような生半可なものではありません。


表からは見えない選挙の真の姿、そして本当の問題点まで、ありとあらゆる選挙の裏話を、選挙に出馬する候補者にコンサルティング業務を行う職業である「選挙プランナー」としては日本最年少である松田馨さんにインタビューしていろいろと聞き出してきました。

日本の選挙の裏話満載のインタビュー本文は以下から。株式会社ダイアログ - 日本最年少選挙プランナー松田馨による選挙コンサルティング/選挙調査/ネット選挙/投票率向上



株式会社ダイアログがある滋賀県某所に到着。編集部からは電車で1時間ほどなのですが、電車から降りた瞬間、やたらすがすがしい空気が編集部員をつつみます。遠くに琵琶湖が見えるなど、予想に反して、かなりのどかなところに会社がありました。


こちらがダイアログの代表取締役である松田馨さん。インタビュー前に仕事風景やオフィスの中を見せてもらうことに。


プリンターやScanSnapなど、いろいろなガジェットがそろっています。


松田さんはiPhoneユーザーで、eneloopのバッテリーを常備して長時間の使用に耐えうるようにしているなど、かなり使い込んでいます。さらにヘッドセットを使ってハンズフリーで電話ができる状態にしてあるそう。


名刺はすべてiPhone上でデータ管理しているそうです。iPhoneを手に入れてから業務がぐっとやりやすくなったといいます。


こんな感じで電話をしながら業務をしているようです。最先端のものを取り入れまくっているのが一発で伝わる、いかにもデキる感じのする一枚。


PC周りを強化している一方、選挙は紙の資料がどうしても出るため、付せんを数種類常備しているとか。


デスクトップのほかにも、ノートが1台。近々iPadも購入したいということです。以前からずっとMacユーザーを貫き通していて、社内のPCはほぼすべてMacだとか。


選挙関係の本が本棚にずらり。その上にある神棚については「やれることをやってしまったら、最後は神頼みなので」置かれているとか。


今回は代表取締役の松田馨さんにインタビューに答えてもらいました。


G:
まず最初に、自己紹介をお願いします。

松田馨さん(以下、松):
選挙プランナーの松田馨です。日本で最年少の選挙プランナーだということを2年くらい前から言っているんですけど、今のところほかにそういう人が出てきていないので、たぶん今でも日本最年少の選挙プランナーということになると思います。

もともと別に選挙や政治に関心があったわけではなく、デザイン会社で働きながら大学に通っていて、大学を卒業した後は大学に就職して入試広報でいろいろな企画業務を勤めながら、個人的にパブリック・リレーションズ(PR)や広報の勉強をしていました。大学のような大きな組織で働くのはあまり向かないなと感じたので、2年くらいで辞めようと思っていたのですが、ちょうど辞めるタイミングで、学生時代からお世話になっていた、当時僕の母校であり勤務先でもあった京都精華大学の教授をしていた、かだ由紀子さんから、県知事選挙に出るから手伝ってくれと言われたんです。その時はまだ選挙プランナーと名乗っていたわけじゃなく、無党派対策とか浮動票を取るのにどうしたらいいのか、デザインや広報の専門家としてイメージ戦略をいろいろ考えて欲しいというような話だったんです。投票日の3ヶ月半前からの準備で時間がなくて、また人が足りない中での話だったので、本当に3ヶ月ずっと1日も休みがなくて。5キロくらいやせましたね。

選挙の際、滋賀県に新幹線の新駅を作るという話が持ち上がっていたんですが、それがのぞみは止まらず、ひかりとこだまが1時間に1本くらい停車するだけ、在来線で京都まで30分という中途半端な場所にある駅だったんです。その建設を推進するというので3期目の現職が一生懸命活動していて、自民党と公明党と民主党が相乗りで推薦するという情勢の中、無所属で、新人の女性候補が勝ったというので、非常に話題になりました。わたしは最初から最後までずっとお手伝いをしていたということで、いろいろ取り上げてもらったんですね。


G:
かだ由紀子さんの選挙のお手伝いをする決心はどこでついたんでしょうか?

松:
かださんは立候補の動機が非常に分かりやすかったんです。かださんは立候補される前、30年以上琵琶湖をフィールドに研究してきた人で、それを学生のころから見てきました。かださんは、学者としてダムや治水の問題とか琵琶湖の保全について発信をしていったのだけど、社会が変わらなかった。今このタイミングで何とかしないと、琵琶湖が、滋賀県がダメになる。だから社会を変えるために知事選に出るんだとおっしゃっていて。知事選に出る理由というのがすごく明確で、その話を聞いて、僕はすごく納得したんですよ。「ガッテン」と(笑)要するに権力は手段なんだな、と。滋賀県知事になったら、変える力が得られるんだなと。

それで一生懸命応援して、見事かださんが当選したわけですが、さきほどお話した新幹線新駅の問題、240億円も県の税金を使って建設する予定だったんです。すでに着工式とかもしていて、今さら止められないと批判をされていたんですが、かださんは公約通り計画を止めたんです。大型公共事業というのは普通なかなか止めることができないんですけど、きっちり止めてくれて。治水に関しても、基本的にはダムに頼らない治水という形で進めていて、民主党政権になる前から不要なダムについては凍結の方針を出していました。それで、政治家が変われば社会が変わるんだなと実感したんです。もしかださんが落選していて、前の知事が当選していたら、県の財政が破綻していたかもしれないな、と。

かださんが選挙に出た時はちょうど参議院選挙の1年前だったので、参議院選挙の売名目的じゃないかと言われたり、新幹線の駅を推進するんだったら推薦してやるぞとか誘われたりしたんですが、そういうものをことごとくつっぱねていましたね。かださんがなりたかったのは滋賀県知事で、政治家になりたいわけではなかったので、全部断ることができた。本当に筋が通っている。だから、かださんが僕の中での、政治家を目指す人のモデルになってるんです。

社員さんが作業する部屋にあった大きなプリンターはポスターの試し刷りなどに使われるということで、かださんのポスターもここでデザインしているとのこと。とにかく設備が充実しています。


G:
仕事はどうやって受注しているんでしょうか?

松:
選挙の業界というのは非常に狭くて、県知事選挙ともなる県外からも人が来ていて、その人たちも自分のところの選挙をしている人だったりとか、その地域の議員だったりするんです。かださんの選挙の時に知り合った方々が、わたしの働きを評価してくれて、自分の選挙も手伝ってくれというような形でお願いをされるようになったんです。最初は企画・広報の個人事業、いわゆる「ひとり広告代理店」のようなことをやっていこうと思っていたんですけど、かださんの選挙のこともあって、紹介で入ってくる仕事が9割方選挙関連のもので、選挙の仕事ばかり2年くらい休みなくやっていました。そうした中で、ある程度自分の中で選挙のノウハウが蓄積してきたので、選挙に特化してやっていこうかなと思いまして、選挙プランナーと名乗り始めたのが2008年の頭くらいでした。

選挙の仕事をはじめて、ちょうど5年目に入ったところですね。これまでに、およそ80人ほどの候補者の方のお手伝いをしてきました。まだ100人に届いてはいないんです。勝率は今少し下がってきてて、75%くらいだと思います。

G:
下がった状態で75%ということですか?

