インタビュー

価格比較サイト「価格.com」を運営するカカクコム社に行ってきました


以前GIGAZINEで、価格.comの口コミ掲示板に投稿しているユーザーのクチコミ傾向が分かる「価格.com プロフィール」を取り上げましたが、それが縁となり、今回「価格.com」を運営するカカクコム社を取材することができました。

価格.comを運営するにあたって、どのようなスタンスで運営しているのか、工作員にどう対処しているのか、会社の雰囲気、そして今年1月のPCサクセス倒産はどのような影響があったのかなど、さまざまなお話を聞かせてもらいました。


日本有数の価格比較サイトの舞台裏、徹底解剖です。

詳細は以下の通り。
◆カカクコムってどんな会社?

これがカカクコムが入っているビルです。


お隣にはJRAのビルが。どちらも巨大です。


入り口にはこんな看板。おなじみのロゴですね。


なぜか貯金箱が置いてありました。来る人がみんなお金を入れていってくれるらしい…。


おしゃれなソファ。


社内の様子はこんな感じ。


オフィスの様子をムービーで撮影してみました。


会議室。


こんなグッズをもらいました。


◆価格.comの運営について

GIGAZINE(以下、Gと省略):
2007年1月のPCサクセス倒産の影響はありましたか?

甲斐(以下、甲と省略):
サイトへのアクセスという観点からはほぼ無いといってよいと思います。2~3月のアクセスを見ると、アクセス数はむしろ伸びています。ユーザーさんからの同店へのクレームに対する改善要求をこちらから出していましたが、その後も改善が見られず、月次のご入金がなく、倒産という形になってしまいました。価格.comでは安心してお買物をしてもらうための情報として、昨年末から店舗評価機能を追加しています。

結城(以下、結と省略):
お店選びの参考にして欲しいと思います。

遠藤(以下、遠と省略):
実はショップ評価は6年ほど前に一瞬導入したんですが、今のようにID登録制を導入していなかったので炎上してしまい、やめたということがあります。

甲:
価格.comは特定の商品をオススメすることもありませんし、中立を保っているところに存在意義があると思っています。確かにショップ評価を導入することを案内した当初、一部のショップさんは難色を示されましたが、導入に踏み切ってよかったと思います。ショップ評価を導入したことによって、各ショップさんの価格面だけではないサービス面の強みを訴求することが可能になったと思いますし、ユーザーさんが安い店を見つけても、「こんなに安いと何か裏があるんじゃないか?」と思ってネットショッピングに二の足を踏んでいたのが、多少は改善されたと思っています。

G:
自作自演に関してはどうしていますか?

遠:
自作自演の証拠があれば削除しています。ただ、毎日すべての書き込みに目を通しているので、こちらとしては経験上自作自演かどうかは見れば分かりますね。

結:
クチコミ掲示板に関しては、「もっと消せ」と言ってくるユーザーさんが多いのですが(笑)規約違反でなければ、うちは極力消さないようにしていますね。

甲:
価格.comに訪れるユーザーのうち2/3が掲示板も見ているので、コミュニティサイトであるという認識はありますね。以前よりもクチコミの重要性が増している気がします。

結:
いつの間にか価格比較よりもクチコミが重視されてきている気がしますね。

G:
メーカーから書き込みに対して苦情は来ますか?

遠:
年に一件あるかないかですね。苦情といっても事実誤認に関するもので、悪いことを書かれているから消してほしいというのはありません。

結:
逆に最近メーカーの人によく見ていると言われることが多いです。

甲:
「ユーザーの○○さんってすごいですよね」と、HNをあげて評価しているメーカーの人もいるくらいです。あるメーカーさんでは、開発の方や企画、販促の方で掲示板をチェックしてユーザーの声を拾って商品開発に生かしているそうです。そういう話を聞くととっても嬉しくなります。

◆スタッフは全部で何人いるのか

G:
社員はどれくらいいますか?

