ネットサービス

TikTokやInstagramで子どもをターゲットに「金持ちになる手法」を宣伝するブラジルのキッズインフルエンサーが問題に


ブラジルのキッズインフルエンサーの間で、「金持ちになる手法」をTikTokやInstagramといったソーシャルメディアで宣伝する行為が流行しています。ブラジルでは検察が「就労年齢ではない若いクリエイターから収益を得ている」としてTikTokを訴えており、プラットフォームの責任が問われています。

Brazilian child influencers face legal battles over online fame - Rest of World
https://restofworld.org/2025/brazil-child-influencers-legal/


ブラジルのサンタ・リタ・ド・サプカイ在住の14歳の少年であるギジェルメさんは、Instagram、Kwai、TikTokのアカウントで合計200万人以上のフォロワーを抱えています。ギジェルメさんとマネジメントチームが投稿する動画は、月額6000レアル(約15万円)という収益を生み出しており、これはブラジルの成人の平均月収をはるかに上回る金額です。

ギジェルメさんのマネージャーを務めるユーリ・アラウージョ氏は、「この少年はブラジルの新たなMrBeastになれる」とRest of Worldに語っています。なお、MrBeastは約5億9200万人のフォロワーを抱える世界最大のソーシャルメディアインフルエンサーの1人です。

ギジェルメさんのようなキッズインフルエンサーは世界的に増加しています。ブラジルでは9歳から17歳までの83%がソーシャルメディアとWhatsAppのアカウントを保有しており、多くの人が毎日ソーシャルメディアをチェックしているそうです。そのため、ブラジルではオンラインで一攫千金を獲得する方法を子どもに宣伝するキッズインフルエンサーも増加しています。


このようなキッズインフルエンサーは、TikTokやKwaiといったショート動画アプリから報酬を得るケースもあれば、アフェリエイトマーケティングでフォロワーに広告を配信することで収益を得ているケース、無料の商品やサービスを受け取ることで生計を立てているケースなど、さまざまなケースが存在するそうです。

Rest of Worldは、Instagram上で「インフルエンサーになってお金持ちになる方法」を教える講座を宣伝する10代の若者が多数いることを発見しました。これらの講座はデジタルマーケティングプラットフォームのCaktoやKirvanoで販売されているそうです。


16歳未満の児童による労働は、制作者が裁判官から「芸術的労働」を行う許可を得ない限り、ブラジルでは違法です。これは子役や若いアーティスト、インフルエンサーにも適用されます。公共労働検察庁で児童・青少年の権利コーディネーターとして働くルイサ・カルヴァーリョ・ロドリゲス氏は、「この法律は子どもや青少年を保護し、彼らが人生の各段階を適切な時期に楽しめるようにすることを目的としたものです」と語っています。

Rest of Worldはギジェルメさんを含む司法上就労許可を持たない10代のコンテンツクリエイター数名にインタビューを行いました。ギジェルメさんのマネジメントを行うSalvador Influencerのミケリ・フレイタス氏によると、ギジェルメさんは各ソーシャルメディアで自身の年齢が14歳であることを公表していますが、TikTokやKwaiのアカウントを収益化する際に就労許可を得ているか確認されることはなかったとのこと。「彼はキャリアを始めたばかりなので、過剰な収入はなく、司法による監視の必要はありません」とフレイタス氏は語っています。記事作成時点でSalvador Influencerはギジェルメさんから金銭的な報酬を受け取っておらず、マネジメント業務はあくまで「社会福祉事業の一環」であると説明したそうです。

Rest of WorldがTikTokにギジェルメさんのアカウントについて問い合わせたところ、TikTokは18歳以上のクリエイターに長編動画の視聴回数に応じて報酬を支払うクリエイター報酬プログラムから、ギジェルメさんのアカウントを除外しました。TikTokの広報担当者は「同様の事例の発生を防ぐため、追加の対策を実施しています」とコメント。また、TikTokは「強力な安全対策チームを擁しており、未成年者に有害となる可能性のあるコンテンツインタラクションをテクノロジーと人的資源を駆使して削除している」と説明したそうです。

中国のソーシャルメディア大手であるKuaishou Technology傘下のKwaiは、 Rest of Worldに対して「事態を把握した」と連絡した後、ギジェルメさんのアカウントを直ちに閉鎖しました。Kwaiは「いかなる形でもキッズインフルエンサーと提携していません」と述べ、13歳から17歳のユーザーには保護者の承認を求めていることを明かしました。なお、ギジェルメさんはKwaiの公式クリエイタープログラムには参加していなかったそうです。


Instagramの親会社であるMetaの広報担当者は、未成年のクリエイターが同社のプラットフォームを販売に利用していることについてコメントを控えました。

ブラジルでは、司法監督機関である司法評議会が2022年に、裁判官に対して芸術作品における未成年者の労働に注意するよう要請して以来、ソーシャルメディアにおける児童労働が厳しく監視されるようになりました。2024年10月、労働裁判所は裁判所の許可なく児童の運用するソーシャルメディアアカウントを収益化することで児童に精神的損害を与えたとして、TikTokに10万レアル(約250万円)の罰金を科しました。また、裁判所は新たな違反ごとに1万レアル(約25万円)の罰金を科しています。この裁判において、マリーナ・ステファノーニ判事は「子どもの保護は家族や国家だけでなく、社会全体の義務である」と判決文に記しました。