そうですね。選挙をしなかったらずっと勝率100%なんですけど(笑)なかなか無敗は無理なところがあって、特にうちの会社の場合、かださんの選挙のイメージが強くて、組織の後ろ盾を持たない、はっきり言うと普通では勝てそうにない人が依頼に来るんです。組織もないし選挙も初めてだという、新人の依頼が非常に多いですね。現職の人の依頼が3割くらいで、7割くらいが新人の方です。


G:
以前は大学の職員をされていたということですが、どのようなきっかけで選挙コンサルティングをはじめることになったのでしょうか?

松:
もともとデザインとかそういった部分は大学時代に働いていた会社でたたき込んでもらっていたんですけど、デザインはあくまで手段なんですよね。ビラを作るのが目的ではなくて、たくさんお客さんに来てほしいとか、ホームページにアクセスしてほしいとか、目的をしっかり見極めた上で何かしないといけないという部分も含めてたたき込んでもらったんです。

そういう考え方があったので、デザイナーよりは企画の方に行きたいなというのが大学で働いている時からありました。企画とか編集という部分について自分でも勉強して、また、いろいろデータを集めたりとかするのは昔から好きだったので、過去の選挙データの分析とかも苦にならなくて。目的を達成していくためにどうしていこうという部分を突き詰めていったら、それが最終的にコンサルティングという形のお手伝いになったというところです。

自分がコンサルタントになろうと思っていたわけではなくて、自分の中で「こういうことを実現しようと思ったらこういうことが必要だな」という考え方の順番で、必要なことをやっていったら、結果的にそれがコンサルティングだったというような流れなので、自分の中で積極的にコンサルティング業務をしようと思ったことはないんです。

G:
先ほど、選挙コンサルティングを依頼されるのは新人の方が7割を占めるとうかがったのですが、地盤(支持基盤)・看板(知名度)・鞄(資金)のすべてがそろっていても選挙コンサルティングに依頼してくるケースというのはあるのでしょうか?

松:
はい、ありますね。依頼の3割くらいが現職の方なんですが、選挙は本当に何が起こるか分からない怖さがあるので、「多分大丈夫だとは思うんだけど、お願いしたい」という依頼もあります。現職の方はほとんどそうです。なので、新人の場合とはお手伝いの仕方が変わってきます。

現職の方の場合、完全にうちの会社は黒子になって、契約していることを知っているのは選対本部長と本人、そして本人の家族だけという形になることもあります。だから、僕が作った戦略とか、情勢分析とかは選対本部長が言うことになるんです。というのも、それまで支えてきた支持者の方々が、外部のコンサルが入るのを快く思わないことがあるわけです。

「自分たちの力が信用できないのか」というような反感を買ってしまったり、その地域でずっと選挙を仕切ってきた方がいらっしゃったりして、無用な衝突が起きてしまうことがあるので。電話での独自世論調査や過去の選挙結果の分析、それに基づいた戦略、キャッチコピーの考案など、大枠のプランを練るところは僕たちの会社でやっているんですが、実働や細かい現場での指揮はすべて選対(選挙対策本部)にやってもらうというパターンが最近は多いですね。


G:
では、新人の方の場合はどのような方針でコンサルティングをするのでしょうか?

松:
新人さんの場合は、本当にいろはの「い」からお教えする感じです。まず立候補しようと思ったら、自分の政治団体を持つ必要があります。「○○後援会」とか「明るい○○市をつくる会」とかですね。政治団体の設立届を出さなくてはいけないので、その書き方からお手伝いします。

なんでこんなことが必要かというと、例えば大阪の市長選挙があって、それに立候補する人が、選挙が始まる前に「大阪市長選挙に立候補する○○です、ご支援お願いします」と言ってしまうと、事前運動とみなされて公選法違反になってしまうんです。非常にややこしいんですけど、政治活動という言葉と選挙運動という言葉があって、選挙運動は政治活動の中に含まれているものの、選挙期間中にしか行ってはいけないんです。

もうすぐ公示される参議院選挙の場合、6月24日公示で7月11日投開票となっているのですが、公示の日から投票日前日までの間しか選挙活動はしてはいけないんですね。じゃあ、事前にどうやって当選に向けた運動をするかというと、「選挙に出る」と言うのではなくて、「この町には今こういう問題があるので、自分だったらこういう風に変えていきたい」と政策を訴えるんです。自分の主義・主張、政策を訴えるのは政治活動なので、違反にはならないんです。本当にややこしいんですけど(笑)

この例なんかは単なる法律の解釈の違いと言ってしまえばそれまでですが、そういう細かい注意点がいろいろあるんです。選挙に立候補するにあたって、自分の政治団体を作らなくてはいけないだとか、資金管理団体がどうとか、そんなことは普通の人は絶対に分からないじゃないですか。なので、まったくの新人と、現職である程度組織を持っているところだと、こちらも関わり方が変わってくるんです。

G:
いわゆる泡沫候補(選挙で当選する見込みが極めて薄い選挙候補者)のコンサルティングなども行うのでしょうか?

松:
泡沫かどうか、というのは結果的なところもあるので何とも言えないんですね。とにかく候補者とお会いしてみて、本当に日本を、自分の住んでいる町をよくしたいという志や本気度が見えればお手伝いするんですが、今のところ泡沫候補のお手伝いをしたことはないですね。これまでに、そのような候補者の方から依頼されたことはありますが。

泡沫候補とはちょっと違うかもしれませんが、最近ちょっとおかしな問い合わせが多いんですよ。例えば、メールで「京都市長選挙に出たいんだけど、100万円くらいでできますか」というような、名前も連絡先も書いてない問い合わせが来たりします。市長選は選挙に出るための供託金だけで100万円以上かかってくるものなので、その額で出馬するのは無理ですし、連絡先も名前もないというのがひどい。

また、「お金も、時間も、人手もありません。しんどいこともしたくありません。だから風を起こして勝たせてください」という依頼がきたりもしました。もちろんこんなにはっきり言っているわけではないですが、要はこう思っているわけです。現職の国会議員からだったのですが、僕は魔法使いじゃないんで無理です(笑)とお答えして断りました。選挙は候補者の資質、そして覚悟が何より重要です。僕はあくまで候補者のお手伝いなので、覚悟のない人についてはお断りしています。


G:
「政治家に転職しよう」という、軽いノリの本なんかもあるみたいですね。

松:
やっぱり、ある意味で安定した職業という勘違いがあるんでしょうね。選挙があるから本当は全然安定してないんですけど。あとは議員になるのがステータスだと思っている方もいらっしゃるみたいです。だから、当選したいという部分が前に出てきてしまう。

うちに相談に来る人には2パターンあって、すごく分かりやすいんですよ。とにかく熱い人はいきなり電話をかけてきて、電話口で「うちの町にはこういう問題があって、変えなくてはいけないんだ!」とまくしたてるんです。いや、どちらさまですか?というくらいの勢いで(笑)志のある人はそんな感じなんです。逆に、いろいろ細かく言ってきて、「お金はこれくらいしかないが当選できるか? 政党の推薦をもらった方がいいのか?」とか、最初から選挙に勝つことばかり意識している人もいます。当選することが目的なんですね。大体話をしたら分かりますし、大抵、後者の方は負けるのでお断りしています。

G:
お金に細かいと選挙に負けてしまう可能性が高いということでしょうか?