甲:
カカクコム単体だと全従業員(パート、アルバイト含む)130人。正社員だと110人。2004年には50人程度でしたから、随分大所帯になりました。

遠:
自分が入ったときは20人前後でした。

甲:
前のオフィスは浅草橋で、マンションの一室みたいでしたね。隣は確か、ダンボールの回収所で、総武線沿いだったので、電車が通ると電話の声が聞こえなくなったりしました。しかも、エレベータから出るともうオフィス内が丸見えという状況で(笑)移転の話が出たときも秋葉原界隈から極力離れたくないということもあり、いろんな候補地があったのですが、水道橋になりました。地味なのは変わってません(笑)

G:
あまり地味には思えませんが、どうして地味だと思っているのですか?

甲:
ネット系の企業だと華やかなイメージが世間にはあるようですが、うちは地道にコツコツやる方向なのと、従業員も大人しい人が多いので地味なのだと思っています。狩猟系よりは農耕系といったところでしょうか。価格比較をやっているだけに、外部サービスを利用する際のお金にも渋いですし(笑)もちろん必要なことへの投資は惜しみませんが。

◆1日のおおまかな一般的スケジュールは?

G:
社員の一日の平均的なスケジュールは?

甲:
たとえばアキバ総研のスタッフですが、10時に出勤して、午前中はメールの送受信やブログなどのチェックをして秋葉原に向かっていますね。そしてアキバの裏通りのパーツ屋のチェック。ヤマギワ、ソフマップなどを回って、最後に突発的なイベントがあるかもしれないので駅前をチェックしています。それから17時頃に社で記事作成に取りかかって、22時ごろに作成し終えて、他のサイトさんにトラックバックを送るなどしてから終業していますね。

G:
本当に秋葉原を歩き回っているんですね(笑)

甲:
ちなみに2004年2月10日に、ヤマギワソフトさんが不幸にも火災に見舞われたのですが、取材に出ていたスタッフが撮影して話題を呼びました。実はこの火災では直ぐに鎮火したようで、ヘリコプターを駆使して撮影しようとしたテレビ局や、大手新聞社では火災の絵を撮れなかったようなんです。アキバ総研スタッフが速報として画像をサイトにアップしたところ、いろんなところから画像転載の問合せをいただき、次の日、複数の朝刊1面をそのスタッフの撮影した画像が飾るということがありました。

ヤマギワソフト火災を激写


遠:
私はシステムの仕様書を一日書いたりしていることもあり、デザインのラフを書いていることもあり、日によってバラバラです。

甲:
営業スタッフだと毎日外回りをしていますね。あと、部長や役員は会議や来客がかなり多いです。

結:
カテゴリ担当の人だと、日々のやりとりをチェックして、あらかじめ決まっているスケジュールでページの更新をしていますね。

甲:
うちはトップダウンの会社ではないので、かなり現場の裁量に任されていますね。現場が権限を持っている感じなので。

結:
逆に「あれやれ、これやれ」と言われないと動けない人は困るでしょうね(笑)

甲:
基本的に価格.comのサイトが好きで入ってくる人が多いので、あまりガチガチに確認しなくても意思疎通ができているところがあります。殆どの社員が中途入社なのです。今年から新卒の子も本格的に入ってきますが、いろんな価値観の人がいるのがうちのいいところだと思うので、押し付けではなくて、自然に共通意識が浸透していくといいなと思います。

◆昼食などはどうしているのか

G:
昼食はどうしていますか?

甲:
路面販売にやってくるお弁当屋さんなどを利用しています。飯田橋や水道橋界隈まで出かけて外食する人も多いですし、お弁当の宅配サービスも利用しています。

結:
11時30分~13時30分ごろに食べてもいいとしてあるので、みんな一番混雑する時間をずらして食べています。職場からコンビニは遠いのでちょっと不便です。最近、近くに新しいビルができたので、1階にコンビニが入るのを期待していたのですが、入りませんでした(笑)

遠:
ランチの環境に関しては浅草橋オフィス時代の方がおいしいお店が多くて充実してましたね。

ここにもオフィスグリコが。


カップラーメンの自販機もあります。


◆会社の自慢

G:
自慢になることはありますか?