なお、TikTokは「労働裁判所の判決にはTikTokによる児童労働搾取には触れられておらず、TikTokはその罪で有罪判決を受けたわけではありません」と述べ、労働裁判所の判決を不服として控訴しています。

労働検察庁の関係者は、Rest of Worldに対して「キッズインフルエンサーが裁判所の許可なしにアカウントを収益化できるようにしているとして、TikTokに対する捜査が継続している」と語っており、記事作成時点でも取り組みが続いているようです。

さらに、Rest of WorldはCaktoとKirvanoに対しても未成年者の運用するアカウント問題について問い合わせしています。Caktoは1人のクリエイターのアカウントを停止し、このアカウントは成人が登録したアカウントを使用していたと説明しました。Kirvanoの広報担当者は、「社内調査の結果、Rest of Worldがフラグ付けしたアカウントはすべて18歳以上のユーザーによって適切に登録されていることを確認しました」と述べ、未成年者によるアカウントではないと言及しています。


ギジェルメさんはブラジルのトップフィットネスコンテンツクリエイターの1人であるtoguro氏からiPhoneをプレゼントされたことをきっかけに、インフルエンサーになることを決意しました。わずか1カ月でギジェルメさんはInstagramで8000人のフォロワーを獲得しており、このタイミングでSalvador Influencerの目に留まることとなります。

ギジェルメさんは普段からiPhoneで自分の動画を撮影し、動画は自分で編集しています。マネージャーはギジェルメさんのアカウントに毎日コンテンツを投稿しており、記事作成時点でTikTok上では動画が73万3000回以上再生されているそうです。ギジェルメさんはソーシャルメディアの中でもTikTokから最も多くの収益を上げており、その金額は月額1000~6000レアル(約2万5000~15万円)ほどだそうです。

ダブリン大学の人類学者であるワグナー・アウベス=シウバ氏によると、ブラジルではTikTokに加えてInstagramが非公式な労働の場となっているそうです。アウベス=シウバ氏らが推進する研究プロジェクト・DeepLabによると、ブラジル人の約13%(約2700万人)がInstagramを商業的に利用していると推定されています。業界の推計によると、ブラジルは2024年に世界で最も多くのソーシャルメディアインフルエンサーを抱える国となっています。そのため、ブラジルはソーシャルメディア利用者にとって世界最大の市場のひとつであるとRest of Worldは指摘しました。

ブラジルの典型的なキッズインフルエンサーのInstagramアカウントのスクリーンショットが以下。キッズインフルエンサーの多くは両親が早期退職し、自身が億万長者になることを目指しており、遊び半分で運用されているアカウントはほとんどないとのこと。プロフィールにはプロ並みに洗練された顔写真が貼られており、「今すぐ私から学ぼう!」といった行動喚起フレーズが自己紹介文として記されています。


ビジネスコンサルタントの母を持つ13歳のヴァネッサさんは、Instagram上でデジタルマーケティング講座を販売しており、フォロワーは1万3000人以上に達します。ヴァネッサさんは2025年1月にCaktoで講座販売から約300レアル(約7500円)の収益を得たそうです。ヴァネッサさんは週末の自由時間の90%をコンテンツ制作に費やしていると語りました。

別のキッズインフルエンサーである14歳のファブリシオさんは、バイラルコンテンツに関する解説動画をInstagramに投稿することで金銭を稼いでいます。ファブリシオさんは動画編集の方法をレクチャーする動画を投稿したところ、この動画は600万回以上再生され、それをきっかけに6カ月で13万人以上のフォロワーを獲得しました。ファブリシオさんは38歳の父親と一緒に動画投稿を行っており、父親はファブリシオさんの活動に協力的です。

ファブリシオさんは1日3時間をコンテンツ制作に費やしているそうで、同氏の父親は「子どもたちは努力しないと非生産的になる」と主張。さらに、「13歳の時に飢え死にしないためにコンビ(フォルクスワーゲンのバン)で果物や野菜を売っていたように、息子にも大きく成長してほしいです」「(努力しない非生産的な)子どもたちは、TikTokで踊ったり、遊んだり、ポルノを見たりするだけです」と語り、インフルエンサーとして活躍するファブリシオさんを応援しています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
キッズ系YouTuberの親に対して「収益の最大50%を子どもにわたす」ことを義務付ける法律が施行される - GIGAZINE

「若い体操選手」や「10代以下インフルエンサー」をフォローするアカウントを作成したら性的なコンテンツが大量にオススメ表示されたという報告 - GIGAZINE

自分の子どもを動画に登場させるインフルエンサーについて収入の一部を子どもに分ける法律が成立 - GIGAZINE

インフルエンサーの親によって自分の生活が「コンテンツ化」されてしまった子どもの苦しみとは? - GIGAZINE

子どもの3人に1人が憧れる職業「ユーチューバー」が生活できるようになるまでの壁とは? - GIGAZINE

in モバイル,   ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article Brazilian kid influencers who promote 'g….