松:
もちろんお金を無駄に使わないようにするノウハウもあるしアドバイスもしますが、ビラの印刷や折り込みなど、どうしてもお金がかかってくる部分はあるんです。だから勝つためには仕方がない、借金してでも何とかするというような人の方が圧倒的に強いですね。お金について細々とケチって地団駄を踏んでいる内に、選挙の期日は決まっているので後手後手になってしまったりして。

支持者が一生懸命「勝つぞ!」と動いて、配るビラがなくなった時に「いや、でも増刷するお金がないので」と候補者が言っているようでは、支持者の士気も下がるんです。お金をかけないように選挙をしなくてはいけないんですけど、実際必要になるお金という部分で見通しが甘かったりとか、覚悟が足りなかったりする人は落選しますね。うちの会社も、支払いを渋られたり、ドロンされたり、痛い目を見たことがあります。

G:
そんなことがあるんですか……?

松:
考えられないことですけど、何度か痛い目にあいました。普通の企業間でのやりとりでは起こらないようなことが起こってしまうことがあるんです。踏み倒しなんて、企業間ではなかなか起きないですからね。

なので、契約書を作ったり、前金制にしたりとか、いろいろとやり方を変えながら対処しています。選挙はとにかく時間がないから、お金の話で止まっている暇はないんです。見積もりのやり取りをした上ですすめているんですが、選挙が終わった支払いの段階になって、見積もりも通って発注しているのに最後にまた値切られたりとか、そういうこともありますね。また、見積もりで値切ってからまた値切られたりとか……


G:
これまでコンサルティングを依頼されて断ったケースはありますか?また、どのようなパターンがありますか?

松:
いろいろありますね。一番困ったのは、ある地方の首長選挙で両陣営から依頼が来た時ですね。そういうケースが過去2回あって。1回目は、知人の紹介で仕事を請けた次の日に、相手陣営の方からも依頼が来て、もちろん相手陣営から依頼が来ているとは言えないですから、スケジュール的に無理ですと断りました。うちがお手伝いした方が当選したので良かったのですが、ひやひやしました。2回目は、両方の陣営から依頼が来て、しかも両陣営とも知り合いで、その時は他の選挙の仕事がすでに入っていたので、どちらもお断りしました。

うちの会社は党派にこだわらず人物本位でお手伝いをさせていただいているので、与野党問わずお付き合いがあって、いろんなところから声がかかることがあるんです。その時々の選挙で誰の紹介だったかとか、話が早かったかだとか、そういう部分で仁義は切って、同じ選挙区で、仮に複数人当選する選挙であっても、対立候補の依頼は請けないです。まず、やりにくいですからね。どっちが勝ってももうかるのかという話になると、それは倫理的に問題があるし、力のかけ方が分からなくなりますから。これは選挙コンサルティング会社独特の社内倫理みたいなものです。


G:
単純にモノを売っているわけではなく、その後もつきあいが続くからですね。

松:
そうですね。2009年の夏は現役の国会議員の依頼が多かったんですが、何人も受けられないのでお断りしました。

G:
選挙活動というと、街中を走る街宣車とウグイス嬢の声かけ、そしてビラ配りというイメージがあるのですが、一番効果がある手段というのは現状何なのでしょうか?

松:
実際選挙って言っても実は色んな種類があって、選挙期間も違いますし対象となる自治体の広さも違います。一番規模の大きな選挙というのが、参議院選挙と、知事選で、17日間選挙期間があるんです。衆議院議員の選挙というのは12日間。30万人くらいを基準に1選挙区という形の区割りをするんです。だから、30万人くらいの区を対象に12日間。

あとは政令市の市長選挙。政令市はだいたい80万人以上の人口のところなんですけど、大阪だったら大阪市とか、堺市。その場合は14日間の選挙です。要するに、対象とする有権者数、範囲によって選挙期間の長さが変わってきます。ちなみに一番短いのが町村議会議員、町村長選挙。それが5日間。1週間ないんです。火曜日告示、日曜日投開票の短期戦です。

だから、選挙によって有効な手段というのはそれぞれ変わってくるんですね。地域性というものもあるので。たとえば、参議院選挙でいえば、一番影響があるのは巨大メディアですね。テレビや新聞などの報道に大きく左右されます。それこそ駅でビラを配るにしても、民主党の人で言ったら、5月末は駅で演説してビラを配ってても誰も受け取ってくれないんですけど、今配ったらめちゃくちゃ受け取ってくれるんです。分かりやすいんですよ。逆風の時に何とかなるかどうかという部分は、それまでの事前の積み重ねがないと非常に苦しいです。個人後援会の会員をしっかり固めているとか。

G:
なるほど。そんな中でも、どの選挙でもおおよそ効果が見込める手段というものはあったりするのでしょうか?

松:
やっぱり戸別訪問でしょうね。会いにきてくれて話をして、握手をしたという経験が一番強いです。一応、日本の公職選挙法では、投票依頼の戸別訪問は禁止になっているんですけど、選挙期間より以前の段階で自分の政治信条とかを伝えるために、自分の後援会への入会をお願いして回るのは「後援会の勧誘活動」であって戸別訪問になるのでグレーなんです。誰かの紹介で訪問して、リーフレットを渡して入会を依頼する……というようにすれば、戸別訪問として即違反にはなりません。

でも、戸別訪問を禁止しているのは日本くらいなんです。その禁止の理由が、「戸別訪問した時に、金銭の授受があるだろうから」というんですが、これはひどい話で、完全に国民をばかにしていると思うんです。要するに有権者がそういうものを受け取るという前提に立っているわけじゃないですか。


G:
今この時代に戸別訪問でお金を渡したりしたら、インターネットにさらされて速攻で終わりそうな気がしますけどね。

松:
その通りです。Twitterで「○○さんに買収されたなう」とか書かれて、ハイ終了でしょうね。

ただ、戸別訪問でひとつ難しいのは、組織力のある人の方が有利という側面があるんです。たとえば100人動員して、地図上のここからここまでと決めてローラー作戦、人海戦術でやってしまう。そういうことができると、やはりお金を持っている人の方が有利になるし、ほかにもなりすましとか相手陣営のスパイとかいろいろとあるからきちんと法整備をする必要があると思いますが。

しかし海外では戸別訪問は選挙活動の基本なので、そこを規制しているのは少しいびつだと思うんですが。戸別訪問しながら自分の政策を訴えたり、個人の後援会に入ってもらうということを地道にやっている人というのは、郵政解散の時に民主党であっても生き残ってるし、前回の政権交代解散でも自民党現職で生き残っているし。そういう地道なことを積み重ねている人は選挙に強いですね。ただ、選挙に強いことと、実際に政治家として仕事ができるというのは別なので、そこもまた難しいんですが。

G:
インターネットの話が出ましたが、今回ネット選挙解禁が流れてしまったことについてはどうですか?

