データセンターブームの恩恵で人口8500人の町の貧困率が大幅低下、ただし電力需要増に伴う費用はデータセンターが負担

近年はAIブームに伴うデータセンター建設計画が増えていますが、データセンターは膨大な電力と水を消費することから、近隣住民からは懸念の声が上がっています。そんな中で、AIブーム以前にMicrosoftやYahooのデータセンターが多数建設されたアメリカ・ワシントン州のクインシーという町が、データセンター建設によってどのような恩恵を受けたのかが注目されています。
‘Brand-new everything’: How data centers transformed this small town’s economy | CNN Business
https://edition.cnn.com/2026/08/11/business/data-centers-ai-economy
This Washington Town Embraced Data Centers. What Happened Next Should Have Everyone’s Attention.
https://townhall.com/news/dmitri-bolt/2026/08/13/quincy-data-center-n2681184
人口およそ8500人のクインシーはアメリカ北西部を流れるコロンビア川に近く、リンゴやジャガイモなどを栽培する農業の町でした。そんなクインシーの特徴として、2つの公共水力発電所のおかげで電気料金が非常に低いという点が挙げられます。
Microsoftはクインシーの電気料金が安価なことに目をつけて、2006年に約4.65万平方メートルものデータセンターを建設しました。さらにMicrosoftの動きに追随して、YahooやDellといったテクノロジー企業が相次いでクインシーにデータセンターを建設し、記事作成時点ではおよそ30ものデータセンターが稼働しているとのこと。
これらのデータセンターはクインシーにおける固定資産税の約57%を負担しており、クインシーはこの資金を使って新しい公共施設を次々に建設しています。2026年には6レーンの水泳コースやウォータースライダー、流れるプールなどを完備した総工費1500万ドル(約23億8600万円)の水泳センターがオープンしたほか、2027年には公共公園整備事業の一環で約1万3300平方メートルの屋内スポーツ複合施設がオープンする予定です。さらにクインシーには、総額1億2000万ドル(約191億円)を投じて建設された最新鋭の高校・病院・公共図書館・警察署・消防署・舗装された歩道・下水道・廃水処理施設などもあります。

データセンター群は、クインシーにとってはかなり大きな数となる約900人分の雇用を、エンジニア・配管工・電気技師といった仕事で生み出しています。また、これらの仕事に就く人々が生活するために必要な建設業・小売業・サービス業といった仕事も増えており、データセンターはまさに経済の原動力になっています。
クインシーでは町に移住してくる人々に対応するため、新しい企業や非営利団体も設立され、2012年には29.4%だった貧困率は2024年に6.2%まで低下しました。7年間にわたりクインシーの行政官を務めたパット・ヘイリー氏は「クインシーは農業の町でした。この町にとどまるなら、農業関係の仕事に就くのが唯一の道だったのです。データセンター開設により、機会に恵まれない町だったクインシーが、あらゆるものが真新しい場所に生まれ変わりました」と語りました。
データセンターの建設に関して気になるのが、「地域の電気料金はどうなったのか」という点です。一般にデータセンターが建設されると、電力需要の増加や電力網の拡張によるコストが電気料金に転嫁され、近隣地域の電気料金が大幅に上昇すると考えられています。
ところがクインシーでは、データセンター事業者が自らの大規模な電力需要に対応するために必要なインフラと発電設備のコストを負担しており、一般家庭へのコスト転嫁はありません。それでも2025年には住宅用電気料金が3.5%上昇しましたが、大規模産業顧客の電気料金は9.1%上昇しており、事業者側の負担が高くなるように設定されているそうです。
なお、データセンターは電力だけでなく膨大な水も消費することが指摘されていますが、クインシーのデータセンターが使用する水量は全供給量の約8%であり、50%以上は食品加工業者に供給されているとのこと。クインシーではMicrosoftが市当局と提携し、データセンターやその他の産業向けの冷却水を処理する3000万ドル(約47億7200万円)規模の水再利用施設も建設されています。

しかし、AIブームに合わせて建設されている大規模データセンターは、クインシーに建設されたものより多くのエネルギーを消費するため、同様の恩恵をもたらすとは限りません。
また、クインシーでもデータセンターの建設によって苦境に追い込まれた人々がいます。データセンター建設以前からクインシーで働いてきたヒスパニック系の農業・食品加工労働者の多くは、データセンター建設の恩恵を受けられませんでした。
さらに、人口が増えたことで住宅価格は過去10年間でほぼ倍増しており、これは住民の所得増加を上回っています。ワシントンにあるラテン系市民同盟のニーナ・マルティネス事務局長は、「多くの家族がクインシーから追い出されてしまいました。平均的な農業労働者や農作業員には、このような生活は到底無理です」とコメントしました。
クインシーと同様の事例は他にも報告されており、ノースダコタ州のエレンデールという町ではデータセンターの建設によって年間売上税収入が数倍に達し、公共施設を改修・補修する余裕が出たとのこと。しかし、それと同時に急増する人口の受け入れに苦慮しており、住民の間で家賃高騰や立ち退きへの不安といった問題も生じていると報じられています。
How Silicon Valley data centers are reshaping rural America
https://www.sfchronicle.com/opinion/article/data-centers-artificial-intelligence-dakotas-22362642.php
なお、近年は日本でもAIデータセンターの建設計画が増えていますが、生成AIサービスを支える電力網を維持するための「託送料金」の大半が、2026年11月以降は一般家庭や企業に転嫁されると報じられて批判を集めています。
AI電力網は国民負担? 大手電力が「6000億円分」値上げ申請 - 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC104JQ0Q6A810C2000000/
・関連記事
テクノロジー企業がデータセンターのエネルギーコストを負担しなければならないとする法案が進行中 - GIGAZINE
データセンターは本当に一般市民の電気料金値上げの原因なのか? - GIGAZINE
Amazon・Microsoft・Googleなどにデータセンターの水と電力の使用量を開示するよう投資家が圧力をかけている - GIGAZINE
アメリカのエネルギー当局がデータセンターへの電力供給を加速するよう電力会社に指示 - GIGAZINE
データセンターの排熱で風下の住宅地が暑くなる実例を確認 - GIGAZINE
データセンターが地域住民のがんや流産の発症率を高めている可能性 - GIGAZINE
Telegramの5つあるデータセンターの謎 - GIGAZINE
Metaの「テントの中にデータセンターを設立する」という計画の詳細が明らかに - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in メモ, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article The data center boom has significantly r….







