ジャーナリズムは科学における不正行為と戦う鍵になるのか?

科学界は論文の盗用や実験データの改ざん、研究に対する政治や企業の介入といった問題に直面しており、AIにより虚偽のデータや画像の生成が容易になったことも問題に拍車をかけています。そんな中、科学研究に関連する不正行為について調査・報道を行う「監視型科学ジャーナリズム(Watchdog science journalism)」が、不正行為と戦う鍵になる可能性があります。
The Emerging Practices of Watchdog Science Journalists in Ibero-America | Article | Media and Communication
https://www.cogitatiopress.com/mediaandcommunication/article/view/12291
Journalism, key to combating bad practices in science - Universitat Autònoma de Barcelona - UAB Barcelona
https://www.uab.cat/web/newsroom/news-detail/journalism-key-to-combating-bad-practices-in-science-1345830290613.html?detid=1345998526886
Journalism Can Help Expose Bad Science And Trigger Real-World Change, New Study Shows : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/journalism-can-help-expose-bad-science-and-trigger-real-world-change-new-study-shows
科学研究に関連する盗用や実験結果の捏造(ねつぞう)といった不正行為、政治や企業による干渉、大学におけるセクシャルハラスメントといった問題は、科学に対する信頼性を揺さぶります。もちろんこれらの事例は少数派ですが、その背景には「科学界で生き残るためには多くの学術論文を発表しなくてはいけない」という構造的なプレッシャーがあるとのこと。
こうした科学界の問題を調査して報道するのが、監視型科学ジャーナリズムです。内部の浄化作用が働かなかった場合、監視型科学ジャーナリズムによる報道が、科学における誠実性と独立性を守る重要な抑止力となり得ます。
そこで、スペインのバルセロナ自治大学のジャーナリズム研究者であるミケーネ・カタンザーロ氏とルイス・ペレス=ネト氏は、イベロアメリカ諸国で活動する15人の科学ジャーナリストにインタビューを行いました。イベロアメリカとは、ラテンアメリカの旧スペイン・ポルトガル植民地、そしてスペインとポルトガル本国を加えた地域を指す言葉です。
イベロアメリカ諸国では監視型科学ジャーナリズムが避けられがちですが、インタビュー対象となった15人のジャーナリストは、いずれも著名な不正行為を報道した経験がありました。その中にはアルゼンチンの研究センターにおけるセクシャルハラスメント、ラテンアメリカにおけるタバコ会社や製薬会社による研究への干渉、サウジアラビアの大学による提携先の買収などが含まれています。
ペレス=ネト氏は、「これらの専門家たちの仕事は、イベロアメリカのジャーナリズムの変化を示しています。イベロアメリカのジャーナリズムは歴史的に見て、世界の他の地域に比べて科学に関する調査報道の伝統が弱かったのです」と述べました。

インタビューを受けたジャーナリストらは、自分たちの活動が規制の変更や不正行為の自白、組織的な抗議活動、透明性の向上といった肯定的な影響を現実世界にもたらしたと回答しました。
その一方で、ジャーナリストらは精神的な負担や科学者からの敵意、検閲といった問題にも直面しているとのこと。さらに、「ジャーナリストによる科学研究に対する批判や不正行為の暴露が、読者の科学全般に対する信頼を損なってしまい、反科学的な見解に信ぴょう性を与えてしまう」という問題もあります。
カザンターロ氏らはインタビューを基にした論文の中で、「監視型科学ジャーナリズムはこうした問題に取り組む上で重要な役割を果たすことができる一方、科学的証拠に反して政治的、あるいは企業的な利益を追求する利害関係者に攻撃材料を与えてしまう危険性もあります」と説明しました。
インタビューを受けたジャーナリストらは、自分たちの報道内容が反科学的な勢力に悪用されるのを防ぐため、「科学的プロセスがどのように機能するのか読者に理解してもらう」「問題のある結果を適切な文脈に位置づけること」などを心がけているとのこと。

カザンターロ氏らは監視型科学ジャーナリズムを将来的に維持していくため、ジャーナリストに科学分野に特化した研修を受けさせることや、報道機関の資金源を拡大すること、記者・編集者への支援を強化することなどを提言しています。
また、研究者・学術機関・政府レベルでの説明責任を強化し、科学データや発見をより透明かつアクセスしやすいものにすることも重要だと主張しています。科学系メディアのScienceAlertも、「結局のところ多くの研究は公的資金でまかなわれているのです」と述べ、この意見に賛同しました。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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