松:
すごく残念です。今の公選法は有権者目線ではなく、現職の政治家の目線で作られていて、現職に都合のいいように作られていると思います。有権者の関心を高めて政策を知ってもらって、一人でも多くの人に投票してもらおうという気はまったくないんです。ネット選挙の解禁はその突破口になると思っていたので、本当に残念です。

会社としても、ネット選挙の解禁にむけて、2007年ごろから準備をはじめていました。ホームページにも載せている「ネットスポークスマン」というものがあって、あのソリューションの延長線上でどんどん発展できるように準備ができています。

ネット選挙だけえなく、献金についても日本ではまだ広がってないですね。個人献金をしたくても、その窓口がまったく簡便化できていないんです。楽天や一部の会社が献金サービスをはじめましたが、まだまだ有権者にとって簡単に献金できるようになっていないんです。かつ、企業献金はダメ。そうすると、政治家はどこからお金を献金してもらうの?ということになる。現段階では郵便振替とか、銀行の口座に振り込んでもらうことが多いのですが、そうすると、500円の募金をしたかったら315円の振込み手数料がかかって、815円払わなくてはいけない。ばかばかしくって誰もしないですよ、こんなことは。半分近くが手数料ですから。



G:
事務所の前に募金箱でも置いておいたほうが早そうですね……

松:
それが、できないんです。匿名寄付というのが候補者は受けられないんです。政党と政治資金団体については、1000円以下に限って匿名寄付を受けられるんですが。だから基本的にはカンパ箱とかも違反になる可能性があります。知らずにやっている所もあるんですが、基本的に政党以外は、匿名寄付は一切受け付けられないんです。

あまり寄付についての法整備がされていないのもあるし、日本の社会自体で寄付文化がそんなに根付いていないですよね。この辺りはこれからかな、と思っているんですが。だから、企業・団体献金はきちんとなくして、個人献金を奨励するような部分、税控除を手厚くするとかも含め、体勢が整ってくればまた変わってくると思います。

それにしても、ネット選挙が流れたのはかえすがえす残念でなりません。選挙期間中にネット選挙が解禁になったらという予測でうちも企画をしたり、お話をいただいていたりしたんですけど、全部流れてしまいました……。

ただ、やっぱり難しいのはネット選挙が解禁されたといっても、ネットで投票ができるようになったわけではないんです。解禁された場合の内容としても、選挙期間中にホームページの更新ができます、ブログの更新ができます、でもTwitterとYouTubeは今回はできません、という内容でしたよね。TwitterやYouTubeという単なるサービスの名前を名指しで規制するというのはどうなのかなと。ブログの更新が認められるのであれば、Twitterも基本的に認められてもいいように思います。なりすましのリスクとか、そういうことは言われているんですが、言い始めたらキリがないですからね。

それに、誹謗中傷の関係でTwitterとYouTubeがはじかれたということも聞きますが、その辺りは候補者側が適切な対応をするしかないと思うんです。今だって怪文書が飛び交っているわけですから。

そう、怪文書って実在するんですよ。僕も何度か見たことがあります。ハガキに対立候補の女性問題や金銭トラブルを書いて、足がつかないようにわざわざ隣の市の郵便局から出したりとか。一番すごかったのが、ある時高齢の候補者が出馬して、体調がよくない、つまり任期を務められないのではと言われていたんですが、投票日の2日前に「○○候補が死んだ!」という怪文書が流れてて。候補者の奥さんから「これどうしたらいいんでしょう……」って相談されたんですが、正直びっくりしました。とりあえず候補者の元気な姿を有権者に見せましょうということで落ち着いたんですが。


G:
その発想はすごいですね。本当に亡くなったなら、まず選挙自体が止まりますよね。

松:
選挙がやり直しになるケースもありますね。怪文書など、出所不明で好き勝手なことを書いてお互いに非難しあうということは、ネットがなくてもすでにやっていることですから。まあ、そういうことやってきた人たちが、ネットが解禁になったらどうしようと思っているのかもしれませんね。怪文書のようなことをやったことない人からしたら、別に大したことではないですから。

G:
海外では「スピン・ドクター」と呼ばれる人たちが政治家のイメージを作りあげ、選挙の動向を左右する事例がいろいろとありますが、日本では同様の事例は存在しないのでしょうか?

松:
スピン・ドクターというのは、選挙に限らずアメリカでは一般的な「情報操作のプロ」ですね。アメリカの場合は選挙についてかなり分業が進んでいて、選挙キャンペーンマネージャーが全てを仕切るんですが、マスコミ対応や世論操作のためにスピン・ドクターを雇うこともあるようです。それ以外にもスピーチライターがいたりし、webマスターがいたり、チームで取り組むものなんです。アメリカで一番大きな選挙というのはやはり大統領選挙ですよね。2年かけてやる一大プロジェクトなので、そういったプロジェクトに対してかけるお金というのは日本の選挙と比べてケタが3つも4つも違って、期間も大幅に長くて、マスコミの取り上げ方もまったく異なります。

日本の場合、スピン・ドクターのようなことをするのはなかなか難しいんですが、よく言われるのが小泉純一郎元首相の郵政解散ですね。あれはマスコミへの持っていき方が非常にうまかったというか、劇場型と言われる理由もそこにあります。「郵政解散、イエスかノーか」という。それで刺客を送り込むような形ですよね。それに対して民主党は有効な手立てが打てなくて、郵政への賛成・反対という部分に直球での反論もできず、完全に埋没してしまった。そういった部分で、自民党が仕掛けたメディア戦略に対して何の抵抗もできなかったということですよね。選挙においてメディアの力を意識して最大限活用した、日本で最初の事例だと思います。

G:
どの選挙でも、こうしたメディア戦略が行われているんですか?

松:
スピンというほどメディアを大きくコントロールできるという選挙は、日本だと衆議院選挙か参議院選挙です。国政で全国的な関心が高まる時ですから。もちろん、そう簡単に自分の思い通りにコントロールできるものではないですね。

そういえば、自民党は前回の衆議院選挙の時におもしろいアニメ動画を作っていました。鳩山さんに似せた男性が「高速道路は無料だし、子ども手当もあげるから、僕と結婚しよう」と女性にプロポーズするような内容で。「僕に交代してみないか!」と。女性が「そんなこと言って、お金は大丈夫なの?」と聞くと、「そんな細かいことはあとから決めたらいいんだよ」と返して、オチがつく内容です。当時はそれが全然受け入れられる雰囲気じゃなかった。それがこの1ヶ月前くらいにもう一回話題になっていて。「まさにそうなった」「自民党は分かっていたんだ」みたいな雰囲気で(笑)でも当時は誰もそんなこと言わなかったですよね。

なぜあの選挙の時点で自民党が批判されていたのかという総括と、それに対する打ち出し方が大切だったんです。女性(有権者)にプロポーズしている男は確かに夢見がちでうさんくさいんだけど、対して自民党を同じ土俵においてみたときにどうだったかと言うと、長年連れ添っている間に浮気はするわ、DVはするわというひどいやつなんです。その対比で言うなら、自民党はどうしようもない昔の男になってしまうんです。だから、そこのところを総括せずに、相手の批判をしてもそれは支持を得られないでしょう、と。そういう部分で有権者からどう見られているのかということに対する総括とかが下手だと思います。民主党にしても、自民党にしても。政党の仕事をしたことがないので、一有権者として客観的に言わせてもらいましたが、実際は色々と大変なんだと思います。


G:
客観的に言えるというのが、選挙コンサルのウリなんでしょうか?