甲:
うーん、正直あまり浮かばないです(笑)あえて言えるとしたら、世の中の役に立っていることでしょうか…初対面の方によく「いつも価格.comを使っています。便利ですよね。」と言っていただきます。それが一番嬉しいです。

結:
メーカーから試作品などが送られてきたら嬉しいのですが、ちっともありませんね(笑)

甲:
うちは仕事外でみんなで団結して何かをするというのは少ない方だと思いますが、IT系企業が野球で対戦するITリーグで、どうも優勝したようです(笑)フットサル部やバスケット部、あと麻雀部があります。他にも非公式なものがいろいろあると思います。最近は従業員数が増えてきたのでみんなでまとまって何かするというのが難しくなってきましたが、以前はレーンを借り切ってのボーリング大会なんかよくやっていました。私の入社前には1度っきりの社員旅行もあったようですよ。

遠:
そういえば、その時に「来年の社員旅行はラスベガスだ」と言ってたのはどうなったんだろう…。

ITリーグ優勝旗。


◆伝説的エピソード

G:
苦労したエピソードや、伝説といえる出来事は?

甲:
一番大きかったのは、2005年5月に、不正アクセスを受けてサイトを閉鎖したことでした。このままサイトが無くなってしまうのではないかと思っていました。元に戻ってもユーザーさんにそっぽ向かれてしまうかもしれないとも危惧していました。ちょうど3月に一部上場して、その2ヶ月後に不正アクセス事件が起きたのも厳しかったです。

G:
それは大変でしたね。

甲:
実際使ってくれていたユーザーさんや掲載している店舗の皆さんにも迷惑をかけたので、この場を借りてお詫び申し上げるとともに、今も変わらず利用してくれて「ありがとうございます」と心からお礼を言いたいです。サービスが停止している間は、私も禁酒して再開の願掛けをしていました。その時にユーザーさんから送られきたたくさんの激励メールは今でも我が社の宝です。

結:
私の場合はプログラムをすべてチェックして、サーバー一台一台にセキュリティ関連のチェックをかけてから復旧していたので、通常に戻るまで半年かかったことですね。また、私は復旧真っ最中の時は都内某所にあるデータセンターに缶詰になっていました。

遠:
掲示板の書き込みを365日24時間チェックしていることです。管理スタッフ全員で沖縄に旅行した時も、ちゃんとチェック用の端末を持っていきました。それをたまたま同じ飛行機に乗っていた社長に見つかって誉めてもらえたことが伝説のエピソードです(笑)あと、苦労話ではないですが、毎日掲示板のチェックをしていると、評判のいい商品をついつい買ってしまうのは悩みの種です。我が家には価格.comで評判のよいものは一通り揃っているといっても過言ではありません(笑)掲示板担当の宿命だと思ってます。

買った中で特にお薦めなものは?

遠:
ホームベーカリーですね。本当に美味しいパンができるんですよ(笑)あと、マイナスイオンドライヤーも本当に髪の毛がサラサラッになりました。僕は男なのですが、クチコミ評価の高さにつられて美顔器も買いましたね。エステジェンヌという製品なのですが、冬場の乾燥肌がかなり緩和されて本当にウルウルになりました(笑)ユーザーの皆さん、本当にありがとうって感じです。

◆実際に価格.comを利用しているユーザー層は?

G:
カカクコムの利用者層は?

甲:
月間利用者800万人のうち、7割が男性で3割が女性です。価格.comには買う気満々の方が多くいらっしゃるので、やはり実際に購買力のある人が多く、30代~40代が多いですね。ほかの世代だと、20代と50代の方が同じくらいです。あとカメラ関連は少し上がって50~70代の方が多いですね。あと主婦の方が白物家電をチェックしていることも多いです。ちなみにうちは直接ユーザーさんとやりとりをすることは殆どありませんが、3万件の書き込みをしておられる、掲示板書き込みトップユーザーのBRDさんは、朝日新聞の取材を通して定年退職をしておられる方だということが分かりました。ほかにも「この人に回答してもらえるとうれしいです」と、ほかのユーザーさんに書き込みされるようなユーザーさんもいます。各分野のプロ顔負けの知識を持ったユーザーさんが、その知識を皆におすそ分けしてくれているイメージです。

G:
そうなると読みものとしても面白いですね。

甲:
ヘタな小説読んでるより圧倒的に面白いです。勉強になることも多いですよ。

結:
家電カテゴリはコミュニティの雰囲気としても一番良いですね。PCパーツや携帯電話、車、ゲームは趣味性が高いので、議論が白熱しているところが多々あります。ゲームですと、PS3とWiiの両陣営が戦っています(笑)

◆サイト閲覧・利用のコツ(注目して欲しいポイントや特集など)

G:
カテゴリの並び方はアクセス順ですか?

