保守派の人々は「滑り坂論法」に陥りやすいという研究結果

政治的なイデオロギーは主に「保守」と「リベラル」の2つに分かれています。心理学系メディアのPsyPostは政治に保守的な立場の人ほど滑り坂論法の形をした主張を「より筋が通っている」と感じやすい傾向があるとする研究を取り上げました。
“And the Next Thing You Know . . .”: Ideological Differences in Slippery Slope Thinking
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/01461672251391893
Conservatives are more prone to slippery slope thinking - PsyPost
https://www.psypost.org/conservatives-are-more-prone-to-slippery-slope-thinking/

滑り坂論法は「Aを認めるとBを認めることになり、Bを認めるとCを認めることになり……」という形で段階を踏み、最後に「だからAも認めるべきではない」と結論づける論法のことです。たとえば「安楽死を合法化するといずれ本人の意思に反して安楽死させられる濫用が起きるかもしれない。だから合法化すべきではない」といった主張が滑り坂論法の例として挙げられます。
滑り坂論法は「Aを認めたら本当にBが起きるのか」「Bが起きたとして、本当にCまで進むのか」がはっきりしなければ話を大げさに広げただけの飛躍になりかねませんが、実際にAの先で連鎖が起きやすい状況であれば警戒として筋が通る場合もあります。
今回の研究が焦点を当てたのは、同じような滑り坂論法を使用した文章を読んだときに「筋が通っている」と感じやすい人に政治的立場による偏りがあるのかどうかです。
研究を行ったのはイギリス・リーズ大学のラジェン・A・アンダーソン氏らの研究チーム。チームは合計15件の研究で、アメリカ・オランダ・フィンランド・チリの参加者を対象に質問紙調査・実験・SNS上の文章解析を組み合わせて検証しました。まず質問紙調査では、政治的対立を呼びやすいテーマをできるだけ避けつつ、教科書や哲学系サイトなどから集めた典型的な滑り坂論法を参加者に提示。最初の小さな手抜きがやがて大きな悪化につながるという筋書きを読ませ、どれだけ「筋が通っている」と感じるかを評価してもらいます。
以下は実際に調査で使用された文章の日本語訳です。
| 研究 | 滑り坂論法の例 |
|---|---|
| 1a | 飲酒できる年齢を引き下げたら、気付けば子どもが10歳で運転できるようになり、15歳で投票できるようになる。 |
| 1a | 今日は10分の遅刻で済んでも、明日は1時間遅刻し、そのうち出勤(出席)そのものをしなくなる。 |
| 1a | ダイエット中なのに今夜クッキーを1枚食べたら、明日は10枚食べたくなって、気付けば落とした15ポンド分の体重が戻ってしまう。 |
| 1a | このテストのやり直しを認めたら、今年いっぱい、あらゆる課題をやり直したいと言い出す。 |
| 1a | 誰にも甘くしてはいけない。甘くすると、相手は付け込んでくる。 |
| 1a | 赤ちゃんが泣くたびに言うことを聞いていたら、欲しいものを手に入れるためにいつも大泣きするようになり、しつけの線引きをしなかったせいで、最後は刑務所に入ることになる。 |
| 1c | ダンが今日、余計に5ドル使ったら、明日は余計に20ドル使うようになって、気付けばすっからかんになる。 |
| 1c | ジムが今日、余計に100キロカロリー食べたら、明日は余計に500キロカロリー食べるようになって、気付けば15ポンド太ってしまう。 |
| 1c | サイモンの両親が、今日の皿洗いをサボらせたら、来週にはゴミ出しもしなくなり、月末には掃除をまったくしなくなる。 |
| 1c | 今日、マークが仕事に1分遅れて来るのを許したら、明日は5分遅刻し、気付けばいつも最後に来る人になる。 |
| 1c | ジョンがこのテストで悪い点を取ったら、その科目を落とす。科目を落としたら、学校そのものを退学になる可能性が高い。 |
| 1c | ビルがリビングを片付けないと、他の部屋も気にしなくなる。他の部屋も気にしなくなったら、気付けば家じゅうが崩壊してしまう。 |
参加者の回答をまとめると、政治に保守的だと答えた人ほど滑り坂論法の形をした主張を「筋が通っている」と感じやすい傾向が確認されました。一方で、同じテーマでも滑り坂論法ではない書き方の文章だと政治的立場による差はあまり目立たなかったとのことです。

次に研究チームは、質問紙の上だけでなく実際の言葉づかいでも傾向が出るのかを確かめるため、掲示板サイトのRedditで政治に関する投稿を集め、ChatGPTを使って「滑り坂論法らしい推論」がどれくらい含まれているかを判定しました。その結果、保守寄りのグループの方が滑り坂論法っぽい言い回しが多く、さらに滑り坂論法っぽい言い回しが含まれるコメントは賛同の投票も集まりやすい傾向が報告されています。
アメリカ・オランダ・フィンランド・チリでも同様の調査を行ったところ、いずれの国でも「保守寄りな人ほど滑り坂論法型の主張を支持しやすい」という傾向はおおむね一致する結果になっています。
次に研究チームは「なぜ滑り坂論法がそれらしく見えるのか」を調査しました。途中の段階を並べて連鎖を見せた文章と、途中を省いていきなり結論へ飛ぶ文章を比べたところ、保守的な人が特に納得しやすかったのは前者。途中を省いた文章では保守寄りだからといって評価が大きく上がるわけではありませんでした。

さらに研究チームは、「判断を急ぎやすい状況」だと滑り坂論法が強く見えたり、いったん立ち止まって考えると印象が変わったりするのかも試しています。ここでいう「判断を急ぎやすい状態」とは根拠を確かめる前に「たぶんこうなる」で結論を決めやすい判断方法のことです。実験では参加者に「よく考えて答える」ように促し、すぐに選択肢を押せないよう少し待たせるなどして反射的に答えにくくしました。すると、滑り坂論法の評価における保守的な人とそうでない人との差が小さくなりました。

こうした傾向が一部の実験だけの偶然かどうかを確かめるため、研究チームは複数の研究を横断して結果をまとめています。その結果、研究ごとに多少のばらつきはあるものの多くの研究で「保守的であるほど滑り坂論法を支持しやすい」という傾向は一致しました。

一方で「保守的でもリベラルでも、立場が極端な人ほど滑り坂論法に引っ張られるのではないか」という見方もあるということで同じようにまとめたところ、少なくとも今回のデータでは政治的に極端であるかどうかが決め手になったとは言いにくい結果でした。

PsyPostは今回の研究について「保守派は非論理的だと言いたいわけではない」と述べています。滑り坂論法は制度の歯止めが弱い場面では妥当な警戒にもなり得る一方で根拠が薄ければ飛躍にもなり得るとした上で、「同じ文章でも段階をつないで連鎖を見せる形になっていると、政治的に右寄りの人の方が『筋が通っている』と感じやすい場面があるということが今回の研究で示された」とまとめました。
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in メモ, サイエンス, Posted by log1b_ok
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