松:
そうですね。僕らは「どうやって一票を引っ張ってくるか」というところがメインなので、この仕事をしてからそういう部分は常に意識しています。支持率の動きとかもそうなんですけど、自分の感覚とその時に出てくるデータの結果や、選挙の結果はすりあわせをしているんです。その精度は、4年かけてだいぶ磨けてきたのではと思うんですが。雑誌で当落予想をさせてもらった時にも、日頃の積み重ねが役立ちましたね。

G:
日本の選挙コンサルタントは世界的に見てもレベルが低いと言われています、それは本当なのでしょうか?

松:
海外と比べてレベルが低いかどうかはわかりませんが、職業としての認知度や、選挙の規模は確かに違いますね。公職選挙法も含めて、日本の選挙自体が遅れているとは思います。僕のように選挙を生業にしている人間が日本に10人くらいしかいないと、以前取材に来た雑誌社の人が言ってました。本を出されていたりとか、メディアに取り上げられた人で僕が知っているだけでも、自分を入れて7人くらいですかね。今まではすごく閉鎖的な選挙をしていて、それまで選挙に出ていた候補者が引退するとなるとその親族か後援会、つまりその人の息のかかった人が出馬していたんです。それでは世界が広がらないですよね。そこに無所属の新住民で若い人が出たりして、固定化していた層がだいぶ変わってきてはいるので、それで僕らのような人間の活躍する場所が少しずつ増えてきている感じですね。

また、選挙プランナーと、いわゆる地方の選挙プロのみなさんとの考え方の違いがありますね。選挙プランナーはデータ重視なんです。もちろん経験も重視するんですが、科学的なデータをベースにやっていくんですね。その一方、選挙プロの票読みの仕方というのは「あそこの推薦を取ったから何票」とか、そういう足し算の読み方をするんです。家族の票の計算の仕方についても旦那さんが支持者だから、奥さんと子ども、おじいちゃん合わせて4票と見るんです。でも、今はもう奥さんは旦那さんの言うことを聞かずに違う候補者に入れることもあるわけで、票の予想が全然違ってきてしまうんです。

昔みたいに地縁や血縁、それまでの付き合いだけで人が動いていない。そこが日本の選挙の中でだいぶ変わってきたところだと思います。僕なんかも全国で選挙をしていると、よそ者が来てなにができるんだという話になるんですけど、同じ日本ですから(笑)日本語通じますし大丈夫ですよ、と。地元には特殊な事情がある場合もありますが、こちらはデータに基づいてやらせていただこうと。あの地域はややこしいとかどうのと言っていても、結局は匿名投票なので誰がどこに投票したかは分からないわけですよね。だからどんなに縛っていようが何しようが、最終的には本人の意志で決めるので、それに対してどう働きかけ、票を取ってくるのかを考えていくのが選挙プランナーの仕事になってくるんです。


G:
では、昔みたいに地盤・看板・鞄があれば大丈夫という感じではないんですね。

松:
その3つの重要性は変わらないんですけど、それがあれば勝てるかというと、そうでもなくなってきました。何より、選挙は何が起こるかわからないんです。

僕は最初のかださんの選挙が、選挙をやってきた人たちから見たら絶対に勝てないと言われているもので、例えれば軍艦に漁船で挑むようなものだと言われていたんです(笑)本当に最初の頃は、知名度もないし組織もないしで「4年後の話をしているのか」と馬鹿にされました。でも僕は最初から負ける気がしていなかったんです。かださんが出て負けるわけがない、かださんほど滋賀県のこと、琵琶湖のことを想っている人はいないという妙な自信がありまして。でも、あとから考えるとよく勝てたなあ……と、奇跡だなと(笑)素人なりの怖いもの知らずが結果的によかったんでしょうね。

逆に、ある程度「勝てる」と思って負けたこともあります。出口調査の段階で数%勝っていて、事前の反応から見てもいけるだろうと。その日が非常に天候が悪くて投票率が下がったのもあるんですけど、それでも出口調査の結果を見た段階で「いける」と思っていたんです。投票日ってテレビ局がどちらの事務所に行くかで情勢が読めるんですよ。NHKとかいろんな放送局があるじゃないですか、そこが事務所にどれだけ来ているか。当確が出た後の万歳の取材をするのに、大きな選挙じゃないとクルーをすべて出せないから、メインのクルーをどちらに行かせるかというのを変えてくるんです。その時はこちらの事務所にほとんどのテレビ局がきていたので、勝てると思っていたんですが……負けてしまったんです。信じられなくて気が遠くなりましたが、慌てて式次第を書き換えました。当選したパターンしか作っていなかったんです。だから、本当に何があるか分からないんですよ。


G:
日本の選挙の現場では、選挙コンサルティングの利用はどのくらい定着しているものなのでしょうか?

松:
少しずつ増えてきているとは思います。うちの会社もいろいろメディアに取り上げていただいてるおかげで、紹介ではなく飛び込みの仕事が結構増えてきて。それが増えると、さっきお話したような困った依頼も来たりするんですけど……。

仕事自体がまだあまり知られていないので、雑誌や新聞、テレビとかで見て興味を持って問い合わせてくださる方が多いです。特に来年4月には統一地方選挙があるんですけど、日本中の選挙の3分の1くらいかな、4年に1回、まとめてやってしまうんです。そのタイミングというのは非常に多くの立候補者が出るし、全国で選挙をやっているという状態になるんですが、それに向けてすでに複数の方からお問い合わせをいただいてます。選挙プランナーという仕事があって、立候補するにはそこに相談したらいいという傾向が少しずつ出てきているのかなと思いますね。

G:
昔よりは、選挙プランナーという仕事が浸透してきているということですね。

松:
はい。以前、選挙プランナーという名称を最初に使った三浦博史さんとお会いした時にお聞きしたんですが、仕事を始めた当初は選挙の世界は今より大変だったようなんです。先ほども説明したように公職選挙法がややこしいんです。それはきちんと勉強すれば分かることなんで全然大したことではないんですが、その大したことのないことを偉そうに言う選挙ゴロというような人がたくさんいて、選挙を秘密のよく分からないものにしておくんです。

例えるなら中世の教会の教祖みたいなもので、聖書を読める人がその人しかいないから、「聖書にこう書いてある」と一方的に言える感じですね。大したことのないノウハウを大したもんだという風に言って、お金を巻き上げるんです。そうじゃなくて、もっと選挙に関心を持ってもらって色んな人に参加してもらって選挙を活性化していかないといけないし、非常に分かりにくい選挙の仕組みを分かりやすく変えていって、どんな人でも選挙に出て、政治家としてやっていけるようなお手伝いをしたいという風に三浦さんはおっしゃっていて、僕も本当にその通りだと思いました。

公職選挙法というのは非常にあいまいで、風営法と並び称されるほどにあいまいなんです。解釈次第でどうとでもなるところがあって、ローカルルールがあるんです。まるでトランプの大貧民です(笑)例えばタスキってあるじゃないですか。あれって政治活動の時は売名行為や事前運動とみなされるので使っちゃいけないんです。告示前に使うタスキだったらそれには名前じゃなく「本人」と書くとかしないといけない。

でも、大阪は事前活動の段階から名前がばっちり入ったタスキをかけていて、あれは違反じゃないんですかと聞いたら「いや、あれは名札だ」と返されて。「いや、それは無理があるよ、そんな名札ないよ」って思うんですが……。大阪の選挙区だと大体みんなやってますが、どう考えても事前運動です。大阪や兵庫にはややこしいローカルルールが結構あって、またそんなローカルルールに詳しい人っていうのもいます。