結:
だいたいそんな感じですね。PC関連や家電、カメラあたりのアクセスが依然として多いですが、通信分野や携帯関連、車関連も非常に人気が高いです。

G:
システムについてはどのようにされていますか?

結:
全部を合わせると200台くらいです。ウェブサーバーが20台強、ほかにアプリケーションサーバー、データベースサーバーなどがあります。

甲:
月間PVが4億を超えるので、サーバーの増強はずっと課題でした。

結:
最近になってやっとシステムの増強が追いついたくらいですね。特に掲示板が重いと二年ほど言われ続けていましたが、現在はユーザーの伸びを上回って増強できています。

甲:
意外と知られていないかもしれないお薦めコンテンツとしては、雑誌の特集ページをイメージしたような「価格.comマガジン」などがありますね。うちの社内には記事作成部隊がいて、皆雑誌の記者や編集をやっていた人ばかりなんですが、彼らが注目している商材を勝手にレビューするコーナーを最近始めました。髭トリマーを実際に試してモミアゲを半分消失してしまった人もいます(笑)

◆今後の方針(こんな感じの展開を予定しています、など)

G:
今後の展望は?

甲:
実はこの4月でカカクコムは会社設立10周年を迎えます。記念すべき年なわけですけど、価格.comなのでベタな企画をサイト上でやるんじゃないかと思います。ユーザーの皆さんに参加して、楽しんでもらえるようなものをやりたいですね。

結:
今まで「パソコン、家電、カメラの価格.com」というイメージがありましたが、食品まで手がけるようになりました。家電だけじゃなくて、牛肉も買うことができますよ(笑)このショッピングサーチは、ヤフーショッピング、楽天、ライブドアデパート、ビッダーズの商品を横断して検索できる便利なサービスです。このサービスを開始した事で、掲載商品点数は26万点から750万点程に飛躍的に増えました。

G:
とんでもない数ですね。何か面白い利用法はありますか?

結:
単純に高い物を検索するだけでも面白いですよ。「こんなものがこんな値段なのか」と驚くこともあります。今はまだベータ版ですが、最終的には価格.comトップの製品検索フォームと統合して、なんでも買えるようにします。食品などの型番がない物もこれからはやっていきたいです。それらについても家電クチコミ掲示板のように、何らかのコミュニティ機能を付けたいです。まだまだサービス・機能改善の余地が多々ありますので、今後を楽しみにして下さい!

甲:
これからも更に取扱い商材やサービスの幅は随時増やしていきます。最終的な目標は何か買い物をしようと思った時にまず最初に見てもらえるサービスになることです。4月中には、新築マンションの検索サイト「マンションDB」も開始予定です。カカクコムらしくデータベース構築に力を入れていて、80項目以上の豊富な検索軸を設けています。担当の話では1物件の入力に2時間はかかるそうで、データ入力する人は相当大変だと思います。あとグルメのクチコミサイト「食べログ.com」もアクセスが飛躍的に伸びてきています。このサイトは敢えて価格.comとは別ドメインで開始したのもよかったと思います。担当者が「価格.com グルメという名称だと、激安グルメサイトと誤解をうける可能性があり幅広い情報を網羅できないのではないか」と思案に思案を重ねて今の名称になりました。このサイトも本当にヘビーユーザーの方々に当初から支えられて伸びています。カカクコムは、これからも引き続き皆さんに喜ばれるような消費者本位のサービスを追及していきたいと思います。

G:
本日はありがとうございました。

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in インタビュー, Posted by darkhorse_log

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