そういうものに詳しい人、つまり選挙の経験が豊富な人と、票をどういう風に持ってきて勝たせるかということを考える人は、別なんですよね。選挙区の相手の分析やこちらの分析、無党派層の票読みだとかそういう部分も含めて、最終的にどうやって相手より1票でも多く取って勝つかという部分をトータルでプランニングする人はいないので、そういう部分が選挙プランナーの仕事であり、力を発揮しないといけないところなんです。


G:
候補者ひとり辺りのコンサル料というのはケースバイケースだと思いますが、目安として一番高かったケースと一番安かったケースを教えてください。

松:
基本は1月100万円くらいなんですが、時給換算するとちょっと悲しいことに……(苦笑)というのも、この仕事はやり出すとキリがないし、手も抜けないし、土日も関係ないですからね。選挙って土日に何らかのイベントがあることが多いので。1ヶ月~2ヶ月全く休めないこともよくあります。選対会議を夜中10時とか11時くらいまでやって、その後に会議の内容をまとめて明日の準備をして、次の日の朝から街宣で5時起きして、となると、18時間労働×30日という風になって……ん?時給低くないか?ということになるんです。人手がないところに入れば入るほど、こういうパターンになりますね。

正直に言ってしまうと、コンサルティングだけの案件だけ受けていれば楽なんです。新人の方の場合は手取り足取り教えなくてはならないし、いろいろな部分のサポートがあるので大変です。うちのスタッフでアシスタントプランナーという肩書きの者が2人いて、選挙の現場経験も長いので、人手が足りない時に派遣して事務所の事務を回したりはするんです。でも、選挙期間中の運動員に支払える日当の上限額が1万5千円とが決まっていて、それ以上もらったら違反になってしまうんです。まるで派遣社員ですよね……。しかも拘束時間は12時間超えてますからね。

松田さんのオフィスの隣の部屋で、社員さんたちが作業にあたっていました。少数精鋭で運営しているようです。


アシスタントプランナーの天雲ヒカリさん。操るマシンはやはりMacです。


G:
イメージよりもお金が回ってきていないとのことですが、同業他社が増えたらもっとその辺りがうまく回るようにはなるのでしょうか?

松:
そうですね、仕事として認知をされて、選挙でコンサルを入れるのが当たり前になってくると少しは変わってくるかもしれません。ただ、クライアントである政治家はそもそもお金を持っていない方が多いです。

政治家のお金の問題がよくメディアで取り上げられてますけど、ちょっと叩きすぎかなと。政治家は金に汚くて、悪い金をいっぱい受け取っているだろうという風なイメージが強すぎますよね。今の政治不信って、ほとんどが政治家不信だと思うんです。この仕事をしていると、一生懸命やっている議員さんというのも1割くらいいて、また逆に、失礼な言い方ですがこれはダメだと思うような人も1割くらいいて、8割は普通の人ですね。楽して儲けたい、当選したいと思っている普通の人(笑)あくまで僕が見てきた中での話なので、かなり偏見が入っていますが。

本当に一生懸命やっている人からしたら、政治家という仕事は割に合わないですよ、はっきり言って。任期は4年、最長でも6年で、その度に選挙がある。そうなるとまたお金がかかるし、落選すると無職になってしまう。生活の安定がないわけなんです。

たとえば、30万人くらいの都市だと、月々の自分の給料と別に政務調査費といって、色んな調査・研究に使っていいお金があるので、トータルで900万円弱くらいの年収にはなるんですが、当然税金がそこから引かれますし、その部分から自分の後援会の会報などを作って自分の仕事をアピールしたり、市政の問題点を伝えたりとか、いろいろな場面でお金がかかってくるので、一生懸命やっている人からしたら全然お金がないんです。情報公開をするのにコピー代を取られたりするから、熱心な議員さんはそれだけで政務調査費をほとんど使ってしまったり。

何にもしないで議会に出てきて、寝ている人が一番得しているんです。名誉職みたいな感じで、何もしないで寝て、答弁書は職員とか他の議員に作らせて、人に作らせたものだからいざ質疑に立つと漢字が読めない(苦笑)そんな人が本当にいるんです。税金で給料をもらっているのに、お金に見合った仕事をまったくしていないですね。反対にお金がないけどとにかく必死にやっている人もいるので、そこはしっかり分けて判断しないといけないですよね。

G:
特に資金繰りに困っているような政治家はどんなポジションの人なんでしょうか?

松:
国会議員は本当にかわいそうな状況です。衆議院議員とか、本当にお金がないですよ。秘書をつけなくてはいけなくて、公費が出されるのは公設第一秘書、第二秘書、政策秘書の3人だけなので、私費でさらに雇わないと人手が足りない。アメリカだと公費で何十人も秘書が雇えて、政策立案のチームを作ったりできるようですが。秘書の人はもっと悲惨な状況です。国会議員の私設秘書で月20万円もらえる人は少ないようです。その上激務ですから。自分が政治家になろうという志があるから耐えられるんでしょうが、本当に大変だなと思います。

きっちり仕事をしている政治家の方を見ていると、生活が保障されるくらいのお金があってもいいと思います。特に首長は、24時間365日拘束が基本で、何かあったら全部の責任がのしかかってくる、何万人、何十万人の有権者の代表なのに下手をしたら議員より給料が安かったりしますからね。退職金を返上とかするともう大変なことになるとか、そういう部分で本当に公のために一生懸命やっている責任の重さを考えたら、決して給料は高くないと思います。そういう部分はなかなか伝わっていないところですね。


松:
そういう状態なので、僕らの仕事もそんなに儲かるわけではないんです。ただ、僕らができることっていうのはこれからどんどん広げていけると思っています。選挙において、政治家と有権者という人たち、すべての方向に対してアプローチができる。候補者だけに僕らは目を向けているわけではなくて、選挙をとりまく政治にかかわる人たち全員を視野に入れてやっていきたいと思っています。

G:
これまでのお話を総合して、選挙コンサルティングを駆使した上で、最強の布陣で選挙に臨む場合かかる費用の概算はいくら程度なのでしょうか?

松:
それもまた選挙で全然違うんですが、例えば人口30万人くらいの市長選挙で目安は1000万円くらいですかね。まあ、あればある程確かにできることは増えます。絶対勝てるというのは難しいですが。たとえば新聞で折り込みをすることになったら、人口30万人くらいの都市であれば折り込み料が20万円くらいかかるんです。そのお金は折り込むためのお金だけで、また別にお金をかけてビラを刷るんですが、総合すると1回で70万円くらいかかるんです。お金があればそれが何度もできる。そこの部分を予算によって調整していくことになるんです。1000万くらいあれば選挙の形にはなりますね。

参議院や知事選といった規模になってくると、いつごろから準備するかというのもあるんですが、非常に範囲が広いので、複数の市に事務所を置いたり、そこにある程度人を配置したりすることになってくるので、それくらいになると3000万円くらいかかります。やっぱり、人件費がかなりかかるんです。それはうちの会社にもらう人件費ではなくて、事務所に専属の人を置いた場合などにかかるものです。すべてボランティアでやってくれる人なんていうのはなかなかいないですから。


G:
では、費用にしめる人件費の割合は高いんでしょうか?

松:
はい、高いですね。昔、選挙に5億円とかいった多額のお金を使っていたころは、もうお金を配るような感じで、とにかく1日来てもらった人には1万円とかどんどん払っていたようです。報酬を支払える運動員は決まっていますし、払える額には上限もあるので違反なのですが、昔はやっていたようです。今はなるべくお金かけないようにということで、きちっとした額ではなく、交通費と手間賃を払うとかそんな感じにしている事務所が増えてきました。事前にチラシをポスティングするのであれば、業者に頼むのではなく、時間がかかっても自分たちでやるとか。そういう工夫をして人件費を下げるようにしています。

G:
2007年の大阪市長選元候補の橋爪紳也氏や、2008年の大津市長選挙に出馬した黄瀬紀美子氏などは、松田さんがコンサルティングにあたったものの落選してしまったケースということですが、これらの事例を振り返り、共通した「敗因」のようなものはあるのでしょうか?

松:
敗因はそれぞれ別にありますが、まずは僕の力不足ですね。これは本当にお二人に申し訳なかったです。

2008年の大津市長選挙が先ほど言っていた、勝てると思って負けてしまった選挙なんですが、一番悔しいのが、候補者が出馬を決めたのが投開票日の1ヶ月前だったことです。これは候補者だけの責任ではなくて、色々と複雑な事情があったのですが、私が依頼を受けたのが12月13日頃で、投票日が1月13日という超短期決戦でした。

1ヶ月しかない上に、年末年始で印刷所が止まってしまうので、実質3週間ほどしかなかったんです。それに対して現職は自民・公明推薦などガチガチに固めてきていて、市議もほとんど全員が現職について……。あと一歩及びませんでした。もしあと1週間あれば、1ヶ月でも年末年始をはさまなければまた違ったのではないかと思ってしまいます。結局、新聞記者の方も「敗因は出馬表明が遅れたとしか書けないですよね」と言っていて。

松:
期間中最後の調査ではあとわずか及ばず、といった感じだったんですが、当日の出口調査でもわずかですがリードしていましたし勝てると思ったんですが、天気も悪くて投票率が伸びなかったのも痛かった。時間がなかったことが本当に悔やまれますね。それ以外では、できることはかなりやったし候補者の黄瀬さんもすごく一生懸命やっておられたんですが。本当に残念でした。


G:
では、もう1つの事例である大阪市長選挙の敗因はどのようなものだったのでしょうか?

松:
大阪の場合は、非常に難しいパターンでした。うちがコンサルを受けるときに、一番いいパターンというのは、立候補表明の前に相談を受けて、立候補の段階からストーリーを作るのがやりやすいんです。なぜ自分が出馬するのかとかいう部分の話がしっかりできますし、立候補表明が一番大きくメディアで取り上げられるので、そこから流れを作ってイニシアチブを握りたいんです。しかし、橋爪さんと知人の紹介でお会いしたのは出馬表明の後で、しかも、はっきり言って最悪の出方をしてしまったんですね。記者の評判がすこぶる悪くて……。映像でその様子を見たんですが、なぜ出馬したのかよく分からないという感じだし、本人も暗い顔をしているしと、かなり印象が良くなかった。

また決定的だったのが、現市長の平松さんが民主党の推薦で出馬するという話が持ち上がったことですね。それを聞いた瞬間に出馬しないように誰か食い止めてくれと思ったんです。出てしまったらどう考えても勝てない。当時は民主党が参院選で躍進して勢いがある時でしたし、知名度抜群で好感度ナンバー1の元アナウンサーですから。なんとか立候補を思いとどまってもらって、橋爪さんを応援してもらうように働きかけたかったんですがそれも出来ず、公開討論会ではじめて平松さんに会った時に、平松さんの方からこちらに歩いてきて、「橋爪さん、僕、最初はあなたを応援してたんですけど、ごめんなさい」と言いながらにこやかに握手を求められて(苦笑)いや、あれは本当にまいりました。現職の関さんを想定してキャッチフレーズもつくっていたのですが、平松さんが出たことで全部戦略を練り直しになって。

タイミング的に参院選で民主党が第1党になった後に行われるはじめての大型地方選挙ということで、自民・公明推薦の関さんと、民主推薦の平松さんに全国から有名国会議員がぞくぞくと応援にかけつけて、メディアも与野党対決をかき立てるので、完全に埋没してしまいました。

選挙戦は選挙の前から始まっているので、候補者を出さないというのも戦いなんです。孫子の兵法ですよ。戦わずして勝つのが最上級だと。城を攻め落とすのは下の下だと。

G:
なるほど、だから選挙がはじまる前から相談してもらうと一番やりやすい、と。

松:
そう、動きやすいんです。有力な立候補しそうな人がいて、パイプがあるなら自分側の応援に回ってもらうとかそういう話も含めてできるんですが、難しかったですね。橋爪さんは最初選挙に立候補するという部分で、少し覚悟ができてないところもあったのですが、途中から見違えるようになって、すごく評判が良くなりました。マスコミ関係者にも「最初からああだったらまた違ったのに」と言われました。大阪への想いや、大阪のことを誰よりも知っている橋爪さんだたので、その良さがでるのが最後の方になってしまったのは残念でした。それは私の力不足もあったと思います。


G:
両方の事例を聞いていると、やはり候補者の決断力というのがかなり問われるんですね。

松:
そうですね。腹をくくれるかどうか、はやっぱり大きいです。

橋爪さんも腹をくくってからは強かったんですが、そこまでに少し時間がかかってしまった。でも、何とか供託金没収点をぎりぎりクリアしたんです。その没収点を割ってしまうのが、泡沫候補のひとつの目安で。この供託金というのがやっかいで、日本は異常に高額なんです。衆議院や参議院の選挙区だと300万円もかかります。フランスはもう廃止したし、イギリスは10万円くらいだったかな。供託金もやめた方がいいと思う制度の1つなんですけど、その供託金を預けて、供託金没収点を割ってしまうと、一定の有権者からの支持が得られなかったということで、事前に支払った供託金を没収されてしまうんです。

ポスターや街宣車の公費負担分も自費になるから非常に痛いんです。大阪市長選の歴史の中で、無所属で供託金没収点を超えたのは橋爪さんだけなんですよ。それだけはなんとか行けたので、大阪の中では評価をされて、大阪府や大阪市のまちづくりにかかわっていらっしゃいます。橋爪さんが当時作ったマニフェストも評価されて、橋下知事になってから大阪府の特別顧問をされたり、ブレーンの一人となっていますね。

落選して大変だったけれど、橋爪さんから聞いた選挙してよかったことは「夫婦仲がよくなった」そうなんです(笑)お互いに仕事が忙しくて、なかなか一緒にいれなかったんですが、選挙の関係で一緒にいる時間が増えたみたいで。あと、本当の友だちが誰か分かるって言っていました。橋爪さんは大学教授として本を何冊も出版されていますし、大阪のまちづくりでは知らない人がいないような有名人だから、寄ってくる人も多かったんしょう。それが選挙に出たらみんなぱーっと散っていってなかなか応援してもらえなかった。そんな中で一生懸命やってくれる人というのもいて、そういう人が自分の本当の友達なんだなと……。

選挙というのはそういう部分があって、かださんも最初はすごく落ち込んでいましたね。学者の世界というのはやっぱり政治と距離を取りたがるので、仲がよかった人が選挙を境に引いていったりとか、選挙に出るというので今まで研究していたのは選挙に出るためだったと思われたり、非常に悪く取られてしまうんです。本当ならみんなもっと応援するような決断だと思うんですけど、そこがなかなか受け取られ方が非常に悪いんですよね。


G:
確かに、政治のことには最初からマイナスのイメージがつきがちですよね。

松:
政治家不信というのが強すぎますよね……。
それと、不信の原因にはタレント議員の存在もあると思います。今回の参院選なんかは特にひどい。参議院の全国比例区を「タレントの天下り先」だと表現された方もいましたが、国民が受からせちゃいけないんです。

もちろんタレントだから政治家になってはいけないということはありませんが、本当に覚悟があるのか、能力があるのかという点で疑問です。有権者がノーと言わないと、その手段は通用しないんだとはっきり示さないと。

G:
ちなみに、タレント候補は受かったあとはなにかされているんですか?

松:
もう大活躍ですよ。各地の応援演説に駆り出される!言い方は悪いですが「客寄せパンダ」です。タレント議員が来るのがひと集めには一番効果が高いんですよ(苦笑)


松:
いろんな所に応援に行って、連名のポスターに使われたりして、行く先々でこれまで会ったこともない人の応援演説をするというわけです。

G:
当選後に心を入れ替えて政治に当たる人はいないのでしょうか?

松:
もちろんいらっしゃると思いますよ。ただやはり、旬が過ぎた人が立候補されている印象がありますよね。。もしも嵐の櫻井君とかが出馬したらすごいですよ、新党が作れると思います(笑)あんな人気絶頂の人が出てきたら、また覚悟や迫力が違うでしょうけどね。


G:
「選挙に落ちたら無職」と言われていますが、落選した候補者の方々はその後4年間どのように暮らしているのでしょうか?貯金を切り崩しながらしのいでいくしかないのでしょうか?

松:
落選された方でもある程度選挙で立候補して戦ったような方なので、これまでの人脈や選挙で知り合った人から紹介を受けて仕事を見つけたりとか、そういうパターンが多いですね。やっぱりしっかり戦って支持者がついたりすると、その人たちが放っておかないので。次の4年間に向けて、仕事口を探してあげたりとか、そういうことは結構あるので、本当に路頭に迷うというケースはうちでかかわった中にはないですね。


G:
コンサルティングを行った候補が落選した場合、値引きなどは行うのでしょうか?

松:
特に値引きはありませんが、勝っても負けてもきちんと払ってくれる人もいれば、勝っても値切ってくる人もいますね……。「勝つのに金を使いすぎて払えない」って……。

G:
選挙の戦略について、政党の選挙対策本部との連携は取っているのでしょうか?

松:
選挙の時は政党の方から宣材グッズとかがあったりとか、今日話すべき時事ネタを折り込んだ内容だとかを本部側から提供されたりとか、そういうのはあったので、それをさらに僕が手直しをしたりとか、こんなの使えないと文句を言ったりとか、そういうのはありました。ただ、党の選対本部となにか連携をしたということはないですね。あくまで候補者個人に雇われているわけですし。党がくれるものの中でも取捨選択をして、使えるものは使います。

G:
候補者の後援団体にもコンサル指導などを行うのでしょうか?

松:
よくあります。例えば、マスコミ対応なんかは選対本部長がするので、何をしゃべってもらうかということを事前に打ち合わせしたりしますし、候補者の配偶者やご家族の方には、こういうあいさつをしてくださいとか、応援してくれた人にはこういう風に接してくださいというような指導をします。後援会作りもそうだし、名簿の管理や使い方も細かく指導していきます。

候補者一人では選挙はできないですからね。それに、候補者は熱源になってみんなの雰囲気を盛り上げていくことをしないといけないので。選挙の非常に難しいところは、色んな人がボランティアでかかわったりしていると、それぞれ自分が重用されたいというか、存在感を発揮したいというか、そういう思いがでてきたりもします。

支持者の中でもいろいろとあって、立候補の相談が来たとか来ていないとかで、「わしゃ、聞いとらん」と怒る方とか。あとは候補者もとにかく忙しいので、思っていてもなかなか全ての人に心配りをするということはできません。そこはよそ者の強みを生かして、間に入って人間関係を取り持ったりします。


G:
選挙中は、やはり候補者の事務所に頻繁に出向くのでしょうか?選挙活動にも同行したりするケースはあるのでしょうか?

松:
それは契約内容次第なんですけど、選挙期間中ずっとはりつくケースもあります。選挙期間中の初日と中日、それから最終日に行ったりもします。僕のスケジュールも関係してきますね。

新人ではじめて選挙に出る場合は、一緒に街宣で回りながらしゃべりながら指導します。だいたい事前に指導はしているんですが、うぐいす嬢の方が素人の方だったらその指導もしますし、うぐいす嬢の方が読む原稿も書きます。ここだけの話、街宣車とかうぐいす嬢とか、ああいうスタイルはやめたいですよね。とにかく選挙って押し売りなんですよ。関心がない人に押し売りするスタイルはやめたいです。そう思いつつ、今はその形でやっていかなくてはならないところもあるので。原稿に工夫をしたり、本人がテープに吹き込んだものを流してうぐいす嬢にしゃべらせないとか、いろいろ手は打っているんですが、公職選挙法の限界があるので……。

公職選挙法は、昭和25年くらいに制定された非常に古い法律で、時代に即していないですよね。ホームページやTwitterが想定されていない時代の法律を守っているので、やはりこの時代に即した形で、有権者の目線に立ったところを含め改正してほしいです。公職選挙法は、民主主義国家であれば道路交通法と同じくらい親しまれているべきだ、という人もいて、「なるほどな」と思います。今は残念ながら分かりにくくて、選挙について違反をしたら捕まってしまうとか、お金がかかるとか、そういう怖い印象を持たれている方が多いので、僕が新人の方にコンサルティングをする際の最初の仕事は、「選挙は怖くない、大丈夫ですよ」ということを教える水先案内人という部分が大事なんだろうなと思いますね。


G:
選挙が行われていない期間は、どんな仕事をしているのでしょうか?選挙の下準備などを行っているのでしょうか?

松:
選挙が途切れたことがないので(笑)参議院の選挙が6月24日から7月11日なんですけど、この準備の話なんかは昨年の12月くらいから来ているんです。
日本全国で考えた場合、村議・町議・市議選、村長・町長・市長選、知事選、それから衆議院選と参議院選。これだけ多くの選挙があるんですよ。それを、年間に52日ある日曜にやっているんだから、いつもどこかで選挙をしている状態なんです。

お盆や年末年始の差し迫った時期の投票日はないですけど、年末や年明けすぐにはありますからね。だからほとんどずっと選挙に携わっています。選挙ごとに担当を決めながら、それをスライドしていく形ですね。途切れたことがないです。参院選後にもうひとつ選挙があって、それが終わったら9月くらいに雲隠れしたいな……と思ってはいるんですが。


・つづき
ネット選挙解禁で日本は変われるのか、「政治の暗黒面」と「望む未来に変える方法」についてとことん聞いてみた

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in インタビュー, Posted by darkhorse_log

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